<第192回国会 2016年12月13日 農林水産委員会>


◇畜産物価格、再生産可能な所得を確保する仕組みを/指定生乳者団体制度の見直し中止を求める

○畜産物等の価格安定等に関する件等

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 昨日は、日本共産党の議員団として畜産・酪農問題の申入れを農水省に行いまして、礒崎副大臣に受けていただきました。ありがとうございました。昨日、加工原料乳指定生乳生産者団体の問題や、乳製品や豚肉などの競合する日EUのEPA交渉からの撤退など、十一項目について申入れをいたしました。
 今日は、畜産物の価格についてまずお聞きします。
 農林水産省の公表している資料によりますと、乳用牛は毎年年率で四%程度の減少傾向で推移をしている、飼養頭数も年率で一から四%減っているということです。酪農家の減少に歯止めが掛かっていない。
 JA北海道が、平成二十四年、二〇一二年から、生乳出荷停止理由の全戸調査を行っています。今年の調査では、出荷をやめた農家は百五十六戸ということです。その理由は、複数回答でありますけれども、後継者不足、そして高齢化とか過重労働による負担感とか、まあ幾つもあるんですけれども、一番多いのは将来不安、TPP等の不安ということです。調査を始めた当時は将来不安が五割程度だったわけですけれども、今年は七割にもなっていると。
 大臣、こうした現状についてどのように思われるのか、御認識を伺います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) おっしゃるとおり、酪農及び肉用牛の生産における飼養頭数が年々減少傾向でございます。これは、御指摘のように、酪農における後継牛の減少、肉用牛生産における繁殖雌牛の減少、そして生乳生産量の伸び悩み、子牛価格の高騰、こうしたことが背景にありますが、言わば畜産農家、酪農農家の不安というものが更にその背後にあるという御指摘、そのとおりだと思います。
 このため、雌の性判別精液あるいは受精卵を活用した乳用後継牛の確保、あるいは繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付、あるいは畜産クラスター事業の活用で子牛の育成部門を外部化して地域内一貫体制の構築、そうしたことによってこれを当面何とか飼養頭数を挽回していきたいと思っております。
ただ、繁殖雌牛頭数は平成二十八年に六年ぶりに増加に転じておりまして、対前年九千六百頭でございますが、生乳生産量は平成二十七年度に三年ぶりに増産に転ずるというような回復の、ややの回復でございますけれども、兆しもあります。そうした点も含め、今後、畜産、酪農の生産基盤強化、これに力を入れていきたいというように思っております。

○紙智子君 今、現状についての御認識を伺ったんですけど、後継牛が減っているとか、それは現象面ですよね。やっぱりその背景にあるものでいえば、あのアンケートの結果にあるように、将来不安、漠然とした、この先が見えないという声が出されていて、そこのところがやっぱり問題なんだというふうに思うんですよ。
 それで、酪農、畜産の生産基盤が弱体化していると、本当にこれ深刻な問題で、ここをどう変えるかというところが大事な課題になっていると思います。その一つとして、再生産を支えることが、必要があるというのは間違いないことなんですけれども、そこで、今回、加工原料乳生産者補給金の仕組みを見直す、変えるということを言われているわけです。生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金の対象にすると。補給金単価を一本化するということなんですけれども、生産費を保証する仕組みをつくることが重要だと思うんですが、一本化することで今まで以上にこの生産費が保証されるということなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 御指摘いただきましたとおり、今回、補給金制度につきまして、制度対象に生クリーム等の液状乳製品を追加して単価を一本化するということでございます。この際に、初年度の補給金単価については、補給金単価算定方式等検討委員会におきましても、生産コストから乳製品向け乳価を引くということを基本として設計するということで、再生産の確保という観点に立ってございます。液状乳製品を追加したといたしましても、追加した加工原料乳全体につきましてその生産コストと乳価の差を取るものでございますので、この単価の一本化が適切な単価設定の妨げになるということではございません。
 いずれにいたしましても、新たな算定方式やこれに基づきます補給金単価等につきましては、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら適切に決定してまいりたいと存じます。

