<第189回国会 2015年8月20日 農林水産委員会>


企業の農業参入は、農業の発展ではなく、自らのビジネスチャンスを拡大するもの

○農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今回、四回目の政府質疑ということになります。この間、富山県での地方公聴会とそれから参考人質疑を行いましたが、多くの疑問や不安が出されていました。特に地方公聴会後の記者会見で山田委員長が、この改正案は現場の実態からずれているぞとの思いが強く出ていたというふうに感想を述べられていました。この発言の持つ意味というのは非常に重いというふうに思っていますし、私も同じ実は感想というか思いを、多分委員の方も共通の思いを持ってこられたと思います。
 それで、出された疑問や意見について質問したいわけなんですけれども、今日は農業組織への企業論理の持込み、農業への企業参入という角度から少し議論をしたいと思います。
 農協法の改正案では、非営利規定を削除、あるいは全中の監査から公認会計士監査への移行など、農協組織に企業の論理が持ち込まれ、理事も非農民化が進められています。農業委員会においても公選制から任命制に移行すると。それから、公募という形で農業委員の非農民化が進められようとしているわけです。農業生産法人についても非農家の道が更に広がります。
 それで、今日、その農業生産法人について少しお聞きしたいわけです。まず、農業生産法人の役員要件についてなんですけれども、現行法では、役員の過半が農業の関連事業を含む常時従事者であることと、さらにその過半が農作業に従事することという規定になっているわけですけれども、この改正案は、農作業の従事要件を理事等又は農林水産省令で定める使用人のうち、一人以上が農作業に従事するという規定に改正するわけですよね。六次産業化を推進するために、これは販売や加工に従事する役員を増やすためにそうするんだということを理由としては言われているんです。
 例えば、役員が十人いたとしたら、この十人の、現行法で言うと、農作業に従事する人、つまり耕作者というのは過半の過半ということですよね。だから、過半だから、十人のうち半分が五だけど、プラス一で六と。その過半となると、六人のうちの半分だから、三プラス一で四ですよね。過半の過半といったら四人と。改正案でもって耕作者のところというのは一人になるわけですよ。しかし、この現行法で農業以外の役員というのは、実は六人、過半といったら六人なんだけど、あと四人がいるわけですよね。ですから、耕作者を四人から一人に減らさなくてもこの六次産業化に対応できるんじゃないのかと、四人はいるわけですからと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この農地を所有できる農業生産法人ですが、農業を継続的に真剣に取り組んでいくということを担保する観点で、今委員からお話がありましたように、役員等について一定の要件を設けております。六次産業化の展開については、この要件がネックとなることがあると、こういうことでございます。
 今お話がありましたように、六次産業化を進めていくということになりますと、加工それから販売部門、こういうところの役員を増やそうということが出てくるわけですが、今お話をしていただきましたように、役員の四分の一程度が農作業に従事する必要があるということでございますので、役員を増員しようとしますと、同時に農作業に従事する役員の増員も行うと、こういうことになるわけでございまして、業務量が加工と販売の方が増えていくということでございますが、これに応じた適切な人員配置が行えないおそれがあるということでございます。
 したがって、役員の農作業従事要件については、六次産業化を進めれば農作業のウエートそのものが下がるということも踏まえまして、役員等の一人以上が農作業に従事すればよいと、こういう見直しをするということにいたしたところでございます。

○紙智子君 ですから、それが、四人の人たちはどうするのという、足りなくなるという話をするんですけど、耕作者のところを一人に減らさなくてもやれるんじゃないのかと。やっぱり何で理屈としてそうなるのかがよく分からないんですよね。

○政府参考人(農林水産省経営局長 奥原正明君) 先生の今の事例ですと、十人のうち四人は農作業じゃない、販売とか加工に従事しているということですね。
 さらに、この六次化を進めていくときに、例えば販売体制をもっと強化するときに役員をもっと増やさなきゃいけない、例えば今は四人でやっているところを、そこを八人にしなければいけないというようなことをどんどん考えていったときに、では、その全体の中で四分の一が農作業の方にちゃんと回った体制が確保できるのかという話にも逆になってくるわけでして、これはケースによっていろいろ違うと思います。
 現行の体制の中で泳いでいけるケースはもちろんあるかもしれませんけれども、そこをかなり、加工、販売のところを大きくしていこうというときに、やっぱりこの四分の一は農作業を必ずやらなければいけないというのはネックになるケースが出てまいりますので、そこの障害はやっぱり取り除いた方がいいというのが今回の改正の考え方でございます。

