<第189回国会 2015年9月10日 農林水産委員会>


シロシストセンチュウ抵抗性品種の開発を/独立行政法人の運営交付金の削減見直しを要求

○独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず最初に、北海道網走市内のバレイショの生産圃場で、先月、ジャガイモのシロシストセンチュウが国内で初めて確認をされました。北海道のオホーツク管内のJAが自主調査を行っているんですけれども、農水省も調査を行っています。それで、どういう調査を行っているのか、また調査の現況について、ちょっと簡潔に説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小風茂君) お答えいたします。
 網走市内の一部の圃場におきましてジャガイモシロシストセンチュウが確認されたことから、適切な蔓延防止対策を講じるために、八月の二十五日から、国が本線虫の発生範囲を特定するための調査を実施しているところでございます。具体的には、本線虫が確認された地域からバレイショの移動経路などを踏まえまして、発生の可能性が高いと考えられます網走市及び近隣の市町において、バレイショの抜取り調査を実施しております。
 国の調査につきましては、八月末には抜取りを終わっており、現在付着していたシストについて、形態学的識別あるいは遺伝子検査、検定による同定作業を行っております。同定作業が終わり次第、調査結果を公表したいというふうに考えております。

○紙智子君 ジャガイモシロシストセンチュウの侵入経路も解明することが非常に急がれるんですが、同時に、この新害虫は土壌消毒でも根絶は難しいと言われておりますから、抵抗性品種を開発するということが必要になると思います。
 実は、今年、つくば市にある種苗管理センターに行って懇談してきました。同センターの業務の一つは、病害虫の蔓延防止のために、病気を持っていない健全なバレイショの原原種を隔離した環境で栽培をし、厳格な病害検査を行いつつ一元的に供給することにあるんだということをお聞きしました。
 ジャガイモの原原種の開発というのは非常に大変なんだなということを改めて勉強したわけですけれども、米などは種を植えるので増殖率が高いようですけれども、バレイショは芋を半分に割って植えるということでは増殖率が非常に低いと、しかも五年輪作を基本にしているということで時間が掛かるということですね。
 抵抗性品種の開発に十年程度掛かるという話を聞いたんですけれども、今回の被害が広がらないことを期待をするわけですけれども、同時にこの抵抗性品種の開発は避けられないんじゃないかと考えますけれども、いかがでしょうか。これ、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) このジャガイモシロシストセンチュウは、一度感染してしまいますと農薬による防除、これが極めて難しいということでございまして、感染自体を防止することが可能な抵抗性品種、これを用いることが極めて重要な対応方法であると、こういうふうに認識しております。
 このため、海外で育成された品種を含む既存のバレイショ品種において、この線虫への抵抗性の有無の確認を緊急的にまず行うということと、今触れていただきましたが、当省所管の農業・食品産業技術総合研究機構において、本線虫に対する抵抗性品種の育成、これを平成三十二年度を目途に進めているところでありまして、この研究を更に加速化をしていきたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 是非農家が安心するように、ちょっと時間が掛かるということもあるんですけれども、是非お願いします。
 それから、次に、独立行政法人の運営費交付金についてお聞きします。
 まず、農業・食品産業技術総合研究機構、これは過去に生物系特定産業技術研究推進機構、そして農業工学研究所、そして食品総合研究所、農業者大学校を統合しています。今回新たに農業生物資源研究所、農業環境技術研究所及び種苗管理センターも統合すると。
 そこで、これらの法人等の運営費交付金の合計額と全職員数と、加えて任期付研究員を除く研究員数について、二〇〇一年度、平成十三年分と二〇一四年度、平成二十六年分を説明をしていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省農林水産技術会議事務局長 西郷正道君) お尋ねの運営費交付金でございますが、今おっしゃいました関係する法人合計で平成十三年度は六百七十三億円、平成二十六年度は五百十三億円ということで、平成十三年度比でいきますと七六%ということになってございます。
 職員数でございますが、関係する法人合計で平成十三年度は四千百五十二人、平成二十六年度は三千四百二十五人で、平成十三年度比八三%ということになってございます。そのうち研究職員数につきまして、任期付職員を除くということでございますので、計算しますと、平成十三年度は二千百四十二人、平成二十六年度は千八百二人ということで、平成十三年度比八四%となってございます。

