<第193回国会 2017年4月4日 農林水産委員会>


◇JAS法改正案は、「公共の福祉の増進」をより明確化させた2009年改正を大きく後退させるものと追及。井上宏司食料産業局長は「公共の福祉」は過去の規定と開き直る。

○農林物資の規格化等に関する法律及び独立行政法人農林水産消費安全技術センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ちょっと題名が長いので、短くJAS法の改正についての質問をいたします。
 それで、JAS法は一九五〇年に制定をされて、農林物資の規格を制定、普及させることによって品質の改善や生産の合理化などを図っていくということで、農林水産大臣が指定をして規格をして、それを進めることによって農業生産の振興を図っていく、そして消費者の利益の保護に寄与するという目的で作られたわけです。
 そこで、まずお聞きしますけれども、目的規定についてです。
 新旧の目的のところも法案の新旧の比較で見たわけですけれども、この新旧の比較で見て、現行法のところで目的の第一条では、「消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護に寄与することを目的とする。」というふうに書いてありますけれども、この消費者の需要に即した農業生産の振興等というのはどういう意味でしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) ただいま御指摘の部分は、平成二十一年の改正によって原産地の偽装表示を行った者に対する直罰規定を設けた際に、偽装表示によって生産現場に風評被害が発生をしている実態に鑑みてこのような規定が設けられたものと承知しております。

○紙智子君 質問に答えていないと思うんですけど。目的の第一条のところで書いているところの、「消費者の需要に即した」というふうに書いてありますよね。消費者の需要に即した農業生産等の振興等ということの意味です。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) これについては、消費者のニーズを踏まえた農業生産を振興していくということかと思います。

○紙智子君 今回の改正案の中で、「消費者の需要に即した農業生産等の振興」というところが削除されているんですよね。現行法ではあるんだけれども今回は削除されているんですけど、それはなぜなんですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 今回、目的規定について、物資の規格を作るというところから取扱いの方法等の規格を作るという対象拡大をすることに伴いまして目的規定の改正が必要になったわけでございますけれども、その機会に、これまでの規定の文言の整理をしていく中で、ただいま御指摘の「消費者の需要に即した農業生産等の振興」という点につきましては、「農林水産業及びその関連産業の健全な発展」という中に包含をされているというふうに整理をさせていただいたものでございます。

○紙智子君 規定の文言の整理をしたんだ、それで包含されていると言うんですけれども、包含されているように読めないわけですよね。これやっぱり、その言葉自身が削除されるということになると意味が変わるんじゃないかというふうに思うんですよ。
 元々、先ほどちょっと言いかけましたけど、二〇〇九年の法改正で、それまで書かれていた、作ってから書かれていた「公共の福祉の増進」という文言を「農林物資の生産及び流通の円滑化、消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護」というふうに改めているわけですけれども、その公共の福祉の増進という意味を明確化するために「消費者の需要に即した農業生産等の振興」が書き込まれたということですよね、当時。それによって規格制度と表示制度が共に果たしてきた生産者と消費者をつなぐ役割が法文上特に明確になったということが当時の法解釈で書かれているんですけれども、それはそういうことですよね。ちょっと確認します。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 今の点はちょっと通告をいただいておりませんので、当時の法解釈についてはここではお答えできません。

○紙智子君 ちょっとお答えできないというのも変なんですよね。当時の、通告をいただいていないと言うけれども、この実際に目的のところを変えるに至っている、そこの部分を聞きますよと言っていたわけですから。それで、今回それを削ったということはなぜなのかということを聞きたいんです。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 申し訳ございませんが、現行法の中には既に公共の福祉の増進という規定は改正されてございませんので、その当時の改正の経緯については今ここではちょっとお答えを申し上げることはできません。

