<第192回国会 2016年12月12日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


◇戦後処理の不公正にメスを/日ロ領土交渉で紙氏、解決の道示す/国の責任で、サケ・マス漁等の支援を

○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 会期延長になってようやっと一回目のこの会議が開けるようになったということであります。ですから、課題はいっぱい、議論しなきゃいけない課題は山積しているという中で、本当は、先ほど民進党の石橋さんが取り上げられたように、機動隊の土人、シナ人という差別発言をめぐっての大臣の認識なども本当は問いたいところだったんですけれども、今日十五分という中なので、それはまた次回ということにさせていただいて、今日は二つの問題を質問させていただきたいと思います。
 一つは、十二月十五日がいよいよロシア・プーチン大統領が来日をされると。日ロ首脳会談が予定されています。
 我が党は、十月の十八日に、日ソ共同宣言から六十周年ということで、日ロ領土交渉の行き詰まりをどう打開するかということで提言を発表して、志位委員長らが菅官房長官に申入れをしました。その内容は、六十年の日ロ領土交渉から教訓を引き出して今後に生かす必要があるということで、三点、基本点を提起しています。
 それを今日やると全然時間がないので今日はその全てについてはできませんけれども、その中の一つなんですけれども、いろいろ議論がされていて、歯舞、色丹の二島先行返還、これについては我が党もあり得ることというふうにしているわけです。その場合は、ただし、中間的な条約などと結び付けて処理することだと、平和条約というのは領土問題が最終的な解決に至った段階で締結すべきということにしているわけですけれども、やっぱり二島返還の段階で平和条約を結べば、それ以上の返還の道が事実上閉ざされる危険性があるというふうに考えているからです。
 そこに行き着くまでの、いろいろあるわけですけれども、ちょっとこのことについての岸田外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 我が国の基本方針ですが、これは、政治、経済、文化を始め幅広い分野にわたって日ロ関係全体を国益に資する形で進める中にあって、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これが基本方針であります。
 その中で、今御質問は、二島先行さらには中間条約についてお話がありました。この点については、日ソ共同宣言、これ第九条ですが、これは歯舞諸島そして色丹島ですが、日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡される旨これは明記されているところであります。こうした日ソ共同宣言第九条を含めて、我が国としましては、日ソ及び日ロ間の全ての諸文書、諸合意に基づいて、先ほど申し上げました基本方針の下、しっかりとこの交渉を進めていきたいと考えております。
 中間条約について触れられましたが、その点につきましては、今申し上げたとおり、日ソ共同宣言に明記をされていると認識をしておるところでございます。

○紙智子君 日ロのこの領土問題の根本は、やはり領土不拡大という第二次世界大戦の戦後処理の大原則を決めているカイロ宣言ですね、これを踏みにじってヤルタで協定、秘密協定が結ばれたと、そこで千島列島の引渡しを決めて、それに束縛される形でサンフランシスコ平和条約で千島列島の放棄を宣言したというところにあると思います。この戦後処理の不公正にやっぱり正面からメスを入れるということなしには解決することできないんじゃないかというふうに思います。
 我が党は、かねてから全千島が本来は日本に返還されるべき領土だという立場なんですけれども、やっぱり原則に立ち返って交渉してこそ国後、択捉も取り戻す道も見えてくるというふうに考えます。
 ちょっと次のこともあるので、またこの後の議論はこの次ということで。
 次に質問したいのは、サケ・マス流し網漁業についてお聞きします。
 ロシアの二百海里内のサケ・マス流し網漁が今年から禁止をされたということで、サケ・マス流し網漁業の代替漁業や漁法の変更が始まっています。北海道の北方領土隣接地域は、領土返還運動の拠点として重要な役割を果たしてきました。北洋サケ・マス漁は根室市の基幹産業だったわけですから、代替漁業の成否というのは地域経済にとっては重要な意味を持つわけです。
 そこで、代替漁業の現状をお聞きします。
 ロシア二百海里内の水揚げ量と水揚げ金額と、公海サンマ、サバ、イワシ、ホタテ、ベニザケの水揚げ量と水揚げ金額について、ちょっと簡潔にお述べいただきたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) お答えいたします。
 今先生の方からお話ございました、ロシア二百海里水域におけますサケ・マスを対象としたいわゆる代替漁法でございますが、これについては本年七月に曳き網による試験操業を実施しまして、漁獲量が四トンということで、実働日数九日間でございましたので一日当たり四百九十一キログラム、水揚げ金額につきましては約百七十万円となったところでございます。これについては、従来の流し網による操業一日当たりの漁獲量につきましては、二〇一四年で三千九十キログラムに比べますと約一五%、一日当たり四百九十一ということで約一五%と漁獲効率が落ちる結果となったところでございます。
 現在、試験操業を実施した時期の影響も含めまして、曳き網漁法の経済性等を評価しているところでございまして、その結果を漁業者に提供しつつ、今後の対応について漁業者とよく相談していきたいと、このように考えているところでございます。
 また、もう一つの代替漁業でございますが、例年五月から七月までサケ・マス流し網漁業を行っていた漁業者の代替漁業を、いわゆるもうかる漁業創設支援事業というものを活用しまして実施したところでございます。
 まず、サンマ棒受け網漁業でございますが、漁獲量が約五千トンで計画に対して約四割、水揚げ金額が約二億七千万円で計画に対しまして約三割、サバ、イワシの棒受け網漁業につきましては、漁獲量が約七千トンで計画に対して約三割、水揚げ金額が約三億六千万で計画に対して約三割となっているところでございます。

