<第189回国会 2015年9月8日 農林水産委員会>


林業女子支援、耕作放棄地への課税問題、TPPコメ5万トン譲歩案

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日、初めに、林業・森林問題についてお聞きします。
 現在、我が国の森林は、戦後造林された人工林を中心に本格的な利用期を迎えて、この国内の豊富な森林資源を循環利用することが重要な課題になっていますけれども、今日は、この林業・森林の分野で活躍する女性に焦点を当てたいと思います。
 近年、様々な職業の女性たちや学生が林業に関わる活動や情報発信を行っています。いわゆる林業女子会と言われる活動なんですけれども、林大臣は御存じでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 現在、全国で十七の林業女子会が活動を行っておられると、こういうふうに聞いております。
 京都府内の女子大生や森林・林業に関心のある女性社会人、平成二十二年に林業女子会@京都、これを結成したのが始まりだと聞いておりますが、こういう活動が全国に広がっておりますことを心強く思っております。活動内容としては、森林整備ボランティアから情報誌の発行、木工イベントの開催等々多岐にわたっておりまして、町に暮らす方と森林をつなぐ重要な役割を果たしていただいていると、こういうふうに認識しております。
 私も、実は昨年の八月に、林業女子会のメンバーを含みます女性の林業従事者等とも意見交換を行わせていただきまして、こういった取組、直接お聞きすることができたわけですが、女性ならではの視点で、楽しみながら森林・林業を盛り上げて、林業や山村の活性化に寄与されておられるし、また、今後も寄与されていかれることを期待をしておるところでございます。

○紙智子君 ありがとうございます。今おっしゃられたように、二〇一〇年に京都で結成されて、現在十七都府県まで広がったと。
 それで、先日、実はこの森林組合に勤めながら三年前から林業女子会@東京で活動している二十代の方にお話を私も伺ったんですね。
 主な活動二つあって、情報交換とそれから近況報告、いわゆる女子会をやっているんですけれども、それと同時に、例えば千葉県の森林を地元ボランティアの支援を受けながら定期的に整備をすると。チェーンソーで伐倒した木を使ってベンチとテーブルを作ったこともありますということで、非常に生き生きと語ってくれて、今後は、国産材を使った製品を買えるお店のマップ化ですとか、それから独自のグッズなどを作ってみたいと期待を膨らませています。
 林業女子会は、林業の大切な応援団ということで、国産材の魅力をより多くの人に知ってもらいたいと、女性の視点で林業の裾野を広げていきたいという思いで活動して、一定の実績を積み重ねています。この活動を通じて、職業として転身した人も中にいるということですね。
 農林水産省としても、女子会の活動の一つである森林整備などに必要なヘルメットとかあるいは手袋の貸出しとか、各地の女子会同士の交流会の支援など、使い勝手の良い支援策があってもいいんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(農林水産副大臣 小泉昭男君) 先生御指摘の部分でございますけれども、昨年、予算額は、二十七年度、二十五億、森林・山村多面的機能発揮対策交付金、これによりまして、地域住民、森林所有者、NPO等が行う森林づくり活動に対して支援をしてまいったところでございます。
 この交付金でございますけれども、地域住民等が行う里山林の景観保全や広葉樹等の森林資源を活用するための伐採、搬出活動、森林を利用した環境教育等を支援するものでございまして、先ほどお話もございましたけれども、活動の実施に必要なヘルメットやのこぎり、チェーンソーの購入等にも活用が可能となっているところでございます。いわゆる林業女子会が行う森林づくりのボランティア活動も支援対象になるわけでございますので、御要請があればそうしたことを積極的に周知してまいりたい、このように考えております。

