<第189回国会 2015年7月14日 農林水産委員会>


農協法等改革/農家の所得を増やす筋道示せず/多様な担い手を大切にする農協が変質

○農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日から参議院での農協法等の質疑が始まります。それで、私、七月三日の本会議質問の際にも述べたんですけれども、まだまだ解決されていない問題が山ほどありますので、納得できるまで時間を取って質疑をするように求めておきたいと思います。
 初めに、農協法、農業委員会法そして農地法をなぜ改革しなければならないのかと、そのそもそも論の議論をしたいと思います。
 安倍総理は今年の施政方針演説において、戦後以来の大改革に踏み出すと、その第一に農政改革を挙げて、六十年ぶりに農協改革を断行する、農業委員会制度の抜本的改革に初めて踏み出すというふうに言われました。
 経済法令研究会が出している「農業協同組合法」によりますと、戦後の農協法は、農地解放を基礎とする農民解放、農村民主化の政策の一環として、農地解放の成果を維持発展させ、農民の経済的社会的地位の向上を図るための農民の協同の仕組みとして制度化されたものというふうに紹介をしています。
 総理は、戦後レジームから脱却する、あるいは岩盤規制を打破するとも言われますけれども、脱却というのは、この出発点から脱却するという意味ではないかと思います。一方で、林農水大臣は、農協改革は原点に立ち返った改革だというふうに言われました。脱却するというのは原点を変えるということではないかと思うんですが、林大臣は、なぜ原点を変えるというんじゃなくて原点に立ち返るというふうにおっしゃっているのか、これについてお聞かせください。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 農協は農業者が自主的に設立する協同組織でございまして、農業者が農協を利用することでメリットを受けるために設立されているものでございます。したがって、農協は、農業者、特に担い手から見て、その所得向上に向けた経済活動を積極的に行える組織である必要がありまして、農産物の有利販売、生産資材の有利調達に最重点を置いてこの事業運営を行うことが重要であるということでございます。
 農業や農協を取り巻く環境が変化する中で、現在の状況ですが、信用事業、共済事業に力が入っているという一方で、担い手を中心とする農業者のニーズに十分応え切れているのか、また、結果的に、農産物の販売や生産資材購入における取扱いのシェアが低下している、こういう状況があるわけでございます。
 したがって、私が原点に立ち返るというふうに申し上げましたのは、まさにこの農業者のメリットを大きくする、これがこの農協の原点であると、こういう意識でございまして、地域農協が農産物販売、資材の調達等を通じて農業者の所得向上を図るために、担い手を中心とする農業者の皆さんと力を合わせて全力投球できるような環境を整備する観点から、農協システム全体の見直しを行うことといたしたところでございます。

○紙智子君 今、農業者のメリットをつくっていくというようなことを始めとしていろいろ言われたんですけれども、この原点ということでいいますと、農林法規研究委員会が編集している農林法規解説全集というのがありますけど、この中でも、戦後における我が国の農業政策の基本目標は、まず過去の戦前の権力的統制や経済的束縛から農民を解放し、勤労農民の自主的立場を中心として農村の民主化を実現し、それを基盤として農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上を図ることにあったと、この目標を達成するために農協法が創設をされ農地改革が行われたというふうに述べていて、設立される組合は小規模な農業者であり、経済的、社会的に弱者と言われる農民の生産、消費活動の相互扶助、協同による発展を図る協同組合体というふうに書いているわけです。
 原点というのはこういうことだったんじゃないのかなと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) そこまで昔の本を私読んでおりませんでしたが、先ほど第一条についての農業者の定義についてやり取りがあったところでございますけれども、まさに私が原点と申し上げておりますのは、昭和二十二年、農業協同組合法が制定されたわけでございますが、この一条に、「この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。」と、こういうことになってございますけれども、そのことを指しておるわけでございます。
 先ほど、最初の御質問に答えて申し上げましたように、現在、信用事業や共済事業等に力が入っている一方で、担い手の農業者等のニーズに応えられていないんではないか、こういう問題を踏まえて、まさに農協を利用することでメリットを受ける、そのメリットというのは中心的なものとしては所得の向上、すなわち農産物の有利販売と生産資材の有利調達、これをしっかりとやっていただくことによって所得向上をしていくと、これがやはりこの原点ではないかというふうに考えております。

