<第192回国会 2016年10月27日 農林水産委員会>


◇TPP協定案・農水相の「強行採決」発言を批判/SBS米不正取引の究明を/台風被害の支援を(コーン、農地復旧など)

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私は、まず最初に、山本農水大臣のこの強行採決をめぐる発言についてお聞きをいたします。
 大臣は、十八日の夜の自民党の佐藤勉衆議院議員、議運委員長の政治資金パーティーに参加をされて、TPP協定の承認案、関連法案について、強行採決するかどうかは佐藤さんが決めると、だから私ははせ参じたわけだと発言をされたようです。批判を受けて、二十一日の記者会見では、あくまでも国会の下で、国会が採決をお決めになるという趣旨で申し上げました、誤解を生じて皆様に御迷惑をお掛けしましたので、十九日、特別委員会で発言を撤回し、おわびを申し上げたというふうに言われました。
 誤解を生じたと言われたんですけれども、何がどう誤解されたとお考えでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 答弁の前にお許しをいただきまして、この度の三笠宮様の御逝去に際し、国民の一人といたしまして心から哀悼の意を表させていただきます。
 また、紙委員の御指摘でございます。私ども、TPPの審議に当たって、丁寧に質問をしていかなければならない職責でございます。にもかかわりませず、誤解を与えたと。この誤解の内容につきましては、そういう立場であるにもかかわらず強行採決に言及した、このことにおける軽率さ、こういったものが私にとりまして大変不手際極まりないところでございます。それについて撤回をし、陳謝したところでございます。

○紙智子君 今聞いたことに対しての答えというのはよく分からないわけですね。
 大臣の発言は、強行採決をするかどうかを決めるのは佐藤さんだと、だからはせ参じたと言われたわけで、これ強行採決する権限を持っているのは佐藤さんなんだと、したがって強行採決も言わばできるということであって、これ、誤解されたと言うんですけれども、誤解の余地がないんじゃないんでしょうか。
 安倍総理も、我が党は結党以来強行採決しようと考えたことはないということを言われているんですけれども、これ、強行採決という言葉がこの間自民党の皆さんの中では頻繁に出てきていて、これ強行採決ということはどういう状態を言うのか、その状態について説明していただけますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) あくまで、誤解、不快を醸成したことに対して私ども大変軽率であったというように反省をしております。したがいまして、発言を撤回し、またおわびを申し上げるところでございます。

○紙智子君 謝罪していることの中身が分からないんですよね。
 何が誤解されてどこが悪かったからというふうに思われたのかというのが分からないんですけど、もう一度ちょっとおっしゃってください。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) TPPの審議に当たって、丁寧に、そしてできる限り努力をしながら、この政府における立場を御理解いただくということが行政府の任務だというように思っております。その配慮に欠けたところが私ども大変残念なところでございまして、私自身が反省するところでございます。

○紙智子君 強行って一体どういうことなんだというふうに改めて見てみると、権力や威力で無理に抑え付けると。強行採決というのは、権力、威力で無理に採決することだと。
 行政側の大臣がですね、大臣は行政側の大臣なわけですけれども、立法府に介入して、この強行採決をけしかけたことになるんじゃありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) あくまで、そのことのないように注意をさせていただきながら努力をいたします。よろしくお願いいたします。

○紙智子君 私は、農林水産大臣が、所管する法律案が議論されているときにこの強行採決を促すというのは大問題だと思うんですよ。農林水産大臣としてあってはならない発言だというふうに思うんですね。
 以前の政権の閣僚であれば、その大臣の発言の重みを真摯に受け止めて、やっぱり辞任していたと思いますよ。今の大臣はお辞めになっていないですけれども、その政治感覚もいよいよなくなってきているのかなというふうに危惧するわけです。本当に驚きだというふうに申し上げておきたい。
 ちょっとこの問題ばかりやるわけにもいきませんので、次に行きたいと思います。
 台風災害についてなんですけれども、今年の夏に四つの台風が襲来した北海道の台風被害についてです。
 私、十一日の予算委員会でも質問をしまして、安倍総理は、できることは全てやる、状況や事情に応じて柔軟に対応するというふうに言われました。この言葉の重みを受け止めた対策がされていると思いますので、幾つかお聞きします。
 加工用のスイートコーンについてお聞きします。
 加工用のスイートコーンで、長雨と台風という自然災害が重なって減収になったものは共済制度の対象になるんだと。その一方で、スイートコーンの加工場の機械設備が浸水したと、操業できないということになって、農家は出荷できない状況になっているわけです。この場合、被災したのは工場ですから共済の対象にならないと。それで、農家はこの会社と契約栽培しているので、どういう形で補償するかというのは、これ加工工場と生産者の関係になるということなんですが、農水省としてどのような対応をされているのかということをお聞きしたいと思います。