○紙智子君 ケースによっていろいろだということで、これ分からないわけですけど、いろいろな今理屈言われたんですけれども、私はやっぱり一人に別に減らさなくたってやれるんじゃないかなというように思います。
 それからもう一つ、構成員の要件なんですけれども、現行法では農業者以外の者の議決権が総議決権の四分の一以下なんですけれども、今度の改正案では二分の一未満に緩和すると。つまり、農業以外の議決権が増えるということになるわけですよね。現在では、全国で事業を展開している外食産業の、食品産業ですね、それからJRとか商社なんかも参入していますから、農業関係者以外の支配が強まるんじゃないかという懸念が出ているわけです。
 一九六二年に、農業生産法人制度をつくった当時ですけれども、そのときの農地局長、庄野さん、この方が当時、法人組織を認める理由として、資本家的経営と申しますよりは共同経営的色彩の濃い性格のものなんだ、だから株式会社は排除しましたという答弁をされているわけですよね。
 役員構成員要件をますますこれ緩和すれば、株式会社が参入をして資本家的経営色が強まって、耕作者主義というのを原点とした元々の始まりがあるんですけれども、地域に根差した農業者の共同体という農業生産法人を変節させることになるんじゃありませんか。これ、大臣、奥原さんはあくまでも座っておられるということなので、農水大臣お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 座っている者は親でも使えという言葉があるかもしれませんが、御指名でございます。
 六次産業化を進めていくということになりますと、やはり外部から資金を調達するということも必要になってくるという場合があるということでございますので、現在は四分の一以下に制限されている議決権を二分の一未満まで保有可能とするということでございます。そうしなくてはいけないということではなくて、そうしたいという方はぎりぎり二分の一未満までということを、資本を増強するという場合もあるということでやっていこうということでございますので、逆からいえば、法人の総議決権の過半数、これは農業者が保有するということは変わらないわけでございます。
 したがって、生産法人の基本的な性格は維持をされるものと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 誤解のないように言っておきたいと思うんですけど、私は、農産物の加工とか販売とか、地場の企業と農業が連携するということはあると思うんです。北海道なんかも建設業と農家の人と支え合いながら地域を構成するということがあるから、そういうことはあると。しかし一方で、農業をビジネスチャンスにしようというか、何というかな、もうけだけを、地域のことよりもそこのことを考えてチャンスにしようという動きがあるというのも事実だと。ですから、今回の改正が、農業者の共同体としての生産法人を支援することになるのか、それとも企業の農業参入を支援することになるのかというのは議論が必要だというふうに思うわけです。
 そこでなんですけれども、なぜ企業は農業生産法人に参入するのか、農業の発展のためなのか、農家のために参入するのか、この点での大臣の見解をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 平成二十一年に農地法改正をいたしまして、企業のリース方式で農業参入をするということが全面解禁をされました。したがって、このリース方式ということであれば、企業が農業生産法人として参入する必要はなくなると、こういうことでございます。
 実際に参入された企業の状況を見てみますと、経営農地がリースのみであるということにもかかわらず、農業生産法人でないとリースも含めて農地を利用して農業生産を行うことができない、こういうちょっと誤解があるということがある。それからもう一つは、やっぱり農業生産法人になった方がその地域に受け入れられやすいと。みんなと一緒になってうまくやっていこうという意識がそこで現れる、それが地域に受け入れられると、こういう理由もあるようでございまして、そういう理由で、地域の農業者と一緒になって農業生産法人を設立しているケース、こういうのが多くあるところでございます。
 こうした企業が出資するタイプの農業生産法人であっても、先ほど申し上げましたように、総議決権の過半が農業関係者が保有しております。したがって、もちろん農業者の意向に反した経営や農地利用が行われる懸念はないと、こういうふうに思っておりますし、そもそも、元々持っているものをそういう方に売るという行為がまず最初になければいけませんので、その時点でも、最初からそういうことが分かっているような方にそういうことはなかなかしないのではないかなと、こういうふうにも思っておるところでございます。

