<第190回国会 2016年4月5日 農林水産委員会>


漁業の新規就業者対策、農業なみに拡充を/TPP、即時関税撤廃が多いTPP合意、水産物への影響は重大

○漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 漁業二法について最初にお聞きします。
 漁船損害等補償法改正案と漁業災害補償法改正案は、本来、個別法として提出をし、審議すべきものだと思います。法案の審議は、趣旨説明、そして質疑、採決という形で進められて、少なくとも二日以上、趣旨説明の前に一般質疑を入れれば四日以上掛かるわけです。
 今回のようなこの一括法という形式は、国会の審議を軽視することになるんじゃないかと思いますけれども、まずこの点、大臣の御認識を伺います。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) お答えいたします。
 本法案による改正事項については、漁業経営に関する補償制度の改善によるセーフティーネットの充実を図るという共通の趣旨、目的を有するものであります。このため、今回の補正対象となる法律はそれぞれ強い関連性があると認められることから、一括法としてお願いをしているところでございます。

○紙智子君 漁船損害等補償法は、事実上の抜本改正です。ですから、関係者の意見も踏まえて充実した質疑をすべきだと。
このところ、政府はこの一括法のような形で審議を進めるケースが多くなっているというふうに思うんですね。これ、国会軽視になりかねないということをまず指摘をしておきたいと思います。
 それで、漁船損害等補償法の改正案についてお聞きしますが、漁船保険組合について区域制限を廃止し、全国組合の設立を可能とする改正です。今回の改正のきっかけは、二〇一一年の東日本大震災にあったということです。東日本大震災では、岩手県や宮城県で約二万二千隻の漁船が被災をし、保険金の支払が巨額になって欠損金が出る事態になりました。
 漁船保険の財政基盤を強化するということは必要なことだと思います。そこで、全国組織にするのは関係者の要望に基づくものか、また、全国組織にする意味について説明をしていただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 東日本大震災の発生時に支払保険金の財源不足が生じた組合があったところでありますが、こうした状況を踏まえまして、漁船保険組織の事業基盤を強化するため、平成二十五年五月から平成二十七年六月にかけまして、全ての漁船保険団体において、漁船保険中央会及び四十五の漁船保険組合を平成二十九年四月に統合一元化する決議が行われていると承知をいたしております。
 このため、政府としても、この決議を受けまして、漁船保険団体の統合一元化が可能となるように今般の法律の改正案を提出させていただいたところでございます。これによりまして、事業基盤の強化された全国組織が設立されると考えており、大規模災害が発生しても漁業者に対し安定して保険金を支払うことができるようになるというふうに考えております。

○紙智子君 漁業を安心してやっぱり取り組めるというようにすることは非常に大事だというふうには思っております。
 それで、漁船保険組合は、営利を目的としない相互保険と言われます。また、中小漁船所有者の負担を軽減をし、保険への加入を促進するために、総トン数で百トン未満の漁船を対象に国が保険料の一部を負担していると。
 ところで、東日本大震災を受けて、岩手県では保険料が高くなったという声も出ています。統合一元化することで、保険料の負担や審査などの日常業務において漁業者が不利益を被るようなことはないのでしょうか。水産庁長官にお聞きします。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) お答えいたします。
 今回の改正によりまして、漁船保険組合の事務費等に充当されます付加保険料につきましては、今回の組織統合一元化によりまして業務の効率化が図られることになりますことから、現時点におきましては、全体として事務費等が節減されまして、付加保険料が高かった旧組合の料率引下げを行うことも可能となるものと、このように考えておるところでございます。
 このため、一般の漁業者の保険料の総額は、現時点においては全体として低減するのではないかというふうに見込んでいるところでございます。
 また、統合一元化の後も、現在の漁船保険組合は、統合後の新組合の支所として地域の漁業者の保険の引受け等を行う予定としているところでございます。したがいまして、事故査定についても、例えば同一組織の下で支所間の連携による査定の迅速化が図られるなど、これまで以上に地域の実情に応じたサービスを実施することが可能ではないかと、このように考えておるところでございまして、以上を踏まえますと、今回の法改正は漁業者にとって不利益になるようなものではなく、むしろメリットになるのではないかと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 では、次に漁業災害補償法の改正案についてお聞きします。
 改正案は、養殖共済の全員加入制度を廃止するとともに、内水面養殖業を追加するものです。全員加入制についていえば、例えば漁業者が十人いるとすると、今年で漁業をやめるつもりなのでもう共済に入らないという人もいれば、大手の水産会社などは漁場を三つも四つも持っていて資本力があるので共済に入りたくないという話もあるということも聞いています。
 そこで、中小漁業者にとって全員加入制を廃止することはメリットがあるのかということについてお聞きします。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) お答えいたします。
 これまで養殖共済におきましては、先生御指摘のように、全員加入制度によりまして、共済加入を希望する方がいたとしても、同じ地域漁協内に一人でも共済の申込みをしない方がいた場合にはその地域漁協内の全員が共済に加入できなかったと、こういうような状態になっておるところでございます。
 今回の法改正におきましては、全員加入制度を廃止することによりまして、今後、同じ地域漁協内の漁業者の動向に関係なく本人の希望により共済に加入できると、こういうメリットがあるわけでございます。
 また、漁業収入安定対策事業、いわゆる積立ぷらすでございますが、これについては漁災制度を基盤にしておりまして、漁業共済に加入することが積立ぷらすに申し込む際の前提となっているところでございまして、今回の改正によりまして積立ぷらすへの加入への門戸も開かれると、このようになるものと考えているところでございます。