○政府参考人(食料産業局長 井上宏司君) 御指摘のございました北海道十勝地域のスイートコーンの被害でございますけれども、一つは、スイートコーンが倒れたあるいは浸水したことによって加工工場に納入するだけの品位、品質を保てないことで納入できなかったということと、もう一つは、品位、品質は保てたんですけれども、加工工場の方が稼働を停止せざるを得ない状況になったために納入ができなかったと、この両方がございます。
 これにつきまして、まず工場に出荷できるような品位を満たさなかったものにつきましては、これが納入できませんでしたので、生産農家にとっての減収ということで、共済金が支払われる対象ということになります。
 また、工場に出荷できる品位は確保されていたものの工場の側が受け入れられなかったものにつきましては、これは、不可抗力によって契約が履行できないような場合には当事者間で協議をするということが生産農家と加工工場との間の契約で定められてございまして、現在協議が行われているところでございますけれども、この協議の状況につきましては農林水産省といたしましてもしっかりとフォローをし、納得がいくような解決が得られるように注視してまいりたいというふうに考えてございます。
 なお、加工工場についての支援策はあるのかという点も御質問あったかと思いますので申し上げさせていただきますと、現在、食品工場の方では、どれだけの被害、あるいはそれを復旧するのにどれくらいの期間、コスト等が掛かるのかというのを算定をしている状況でございますけれども、農林水産省の側からは、この被災した食品工場に対しましても、例えば災害復旧貸付けでありますとか、また、休業している間の従業員の方の休業補償を要する場合には雇用調整助成金といったような、御活用いただけるようなメニューの御紹介をさせていただきながら状況を確認をしているという状況でございます。

○紙智子君 工場が被災に遭ったために入れたいんだけれども入れられなかったものについては、今協議中という話がありました。
 それで、工場との契約がもし不履行になったりすると、これ生産者に損失が発生するわけですよね。既に先行投資でやってきたわけで、支払ができないことになったり、あるいは生活が支障を来すということになりかねないということなので、農水省として、やっぱり安心して年を越せるような対策というのが、ただ見ているというだけじゃなくて、そういう対策が、対応すべきじゃないかと思いますけれども、短くお願いします。

○政府参考人(食料産業局長 井上宏司君) 加工工場の側も真摯に協議に応じているというふうに承知してございますけれども、必要がある場合には私どもとしても必要な助言等を差し上げたいと思います。

○紙智子君 営農が継続できるように、是非検討していただきたいと思います。
 それで、次に、農地の復旧についてお聞きします。
 十月二十四日に災害特別委員会の委員派遣に私も参加をいたしました。その際、十勝地区の農協組合長会から、農地については行政が主体となって作物を作付けできる状態に原状復帰したいというふうに要望を受けました。
 今回、激甚法による補助率が農地は約九五%かさ上げされているんですけれども、残りの五%で農家の負担、まあ五%ということで少なく見えるけど、それでも農家の負担大変と。しかも、農地を復旧する限度額というのが、北海道の場合六万七千円というふうに聞いています。復旧費が六万七千円を超えたものというのはこれ農家が負担することになるんじゃないかと。農家負担を軽減するための支援が必要なんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農村振興局長 佐藤速水君) 農地の復旧限度額についてでございますが、先生御指摘のとおり、北海道では一アール六万七千円、都府県では一アール三十万七千円でございます。この復旧限度額を超えた部分につきましては国庫補助の対象にならないために、地元自治体ですとか農家の負担というふうになります。したがいまして、できる限り復旧限度額を超えないような工法などを採用する必要があると考えてございます。
 例えばでございますが、土が流出した農地を復旧する際に、その近くにあります河川に堆積している土砂を農地の底の部分、基盤の部分に盛ることによりまして、土の購入費ですとか運搬費を軽減するなどの工夫を行っております。また、農地の復旧工事を排水路等の農業用施設の復旧工事と組み合わせまして効率的に復旧を行って、工事費の軽減に資するような、そういう工法を採用するといったようなことに取り組んでいるところでございます。
 いずれにいたしましても、現在、災害査定官を含む国の農業土木技術者を現地に派遣して、各被災箇所の状況に応じた技術的な支援を行っているところでございます。