○紙智子君 今数字を紹介していただきましたけれども、サケ・マス漁が禁止される前、水揚げ量でいうと、二〇一〇年から二〇一四年まで五年間の平均しますと、これ六千六百トンなんですよね。水揚げ金額も平均すると約三十億円ということだったわけです。特に水揚げ金額については、これ三十億円だったのが、今回七億ですよね、そこまで減っていると。地域経済に与えている影響というのは非常に大きいと思うんですけれども、この影響について鶴保大臣に御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 鶴保庸介君) 委員御指摘のとおり、地域の漁業という問題は大きな産業の一つの柱の一つであると考えております。
 繰り返しになりますけれども、その地域振興のために検討会議を立ち上げ、これらについても虚心坦懐に今議論をさせていただいておるところであります。島民の皆さんのみならず、漁業関係者の方々もこの間も大臣室にお越しをいただいて、様々な状況をつぶさにお聞きしたところでありますから、しっかり対応してまいりたいというふうに考えています。

○紙智子君 年間通して三十億入っていたやつが七億まで減っているというのは、時期が限られているとはいっても非常にやっぱり大きな減り方なわけですよね。
 これがやっぱりどういうふうに影響を与えるのかということでいえば、水産加工業についてもお聞きしたいんですけれども、管内の信用金庫が発行しているビジネスレポートというのがありますけれども、これによりますと、収益DIと言っていますけれども、前年の同期から見た収益の傾向、これが四―六月期でいうとマイナス一二・五というふうになっているわけです。減少しているんですけれども、これについて水産庁はどのように分析をされているでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) まず、先ほど私申し上げましたサバ・イワシ棒受け網漁業の漁獲量につきまして、七千トンというような発言いたしましたが、四千トンの間違いでございますので訂正させていただきたいと思っております。
 それと、次に、加工業の御質問でございますが、今先生からお話ございましたこのレポートによれば、四月から六月期の水産加工業の収益DI、前年同期から見た収益の向きでございますが、これがマイナス一二・五と後退した数字になっていることは承知しておるところでございます。
 いずれにしても、このレポート自体につきましては信用金庫が発表したものでございますので、収益DIの後退がどのような原因によるものかについてはコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
 いずれにいたしましても、サケ・マス流し網漁の禁止によります水産加工業者への影響を緩和するための緊急的な対策ということで、平成二十七年度の補正予算におきまして対策を打ちまして、サケ、マスからの原料転換等を図るために加工機器の整備等を支援したところでございまして、北海道庁が公募を実施した結果、三十二件が採択されているところでございます。
 いずれにいたしましても、先生御指摘のように、この北海道の水産加工業というのは地域経済の中核を担う重要な産業でございますので、今後とも現場の状況を丁寧に把握しつつ、関係府省や北海道庁ともよく連携しながら適切に対応していきたいと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 代替漁業における影響で、加工水産業という問題もあるんですけれども、根室市が関連産業から聞き取り調査をやっているんですね。
 平成二十六年、二〇一四年のサケ・マス漁とそれから今年の代替漁業の売上高を比較すると、水産加工業でいうとマイナス八八・八%、それから運輸業はマイナス八一・八%、それから製缶業、缶詰ですけれども、これはマイナス六七・六%と。全体で売上高の減少率マイナス七八・九%というふうになっていて、これ、漁ができなくなったら船を減らすことにせざるを得なくなるのかと。漁師や乗組員は地域を離れて仕事を探さなきゃいけないという事態にもなりかねない。そうすると、関連産業が維持できなくなると人口が減少するということになっていくわけですね。
 現地から聞いた話では、サンマやサバなどの試験操業の収支というのは赤字だと。用船料の手当てというのは相当額というのがあるんだけれども、この補助金を追加しても赤字は解消されない結果となったということで、翌年以降の事業継続に当たっては事業の見直しが必要だという声が出されているんですね。それから、ホタテの漁場の造成という問題も、種苗放流のホタテの稚貝購入代、これがかなり掛かるんですけれども、支援なんか必要だということが漁協などからも出されているわけです。
 このほかにもいろいろと要望というか、あるんですけれども、やっぱり根室とこの隣接地域というのは北方領土返還の拠点の地なんですよね。いろいろ言っても、やっぱり拠点として重要な役割を果たしてきたと思うんですよ。そして、長い歴史の中でサケ・マス漁というのは言わば根室の地域経済を支えてきたと。もちろん観光も大事ですよ。だけど、こういうやっぱり主産業となるところが本当に大変だという状況の中で、そこを支える国の支援というのがやっぱり必要じゃないかというふうに思うわけです。
 北方隣接地域の役割を考えるんであれば、私は、地元北海道ということもあるけれども、それ以上に国自身がもっと責任を持って支援策を強化すべきだと思うんですけれども、鶴保大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 鶴保庸介君) もちろん異は全くございません。今のお話で、私の方からもしっかり水産庁に頑張っていただくように要望をしていきたいというふうに思います。
 ただ、様々な議論の中に、やはり国民的な理解というものも必要だと。根室地域で水産業がどんな状況になっているか、今委員が御指摘をなさったような状況等々についての情報発信も私たち気を留めてやっていかなきゃいかぬなと改めて認識をしたところであります。

○紙智子君 改めて大事だということを認識していただいたということであるというふうに受け止めます。
 やっぱり領土問題という国の主権に関わる問題、日本国民全体の問題を抱えて懸命に頑張って支えてきたわけですよ。そういうことでいえば、一自治体だけでは対応できない問題というのが多々ある中で、やっぱりこのままではもう地域疲弊して崩壊してしまうという悲鳴が上がっているわけで、やっぱり国の手厚い支援を、今までの枠にとらわれない支援をしっかりと考えていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。