○紙智子君 それはおかしいですよ。
 現行法には書かれていないからと言うんだけれども、その今までの経緯からいって、元々は書かれていた「公共の福祉の増進」という文言が二〇〇九年のときに実は改まっていると。その公共の福祉の増進という言い方をより鮮明にするために、当時、「消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護」というふうに変えたわけですよ。すごく大事な意味が込められているわけですけれどもね。
 それは、さらに、規格制度と表示制度が共に果たしてきた生産者と消費者をつなぐ役割ということが法文上特に明確にされたんだと、こういうふうに当時の法解釈の中では言われているんですけれども、それをなぜ今回削除することになったのかと。もう一度お答えください。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 今回の目的規定の文言整理において、その点について、何か今後は重要視しないとか、そういう特段の意図を持って今回の新たな目的規定にしているわけではございません。

○紙智子君 いや、そのことをもって何か変わるわけじゃないという話されるんです。大きく変わるんじゃないですか。
 元々の原点となってきたところが、途中いろいろ変わるんですけれども、その変わったけれども趣旨をより明確にしてきたと。しかも、消費者と生産者をつなぐ役割、ここのところが法文上明確になったんだというふうになったものが今回削除されているわけですよ。これは大きな変更だと思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) その点につきましては、繰り返しになりますけれども、「消費者の需要に即した農業生産等の振興」も「農林水産業及びその関連産業の健全な発展」の中に包含をされているものという考え方の下に、新たな目的規定にさせていただいているところでございます。

○紙智子君 それは、受取方によっては違うんじゃないですか、書いていないわけだから。その他の文章はありますけれども、それはちょっと納得できないということがあります。
 それからもう一つ、「食品表示法による措置と相まつて、」という文章も現行のところからは削除されているんですよ。これ、食品表示法に移したとしても、食品表示法ができたというのはあるんだけれども、それを移した上で現行の文章の中には、「食品表示法による措置と相まつて、一般消費者の選択に資し、もつて農林物資の生産及び流通の円滑化、消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護に寄与することを目的とする。」と。「相まつて、」という条文があるということは、これ引き続き、相まってというのは互いに作用し合ってということですから、食品表示法はできているけれども、それと互いに作用し合いながら相まって進めていくんだということが条文にあるわけですよ。
 だから、それ大事なことだと思うのに、今回なぜ削除しているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 今回、この「食品表示法による措置と相まつて、」という部分を削除した理由でございますけれども、一つは、JAS法自体が、今回の改正によりまして、これまでの農林物資の成分等の品質のみならず、これらの取扱い方法、試験方法等の規格も定め得ることとなることによって、消費者の選択に資する機能をJAS法自体がより一層有することになったという点が一つと、もう一つは、農林物資に係る消費者の選択に資する法律としては、食品表示法のほかに、例えば平成二十七年に施行されました地理的表示法、いわゆるGI法でありますとか、そのほかにも米トレーサビリティー法等もありまして、食品表示法だけに限られないということで、むしろ特記をしない方がいいだろうという考え方の下に、今回はこういう規定ぶりにさせていただいたものでございます。

○紙智子君 消費者の選択の幅が広がるとか、新しいそういうものが含まれるからということで必要ないというように考えたという話だったと思うんですけど、なぜ勝手にそういうことを判断できるんですか。
 これは、二〇〇九年の法改正のときに衆議院の農水委員会委員長の提案で全会一致で送られてきたものですよ、参議院に。これ、議員立法で作られた条文で書かれたものですよ。議員立法でやっぱり出されているというのは重いものだと思うんですね。重いと思うんですよ。なぜかというと、議員立法というのは、やっぱり国民の皆さんから上がる切実なそういう要求に基づいて、必要だということである場合には超党派で作ったりするわけですよ。それを、何で農水省は議員立法で作った条文を簡単に変えるのかと。
 当時は、二〇〇九年のときというのは、ミートホープ事件だとか、それから船場吉兆事件だとか、それから中国産の毒入りギョーザ問題とか、もう多々、いろんなやっぱり偽装事件だとか安全を損なう、信頼を損なう、そういうことが相次いだわけですね。そういう中で、議員立法でこれは必要だということで出されてきたと思うんですよ。それをどうして変えなきゃいけないんですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) JAS法自体は、従来から閣法で提出をさせていただき、御審議をいただいたということで、今回も、内容の変更に伴ってこの目的規定の改正を閣法として御提案をさせていただき、御審議をしていただいているというところでございます。