○紙智子君 漁船保険にしても共済にしても、審査基準が厳しいという意見もよく聞くわけです。是非制度を充実をさせて、漁業経営に役立つ制度に更にしていただきたいというふうに思います。
 次に、新規の漁業就業者対策についてお聞きします。
 日本は周りが海に囲まれた漁業に恵まれた国ですけれども、近年、漁業は縮小する傾向にあります。それで、地域経済を支える家族漁業、それから小規模漁業の経営を安定させることが必要で、漁業従事者が増えてこそ漁船保険や漁業共済の制度も安定化するというふうに思います。そこで、漁業従事者を増やす上で新規の漁業就業者対策を抜本的に拡充することが必要だというふうに思います。
 そこで、まず農業の就業者対策についてもちょっと聞きたいんですけれども、農業において、青年就農給付金は農家の子弟を支援の対象にしているというふうに思うんですけれども、これについて説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省経営局長 奥原正明君) 農業の関係の青年就農給付金のお尋ねでございます。
 平成二十四年度から青年就農給付金交付しておりますけれども、この中には二つタイプがございます。準備型と経営開始型でございますが、まず準備型の方は、就農に向けて農業技術や経営ノウハウを習得するための研修を受けている就農希望者に対する給付金でございます。これと、もう一つの経営開始型の方は経営開始直後の青年就農者に対する給付金ということで、この二つのタイプがございますが。
 この中で、農家の子弟につきましては経営リスクを負って就農する方を支援すると、こういう観点から支援しておりまして、まず準備型の方につきましては、研修の終了後に親元に就農して五年以内に経営を継承する場合、あるいは親の経営する農業法人の共同経営者になる場合、この場合は準備型で、農家子弟の方も対象になります。それから、経営開始型の方ですけれども、こちらは、親の経営から独立をした部門経営を行う場合ですとか、あるいは親元に就農してから五年以内に親の経営を継承する場合、こういった場合は農家の子弟につきましても給付の対象になると、こういう仕組みにしているところでございます。

○紙智子君 それで、漁業なんですけれども、青年就業準備給付金、長期研修は漁家の子弟を対象にしているでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 先生御指摘の漁業の関係でございますが、漁業就業人口が減少する中で、漁村の内外を問わず、漁業の担い手を確保していくということは極めて重要だというふうに考えております。
 このため、漁業の新規就業者に対しまして、漁業学校等で学ぶ若者に対する就業準備資金の給付、それと、漁業現場での長期研修、最長三年間でございますが、これに対する支援を実施しているところでございますが、本事業につきましては、漁家子弟であっても、親元から離れて就業をする場合には支援対象としているところでございます。