○紙智子君 加えてお聞きしますけれども、農協法の第一条ですね、今お話もありましたけど、農協が農業者の協同組合であるということが明記をされていると。第三条で、「「農業者」とは、農民又は農業を営む法人」というふうに定めています。農協法で、農業者とは認定農業者に限定はしておりません。それなのに、今の農協は担い手農業者のニーズに十分応えられていないというふうにおっしゃって、新たな条文として、農業協同組合の理事の定数の過半数を認定農業者、農産物販売、法人経営の能力を有する者にするというふうに、今回、枠をはめているわけです。
 農協は、大規模農家だけではなくて多様な担い手の組織だと思うんですね。農協の原点から離れて、認定農業者のための農協になろうとしているんじゃないかというふうに思えるんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 農業者が自主的に設立する協同組織が農協ということでございまして、農業者の定義は今おっしゃっていただいたとおり三条に規定があるわけでございますので、繰り返しになりますが、農業者から見て所得向上に向けた経済活動が積極的に行える組織である必要があると、こういうことでございます。
 今回の改革では、地域農協が意欲ある担い手と力を合わせて創意工夫を発揮して、農産物の有利販売等に全力投球できるようにすることで農業所得の向上につなげていくと、こういうふうにしてございます。理事の過半数を認定農業者にするとともに、農業所得の増大に最大限配慮するという経営目的を明確化して、選ばれる農協とするために農業者に事業利用を強制してはならないと、こういう規定をしております。
 農産物の有利販売等がこういうことで実現をしていきますと、当然、担い手のみならず、小規模な農家の方にも、また三条の定義によりますと法人も入っているわけですが、そういう方にも当然メリットがあるものでございますので、農業者の協同組織という基本的な性格は変わらないということだと考えております。

○紙智子君 今、小規模な農業者に対しても、それから法人化したところに対してもメリットがあるんだというふうなお話されたんですけれども、原点に立ち返るというふうに言いながら、理事の構成が変わるということになりますと、これ認定農業者以外の農家の意見をくみ尽くさない農協運営に変質していく可能性が出てしまうと思うんですね。総理がこの間言ってきた戦後レジームからの脱却というのは、言わばその原点を変質させるものじゃないかというふうに思うんです。
 更にお聞きしますけれども、この農業協同組合の事業運営原則を明確化するとか、事業を行うに当たっては組合員及び会員に利用を強制してはならないとか、組合員の相互扶助の組織なのに、なぜこういった形で枠をはめて規制強化をするのでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 農協が組合員に対して農産物の販売や肥料、農薬の購入を強制したり、資金を融資するに当たり資材の購入を条件とする、こういうことがもし行われたとしますと、不公正な取引方法ということで独禁法の適用になりまして禁止をされている行為と、こういうことになるわけでございます。
 農林水産省としても、農協等に対する監督指針において、農協がこのような行為を行えないことを明記をして指導してきたところでございまして、農協の行う事業活動について独占禁止法に抵触する疑いが生じた場合には、公正取引委員会とも連携して厳正にこれまでも対処してきたところでございます。実際に独禁法違反で処分の対象になった農協もあるということでございます。
 今回の農協改革は、地域農協がそれぞれの地域の特性を生かして創意工夫しながら自由に経済活動を行って、農産物の有利販売など農業者の所得向上に全力投球できるようにするような環境を整備していくことによって、担い手を中心とした農業者から選ばれる農協になることをその趣旨としておりますので、この事業利用の強制については、今までもできなかったわけでございますが、これを明確に禁止をして、組合員が農協の事業を利用するかどうか、また、その農協が今度は連合会を利用するかどうかは組合員や連合会の会員である農協の選択に委ねられるべきであるというこの原則を徹底するという観点で、こういうところを明記したところでございます。