○紙智子君 全然分かりませんよ、今の説明では。
 大臣、大臣にもお聞きしますけれども、今このやり取り聞いていたと思いますけれども、大臣はどのように思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 農林水産業及びその関連産業の健全な発展、ここまでは従来も変わりませんし、この規格、JAS法を作る意味があり、さらに、一般消費者の利益の保護というところで、この現行法にある目的を、全て消費者に関するものを読み込んだというように理解をさせていただいているところでございます。

○紙智子君 その言葉はどっちにもあるんですよ。ないことが、削除された意味があるんじゃないかというように思うわけですよ。
 私、やっぱり議員立法って重いと思うんですよ。この間、つい先日は特殊土壌のところの特別法というか、これを延長しましたけれども、これだってやっぱり現場の本当に切実な声があるからそうやって超党派でもやってきたわけじゃないですか。違うところでいっても、例えば、東日本大震災があって、それで子ども・被災者支援法というのを、それこそ自民党から共産党まで含めて超党派で、やっぱり救われない人たちのために何とかしようということで、健康被害も含めてそういうものを作ってきたわけですよ。そういう議員立法が勝手に変えられるなんということは、ちょっとこれ許せないことなんですよね。
 ちょっとこれ、今の答弁では全然納得できないんです。農水大臣、もう一度ちょっとお答えください。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) これ以前の法改正の段階で、消費者基本法、消費者保護基本法というのが制定され、かつまた消費者庁ができ、かつ食品表示法が独立して消費者行政の中に組み込まれたというような変化もありまして、かなりの消費者保護のツールが増えたということにおいて、この目的規定の中に、消費者に関する表示等のウエートが少し軽減されてきたということは、私はあり得るというようなふうに考えるところでございます。

○紙智子君 いろいろほかにもできてきたからその分が軽くなったという言い方なんだけど、それがあったとしても消す必要ないじゃないですか。ここに書かれているように、「食品表示法による措置と相まつて」と、引き続き大事なんだということが書かれているのに、今回の改正案では削られている、それも議員立法で盛り込まれたものが削られていると。全然、私、これ納得できないんですよね。ちょっと、ちゃんと答弁を、納得いく答弁をしていただきたいと思いますが。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 御指摘のとおり、委員が議員立法とおっしゃっている部分は、食品の偽装の問題が起こった後に、この偽装表示に対する罰則規定の新設という改正を行う際、議員立法が行われ、それに合わせて、それに関連する部分の目的規定の一部が改正をされたというふうに承知をしてございます。その後、御案内のように、食品の表示につきましては、このJAS法の中から規定が削除され、食品表示法に移ったということでございます。

 ただ、先ほども申し上げましたように、したがって、その食品表示法と相まってということを全く無視するということではなく、ほかの法律も消費者の選択に資するものであるという意味では、この食品表示法だけではないということで、今回はその食品表示法だけを特記するというところについては削除をさせていただいたということでございます。

○紙智子君 これは削除する必要ないということですよ。これ、私、議員立法でそうやって書き込まれたものをいろいろ解釈をして勝手に削るって、これは国会無視だと、軽視だと思いますよ。先ほど来いろいろ議論を聞いていましたけど、本当に国会議員がいろんなことを出して、そして議論をしていく、審議をしていく、そういうことに対して必要な調査もするとか資料も出すというようなことも含めてあるわけだけど、本当にこれは国会軽視も甚だしいというふうに言わなければならないと思います。

 次に、第二節の適合の表示のところについて聞きます。第十三条ですね。今回新設された条文ですね。まず、この意味について説明してください。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 今の御質問は、改正法の十三条の表示のところでございましょうか。
 この点につきましては……(発言する者あり)はい、十三条。よろしいですか。取扱いの方法等につきまして適合の確認を得た場合には広告等にマークが付せるということになるわけでございまして、この十三条では、「広告その他の農林水産省令で定めるもの」というふうに書かれておりまして、この適合の表示ができる場所といいますか、として、この広告等として、チラシ、ポスターといった広告のほか、パンフレット、契約書といった取引に用いる書類、あるいは事業者のホームページ、あるいは事業者の事務所、工場の外壁、看板等を想定しているところでございます。