○紙智子君 ありがとうございます。
 次に、水産総合研究センターは、過去に日本栽培漁業協会、海洋水産資源開発センター、さけ・ます資源管理センターを統合しているわけですけれども、今回、水産大学校も統合すると。
 そこで、これらの法人等の運営費交付金の合計、同じように全職員数、加えて任期付きの研究員を除く研究員数について、二〇〇一年と二〇一四年を説明をしてください。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) まず、運営費交付金でございますが、関係する法人合計で平成十三年度は百九十八億円でありましたが、平成二十六年度は百六十六億円で、平成十三年度比八四%となっております。
 次に、職員数でございますが、関係する法人合計で平成十三年度は千二百八十五人、平成二十六年度は一千百五人で、平成十三年度比八六%となっております。うち、研究職員数でございますが、任期付職員を除き、平成十三年度は四百七十五人、平成二十六年度は四百八十一人で、平成十三年度比一〇一%と、このようになっているところでございます。

○紙智子君 農業関係法人の運営費交付金等は、今説明あったように、二〇〇一年度、六百七十三億四千七百万円から五百十三億三千万円ということで、二四%減っているわけです。水産関係法人の運営費交付金は、百九十七億九千五百万円から百六十六億二千六百万円ですから、一六%減っています。独立行政法人は、これは農林水産大臣が中期目標で示した効率化目標に基づいて経費を削減しているわけです。削減目標は、業務経費で毎年マイナス一%、一般経費で毎年マイナス三%と。つくばに視察に行ったときに、肥料代などは固定的に掛かるから削れないんだと、したがって、機械の更新、本当はもう替えなきゃいけないんだけど、これは更新を延ばして長く使っているなどで対応しているんだと、でも現場の職員は困っていますということを率直に語られました。
 経費の削減はこれだけにとどまりません。茶原種の生産及び配布業務や農業者大学校を廃止をされると。農業者大学校は、募集が定員に達していないのに経費が五億円も掛かるということで廃止になっているわけですね。
 農業の担い手教育は、これは国も県も民間も挙げてやっぱり取り組むべき課題だというふうに思うんですね。国の大学、農業者大学校を廃止した影響について、これらの検証はされているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この農業者大学校につきましては、平成二十二年四月の事業仕分というのがございまして、ここにおきまして事業の廃止という評価を受けまして、平成二十三年度末で教育を終了いたしまして、閉校をいたしたところでございます。
 農林水産省では、平成二十四年度から、農業経営者教育を見直して道府県農業大学校のレベルアップを図ることを基本といたしまして、道府県農業大学校、四十二校ございまして、一学年の定員の合計が二千二百九十名でございますが、この道府県の農業大学校が経営力の強化等につながる新たな教育カリキュラムの導入をされるのの支援を行うとともに、こうした農業大学校と連携しまして、高度な農業経営者教育を行う教育機関、一般社団法人アグリフューチャージャパン等でございますが、こういうところが道府県の農業大学校の学生や指導者向けに開催するセミナーの支援、こういうことを行っているところでございます。
 また、就農に向けて、農業技術や経営ノウハウを習得するために、道府県農業大学校やアグリフューチャージャパンが運営する日本農業経営大学校、これは一学年定員二十名でございますが、ここで学ばれる学生の皆さんや先進農家で研修を受ける就農希望者に対しまして、青年就農給付金により支援をしておるところでございます。
 我々としては、今後とも、こういった農業教育機関と連携しながら、経営力のある農業経営者の育成に努めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今、事業仕分で廃止したというふうに言われたんだけれども、やっぱり復活させるという努力をなさるべきではないかというふうに思うんですね。
 民間の大学校、今いろいろ経営をしてやっているんだという話はあったんだけど、やっぱり民間の大学校は国の農業者大学校よりも学費などの費用は掛かる、だから利用する側は非常に負担が掛かるというふうに聞いています。農業の担い手を育てる必要があるということでいえば、やっぱり私は国がもっと乗り出すべきではないかなというふうに思います。
 そこで、今回、水産大学校が水産総合研究センターに統合されるわけですけれども、農業者大学校と同じように廃止されるんじゃないかという不安もあるんですね。これ、廃止しないということを断言していただけるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 平成二十五年の十二月に閣議決定をされました独立行政法人改革等に関する基本的な方針、これに基づきまして、水産に関する研究開発機能と水産に関する人材育成機能の一層の向上を一体的に進めるために、水産大学校と水産総合研究センターを統合すると、こういうふうになっております。
 また、この閣議決定においては、人材育成業務の自立性に配慮した内部ガバナンスを構築するということとして、水産大学校においては、その名称、また立地、これは下関市でございますが、それから施設、これを維持すること、さらに、人材育成業務について質の高い教育が持続可能な形で行われるよう、自己収入の拡大や教育内容の高度化に向けた適切な措置等を講じることと、こういうふうにされておりまして、統合後の新法人においても、研究開発部門の研究成果、施設等も活用しながら、現在、水産大学校が実施している人材育成業務の高度化を図っていくこととしておりまして、現時点で廃止するということは想定をしておらないところでございます。