○紙智子君 今の御答弁の中で独禁法の違反になるという話があったんだけど、これまだ法律は発動されていませんから、今まででいうとその対象から外してきたというのが実態だったと思うんですよね。
 それで、やっぱり農協自身が相互扶助組織で自主的な組織なわけですから、その中でいろんな問題点や改善策をこれまででいうとやるのが当然だったわけですけれども、それに対して今政府が規制強化するというのはおかしい話だというふうに思うんです。今まだ法改正になっていない中で言われたから、ちょっとそういうふうに言いますけれども。
 戦後、今日の農業組合制度ができてから農業基本法が制定をされましたし、その後、政府は、食料・農業・農村基本法というふうに変えてきました。農協法は、「農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。」と定めているわけですけれども、食料・農業・農村基本法は、「食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。」と定めているわけです。
 国民経済の発展という点では同じなんですけれども、農協法には国民の生活の安定向上という規定はありません。それから、食料の安定供給、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興ということもありません。だから、六十年ぶりの大改革というふうに言うのであれば、農協法の目的を少なくとも政府自身がこの間改正してきた食料・農業・農村基本法と整合性ある中身にするべきではないのかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) まず、先ほどのところでございますが、私が申し上げたのは、現行の、今の法制でも全て独禁法が適用除外に全部なるわけではなくて、先ほど申し上げたようなことは今でも独禁法の適用になりますので禁止をされております。したがって、その禁止違反であれば、処分をされたことは現行の法制度の下であったと、こういうことでございます。その前提で、今回の改革は更にその趣旨を明確にするためにその規定を置かせていただいたと、こういうことでございます。
 今お尋ねの食料・農業・農村基本計画でございますが、団体の再編整備等に関する施策の中で、農協改革については、農業者と力を合わせて農産物の有利販売等に創意工夫を生かして積極的に取り組んで、農業者の所得向上に全力投球できるよう改革を行うことが必要である、それから、地域農協について、農産物販売等を積極的に行って、農業者にメリットを出せるよう、経営目的の明確化、責任ある経営体制の確立等の観点から見直しを行う、連合会、中央会については地域農協を適切にサポートする観点から見直しを行うと、こういうふうに農協改革については記述をしておるところでございます。
 したがって、全体として食料・農業・農村基本計画では、今、紙先生がおっしゃったようなことが書いておりますが、これは農政全般としてやっていくことでございまして、農協改革については今申し上げたようなことを記述をしておりますので両者の整合性は図られていると、こういうふうに考えております。

○紙智子君 整合性は図られているという話なんですけれども、農村地域では多様な農業の担い手とともに住民が協力をして農業の多面的機能の発揮や農村社会の発展や振興に努力をしている、地域の実態に即した農協に発展させていくということは非常に大事なことだというふうに思っております。
 それと、世界の協同組合にも新たに発展してきているわけですけれども、国際協同組合同盟ですね、ICAですけれども、一九九五年に協同組合におけるアイデンティティーに関する声明を発表して、初めて協同組合とは何かということを定義をしました。
 それからまた、七原則を定めているんですけれども、その第七番目の原則のところでは、地域社会、コミュニティーへの関与を定めています。農協が地域社会に関与するということは、地域で農業を振興して地産地消を進める上でも重要だと考えます。中小企業等協同組合法や消費生活協同組合法では、このICAの原則を定めているわけです。
 農協法を改正するのであればこうしたことも明記するべきだったんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(農林水産副大臣 小泉昭男君) 御指摘の国際協同組合同盟、ICAでございますが、この協同組合原則、非政府組織、NGOでございます、そのICAにおいて採択されたものでありまして、これは条約ではございませんで、したがいまして、政府として解釈権を有するものではなく、またその内容に拘束されるものでもないということでございます。しかしながら、農林水産省といたしましては、世界の数多くの協同組合が参加するICAの協同組合原則についても、できる限り尊重してまいりたいと考えております。
 現在、農協法におきましても、加盟、脱退の自由、これは第一原則でございまして、平等の議決権、これは第二原則でございます。出資、配当の制限、利用分量配当でございますね、これは第三原則を規定しているところでございます。
 また、今回の農協改革は、農協の自己改革を促進するという観点から、地域農協が責任ある経営体制を確立するための理事構成や経営の目的などを想定いたしまして、自己改革の枠組みを明確にするとともに、行政に代わりまして経営の再建指導を行う特別認可法人である中央会について、地域農協の自己改革を適切にサポートできるような自律的な組織体系に移行することを規定するものでございます。
 したがいまして、改定後の農協法につきましても、ICAの協同組合原則を尊重した内容となっていると考えております。