○紙智子君 限度額超えないようにコストが安くなるような努力をという話がありました。北海道は大規模な農家が多いので、農家の負担額というのは非常に膨らんでいくという可能性がありますので、是非この負担を軽減する努力をお願いしたいと思います。
 それと、農地の復旧費についてなんですけれども、北海道の事業単価は今お示しになったように六万七千円なわけですけれども、都府県が約三十万円ということで相当開きがあると。組合長会は、費用については現在府県との格差が四倍以上になっていると、農地の復旧事業に関わる上限単価を引き上げて不公平感を是正していただきたいという要望をされているわけです。
 そこで、なぜ四倍以上に差があるのかということ、それから、三十年前に設定した単価基準ですから、この要望に対してはどう対応するのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(農村振興局長 佐藤速水君) 北海道と都府県の復旧限度額の差でございますが、復旧限度額につきましては、被災した農地に代わる農地を新たに造成するために必要な標準的な費用ということで定められているところでございます。委員御指摘のとおり、この農地の復旧限度額の算定方法につきましては、昭和六十年に設定されたものでございます。
 この復旧限度額の見直しでございますが、根拠となるデータの収集、整理に時間を要します。また、査定が始まっている中での限度額の変更といったことにつきましては、現場に混乱をもたらすおそれがあることを考慮いたしますと、直ちに対応することはなかなか難しいのではないかと思っておりますけれども、農林水産省といたしまして、復旧限度額の見直しについて判断するために、近年の農地の災害復旧事業ですとか整備事業の実態、今回の台風災害の被害状況等につきまして引き続き精力的にデータ収集等の調査を進めまして、しっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 今鋭意検討中ということでありますので、是非それを進めていただきたいというように思います。
 既に北海道はもう初雪というか雪も降ってきていて、これから本格的な冬を迎えることになります。農家の方は、冬が来ても次は春が来ると、春が来ればまた頑張れるというふうに言ってきたわけですけれども、その思いがくじけないように、離農者を生まないように、現場に寄り添った支援をお願いしておきたいと思います。
 次に、SBS米についてお聞きします。
 農水省が公表した十月七日の調査報告書なんですけれども、SBS契約は輸入業者及び買受け業者と政府の三者契約であると、今般報道されたSBS米に関する買受け業者と輸入業者との間での金銭のやり取りは三者契約の外で行われた金銭のやり取りというふうにしています。そして、調査は、SBS米落札業者などを対象としたヒアリング、電話、面談をしたというふうに言われています。
 調査するには、やっぱり聞き取る項目を決めていろいろやるんだと思うんですけれども、調査項目などマニュアルを作って調査をしたんだろうと思うんですけれども、どういう項目で調査をしたのか、お聞きいたします。大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 御指摘のとおり、今回の調査におきましては、過去五年間についてSBS米を落札し、廃業者や連絡が付かない業者を除く全業者を対象にしましてヒアリングを行い、過去のSBS米の取引実績といった客観的なデータを基に分析を行いました。民間の取引実態の詳細が分からない中でヒアリングを行い、金銭のやり取りの有無、金銭の活用方法、金銭のやり取りが生じた背景や目的等につきましてヒアリングをしながら、その回答を踏まえて質問の仕方を工夫しつつ進めさせていただきました。
 このヒアリング調査におきましては、業者間の金銭のやり取りは食糧法上違法ではなく、税法上も適切に処理されておりました。販売価格の決定方法など民間ビジネスの機微に触れる内容を調査対象としていたことなどから任意で行わさせていただいたわけでございますが、できる限りの聞き取り調査を行いました。いうように、御指摘のとおり、金銭のやり取りの有無、金銭の活用方法、金銭のやり取りが生じた背景や目的、これを、強制力を使わないやり方ですので、一回聞き、また補充し、また更に補充しながら相手との関係の中で調査が完了したと、こういうことでございます。