○紙智子君 それで、なぜ新設をすることにしたんですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) これまでは物資の品質についての規格だけがあったわけでございまして、これについては格付の表示という条文が立っておりますけれども、今回新たな規格の類型ができたことに伴いまして、それに適合していることを確認の上、表示ができるという仕組みを創設をしたものでございます。

○紙智子君 ここで言っている広告というのにはどういうものがあるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 先ほどと繰り返しになりますけれども、改正法案の十三条におきましては、「広告その他の農林水産省令で定めるもの」とさせていただいておりますけれども、農林水産省令で定めるものとして想定しているものを含めて申し上げさせていただきますと、一つは、チラシ、ポスターといったいわゆる狭義の広告、それ以外にパンフレット、契約書のような取引に用いる書類、あるいは事業者のホームページ、あるいは事業者の事務所、工場、この場合には外壁であったり看板ということになりますけれども、こういったものを想定しているところでございます。

○紙智子君 インターネットとかテレビコマーシャルなんかはどうですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) それについても掲示ができるということになります。

○紙智子君 それで、だから相当いろいろできるわけですけれども、これまでのJAS法というのは、規格内容を表示で示して消費者が品質の確認をできるようにしていたわけですね。これは、消費者の権利としてのやっぱり表示という問題を体現したものだと思います。しかし、今回、差別化して規格内容を宣伝できるようになるということは、売りに出す側は販売を促進できることになるかもしれませんけれども、消費者にとっての品質を保証するための表示JAS法から、商品を売るための広告のJAS法に変わってしまうんじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 物自体についての規格についての格付の表示、いわゆるJASマークをどこに表示できるかということでございますけれども、これについては、今回の改正によりまして、物の規格に適合していることの表示は、その物自体又はその物を広告しているものにしか掲載ができないということにさせていただいております。
 他方で、今回新たに規格の類型として拡大をいたします取扱方法等についての適合の表示につきましては、物や物自体の広告には付せない、これは国際標準化機構、ISOのルールでもそのようになっているわけでございますけれども、そういう国際ルールに従って、物や物の広告には付せず、会社のホームページであるとか会社案内等、先ほど申し上げましたようないわゆる広告等でございますけれども、にのみ付せるという区別をしているわけでございます。

○紙智子君 私は、何となく受ける感覚として見ても、やっぱり品質を保証するための表示、消費者のために品質を保証するための表示というJASの性格だったんだけど、売っちゃ悪いとは言いませんよ、だけど、売るための広告というふうにこの性格がちょっと変わっていくんじゃないかというふうに思うわけですよ。
 それで、今回の改正の趣旨についてもお聞きしたいんですけれども、我が国農林水産業の国際競争力の強化を図るため、JAS規格に農林物資の取扱法等についての基準を追加するとしているわけですけれども、この国際競争力の強化というのはどういうこと、何をもって競争力があるということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) ここで特に言っております国際競争力という意味では、農林水産の食品について海外のマーケットでも競争できる力ということかと思います。

○紙智子君 海外でも競争できると、その中身は何なのかというのは今語らなかったんですけど、昨年十一月に、農林水産業・地域の活力創造本部というのがあって、そこで農業競争力強化プログラムを決定しました。全体で十三項目あるわけですけど、その一つに戦略輸出体制の整備という項目があります。JAS規格がそこではどういうふうに書かれているでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) JAS法に基づく制度の在り方を見直すというふうに位置付けております。

○紙智子君 済みません、もう一回お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) この十一月に決定されました農業競争力強化プログラムにおきまして、戦略的輸出体制の整備の一環としまして、JAS法に基づく制度の在り方を見直すというようにここで位置付けられたものでございます。