○紙智子君 単価について、その集めて輸送する、集送乳というんですかね、その経費などを含む生産費と乳製品の取引価格の差を過去三年間の平均価格で算出することになっているということなんですけれども。
 そこで、生産費の算定に当たって、副産物、今高騰している子牛の価格をどうするかということも一つ課題になっています。子牛の相場は変動しやすいので、やはり三年平均ということではなくてもう少し長く取るなど、実情に合わせて柔軟に対応すべきではないかということなんですけれども、これについてはいかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
今御指摘いただきましたとおり、生産コストと乳製品向けの乳価の年度の取り方については三年平均を基本というふうにしてございます。これは、平成十三年度以降の毎年度の単価の設定、あと加工原料乳生産者経営安定対策事業、いわゆるナラシ等におきまして三年平均のデータを用いてきたことの整合性を確保すること等によるものでございます。また、副産物について農家の方々から今先生御指摘のような御意見が出ていることも承知をしてございます。
 いずれにいたしましても、副産物の取り方を含めまして、新たな算定方式やこれに基づく補給金単価等につきましては、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら適切に決定してまいりたいと存じます。

○紙智子君 生産者の皆さんからそういった意見を度々聞くわけです。それで、現在の算定ルールは三年間で平準化されてしまうために実情に合っていないという意見ですね。初年度の算定ルールということなので極めて重要なので、これしっかり対応していただきたいというふうに思います。
 その上で言いたいことなんですけれども、十年以上続いているのが現在の算定方式なわけですけれども、この見直しがやっぱり必要になっているんじゃないかというふうに思います。再生産可能な所得を確保する仕組みをつくると、ここのところが本当に大事だというふうに思いますし、あわせて、この輸入飼料に依存した大規模化の路線でいいのかという意見ももうこの間度々出されてきているんですね。本当にそれでいいのかということです。
 なぜならば、やっぱり大規模化を進めることで周りの小さな規模の農家がいなくなっていくと。そうすると地域のコミュニティーが崩壊していくという不安があるわけです。規模は拡大していくけれども、農家戸数が減っていくと。そうすると地域全体がだんだん少なくなっていくわけですね。今の大規模化路線を転換する必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、これいかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 多様な担い手の確保という観点からすると、大規模農家だけではこの多様化という担い手の確保はできません。家族経営だけでもできないわけでありまして、両者相まって相当なこの酪農の生産基盤に存在していただかなきゃならぬという認識でございます。
 こうした意味で、御指摘のように大規模化を一概に否定するわけではなくて、酪農の生産コストの約五割が飼料費であるということも踏まえますと、輸入飼料への過度の依存から脱却したいという日本の畜産業、酪農業の私は未来というものをこうした輸入飼料からの脱却で遂げるということも、先ほどの議論の中にもありましたけれども、必要じゃないかというように思います。自給飼料の生産基盤に立脚した強い経営を確立するということは目標として掲げさせていただいております。
 ただ、こうした観点だけでは成り立ちません。地域の多様な担い手、家族経営、先ほどおっしゃいましたコミュニティーの主体となるような方々、こうした方々の飼養頭数に見合った飼料基盤の確保も併せてやらなきゃいけません。
 そこで、コントラクターあるいはTMRというような活用による飼料生産の外部化、そして自給飼料生産を行うとともに、堆肥の還元や耕畜連携、環境負荷軽減に取り組む循環型酪農経営に対する助成、こういったことを行う必要があるという認識でございます。