○紙智子君 今いろいろお答えいただいたんですけど、一般的なボランティアということでなくて、やっぱり専門家集団ではないんですけれども、一定の実績を積み重ねてきたこの林業女子会への支援を是非検討していただきたいと思います。
 それで、今、林業女子会を紹介したんですけれども、他方、林業女子、これは就職先に森を選んで、林業を職業に選んだ女性たちのことです。
 女性の職業の選択肢になっている要因に、高性能の林業機械が開発をされて、力仕事だった現場が変化してきているということなども挙げられます。それでもやっぱり危険を伴うと。女性が山の中で働くというのは様々な悩みもあるというふうに聞きます。女性が職業として安心して働き続けられるような環境を整えることも大切だと思います。農水省として考えている支援策、これについてあれば紹介をしていただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今先生からお話しいただきましたように、林業には最近、若者、女性の就業者が増え始めてきておりまして、大変有り難いことだと思っておりますが、やはりこの一層の増大を図るためにも、キャリアアップに応じて所得の向上、それから労働災害の防止等、労働者の処遇改善、これを図ることが重要であると考えております。林業分野で女性の力を生かしていくために、我々としても、林業に就業していらっしゃる女性のネットワーク化等に対する支援を実施をしております。
 平成二十八年度の概算要求でも、引き続きこれらの支援を行うとともに、さらに、女性の定着、活躍の一層の推進のために、新たに、女性林業従事者の抱える問題の実態把握、それから解決等のための支援のための予算、これを要求をさせていただいたところでございます。こういった施策を通じまして、林業における女性の活躍が加速化されるように取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 先ほど林大臣も紹介されましたけれども、去年、林野庁において意見交換が行われて、いろんな意見が出されたと思うんですけれども、やっぱり女性が働きやすい職場、魅力ある職場をつくるということは、男性にとってもそういう働きやすい魅力ある職場になっていくということだと思いますので、是非そういった意見を大事に踏まえて支援策をお願いしたいと思います。
 次に、農地への課税の在り方についてお聞きします。
 まず、総務省に今日来ていただいていますけれども、お聞きします。税は、公平、中立、簡素が原則だと言われています。なぜ中立かといえば、これ家計や企業の経済活動を税制によってゆがめるべきじゃないからだと。なぜ簡素かといえば、これ税制が複雑になると納税者は自己負担の税負担の計算が大変になってくるということですよね。じゃ、なぜ公平でなければいけないんでしょうか。

○政府参考人(総務大臣官房審議官 時澤忠君) お答えいたします。
 租税は、国や社会を成り立たせるために欠かすことのできない公的サービスの財源を調達することをその基本的な機能としておりまして、公的サービスによる便益が社会の構成員により広く享受されるものであることを踏まえますと、皆で広く負担を分かち合い公平性を確保することは欠くことのできない最も重要な原則であると認識をしております。
 平成十二年の政府税制調査会の答申におきましても、公平の原則は、税制の基本原則の中で最も大切なものであり、様々な状況にある人々がそれぞれの負担能力に応じて分かち合うという意味であるというふうにされているところでございます。

○紙智子君 税負担に公平感のない税制だったら、これは国民の支持得られないというふうに思うんですね。
 そこでなんですけれども、農林水産省は、今年も耕作放棄地に対する固定資産税の課税を強化する要望を出しました。
 引き続き総務省にお聞きしますけれども、今の国の制度において、例えば太陽光の発電等の普及を図るためのインセンティブとして固定資産税を軽減したことはあると思うんですけれども、逆にディスインセンティブとして固定資産税の税率を引き上げたということはあるんでしょうか。

○政府参考人(総務大臣官房審議官 時澤忠君) お答えいたします。
 現在、地方税法におけます固定資産税の特例措置として課税強化をした例というのは存在していないと認識しておるところでございます。

○紙智子君 ないということですよね。
 それで、固定資産税の徴収の流れについてもお聞きするんですけれども、税が納められないで滞納した場合に、法に基づいて農地の差押えとか換価が行われると。この換価というのは何か、説明をしてください。

○政府参考人(総務大臣官房審議官 時澤忠君) 固定資産税に係る滞納が発生した場合でございますが、納期限後二十日以内に市町村は督促状を発する、その督促状を発した日から起算いたしまして十日を経過した日までにその督促に係る固定資産税に係る徴収金を完納しないときにつきまして、市町村の徴税吏員は滞納処分といたしまして滞納者の財産を差し押さえなければならないこととされているところでございます。
 税金は金銭をもって徴収するということを要しますところから、差押財産は公売手続等によりこれを処分して金銭に換えることになりますが、一般的にこの差押財産を処分して金銭に換えることを換価と称しているところでございます。