○紙智子君 やっぱり積極的に言い続けることが必要だというふうに思うわけです。
 農協は、学校給食などの学童対策や高齢者対策や過疎地域の移動販売車とか、農村だけではなくて都市でもライフラインとしての役割が高まっている一方、ICAは、日本の農協改革の動きに対しては、協同組合には公共、公益のための活動が求められているんだというふうにしているわけです。日本の今度の改革の動きについては、協同組合の原則を侵害していると、そういう懸念を表明しているわけですね。今回の改正案は、国内の動きや世界の流れを今尊重するというふうにおっしゃったんだけど、実際上は参考にしないいびつなものになっているんじゃないかというふうに感じております。
 その上で、次に行きますけれども、安倍総理の施政方針演説について再びお聞きします。
 安倍総理は、今回の大改革は農家の所得を増やすための改革だというふうに言いました。そこで、まず国内の生産額についてお聞きしますけれども、内閣府は国民経済計算、いわゆるGDPを発表しています。生産者の付加価値、もうけ、給与などが含まれる農業の経済活動別の総生産額の推移なんですけれども、これ、一九九四年は九兆七千二百十億円だったんですけれども、二〇一三年には五兆七千五百三十億円ということで減少しているわけですね。これ、農協の運営に問題があったから減ったのかというふうになるのかどうかということがあります。
 それから、食料関連産業の生産額規模を示す統計として、農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表というのがありますよね。ここでは、国産の農水産物の農家の取り分の推移が示されているわけです。五年ごとに発表しているわけですね。前回の発表というのは平成二十二年の二月ですから、五年後ということでいえば、今年の二月に発表するはずなんですね。私、実は三月頃に出ているかということで照会掛けたんですけれども、六月ぐらいになるというふうに聞いていました。ところが、まだ発表されていないわけですね。なぜこれ発表しないのか、統計部長に伺います。

○政府参考人(統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 今お話がありました飲食費の部門別の帰属額等につきましては、産業連関表の確報値に基づきまして、最終消費段階の飲食費が生産段階や加工、流通、外食段階の各部門にどの程度帰属しているかを推計して公表しているものでございます。
 この基となります産業連関表でございますけれども、これまでのパターンでは五年ごとに新しい表が策定をされてきたわけでございますけれども、重要な基礎資料であります経済センサスが五年後から外れて平成二十三年を対象年次として実施されたといった事情もございまして、六年間の間を置いて、本年の六月中旬、つい先月でございますけれども、ようやく公表されたという経過がございます。
 私どもといたしましては、現在、これを受けまして推計作業を行っているわけでございますけれども、産業連関表のデータからお話のありました帰属額等々を推計するためには、膨大なデータの中から飲食関係のデータを抽出する作業でありますとか、あるいは今回の産業連関表は産業分類が一部変更されておりますので、そういった関係を過去のデータにも遡って推計のし直しをするといったことで相応の時間が掛かるところでございます。ではありますけれども、今年度中には結果を取りまとめて公表したいと考えているところでございます。

○紙智子君 今年度中ということは来年の三月ですよね。余りにも掛かり過ぎますよね。そして、これ、総務省のまとめが昨年十二月に出ているわけですよ。何でそんなに時間が掛かるのかというのは非常に不思議に思うわけですね。
 産業連関表は、最終消費から見た飲食費の部門別の帰属額、それから帰属割合の推移が示されているわけです。ですから、国産の農水産物の農家の取り分がどう推移しているかということを検証できるわけですよね。これをやらなくてなぜ所得倍増なんということが言えるのかと。安倍総理は、今回の改革というのは農家の所得を増やすための改革なんだというふうにおっしゃっているわけです。
 農政改革法案の質疑にやっぱりこの必要な資料が出されなければ、ちょっとこれ質問できないんですよね。これ、ちゃんと早く出していただきたいんですけれども、そんな、今年度なんて駄目ですよ。もうちゃんと出していただきたいんですけど、いかがですか。