○紙智子君 親元から離れていないと駄目だということがずっと壁で、もうちょっとそこを柔軟にしてほしいという要求がいつも上げられているんですけれども、三月十日の所信の質疑のときにもちょっと実はこの問題は取り上げて、そのときの大臣答弁で、財源が限られているということも言われました。
 それで、漁師はやっぱり魚が捕れる漁場を知っていないと、ポイントをよく知っている人というのは結構いますけれども、知っていないと魚は捕れないと。漁法によっても変わってくる。だから、漁業はやっぱり漁業技術の継承が厳しいということも聞いています。
 私は、漁家の子弟への支援というのは、技術を継承する上でもやはり即効性のある支援じゃないのかなというふうに思うわけです。少なくともやっぱり農業並みの支援を検討すべきではないかと思うんですけれども、これは、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 漁家子弟や漁業外からの就業者を問わず、新規就業者を就業後に安定的に漁業経営が営めるように、また安全に操業するためには、就業前に操船や漁労に関する専門的な技術や知識を習得することが大事なことであるというふうに認識をしております。特に、漁家子弟が親元に就業する場合には、いずれ親の経営基盤を継承し経営者となることから、経理、税務などの漁業経営に必要な知識が大事であろうと思います。
 このため、このような知識も習得できるように、親元で就業する漁家子弟に対しても、新規漁業就業者総合支援事業の中の技術習得支援事業を活用して、研修の機会の確保、充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
 また、親元で就業する漁家子弟に対しても農業と同様に百五十万円の就業準備給付金を給付してはどうかということでございますが、二十五年からスタートした事業でもありますので、その実情をよく見ていく必要があるのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 実情をよく見た上で、是非もう一歩進めていただきたいなということで要望しておきたいと思います。
 次に、TPPの水産物の合意内容についてお聞きいたします。
 農林水産省は、関税一〇%以上かつ国内生産額十億円以上の水産物について、影響は限定的と見込まれると、長期的には、国産価格の下落も懸念されることから、生産性向上等の体質強化対策の検討が必要と分析をしているわけです。影響は限定的と言えるのかというふうに思うんですね。
 今、水産物の消費の減退が課題になっています。魚介類と肉類の国民一人一日当たりの摂取量の推移なんですけれども、二〇一二年、魚介類が七十グラムなのに対して肉類は八十八・九グラム、二〇〇五年までは魚介類が多かったんですけれども、二〇〇八年からは逆転現象が続いています。肉類の増加傾向と魚介類の減少傾向の関連性、この肉類の価格低下というのが魚介類の価格低下につながるんじゃないかと相関関係を指摘する方もいらっしゃいます。
 TPPでこの肉類の関税が急激に削減されます。それなのに、限定的という分析で果たしていいのかなと思うんですね。相関関係を分析すべきではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 紙委員御指摘のとおり、平成二十七年十一月に公表した「品目毎の農林水産物への影響について」は、TPP合意による水産物への影響については、多くの水産物について影響は限定的と見込まれるとしております。これは、長期の関税撤廃期間の確保など、交渉で獲得した措置に加えまして、最近の国内価格や国際価格、TPP参加国からの輸入量などの客観的なデータ等を基に分析を行い、その結果を分かりやすくお示ししたものであります。
 さらに、平成二十七年十二月に公表した農林水産物の生産額への影響試算では、水産物の生産減少額は約百七十四億から約三百四十七億としたところであります。これは、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、交渉で獲得した措置に加え、政策大綱に基づく水産業の体質強化策による生産コストの低減、品質向上などの国内対策によりまして、国内生産量は維持されると見込んでいるところでございます。