○紙智子君 その聞き取りの仕方もよく分からないなと思うんですけれども、ヒアリングをしながら、特に定めていなかったけれどもいろいろ聞き取ったと。普通、私たちいろいろ聞き取りするときに、必ず何をはっきりさせるかということで項目を決めて聞くんですけど、当然そういうやり方しているんだろうなと思っていたら、そうじゃないというふうにおっしゃるわけですよね。そういうことで本当に信頼できる調査というふうに言えるんだろうかと。幾らでもこれ都合よくまとめることができるんじゃないんでしょうか。私は、本当にちょっとこの辺が不思議で、幾ら聞いても、いや、特に決めていないと言うものですから、ちょっとこれはおかしいなというふうに思いながら聞いていたわけです。
 そして、今おっしゃったように、十一日の予算委員会で私、総理に、東京地裁が認定した調整金の総額は、たった二社の数回のやり取りでも、たった数回のこの取引だけでも五千万円になると、調整金の総額が。もっとだからマークアップ、差益を農水省は徴収できたはずなんじゃないかと。国の予算に関わる重大な問題だという認識はあるんでしょうかというふうにお聞きをしたときに、総理は立ってこないで山本大臣がお立ちになって、それで今と同じように、税務上も適切に処理されておるところでございますというふうにお答えになったわけですね。
 それで、大臣にお聞きするんですけれども、税務上適切に処理されているということを何で確認をされたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 委員長の御指名ですので、お答えいたします。
 今御指摘ございましたように、今回の調査結果の中で税務上どうなのかということにつきましては、金銭のやり取りが過去ないし現在あると回答されました買受け業者及び輸入業者に対しまして、やり取りした金銭の会計上の扱いについて御質問したわけでございます。その結果、顧問弁護士に税法上問題ないことを確認している、あるいは会計士に相談をして販売促進費等として処理しているというような回答が得られた一方で、会計上問題があるというような回答は確認されなかったというところでございます。

○紙智子君 大臣に聞いているので、今事務方が答えられたんですけどね。
 何を見て、書類とか御覧になったんですか。何で確認をされてあのような答えになったんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 相手との面談形式あるいは電話での応対、しかもこのケースにおきましては三者契約の中で契約が完了した相手当事者でございます。過去においてではございますが、この三者契約の中の取引先という考え方の中で、国として丁寧に応対をさせていただく基本の中で、そのやり取りが顧問弁護士に税法上問題がないことを確認したとの回答を得ているところ、あるいは会計士に相談し販売促進費等として処理し会計上問題はないと、こう回答していただいたところ、こうした点について回答に合理性があるというように判断し、そこで、税法上もこれ、処理は適切であるというように調査結果、判断したところでございます。

○紙智子君 だから、何か調査書を見たわけでなくて、相手の言われたことをそのまま聞いてうのみにしているということになるんじゃないかと。
 マークアップ契約のとおりに徴収していなかったらこれ大問題で、マークアップがもっと取れたんじゃないかと、調整金を少なく見せかけたんじゃないかというふうに、そういうことで聞いたわけですよ。税務上適切に処理されているでは分からないわけで、しかもその報告書にも特に確認したわけじゃないということなわけで、今回の調査というのは、結局のところ聞き取りが中心なわけですよね。聞き取りだから税法上の書類見ていないということになるわけで、それなのにどうして適正に処理されているというふうに、答えになるのかと。これ、証拠もなく答弁しているということになりませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 先ほども申し上げましたとおり、あくまで取引相手方でございます。その意味において契約当事者としての信義誠実の対象となるわけでございまして、その相手方の回答に合理性があり、しかも詳細にわたって開示をいただいたところでございますので、ここに信憑性があるというように判断したところでございます。

○紙智子君 開示と言うんですけど、御覧になっていないでしょう、聞いただけですよね。それ、開示というように言わないと思うんですよ。
 書類を確認したという事実があるんだったら、それは納得というか分かるわけですけれども、それもやらずに、適正に処理されているというふうな言い方で問題を小さく見せようという意図があるんじゃないかと言わざるを得ないですね。
 それから、裁判記録を読んでいきますと、原告A社は被告の総合商社とSBS輸入米の見積り合わせに共同して参加をし、B社に名義卸として輸入米を落札とあります。この形式はC社、D社とも行われて、三社も名前が出てくるわけですね。
 この名義卸というのはどういう制度なんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 民事訴訟の中の判決文で名義卸という用語が使用されております。しかしながら、食糧法あるいはSBS契約上の用語ではありません。したがいまして、この名義卸を農林省としてこれを定義するという立場にはありません。
 しかしながら、国がSBS契約を締結している業者は、食用米の場合、いずれも、一定の自己資本、一定の国内産米穀の取扱数量、米穀の流通に関する法令への違反がないこと等、SBS契約を確実に履行するための資格要件が満たしている者に限ってここは契約当事者になるわけでございます。その意味において、もし考えられるならば、この資格要件との関係で名義卸というような概念が生じたのかもしれません。
 しかしながら、このSBS契約というのは、輸入業者、国、買受け業者の三者で締結されておりまして、同契約が履行された後、買受け業者がSBS米を誰に販売するかは契約外のことであります。SBS契約により国から米を買い取った買受け業者が他の卸売業者へ転売することもあり得るのであり、これは食糧法令上、何ら問題のある行為ではございません。
 その意味で、この概念についてのお尋ねでございますが、我々としましては、SBS契約、三者契約がなお円滑に進めるように改善をしてまいりたいというように考えるところでございます。