○紙智子君 ちょっと聞いたこととの関係の答弁になっていないかなというふうに思うんですけれども。
 それで、この後にちょっと聞こうと思っていたんですけれども、日本政策金融公庫が二〇一三年に、企業の農業参入に関する調査ということで、その結果を公表しているんですね。
 企業が農業参入する際に、その成功のポイントを四点ということで書いているんだけれども、その一つが農業技術、それから二つ目は農地の確保、三つ目は販路、四つ目は資金繰りということで、この四点が、参入する場合、成功させるために必要なポイントだと。さらに、企業にとって容易に解決できない課題に農地の確保の問題と農業技術の習得の問題があると。
 企業は、農家を出資母体としてその農家の土地を使う農業生産方式というのは初期コストが少なくて済むというふうに言われているわけです。とりわけ、食品関連企業が農業に参入していくメリットというのは、安定した数量や品質の食材の調達の安定化を図ることができる、それから、消費者のニーズや自社での使いよさに合わせて原料の差別化を図るためなんだということが言われているわけです。
 なぜ食品大手がこの農業生産法人に参入するかというと、それはやっぱり小売チェーン店同士の激しい競争があると言われているわけで、結局その企業の都合に合わせて農家を囲い込むということになっているんじゃないんでしょうか。いかがでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 農家を囲い込むといいますよりも、そもそも、先ほど来申し上げておりますように、我々、産業政策としての部分で、需要をきちっと見極めて需要に応じたものを作っていくマーケット・インというのを申し上げてきておりますので、そういう形にならないとしても、やはりきちっと需要を見て、需要者がどういうものを欲しているかというものは生産者の方でも考えていくということは元々大事なことではないかと、こういうふうに思っておるところでございます。
 先ほど申し上げましたように、リース方式が解禁をされておりますので、平成二十一年から約五年間で、改正前の約五倍のペースでこのリース方式による参入が起こっております。農業界、産業界、連携して前向きに推進していける状況になってきておりまして、今後は地域の農業の担い手になり得る存在だと我々も考えておりまして、特に担い手の不足する地域において、担い手として企業がリース方式で参入していただくということを期待しております。
 制度上も企業が認定農業者になるということは可能でございますので、こういった意味で、しっかりと農業界、産業界が連携をしていくということを進めていきたいと思っております。

○紙智子君 二〇〇九年の農地法の改正で、企業はリース方式で農業に参入することが可能になったわけですよね。二〇〇九年以降農業に参入した企業数や撤退した企業数はどれぐらいあるのかということで農水省に聞きましたら、参入数は、二〇〇九年以降ですけれども、千七百十二法人だと。撤退数は百四十三法人だと。そのうち、株式会社は千六十社が参入して、九十社が撤退しているというんですね。二〇一三年のJC総研レポートによると、青森県では三十一社が参入したんだけれども十二社が撤退と、四割ですよね、撤退したというふうになっているんですけど、なぜこれだけ撤退しているのかということについてはいかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ちょっと青森県の個別の数字が手元にございませんが、全国では、全体で千七百十二法人がこの平成二十一年の農地法改正後の五年間で参入をしておりまして、百四十三法人が撤退と、こういうことでございます。撤退した場合でも、まさにこれリースでございますので、リース契約を解除して、ほとんどのケースで新たな権利移転先において農地が適正に管理、利用されていると、こういうところでございまして、リース方式での良さの一つがここに出ているのではないかと、こういうふうに思っております。
 リース方式での企業参入については、参入企業が農地を適正に利用していない場合はリース契約を解除して農地の原状回復を図ると、こういうふうにしておりますが、先ほど申し上げましたように、ほとんどのケース、百四十三法人につきましては農地が契約解約後適正に管理されておるという状況でございます。

○紙智子君 なぜ撤退したのかということについてはどうでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これは個々の企業のやはり事情によるものが大きいんではないかと、こういうふうに思っておるところでございます。
 したがって、我々としては、個々の企業の事情というのをつまびらかに一つずつ把握をしているわけではございませんが、やはりうまくいかなくて、あるいはいろいろ事情があって撤退されたところの農地がしっかりと新たな権利を移転されたところで適正に管理、利用されると、このことをしっかりとやっていきたいと思っておるところでございます。

○紙智子君 なぜ撤退したのか、個々の事情は分からないというのはちょっと問題だと思うんですよね。やっぱり、自らその制度をつくっているわけだから、どういう理由でどうなったかということを把握してやっていかないと無責任になってしまうと思うんですよ。
 それで、企業を多様な担い手というふうに位置付けてリースで参入を認めたわけですから、それを認めながら、撤退していると。こういう状況というのは、農水省が進める、今のこの担い手の農業者に農地を集積しようという方針なわけですから、これにも反するんじゃありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 個別の案件について申し上げることはいたしませんが、全体として、撤退若しくは解約ということになりましょうか、この理由としては、四〇%が他の農業を営む法人と合併したとか他の農業を営む法人等への権利を譲渡するとか、こういうことになっております。また、販売先の確保が困難とか労働力の確保が困難、農業経営の不振というのが二九%で続いております。それぞれそういう理由があったのではないかというふうに思っております。