○紙智子君 つまり、差し押さえるということになるわけですよね。
 それで、農水大臣にお聞きするんですけれども、政府は、十年間で全農地の八割を担い手に集積、集約させるとしています。今回、耕作放棄地の流動化を図るために固定資産税の税率を上げるというふうに言っています。固定資産税が納められなければ農地が競売に掛けられることが起こり得ると。農家の財産権や、私有財産権を侵害するような国策というのは、これ許されるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この財産権につきましては、憲法二十九条一項によりまして、「財産権は、これを侵してはならない。」と、こういうふうにされておりますが、同条二項で、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と、こういうふうにされておりまして、公共の福祉に適合する範囲内で法律により財産権に制限を掛けるということは可能であるということでございます。
 さらに、租税については同八十四条で、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と、いわゆる租税法定主義が定められているところでございます。
 一方、農地につきましては、農地法上、農地の所有者は、当該農地の農業上の適切かつ効率的な利用を確保する、こういう責務を負っております。農地の所有者が耕作をしていない場合には、最終的に、都道府県知事の裁定によりまして、農地中間管理機構が当該農地を利用する権利を強制的に取得できることになっております。こういうことを踏まえますと、農地を有効活用するという目的の範囲内で遊休農地の課税を強化することは可能だと、こういうふうに考えております。
 このため、農地の保有に係る課税の強化、軽減等の措置につきまして、一昨年、また昨年の与党の税制大綱で、農地保有に係る課税の強化、軽減等の方策について総合的に検討すると、こういうふうにされたほか、本年六月三十日に閣議決定されました日本再興戦略改訂二〇一五等において、農地の保有に係る課税の強化、軽減等によるインセンティブ、ディスインセンティブの仕組みについて、本年度に政府全体で検討し可能な限り早期に結論を得ると、こういうふうにされております。
 こうしたことを踏まえまして、農地中間管理機構への貸付けなど、農地の利用の効率化及び高度化の促進を図るための農地の保有に係る課税の強化、軽減等の措置を要望したところでございます。

○紙智子君 何か非常に冷たい北風政策だという声もありますけれども、固定資産税の課税強化策というのは、税の公平性に反して、税を徴収する地方自治体にも混乱を招くと、地方分権にも反することになりかねないと思うんです。それなのに農水省は、自ら規制改革会議に提案をして、規制改革会議を味方に付けてまで強行しようとしていると。
 農家からはどういう声が上がっているかというと、罰金を取るような制度では良くない、荒れている農地を開墾して作付けする人を助成する制度が必要じゃないか、米価下落で食べていけず、だから後継者も生まれない、この悪循環が耕作放棄地につながっているんだという声が上がっているわけですね。
 本来、農水省が行うべきことというのは、耕作放棄地になる理由というのは様々あるわけで、課税を強化して財産権を侵害するような手法ではなくて、やっぱり助成等の政策的な支援を充実させるべきじゃないかというふうに思いますので、このことについては強く要望をしておきたいと思います。
 最後ですけれども、TPPについて質問いたします。
 甘利TPP担当大臣が米五万トンの譲歩案を出していることが明らかになってから各地でいろいろと質問を受けます。甘利大臣の、日本側から米の五万トン輸入枠を言って、米国からは十七・五万トンだと。この発言というのは、既に農水省と調整済みなんじゃないのか、農水大臣である林大臣も知っていたんじゃないのか、知っているんじゃないのかという質問が寄せられるんですけれども、そうなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) TPPは現在交渉中でございまして、日米間の交渉内容についてコメントをすることは差し控えたいと思っております。
 TPP交渉では米について米国側から非常に厳しい要求がなされているということは事実でございますが、米は国民の主食でございまして、また最も重要な基幹的農作物であると、こういう認識の下で慎重に交渉を進めておるところでございます。

