<第193回国会 2017年4月13日 農林水産委員会>


◇参考人質疑/種子法は、人権としてすべての農家に種子にアクセスする権利を保障する世界でも先進的な法律だ/種子法廃止は唐突感が否めない

○農業機械化促進法を廃止する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)
○主要農作物種子法を廃止する法律案(内閣提出、衆議院送付)
☆参考人
 秋田県農林水産部長 佐藤博君
 龍谷大学経済学部教授 西川芳昭君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 お二人の参考人の方、本当にありがとうございます。
 佐藤参考人は、昨年、秋田に調査にお邪魔したときに本当に、種子のことではなかったんですけれども、丁寧な対応をしていただきまして、ありがとうございました。今日は、現場からも、現場の立場に立った率直な御意見をありがとうございます。
 それから、西川参考人は、先ほど種子の問題のやっぱりそもそものところというか、非常に深い根源的な話をしてくださって、改めてお聞きしながら、我々本当に、我々というか私自身も、これだけ深く認識をして審議をしているのかなということを改めて痛感をさせられております。
 それで、最初に、お二人に同じ質問なんですけれども、農水省は今回、この主要農作物種子法の廃止の理由として、都道府県が開発した品種、これは民間企業が開発している品種よりも税金で支えられていて安く提供できることが可能なために、民間企業が参入しにくいんだという説明がされました。ところが、驚いたことに、この立法事実に関わる資料については十分なものが出されていないということなんです。
 昨年の九月二十日の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループで出された資料、これ、それと同じものを我々もいただいているんですけれども、水稲の種子の資料はあるんですけれども、これも十分ではないんだけれども、主要農作物であるはずの麦、大豆の資料が全く出ていないと。要求してきたわけですけれども、基本的な資料がないまま、衆議院ではたった五時間で審議をされる、で、参議院に送られると。
 それで、廃止しようという大変大きな問題なんですけれども、廃止しようという重要な法案を審議するのに、そういう基本的な資料も出さずに議論するというやり方、これは本当にちょっと拙速じゃないかというふうに思うんですけれども、こういうことについてどのように思われるかということをお二人にお聞きしたいと思います。

○参考人(秋田県農林水産部長 佐藤博君) この種子法の廃止だけでなくて、やっぱり農業政策、農業に関する法律というのは、これは地域農業にも非常に大きな影響を及ぼすものでございますので、これにかかわらず、いかなるものにつきましても、国会において慎重に審議をしていただきたいというふうに思ってございます。
 今回の件につきまして、審議時間が長いのか短いかとか、それから資料が提出されているされていないということについて、当方の方でコメントする立場にはないというふうに考えてございます。

○参考人(龍谷大学経済学部教授 西川芳昭君) 十分な審議が行われていないということに関しましては、やはりこれも一般的なことですけれども、全ての国のことを決めていくことには、関係者全て、国民全てが入った形で、十分な資料が示された形で議論を進めるべきだというふうに考えております。
 特に種子に関しては、繰り返しますけれども、国の戦略資源という言い方もできますし、国民の全体が築き上げてきた資産というふうな言い方も言えると思います、そのものを手放すことに関してはもう少し丁寧な議論が必要だというふうに考えております。

○紙智子君 その上で、西川参考人に最初にお聞きしたいんですけれども、西川参考人は奈良県のタマネギの採種農家に生まれたというお話を先ほどされました。種の重要性をそういう意味ではまさに実感されて育ってこられたのかなというふうに思うんですけれども、いただいている資料で「農業と経済」の中で、種というのは農業にとって土地や水と並んで不可欠な投入物だと、私たちの命というのはこの種に支えられていると、種がなくなると食料もなくなり私たちも生きていけなくなるというふうに述べていて、私も本当にそうだな、そうなんだなというふうに思うわけですけれども、やはりこの種子法は、そういう意味では国がきちっと責任持ってということですからなくすべきではないと思うんですけれども、種子は人類共通の、共有のものだというお話をされましたけど、その辺のところを、多分先ほどすごく急いで話しされたんですけれども、もう少し詳しくお話をしていただければと思います。

○参考人(龍谷大学経済学部教授 西川芳昭君) ありがとうございます。
 種がなくなれば食料がなくなる、食料がなくなれば君もなくなるということで、私たちが地球上から消えてしまうということで、種子の重要性というのは何度繰り返しても強調し過ぎることはないと思います。
 一方で、共有のものであるということですけれども、基本的には、FAOを中心として一九六〇年代からいわゆる南北問題ということで資源の、どういうんでしょう、所有権に関する争いがあったときに、種子に関しては日本政府も含めて人類共有の資産だということを強調してまいりました。そういう意味では、日本政府は一九八〇年代までは、少なくとも種子に関しては人類共有の資産だということを積極的にサポートするグループに入っていて、私たちもその中で生かされてきたと思います。それがだんだん知的財産権の強化、特に遺伝子情報が読めるようになって私有化されるようになってきて、遺伝子情報にパテントが掛かるようなことになってきているという状況が存在します。
 ちょっと時代が前後しますけれども、第二次世界大戦が終わったときに進駐軍が入ってきたときに、農林10という日本で作られた小麦の品種の種が持ち出されました。その目的は、アメリカの小麦の増産のために育種の材料とするためですけれども、結果として、その小麦の遺伝子はメキシコの国際研究所に送られて、そこで知的財産権を主張しない状態で改良品種として作り、メキシコ又はそのほかの開発途上国に渡されて、緑の革命という形で世界中の飢餓を救ったという例があります。
 こういう形で、種子というのは世界を巡っていて相互に助け合っている存在なわけで、特定の企業が持つことによってそのような相互依存の共生の社会というものが損なわれるというふうに考えています。ほかの資源とやはり違った取扱いが必要だと思います。そういう意味では、やはり種子法というものが存在して、日本の中で循環させているということの重要性はもう繰り返し申し上げたいと思います。