○紙智子君 JAS規格がどういうふうに書かれていますかというふうに聞いたんですけど、今のところでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 昨年の十一月に創造本部で決定をされましたプランに、一つは農業競争力強化プログラムが付いているわけでございますけれども、この中におきましては、今後の具体的な取組として、日本産品の品質や特色のアピールにつなげるため、国際標準化を見据えたJAS規格の活用といったことがありますし、さらに、同じくそのプログラムの中で、この一環として、JAS法に基づく制度の在り方を見直し、生産行程や生産・流通管理の方法等といった多様な規格の制定、国際的に通用する認証や表示により、海外事業者への訴求に向けて戦略的にJASを活用するとございます。
 さらに、同じ日に決定されましたプランにこれも付いております、農林水産物インフラ整備プログラムの中で、JAS法に基づく制度の在り方を見直し、以降、先ほどと同じような文言ですけれども、さらにこのインフラ整備プログラムの中では、JAS法に基づくこれまでの制度の在り方を見直すこととし、関係法案の次期通常国会提出を検討するというふうに書かれております。

○紙智子君 JAS法の規格は、規格・認証や知的財産制度の活用促進と規制の緩和・撤廃の中で、国際標準化を見据えたJAS規格というふうに書かれていると思うんですけれども、国際標準化を見据えるというふうにあるんですけれども、この国際標準化をする展望、そして段取りということについてどのように考えているのか、教えてください。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 農林水産・食品分野の国際競争力、先ほど申し上げましたけれども、海外のマーケットに輸出ができるというためにはJAS規格を、JAS規格そのものとしてもアジアの国では取引先等に訴求力が一定程度ございますけれども、さらに欧米のマーケットを考えた場合には、できればこの日本発の国際規格というものも制定をしていきたいということで、これが重要な課題だと考えております。
 これに向けまして、今後、個別の案件ごとに、関係事業者団体、農林水産省の品目等担当部局、JAS担当部局から成る官民連携の体制で、具体的な案件を念頭に置いた国際規格化に向けた目標、ロードマップを作りながら、またアジア諸国などを始めとした海外諸国の支持層づくりといいますか、協力できる国づくりといったようなことを進めていきたいと考えておりますし、また、こうした個別の規格の国際規格化を成功に導くためには平素からの協力関係というものが重要でございますので、規格・認証に関する情報交換等の協力関係をアジアを始めとする海外諸国、国際機関と今後構築をいたしたいと思っておりますし、また国際的に活動できる人材を育成していくといったことも進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 今、できれば日本発のでいきたいという話もあったんですけど、そこのところが、現在、国際的な取引で認知されている農林水産物・食品分野の標準・認証制度、コーデックスもあるし、ISOもあるし、ベンチマークの規格などもあります。これらの国際的な認証制度を使えば現在も輸出できることになっていると思うんですけれども、それでは十分ではないから今このJAS法を改正するということなんでしょうけれども、だとすれば、何が十分じゃないのか、果たして本当に、輸出拡大に結び付けたいという話があるんだけれども、どれだけ拡大につながるのかということについての見通しというのはどのように考えているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 規格を作ることによって具体的に幾ら輸出額が増えるというのは、マーケットの状況であるとか為替とか価格とか、いろんな要因がありますので定量的にお示しすることは難しいわけでございますけれども、一兆円の輸出目標に向けた、重点品目を中心にその規格をある程度優先的に作っていく。その際に、委員御指摘のように、いきなり国際規格に提案していくというやり方も道としてはございますけれども、例えばISOであれば、三分の二の多数決が得られなければ国際規格にならないわけで、そのときに、JAS規格も何もなく、ただアジアの国を始めとする国とアライアンスを組んで三分の二を取るようなことができるかというと、根っこになるようなJAS規格というのをある程度認知度を高めながら国際規格を目指していく道というのも有効な道だろうというふうに考えておりまして、こういう取組を精力的にやっていきたいと考えております。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が来ておりますので。

○紙智子君 時間がなくなってしまいましたけれども、ちょっとやっぱり非常に不確かというか、果たしてこれで本当にできるのかということを思いますし、やっぱり新しい規格ができても、これでどれだけ輸出が伸びるのかということも不確かだし、明確なビジョンもあるわけじゃないと。
 ですから、やっぱりこれ、本来、もっと国内市場を中心にしっかりしなきゃいけないというふうに思うんですけれども、幻想的なことを、そのことにお金をたくさん使うというよりは、本当に確実なところをしっかりと支えるということをやるべきだということを申し上げておきたいと思います。終わります。