○紙智子君 ちょっと今の説明聞いているだけでは全然分からないんですよね。
 要するに、三者でもって契約をして進めてくるという中で名義卸ということがあるとすると、これ、SBS契約の三者契約に反することにならないのかなというふうに思いますし、食糧法に違反することにならないのかなというふうに思うんですけれども、今のちょっと説明だけだったらなかなか納得できないんですけれども。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) これは民事訴訟法の判決にある概念、用語でございます。先ほど申し上げましたように、食糧法並びにSBS契約上の用語ではありません。また、この概念を使われている判決は現在も係争中でございます。その意味において、コメントについては抑制的にさせていただきたいというように思っております。

○紙智子君 関係者から話を聞いているんですけれども、卸業者と総合商社がタッグを組んで入札に参加すると。この二者だけで何枚もの札を入れることができないので、落札を確実にするために二社、三社の名義を借りて入札に参加するというふうに言っているわけです。この名義卸というのは名義貸しの可能性もあるんじゃないのかなというふうにも思うわけですよね。
 それで、毎日新聞が「コメ入札 名義貸し横行」という見出しで、輸入米を転売してもらう名義貸しが頻繁に行われていると。一部で入札に参加した卸業者が落札した輸入米を一キロ当たり一円の名義料を上乗せして転売する名義貸しが行われていると、商社は国の契約相手とはならない転売先の業者に調整金を払っているというふうに書きました。
 こういう名義貸しという事実、これはあるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 先ほど大臣から答弁申し上げましたように、あくまで、私どもが入っておりますSBS契約の当事者になります買受け業者につきましては一定の資格要件を設けておりまして、この資格要件をクリアした方だけ買受け業者になっているわけでございます。
 具体的には、主食用の場合で申し上げますと、食糧法に規定している販売事業者等であること、あるいは国内産米穀の取扱数量が年間二十精米トン以上であること、自己資本が三百万円以上であること、米穀の流通に関する法令の規定等に違反していないこと、こういった資格をしっかりクリアした方がSBSの契約の当事者になっているということでございます。

○紙智子君 これ、やっぱりきちっと調査する必要があるんじゃないですか。調査すべきだと思うんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 今回の調査結果におきましても、このSBS契約自体の締結、履行状況をまずしっかり確認したところ、全ての契約につきまして契約どおりに履行されているという点につきましては、今の資格要件も含まれる話でございます。

○紙智子君 ちょっとよく分からないです。これ、引き続き追及していきたいと思うんですけれども。
 調整金とか名義貸しとか、SBSのこの取引というのは不明朗な点が多過ぎると。ブラックボックスだというふうに思うんですね。
 それで、今後の方向について農水省として出したわけですけれども、調査報告書は、問題になった調整金の存在を認めた上で、SBS契約書の契約項目として金銭のやり取りを行ってはならないことを明記するとあるんですけれども、しかし、問題になったのは、この三者契約の外の不正取引、裏取引だと。明記したから守られるという保証はないんじゃないかと。
 そこで、マークアップについて聞くんですけれども、先ほども言いましたけれども、調整金があったということは、マークアップを取り損なったということになるんじゃないか。金銭のやり取りを行ってはならないことを明記したからといって、これマークアップがしっかり徴収できるという効果というのはあるんでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 御指摘のように、SBS方式は、マークアップ、輸入差益でございますが、これが大きいものから落札される方式でございます。このため、輸入業者と買受け業者との間で金銭のやり取りが行われましたとしましても、所与のマークアップは取れているというように考えているところでございます。

○紙智子君 その認識というのは全く私、共有できませんね。本当によく分からないというふうに思いますし、これ予算の関わる問題という認識がそもそも全くないなというふうに思います。
 農業新聞が聞き取り調査をしているわけですけれども、調整金でかさ上げされた分、マークアップが拡大するというふうに答えている商社もあると。農水省がつくった制度にどういう問題があるのかまともに調査しないというのは、本当にこれ無責任だなというふうに思うんですよ。
 農業新聞の調査で見ますと、これ、SBS米の相場というのは国産品よりも二割安いんだというふうに言っていて、農水省の調査は実需者への販売価格に十分踏み込まないまま国産相場への影響はないと結論付けたというふうに書いているわけですね。農水省の調査は現場の実感ともずれた欠陥報告だというふうに、言いようがないと思います。
 この問題は、農水省がまともに調査しないんだったら、私はそれこそ国政調査権を使ってでも究明すべき問題だということを主張して、質問を終わります。