○紙智子君 ですから、肉などの関係で相関関係を分析した方がいいんじゃないのかというふうに申し上げたわけです。
個別品目ごとという縦割りではなくて、関連性も示さないと、やっぱり、限定的なんだというふうに幾ら言われても、本当にそうなのかなということで信じられないんじゃないかと思います。
 個別品目についてもお聞きします。
 水産物は、関税を撤廃する時期が六年目とか十一年目、十六年目というふうに複雑に入り組んでいます。それから、数えてみますと、百二十七品目が即時関税撤廃されるんですね、百二十七品目と。即時撤廃なので、これ影響は限定的で済むのかどうかということなんですね。
 サケについてお聞きしますけれども、サケの関税削減は複雑で、マス、ギンザケ、大西洋サケは三・五%の関税なんですけれども、十一年目に撤廃すると。太平洋サケ、それから生鮮ベニザケ等は、今三・五%の関税率を六年目に撤廃すると。一方、冷凍ベニザケ、サケ・マスの調製品、加工品などは即時撤廃だと。
 それで、私の地元の北海道を始め東日本大震災で大きな被害を受けた岩手や宮城、ここはサケの振興を自治体挙げて力を入れて取り組んでいるわけです。サケ・マス類の国内生産量というのは、二〇一三年は十七万トンなんですけれども、輸入量が二十五万トンだと。二〇一二年のチリからの輸入というのは最高記録を更新していて、二十万トンの大台に乗せています。チリ一国だけで国産総量を上回る輸入があったわけです。
 これは、二〇〇七年に発効した日本とチリのEPAが影響したんじゃないかというふうに思うんですけれども、水産庁長官、いかがですか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、平成二十七年十一月に公表いたしました「品目毎の農林水産物への影響について」では、TPP合意によりますサケ・マス類への影響については限定的と見込まれるというふうにしているところでございます。
 これにつきましては、まず、先生の方からもお話ありましたように、関税率がほとんど三・五%ということになっていること、また、主要なサケ・マス類につきましては、段階的にということで六年あるいは十一年といったようなことで関税を撤廃するというようなこと、また、輸入量が多いチリからの輸入につきましては、既にこのチリとの関係では日・チリEPAにおきまして段階的に関税が撤廃されることになっておりまして、二〇一六年四月現在では、チリの関税率につきましては〇・三%ということになっておりまして、こうしたことを踏まえてこのような限定的と見込まれるというふうにしたところでございます。

○紙智子君 今の説明だったら、限定的としたことの中身というのがよく分からないわけですよね。
 それで、日本とチリのEPAでは、二〇〇七年から順次関税を削減して十年間で撤廃することになっています。それで、関税率が小さいからそんなに大したことないというふうに言うのかもしれませんけれども、チリから輸入がなぜ増えたのかと。これは、大手食品会社のホームページで見ますと、チリからの輸入は国産総量を上回っている、チリ一国で我が国の総輸入量の六八%も占めております、このことはEPAの効果も大きいと言えるでしょうというふうに分析して書いているわけですよね。サケを扱っている企業がこういうふうに分析しているわけです。
 EPAの効果が大きいんじゃないんですかね、やっぱり。ここは大臣に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 今先生の方からお話あったわけですが、やはり段階的な関税撤廃ということで、先ほど申し上げました六年あるいは十一年というようなスパンが設けられたといったようなことについては、やはりこれは、いろんな御指摘あるかもしれませんが、非常にその間TPP対策といったようなことで、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるとしても、交渉で獲得した措置に加えまして、水産業の体質強化策を集中的に講じることによりまして国内生産量は維持されると、このように見込んだところでございます。