○紙智子君 水産大学校は教育機関であり、人件費等の固定費の割合が高いと、一律の経費の削減に対応することには限度があるというふうに言っています。政府の方針では、この人材育成業務、それから研究開発業務それぞれの自立性に配慮するというふうに書いておりますけれども、配慮せざるを得ないということであれば、やっぱりそもそも統合する必要はないんじゃないのかなというふうに思います。
 次に、研究者の問題なんですけれども、研究者の人数ですけれども、先ほど、農業関係法人は二〇〇一年の二千百四十九人から千八百二人へと一六%減っているわけですね。水産関係法人は六人だけ増えているんですけれども、農水省からこの間、研究職員の年齢構成の資料をいただきました。二十代の研究職員がどうなっているのかなというふうに見てちょっと驚いたんですけれども、水産総合研究センターは十二名と、センターの研究員に占める割合が、ですから二・三%なんですね。農研機構は四十四名で、この同機構の研究員に占める割合は二・九%だと。生物研、これは僅か一名なんですよね、同じく〇・四%。それから農業環境技術研究所も僅か一名ということで、〇・八%です。
 ちなみに、三十代の人も含めて全体に占める割合を計算してみると、二三・二%ということで、これ、大臣、若い研究者がちょっと少な過ぎるんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今御指摘いただいたように、二十代の占める割合が、この農業・食品産業技術総合研究機構、例えば約三%ということでございます。これは実は、独法化以前には国家公務員の試験で大卒者を含めて採用を行っていたということでございますが、この独法化以降、即戦力である博士号の取得者、これを重点的に採用してきております。したがって、博士、ストレートで取ったとしても二十代の後半と、こういうことになっていくわけでございますので、これが一つ、二十代の割合が少ないことの一因と考えておるところでございます。
 先ほど来御議論いただいておりますように、質の高い研究成果を生み出すための基盤は何といってもやはり人でございますので、そういう認識の下で、研究者を対象に人材育成プログラム、こういうものを策定して、創造性豊かで挑戦意欲を持った研究者の育成、これは計画的に進めておるところでございますし、これからも、研究成果の最大化を図るためにも若手研究者の育成確保、これに努めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 ドクターを採用しているから余り若い人いないという話なんだけれども、いずれにしても、やっぱり若手の人を本当に育てていくという必要があると思います。
 一方、増えているのが任期付研究員なんですね。二〇〇六年度から二〇一四年の九年間に研究職に勤める任期付研究員の割合は、これ、農業環境技術研究所では二倍、水産総合研究センターで二・六倍です。正規の常勤研究職員が任期付研究員に置き換わっているという形になっています。任期付研究員の雇用期間は五年以内です。研究者から出される要望の第一というのは、これは雇用不安の解消なんですね。それから、二十代、三十代が少ない研究組織がこれからどうなっていくのかが見えない、国はもう少し長期的な方向を示すべきだという意見も出されているんです。