○紙智子君 日本生産性本部に経済成長フォーラムというのがありますよね。座長は、政府の規制改革会議の議長代理で元経済財政担当大臣の大田弘子さんで、メンバーには、規制改革会議の農業ワーキンググループの座長を務めた金丸氏、それから産業競争力会議の農業分科会の主査を務めた新浪氏が参加をしています。
 二〇一四年に提言を出しているんですけれども、ここでは、企業の農業参入を加速化させるためには、農業生産法人の構成員要件や事業要件を今後一年から二年で撤廃すべきという提案をしているわけですよ。アベノミクスを推進してきているメンバーが提案している内容というのは、農業の発展のためというよりも、農業を囲い込んで自らのビジネスチャンスにしようとするものなんじゃないんでしょうか、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ちょっと御通告がなかったものですから、その生産フォーラムについてつまびらかに資料を持っておりませんが、いろんな方がいろんな立場で御意見を述べられるというのはあることだと、こういうふうに思っておりますが、それを受けて我々農林水産省としてどうするか、また政府・与党として最終的にどうするのかと、これはしっかりと議論をして、皆様方の御意見を踏まえて決めていかなければならないと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 今回の改正で、この農業生産法人という名称が農地所有適格法人に変わるんですよね。その理由は、農業生産法人でなければリース方式が活用できないという誤解があるんだと、だから誤解を受けないように農地所有適格法人という名称に変えたんだという答弁になっているんです。誤解を解消するために名称を変えるのかなという、これはちょっとよく、私も疑問なんですけれども。
 二〇一四年に閣議決定をした日本再興戦略では、農業生産法人要件の緩和や農地法の見直しというのは、農地中間管理事業法の見直しに合わせて、リース方式で参入した企業の状況等を踏まえつつ検討すると。また、所有方式による企業の農業参入の自由化を検討する場合には、リース方式については事実上耕作放棄されたり産廃の置場になった場合にはリースの契約解除による原状回復という確実な担保があるんだということを踏まえて、これに匹敵する確実な原状回復法の確立を図るということを前提に検討するとしているわけですよね。
 つまり、こういう条件を付けて企業にも農地の所有を認めるということなんじゃないんでしょうか。その先駆けとして言わば農業生産法人の名称を変えるということなんじゃないのかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この名称につきましては、先ほど委員からお話がありましたように、農業生産法人という特別の何か法人格が、例えば医療法人とか株式会社とか、こういうものがあるのではないかと、したがって農業生産法人でなければリースもできないんではないか、こういう誤解が見受けられまして、更なる規制緩和の要望というのも、実はこういう誤解に基づいて要請が行われているというケースもあるわけでございます。したがって、先ほど私からも申し上げましたように、平成二十一年の農地法改正前までは農業生産法人でなければリースも含めて農業生産できなかったわけでございますが、二十一年にリース方式が全面解禁されましたので、農業生産法人でなくてもリース方式での参入ができるようになったと。
 こういうこともあって、いわゆる法人格ということではなくて、農地を所有できる要件を満たしている法人のことを農業生産法人というふうに農地法上呼んでいると、こういうことでございますので、この実態を踏まえて、農業生産法人という呼称をより正確に実態を表すために農地を所有できる法人という意味で農地所有適格法人ということに変更をしたということでございまして、企業の農地所有を推進するために行ったものではないということを申し上げておきたいと思います。
 全体的な農地所有につきましては、先ほど委員から整理をいただいたとおりでございまして、最後におっしゃっていただいたように、二十六年の六月二十四日に決めました日本再興戦略でそういうことが記述がされておりますので、それでしっかりとやっていくということになろうかと思います。

○紙智子君 多様な担い手という言い方で企業にも農地所有を認める、企業的な経営が重視されるということになると、一方で家族経営が切り捨てられることになりかねないんじゃないかと思うんですね。
 そこで、改めてちょっと、農水省はこれまで企業の農地所有を認めてこなかったと、なぜ認めなかったのか、見解をお話ししてください。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これは、企業の農地所有につきましては、企業が農業から撤退して耕作放棄が進んであるいはその場所が産廃置場になるんではないかと、こういう農業、農村現場の懸念があるということでございます。
 したがって、個人とは異なって、法律上の人格である法人の農地所有については、農業を継続的に真剣に取り組んでいただくと、これを担保しなければなりませんので、そういう意味で、先ほど来御議論いただいておりますように、役員それから議決権等について一定の要件を満たす法人、農業生産法人と呼んでおりましたが、これを改め、所有適格法人ということになるわけでございますが、これに限って認めることとしてきたところでございます。