○紙智子君 今大臣は多様な形が必要なんだという話をされて、それはそのとおりだと思うんですけど、しかし、現実はどうなっているかというと、やっぱり規模拡大することが諸制度の要件になっているわけですよね。だから、皆さんから出るのは、その規模拡大をしなきゃいけないという要件を外してくれと。維持するでもいいじゃないかということも度々出されてきたわけで、やっぱり日本の大地に本当に根差して、畜産政策そのものはですね、大規模化路線一辺倒ということではなくて、日本の大地に根差した循環型に切り替えて、その経営を支援することが必要ではないかというふうに思います。
 それから次に、政府の規制改革推進会議についてお聞きします。これ、十一月二十八日に農協改革に関する提言をまとめています。農協利用を誘導する法制度は、イコールフッティングを求める農協改革の趣旨にもとるものと、趣旨にもとるものというふうに断定して、生乳流通の在り方についても農協に改革を求めているわけです。
 農林水産省は、この指定団体制度の機能として四つ言っているんですよね。一つは輸送コストの削減ができる、それから二つ目に条件不利地域の集乳ができる、それから三つ目に乳価交渉力の確保ができる、そして四つ目に飲用向けと乳製品向けの調整という、この四つのことを役割として、機能として挙げているわけです。
そこで、農林水産大臣にお聞きしますけれども、この補給金制度が需給調整においてどのような役割を果たしているのかを御説明いただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) この補給金は、飲用向けに比べまして乳価の低い加工原料乳に限って交付対象としてまいりました。酪農家による生乳の再生産がこれで確保できるという目的でございます。こうして、飲用向けと乳製品向けへの仕分の調整の実効性を担保する機能がこの補給金にはあるというように考えるところでございます。

○紙智子君 今言われましたように、飲用向けと乳製品向けの仕分の調整の実効性を担保できるんだと、そういうふうに言われたわけですよね。
 それで、加工原料乳の生産者補給金の交付対象についてお聞きするんですけれども、規制改革推進会議の提言では、指定生乳生産者団体のみを受皿にする制度を変えるとして、指定生乳生産者団体に委託販売する生産者に限定しないとしています。これは北海道と都府県間の需給調整を理解しない議論だと思うんです。
北海道の酪農は、生産条件として、大消費地から遠いという立地条件を踏まえて、保存性が高い乳製品向けが中心になるわけですよね。地域には乳製品の工場が造られていて、地域経済や雇用もそれで支えていると。一方、都府県は、大消費地に近いという立地条件があって、飲用向けの生乳が主力になるわけです。そして、都府県で生乳が不足した場合には北海道から送ると。北海道の生乳は、都府県との需給調整の役割も果たしているわけです。なぜこれが可能なのかといえば、これ、生産者から販売委託を受けて一元的に集荷をし、それで複数の乳業メーカーに多元的に販売することができるからだと。何よりも、酪農家の相互扶助に基づく共販体制があるからだというふうに思うんです。
 規制改革会議は、こういう現状を知った上でこの規制緩和を要求しているんでしょうか、松本副大臣。

○副大臣(内閣府副大臣 松本洋平君) 今回、十一月二十八日の牛乳・乳製品の生産・流通等の改革に関する意見では、生産者が経営マインドを持って創意工夫をしつつ所得を増大させるため、出荷の形態によるハンディキャップをなくし、生乳の販売先や委託先を自由に選択できる制度への変革を目指して意見が取りまとめられたところであります。そのような出荷先を自由に選べる環境を整備するために、加工原料乳生産者補給金に当たりましては、指定生乳生産者団体に委託販売する生産者に限定せず、年間の販売計画や販売実績を国に報告するなど、一定の交付条件を満たした全ての生産者に交付する仕組みへと変えることが提言をされているところであります。