○紙智子君 本来だったら、やっぱり米の需給調整が大変で昨年は米価暴落だったと、そういう下で五万トン輸入するなんというような話は一番敏感に反応して抗議しなきゃいけないのが農水大臣だと思うんですけれども、抗議されたんでしょうか、意見述べられたんですかね。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 申し上げましたように、今現在交渉中でございますので、交渉内容、それに関連することについてコメントすることは差し控えたいと思います。

○紙智子君 何か既定どおりの答弁だなと思いますけれども、やっぱり抗議もしないし否定もしないということは、事実上そういうことを容認しているというふうに言われても仕方がないと思うんですね。
 それで、澁谷参考人、今日来ていただいているのでお聞きしますけれども、政府は守秘義務があるからということで、これまでアメリカなどよりも情報開示を拒んできたというのがあります。甘利大臣がこの五万トン発言したというのは、これは加盟国から守秘義務に反するということで何か抗議でも受けたんでしょうか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) お答えいたします。
 御指摘の守秘義務でございますが、TPPの交渉内容については保秘契約に各国が合意をしているところでございまして、ただ、こうした制約の中で議会や国民への透明性をいかに確保するか、各国とも悩みながら対応しているところでございます。
 私ども十二か国で日常的にそこは相談をしながら、これまでも交渉の状況に関する一定の説明を行うように努力をして保秘との両立を図るよう工夫をしてきたところでございまして、甘利大臣の御発言につきましても、こうした観点から米の市場アクセスに関する日米交渉の厳しさについてお話をされたというふうに承知しているところでございまして、各国からこれについて特段意見を頂戴しているわけではございません。

○紙智子君 ということは、特に抗議されているわけじゃないということですから、それぞれやっても、そういうことを国内の状況を踏まえながらやっていいということは、ほかのことについても、譲歩案についても出せるということじゃないんですかね。明らかにすべきではありませんか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 守秘義務等の関係でいいますと、多分私の方がよっぽど際どい対応をずっとしているんじゃないかというふうに自分でも認識をしているところでございますが、ほかの委員会でも同趣旨の御意見を頂戴したところもございまして、例えば、五月十五日に、私が一般向けに、一時間半にわたって説明会を初めて一般の方向けに開催をしたところでございます。資料はホームページに載っけておりましたが、その際の議事メモはまだホームページに載っけておりませんでした。もう動画が勝手にネットに載っているものですからいいかなと思っていたんですが、きちんと私ども内閣官房のホームページに、かなり、二十ページぐらいにわたりますけれども、議事録をアップさせていただいたところでございます。
 また、先日のハワイの会合で私が説明会をやったその内容についても同時にアップしたところでございまして、こういう形で少しずつではございますけれども、引き続き努力をさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 ちょっと今私が質問した趣旨というのは、米の問題で特に問題になって抗議されていないのであれば、ほかの譲歩案を含めて明らかにしても別にいいんじゃないですか。それ、いかがですか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) どの国も、ルールの面について、交渉の状況についてホームページなどで解説をしたりというところはございますけれども、市場アクセスの交渉については、その数字も含めて開示をしている国はないわけでございます。甘利大臣の御発言については、紙先生御自身が予算委員会で大臣と直接質疑されておりますので、私の方からどうこうではございませんが、大臣も、特に幾らならいいよとかそういう話を言ったわけではないということを予算委員会では答弁をしているところでございます。
 いずれにしても、市場アクセスの交渉について、じゃどこまで雰囲気を出せるのかということについては、引き続き検討をしていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 国内において納得できるまともな説明もない中で、やっぱり幾ら決議を守られたと評価されるようにと言われても、これは納得いかないですよね。
 合流に至らなかったと、合流というか大筋合意に至らなかったと、そういう状況の中で、漂流するかどうかという、こういう中でも、甘利大臣は更に前のめりになって、カナダの選挙の時期まで取り上げて、その前に決着付けなきゃいけないような話をされているということも全く言語道断だというふうに思います。そのことを最後に申し上げまして、質問を終わります。