 これではやっぱり研究者のモチベーションが上がらないんじゃないかと。こういう不安を解消すべきではないでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この研究分野で活躍する人材の確保については、近年、研究課題が多岐にわたるようになってまいりまして、また高度な専門性が求められる、こういう背景の中で、各法人において中期計画で掲げました、研究職員の採用に当たっては、引き続き任期付雇用等の雇用形態の多様化を図り、中期目標達成に必要な人材を確保すると、こういう考え方の下で必要な人材の確保に努めているところでございます。
 この任期付研究員制度ですが、研究者の流動性を高めて、研究者側から見ますと、多様な研究環境で経験を積んで、いろんなところで人脈、人的ネットワークの構築ができる、また研究者としての視野を広げることができる、こういうメリットがあると、こういうことでございまして、各法人において導入をされております。
 一方、今委員からお話がありましたように、任期付きの身分に不安を覚える研究職員もいるということでございますので、一定の期間経過後に当該期間中の研究実績を審査して高い評価を得た者を終身雇用にするテニュアトラック制度、こういうものを導入するなど、こういう取組も併せて行っているところでございます。
 法人が研究成果を最大限に発揮できますように、今後も優秀な人材の確保に努めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 流動化を高めるということもあるというお話なんですけど、現実に出てくる要望の第一位がやっぱり雇用の安定ということなので、そこにやっぱり目を向けていただきたいと思います。
 つくばを訪問したときに、ある独法の理事長さんが、予算が減って人を減らさざるを得ないということは、これやっぱり悩みだということは言われておりました。それが実態だと思います。
 業務の縮小が進んで研究者の中で雇用不安が広がっていると。運営費交付金の削減目標は、業務経費で毎年マイナス一%、一般経費でマイナス、毎年ですね、三%削減と。概算要求でも同様の目標が示されているわけですけれども、この方針をやっぱり見直す時期に来ているんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この業務経費とか一般管理費でございますが、運営交付金で国が交付して賄われておると、こういう状況でございます。
 平成十三年に独立行政法人化が始まりまして、現在に至るまで、農林水産大臣が中期目標で示した効率化目標に基づいて各法人が毎年度業務経費や一般管理費の削減を行い、業務運営の効率化を進めてきたということでございます。
 今後の方向でございますが、二十五年十二月に閣議決定しました独立行政法人改革等に関する基本的な方針、この中で、中期目標において主務大臣が指示する効率化目標については、各法人の事務事業の実態やこれまでの効率化努力等を踏まえて法人ごとに適切な目標を設定すると、こういうふうになりました。したがって、今後の中長期目標については、この閣議決定に沿いまして、今後の法人運営に支障がないように適切に検討してまいりたいと思っております。

○紙智子君 やっぱり独立行政法人の役割の発揮を妨げている現実をしっかり見ていただきたいというふうに思います。
 もう一つ、実は金融庁検査の導入の問題もお聞きしようと思っていたんですけど、ちょっと時間になってしまいました。これは、過度なやっぱり検査が行われると、県の基金協会は信用力を補完することに慎重になって、農林漁業者を支えることが困難になることが懸念されるということがあります。貸付けが厳しくなることがないように、そのことを最後に要望申し上げまして、質問を終わります。