○紙智子君 背景知っているんですかというふうに聞いたんですけれども。
 それで、またちょっと農水大臣にお聞きするんですけれども、補給金は飲用向けと乳製品向けの調整の実効性を担保する機能を有しているというふうに先ほど説明いただきました。そこで、いわゆるアウトサイダーと言われる業者はどういう形でこの需給調整に参加するのか。提言では、補給金の交付条件として、販売計画並びに販売実績及び販売コストを報告してもらうとあるんですけれども、果たしてこの報告してもらうだけで地域の需給調整それから北海道と都府県の需給調整を可能にできるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 従来の一元集荷多元販売、これにおける背景には、計画が可能で、しかも調整の実効性が担保できたということにあります。その心を酌んで、この農業競争力強化プログラムにおきまして、補給金を受給しようとする生産者、また生産者が農協等に販売を委託する場合は農協、こうした方々から、先ほどの年間の販売計画と販売実績、これを報告、逆にしなければ補給金が得られないという制度にしております。
 この制度設計において、プログラムでは、年間のこの仕組みが、飲用向け、乳製品向けの調整の担保になるだろう、実効の担保になるだろうというように考えるところでございまして、こうしたスキームでこの調整の実現を図っていきたいというように思っております。

○紙智子君 政府は現在の規制改革推進会議を九月に設置して、九月十三日に農業ワーキング・グループの初会合を開きました。十一月十一日に牛乳・乳製品の生産・流通における意見を出しているわけです。加工原料乳が多い北海道にとっては指定団体の見直しというのは大きな関心事なんですね。酪農協会の方も、この制度は維持してほしいんだと、生産者、消費者にとっても需給調整してもらわないと安定できないんだという話をされていました。
 今回の意見の取りまとめに当たって、JA北海道中央会やホクレンなどからは話はお聞きになったんでしょうか、松本副大臣。

○副大臣(内閣府副大臣 松本洋平君) 規制改革推進会議は、本年六月の規制改革実施計画に基づきまして、本年秋までに、指定生乳生産団体制度の是非、現行の補給金の交付対象の在り方を含めました抜本的改革について検討し、結論を得るため、関係者からヒアリングを実施してきたところであります。規制改革推進会議の農業ワーキング・グループでは、関係者からの幅広い意見を聞くことを念頭に、所管省庁である農林水産省のほか、指定生乳生産者団体へ出荷をされている酪農家や自主流通業者へ出荷されている酪農家、本州の指定生乳生産者団体、自主流通業者及び大手乳業メーカーからのヒアリングを実施しているところであります。
 なお、指定生乳生産者団体制度につきましては、前身の規制改革会議から継続して検討をされてきております。本年三月には規制改革会議農業ワーキング・グループでホクレンから意見を聴取しており、現在の農業ワーキング・グループではその結果というものを引き継ぎ踏まえながら検討をさせていただいたものであります。

○紙智子君 JA北海道とか中央会とかホクレンはいつ話を聞いたんですか。いつ聞かれたんですか。

○副大臣(内閣府副大臣 松本洋平君) 済みません、通告いただいていないものですから、具体的な、どの団体がどの日にちにというのはちょっと手元に資料がないわけでありますけれども、三月にホクレンからは規制改革会議農業ワーキング・グループでヒアリングをさせていただいております。

○紙智子君 昨日ちょっとレクチャーのときに聞いたときには聞いていないというふうに言っていたんですよ。やっぱり、議論が進んできた段階でちゃんと聞き取るということもやっていないのかというふうに思ったわけですよ。
 それで、規制改革推進会議の提言では、関係者の意見を聞いていないのに早急にスキームを設定すると、スキームをつくってから関係者の意見を聞くという話になっているわけですね。農協法に続いて、勝手にスキームをつくって押し付けるんでしょうか。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が来ておりますので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 なぜ自主的な組織に部外者が介入するか、なぜ農林水産省は唯々諾々とそれに従うのか、農水省の役割の放棄としか言いようがありません。
生乳の需給調整や生産者価格の安定、新鮮な牛乳の安定供給に重要な役割を果たしている指定生乳生産者団体制度の見直しを中止するように求めて、質問を終わります。

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○委員長(渡辺猛之君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、自由民主党、民進党・新緑風会、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による畜産物価格等に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

畜産物価格等に関する決議(案)