○紙智子君 次に、佐藤参考人にお聞きしたいんですけれども、種子法がもし廃止ということになると、予算措置の根拠というものがなくなると。先ほど県独自でもやるんだという話があったんですけど、地方財政措置の根拠がなくなるとどういうふうな影響が出るかということと併せて、やはりお米と同時に、麦、大豆、大豆も結構、三位ですかね、作られているというお話もありまして、秋田県の麦や大豆の生産ということについて、五位ですかね、全国五位と言っていましたけれども、どういうふうな影響が考えられるかということも、先ほどちょっとお話なかったと思うので、その辺のところも話をしていただきたい。そして、財政的な措置ということでいうと、やっぱりそれに対しての要望がありましたら是非していただきたいと思います。

○参考人(秋田県農林水産部長 佐藤博君) 後段の方から先にお答え申し上げますけれども、現在の主要農作物の種子の安定供給というのは、これは各都道府県が中心的な役割を果たすと、これはもう論をまたないところだと思います。
 そういうことで、国におきましては、先ほど前段、意見陳述で申し上げましたように、種子関連業務に関する地方財政措置、これからも、まあ地方交付税でございますけれども、しっかりと継続すると。間違っても地方交付税が減るというふうなことがないように対応していただきたいということは申し上げておきたいと思います。基準財政需要額に今入れられているはずでございますので、しっかりとそのとおりやっていただきたいというふうなことでございます。
 それから、麦、大豆でございますけれども、まず大豆につきましては栽培面積は非常に多うございます。かつて、今もそうですけれども、米とそれから大豆のブロックローテーション、二年三作のブロックローテーションというふうな形で、非常に大きな団地をつくりながら生産振興を今進めているところでございまして、約八千ヘクタール栽培されているところでございます。
 この品種といいますか、種につきましては、本県の農業試験場では、大豆の品種の開発につきましては今現在は少し手を、力を入れていないというか、入れようがないといいますか、国の方の試験研究機関に今お任せといいますか、お願いしているところでございます。
 主力品種がリュウホウという品種なのでございますけれども、これは非常に加工特性はいいんですけれども、しわ粒といいまして、しわが出るんですね。これでもって等級が下がるというふうなことで、この課題を解消できるような新しい大豆の品種を是非国の方にお願いしたいということで、幸い、当県の中央部の大仙市というところに東北農研の方の栽培実証の現地実証地がありますので、そこでもって本県に合ったそういった大豆の種子の開発等々につきまして御支援をいただいておるところでありまして、これにつきましては引き続き力を入れていただければ大変有り難いなと思ってございます。
 それから、麦につきましては、いかんせん、ちょうど収穫のときが本県の梅雨どきと重なるものですから、一時振興もしたんですけれども、やっぱりいいものが取れないということで、ほとんどまず振興されていないと。
 ただ、もしかすれば先生方の中でも御存じの方もいらっしゃるかもしれませんけど、B―1グランプリで横手の焼きそばというのがありますので、その方々が、そうした気象条件にもめげずに、その焼きそば用の小麦の栽培と、要は地産地消的な考えですね、その最終的な加工まで含めた、そういったものについて取り組んでおりますので、そういった点につきましては地域振興の観点から県として今御支援を申し上げているというふうな状況でございます。
 以上でございます。

○紙智子君 それじゃ、もう一度西川参考人にお聞きしますけれども、先ほどもちょっと触れられましたけれども、西川参考人は、三月の何日付けかな、東京新聞か何かで書かれていたんですけれども、種子法の成果として、九州農業試験場と大分県が地元産の大麦一〇〇%の焼酎を造りたいということで、酒造会社と協力して育成した大麦の話をされているんですよね。
 やっぱり地域の生活や文化に合った種子の生産にとって、公的な種子供給の義務をなくして民間に任せるということも含めて書かれていたと思うんですけれども、それについて少し詳しくお話を聞かせていただきたいと思います。

○参考人(龍谷大学経済学部教授 西川芳昭君) 今の御質問はニシノホシという大麦の品種のことだと思いますけれども、九州農業試験場、国の機関とそれから県の機関が、転作ですね、水田転作で大麦を利用する、また、その奨励品種に決定するための実証圃場を拡大する形で生産を前倒しにするというふうな形で、どういうんでしょう、実用化に結び付けたということで、そのような形で地域にとって、地域の農業生態系に見合った、またその地域の企業の生産、加工、流通に見合った形での新しい品種というのが種子法の中で作られてきたというのは、これは非常にいい実例だと思いますし、何よりも、その結果として、その地域の農家の所得が向上し地域全体が潤っていくということがありますので、種子法自体がそのことに関して、何度も言いますけれども、直接種子法がその品種改良をやっているわけではないことは十分認識しておりますが、そういうことができるソフトのインフラとして種子法が存在しているということを私は今までいろんな方からお聞きしてきております。

○紙智子君 ありがとうございました。
 やはり、本当に深い意味を持つこの種子法について、目先の利益ということだけにとらわれて廃止するということはやっぱりどうしても納得できないということを思っているわけですけれども、是非、この参考人の皆さんからの意見を踏まえてこの後の議論をしっかりやっていきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。