○紙智子君 今、農水省の基本的立場というのをお話いただいたわけですけれども、本当にその見解が維持できるのかなというふうに思うんです。
 先ほど紹介しました経済フォーラムの提言というのは、企業の農業参入を加速するために、土地のリース方式以外に、企業の選択肢を増やすために、一般企業の農地所有を今後五年以内に実現することということを提言しているんですね。フォーラムに参加したメンバーというのは、実は今回の農協法の改革を推進している方々です。こうした経過を見ますと、この提言というのは人ごとじゃないんですよね。企業に農地の所有を認めるということは、私はもう絶対容認できないというふうに思います。
 それで、今世界の流れというのは、企業的な経営の方向ということではなくて、やっぱり家族農業なんですよね。そして、参考人質疑の中でも家族農業への支援を求める意見というのが強く出されていました。農地法で定められた耕作者主義を守って、家族農業や家族的経営への支援こそ強化すべきではないんでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 重ねての答弁になるかもしれませんが、やはり、我々ずっと進めてまいりました農政の改革というのは、産業政策の部分とそして地域政策の部分を車の両輪としてやっていこうということでございますので、家族農業でなくてはならないとか、企業でなくてはならないとか、大きくしなければならないというものではなくて、それぞれの地域やそれぞれの農業をやっていただいている主体に合わせて、言わば足し算的にいろんな方が創意工夫をできるようにしていくと。結果として強い農業とそれから美しい農山漁村が保たれると、こういうことをやっていこうということを両輪としてやってきておりますので、どちらかの方に方向を定めて進めていこうというふうには考えておらないところでございます。

○紙智子君 この間いろいろ出された意見を踏まえても、本当にこれからの農政の向かう方向という上でも本当に大事な岐路になっていて、やっぱり出された意見をちゃんと尊重すべきだというふうに思います。
 それで、ちょっと時間がもう僅かになって、本当は地方公聴会、参考人の皆さんの出された問題で幾つか質問する予定で通告もしていたんですけれども、残り僅かになったので、一、二問できるかできないか、ちょっと最後にお聞きしたいと思います。
 地方公聴会、参考人質疑では、准組合員の問題が一つ出されていたと思います。広島の農協中央会の香川会長が、中山間地ではJAは地域で暮らす人生全てを支えるインフラそのものだと、准組合員利用の規制という問題が入ると地方の農村形態全てにおいて崩壊するんじゃないだろうかと懸念をおっしゃっていました。それから、富山でも、穴田JAの会長は、政府は准組合員の利用実態を五年間調査して判断するとしているけれども、仮に准組合員の利用を制限したならば、地域農業を牽引するJAの機能が大きく衰退するだけでなく、地域住民の生活に大きな影響を与えることは明らかだ、准組合員の利用制限は認められないというふうに述べて、附則五十一条の第三項は削除してほしいという要望を具体的に要求されたわけです。
 これらをどのように受け止めて、そして反映させる考えがあるかどうかということをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ここは何回か御議論いただいてきたところでございますが、まず一条で、農協はあくまで農業者の協同組織であると、これは明記をされております。正組合員である農業者のメリットを拡大するということがまずなくてはならないということでありまして、准組合員のサービスに主眼が置かれて正組合員である農業者のサービスがおろそかになってはならないというふうに考えております。一方で、過疎化、高齢化等が進行する農村社会において、農協が事実上地域のインフラとしての側面を持っている、これも事実でございます。
 したがって、先ほど来、我が党の中の御議論も御紹介をしながらお答えさせてきていただいておりますが、これまで規制がなかったということもあって利用実態が把握できていないということ、また、今回の農協改革でどういう成果が出るか、こういうものも見極めていかなければならないと、こういうことでございまして、いろいろ議論の上、五年間調査を行った上で規制の在り方について議論をするということにいたしたところでございます。
 したがって、この内容を条文化をさせていただいたのが五十一条の第三項ということでございますので、この規定どおりにしっかりとやってまいりたいと、こういうふうに思っておるところでございます。

○紙智子君 今のお答えは結局ゼロ回答みたいな話なんですけど、やっぱりこれ、衆議院の段階からも出ているし、ずっと聞き取りをする中でも出てきている意見ですから一部の意見では決してないわけで、やっぱり一貫して出されているわけですから、ちゃんと受け止めてどうにかするということが必要だというふうに思います。
 ちょっと時間になりましたので、まとめます。
 それで、このほかにも、例えば農業委員会の改正問題で農業委員の選任基準の問題も、前回もやっているんですけれども、含めて次回、ちょっと中途半端になりますので、次回しっかりやらせていただきたいということで、質問を終わります。
 ありがとうございました。