 我が国畜産・酪農経営は、高齢化、後継者不足などにより、飼養戸数、飼養頭数とも減少傾向にあり、繁殖雌牛や乳用後継牛の増頭、生産コストの削減などによる生産基盤の強化を通じた経営の安定と競争力の強化、労働負担の軽減が喫緊の課題となっている。
 よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成二十九年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

一 我が国畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、地域農業・地域社会を支える多様な畜産・酪農について、畜産物の付加価値の向上や飼料等の生産費削減等の取組を通じて、将来に向けて魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。

二 加工原料乳生産者補給金の単価及び交付対象数量については、生クリーム等の液状乳製品の加工原料乳生産者補給金制度への追加と補給金単価の一本化を行い、酪農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

三 労働時間が長いといった酪農経営者の労働条件を大きく改善するため、酪農ヘルパーや公共牧場等を活用した育成の外部化を支援するとともに、搾乳ロボットやパーラーをはじめとする省力化機器や施設の整備に対して集中的に支援を行うこと。

四 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、畜産農家の経営安定に資するよう、需給動向、価格の推移、子牛価格の高騰等を十分勘案し、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

五 畜産・酪農の生産基盤の強化を図るため、関係事業者が連携・結集し、地域一体となって収益を向上させる地域ぐるみの畜産クラスター事業を強力に推進すること。また、繁殖雌牛の増頭や新規参入に対する支援及び和牛受精卵移植を活用した和子牛生産、性判別技術と受精卵移植技術の活用による計画的な乳用後継牛の確保、優良な純粋種豚の導入等への支援を一層強化すること。

六 配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、必要な財源を確保し、引き続き制度の安定的な運営を図ること。

七 輸入飼料に過度に依存せず、国産飼料生産基盤に立脚した畜産・酪農経営の確立を図るため、飼料用米・稲発酵粗飼料等を活用した耕畜連携、コントラクター・TMRセンターの育成、高栄養粗飼料の増産、草地改良の実施、放牧の推進、エコフィードの生産・利用等への支援を一層強化すること。

八 国産畜産物の輸出拡大のため、HACCPなど輸出先国の衛生条件を満たす食肉処理施設の整備の促進、日本ブランドを前面に立てた市場開拓の取組への支援、戦略的な動物検疫協議の実施など、輸出促進対策を一層強力に進めること。また、原発事故等を要因とする各国の輸入規制の撤廃・緩和を強力に申し入れること。

九 原発事故に伴う放射性物質により汚染された牧草地の除染対策と汚染された稲わら、牧草及び堆肥等の農業系汚染廃棄物の処理を強力に推進するとともに、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

十 畜産経営に大きな被害を及ぼす高病原性鳥インフルエンザをはじめとする家畜の伝染性疾病等については、適切な飼養管理の徹底や予防対策などが重要であり、畜産農家における飼養衛生管理基準の遵守に向けた指導や空港等における入国者に対する水際対策を徹底すること。また、産業動物獣医師の育成・確保に取り組むとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。

十一 加工原料乳生産者補給金制度の在り方の見直しは、指定生乳生産者団体の機能が今後も適正に発揮されることが極めて重要であることを念頭に置き、関係者の意見を聴き、十分な調整を経て行うこと。

十二 肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)・養豚経営安定対策事業(豚マルキン)の補填率の引上げ、豚マルキンの肉用牛並みの国庫負担水準引上げ及び肉用子牛の保証基準価格の算定方式の見直しについては、畜産農家の経営状況等を踏まえ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づき所要の措置を講ずること。

十三 日EU経済連携協定交渉については、年内の大枠合意を目指して交渉が行われているが、内容よりも期限を重視するあまり国益が損なわれることのないよう、特に、豚肉、乳製品等をはじめとする農林水産物の重要品目の再生産が引き続き可能となるよう、必要な国境措置をしっかり確保すること。

右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(渡辺猛之君) ただいまの徳永君提出の決議案の採決を行います。
  本決議案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕

○委員長(渡辺猛之君) 多数と認めます。よって、本決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。