○紙智子君 国内対策を打つから維持されるという話は繰り返し出されるわけですけれども、この大手食品会社の分析ではこういうふうにも言っているわけですよ。サケ・マス製品の輸出相手国は、中国、タイ、ベトナムの三か国が主要相手国ですが、消費国というより加工国で、加工された調製品が再び日本に戻ってくるというふうに言っているわけですね。だから、こういう現状も分析すべきだと思うんですね。
 水産週報というのもありますが、これをちょっと紹介したいと思います。関税が即時撤廃になる品目は最も早く影響が出ると言っています。ベニザケについては、輸入額の一位はロシアなんですけれども、二位はアメリカ、三位はカナダです。そのほかの品目について見ても、米国からの輸入は即時撤廃品目が多い、突出していると書いています。日本に対しての輸入環境は、ほぼ万全の体制が整備されているというふうに書いているわけですね。
 サケといっても、焼き物だったりフレークだったりスモークだったり、刺身、すしなどに使う用途によって業者の方はこれ調達国を選択するわけです。輸出業者も機動的に輸出する体制を取るのが当然なんだと思うんですが、アメリカは日本への輸出環境を整えて、やはりこのTPPが発効するのを待ち望んでいるんじゃありませんか。長官、いかがでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 今先生の方から御指摘ございましたベニザケでございますが、まずベニザケにつきましては、輸入物と国産物とではやはり品質が異なっているというふうに考えております。
 国産につきましては、これは船上で塩漬けと申しますか、塩蔵の後凍結されておりまして、主にこれにつきましては高級食材として取り扱われているという実態にございます。また、輸入品につきましては、塩蔵することなく凍結されており、主に一般食材として取り扱われているところでございます。
 また、こうした中で、ベニザケにつきましては、国内需要でございますが、約三万二千トンほど需要がございますが、これを、国内生産約三千トンとなっておりますが、これのみでは賄えないという状況で、不足を補完する形で輸入がされておりまして、二万九千トンほどほぼ冷凍ベニザケが輸入されていると、こういったような状況になっておるところでございまして、また、この冷凍ベニザケにつきましては、近年の急激な為替レートの変動の局面におきましてもこれに伴う輸入量の大幅な変化が見られなかったと、こういったような現実があるわけでございまして、こうしたことを踏まえまして、冷凍ベニザケにつきましては現行の三・五%の関税が即時撤廃されたとしても影響は限定的ではないかと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 影響は限定的だと繰り返されるんですけれども。
 ヒラメ・カレイ類についてもちょっとお聞きしますけれども、今回、影響試算の対象に入っていませんね、これは。それで、関税は即時撤廃されるわけです。国内生産量は約五万トン、輸入量も約五万トンと、国産と競合するんじゃありませんか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) お答えいたします。
 今先生御指摘のヒラメ・カレイでございますが、輸入品のヒラメ・カレイと国産のヒラメ・カレイがあるわけでございますが、これにつきましては、魚種あるいは流通形態及び用途が必ずしもこれは同じではございません。
 例えば、輸入品につきましてはカラスガレイとかアブラガレイが多く、これは冷凍の状態で輸入、販売されまして、主に、先生御案内かと思いますが、煮付けやフライの食材等として利用されているところでございます。他方、国産のヒラメ・カレイにつきましては主に鮮魚の状態で流通しまして、いわゆる刺身用として利用されているといったような、こういったような実態があるわけでございます。
 それと、このヒラメ・カレイにつきましては、近年の急激な為替レートの変動の局面におきまして、これに伴う輸入量の大幅な変化は、先ほど先生お話ありましたように五万トン台だということで、大幅な変化は見られなかったという、こういったような現実もあるところでございまして、やはりこれらを踏まえますと、ヒラメ・カレイについては現行の三・五%の関税の即時撤廃による影響は限定的ではないかと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 余り影響はないんだとまた繰り返し言われているんだけれども。
 それで、元々、水産物は関税率が低いとか、輸出できるんだという話がずっとされてきているわけです。しかしながら、いち早く直面する、今直面する問題は、百二十七品目が即時関税撤廃されることなんですね。これまで関税によって国内生産は維持されてきたわけです。関税は国内生産を維持して企業の動向に一定の制約を掛けることができたと思います。しかし、関税を撤廃すればやっぱりこれ大手の企業の行動に歯止めを掛けることができなくなるんじゃないんでしょうか。いかがですか、農水大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 水産業の体質強化対策としては、政策大綱を踏まえて、広域浜プラン等に基づきまして操業の共同化を核とした実証的な取組などによる競争力強化、生産性向上、省エネ、省コストに資する漁業用の機器の導入、担い手へのリース方式による漁船の導入、産地の施設の再編整備等の国内対策を集中的に講じることとしております。また、水産物の輸出拡大策として、大規模な拠点漁港における共同利用施設等の一体的整備、HACCP対応のための水産加工施設の改修への支援等も措置したところであります。
 今後とも、現場の声に寄り添いながら、これらの事業の活用などによりまして水産業の競争力強化を推進するとともに、新たな国際環境の下でも次世代を担う漁業者等が所得向上を図り、経営の発展に積極的に取り組めるように後押しをしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 水産物で即時関税撤廃する品目が百二十七あると先ほども言いましたけど、TPPによって魚価が下がれば、これ、担い手を増やすことも困難になると思うんですよ。中小漁業者が切り捨てられて、漁村地域が崩壊する危険性があると。
 影響は限定的と言うのであれば、やはりこの即時関税撤廃されるものも含めて漁業に与える影響をしっかりと国民に説明すべきだと。農産物については結構明らかにしてきているんだけれども、水産物は影響がないないと言われるんだけれども、これ全然やっぱり説明がされていないですよ。ですから、そこのところは最後にきちんと説明をしていただきたいということを強く申し上げて、質問を終わります。

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○委員長(若林健太君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕

○委員長(若林健太君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、小川君から発言を求められておりますので、これを許します。小川勝也君。

○小川勝也君 私は、ただいま可決されました漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案に対し、自由民主党、民進党・新緑風会、公明党、日本共産党及びおおさか維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

 漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議(案)

 漁業は、厳しい自然環境の中で営まれる産業であり、資源の急激な変動や事故発生の危険性と常に隣り合わせにある。台風が常襲し、地震が多発する我が国にあっては、暴風や高潮、津波等、漁業生産にとり大きなリスク要因が存在する。
 こうした中、漁船損害等補償制度及び漁業災害補償制度は、中小漁業者の相互扶助の精神の下、国の支援を通じて、漁業再生産の阻害の防止と漁業経営の安定のため、長年にわたり重要な役割を果たしてきた。
 しかし、近年、漁業就業者の減少や高齢化等を背景として、両制度の運営環境は厳しさを増している。再び東日本大震災クラスの大規模災害に見舞われた場合でも、漁船保険組合及び漁業共済組合が漁業者に対して保険金及び共済金の支払責任を十分に果たし得るよう、効率的かつ機能的な組織運営及び事業基盤を確固たるものにしていく必要がある。
 よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 漁船保険組織の統合一元化が円滑に進むよう、漁船保険中央会及び漁船保険組合に対し、助言その他必要な支援を行うこと。
 新たに漁船保険組合の設立認可要件となる資産の額については、大規模災害等における支払にも十分対応できる額を定めるとともに、組合の財政状況の把握に常時努めること。
 組織統合一元化に伴い、国と新たな漁船保険組合の二段階の再保険関係とするに当たっては、組合による責任ある引受審査を確保しつつ、大規模災害発生時に、国が担うべき危険負担を確保するため、国及び組合において適切に責任分担を行うこと。
 漁船保険の満期保険については、高船齢化が顕著となっているため、漁船の更新が円滑に行えるよう、船齢制限の緩和と積立期間の延長を柔軟に行うこと。併せて、漁業構造改革総合対策事業等の推進を通じ、高性能漁船の導入等による新しい操業・生産体制への転換を促進すること。
 漁船の事故を未然に防止するため、復原性が高く転覆しにくい漁船の研究開発、衝突事故防止用の船舶自動識別装置(AIS)の普及、海中転落事故に備えたライフジャケット着用啓発等の一層の推進を図るなど、漁船事故防止に係る事業を継続的に支援すること。
 水産基本計画における資源管理・漁業経営安定対策の加入者が我が国漁業生産額の九割を担うとの目標を達成するため、漁業共済への加入促進に向け適切に指導すること。
 養殖共済の全員加入制度廃止に当たっては、漁業者に対する適切な国庫補助の下、一層の加入促進が図られるよう、加入の在り方を適切に検討すること。
 特定養殖共済の掛金補助制度の要件を見直すに当たり、漁業の種類や地域の実態に応じて、基準とする漁業依存度を適正に設定し、加入促進に努めること。
 内水面養殖業を養殖共済の対象とするに当たり、うなぎ養殖業を対象とする際には、養殖共済実施可能性検証調査事業報告書等で指摘された問題点を踏まえ、的確に保険設計を行うこと。併せて、うなぎ養殖業許可制の下で、資源管理を着実に実施すること。
 近年の水産動植物の陸上養殖の普及実態に鑑み、ひらめ等の陸上養殖を養殖共済の対象に追加することについて、引き続き検討を行うこと。

 右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(若林健太君) ただいま小川君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕

○委員長(若林健太君) 全会一致と認めます。よって、小川君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。