○政府参考人(統計部長 佐々木康雄君) 補足的に申し上げますと、昨年の十二月に新しい産業連関表の速報値が公表されたわけでございますけれども、いつものパターンでございますが、その速報値のデータを更に精査をいたしまして、附属する様々な表も併せて作成をし、確報値として公表するという手順を踏んでいるところでございます。その確報値がようやく先月の中旬に出たということでございまして、それを基に、確かな数字を基に今推計作業に着手したというところでございます。
 できる限り早くデータをまとめまして公表するよう努力をしていきたいと思っております。

○紙智子君 肝腎な資料をそういう形で、できるだけ早くと言うんですけれども、出さないということは非常に問題だし、重要なやっぱり審議に関わる問題ですから、これは早く出すように要求をしておきたいと思います。
 委員長、よろしくお願いします。

○委員長(山田俊男君) その件につきまして、理事会できちっと相談をさせていただきます。

○紙智子君 二〇一〇年版の産業連関表で、食品関連産業の生産額の規模というのは、一九八〇年の四十八兆円から二〇〇五年に七十四兆円に拡大しているんですけれども、この国産農水産物、言わば農家の取り分については、十二兆円から九兆円に減っているんですね。国産のシェア、農業段階の取り分というのは二六%から一三%に落ち込んでいるわけですよ。これは農協の運営に問題があるからなのかというふうに思うんですけれども、これ、いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ちょっと数字を手元にまだ、先ほど統計部長から話がありましたように、持っておりませんので、最新のものはあれでございますが、農協の何がどういうふうにまずかったからこういう数字になっているかというのは、確定した数字が出た後でもこの相当因果関係みたいなものが出てくるのはなかなか難しいんではないのかなと、こういうふうに思っております。
 多分、今六次産業化ということを一生懸命やろうとしているのも、なるべくそういう生産者の取り分を増やしていこうと、こういう試みであると、こういうふうに認識をしておりますが、やはりライフスタイルが多様化していろんな形態で最終的に食品を消費していただいている、外食とか中食、いろんなものが出てきておりますので、その中で生産者の取り分がどれぐらいになるのかというのは、いろんな諸条件で決まってくるということでございますので、必ずしも農協の経営のみがその原因だというふうになかなか決められないんではないかというふうに思います。

○紙智子君 農協のことが減ってきているということには必ずつながっているとは限らないというお話だったと思うんですけれども。
 私は、これまでの議論の中でも、例えば農商工連携ということが言われたときにも、やっぱり農家の取り分を増やすためなんだという議論があったんですよ。ところが、実際には農家の取り分増えないと。今度、六次産業化という話になって、六次産業化ということの話の中でも、やっぱりこの連関表で見ていくと、農家の取り分というのは減っているわけですよ。こういう状況がなぜなのかということの解明だとかやらないで、農協のシステムを変えれば、これでどうして所得が拡大するのかというのは全くつながっていかないわけですよね。
 農水省は六次産業化を推進するというふうにこれまでも言ってきたわけですけれども、連関表で農家の取り分には入らないわけですよ、六次産業化そのものでいえば。輸出を拡大するという話もありましたけれども、加工品は農家の取り分にはならないわけですよね。その他のいろんな商業関係というのは増えるでしょうけれども、農家の取り分にはつながらないと。
 だから、農水大臣もそうですけれども、この間、安倍総理自身が農家の所得を増やすための農協改革だと言うんですけれども、じゃ、そのシステムを変えることでどうやって農家の取り分が増えていくのかというところについてはさっぱり、幾ら聞いてもその道筋が見えないというのがこの間の議論だと思うんです。これについていかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) そこは、したがって、まず需要を取り込んで全体的な売上げを増やしていくと。こうなれば、生産者の取り分も増えてまいると思いますし、それから、六次産業化の議論でいえば、この基本計画を作成させていただいたときに、農業、農村の所得を倍増するということで、あるいはこの参議院の委員会でも御議論いただいたかもしれませんが、それぞれの分野においていろんな推計をいたしまして、どういう所得の増やし方があるかということをモデルとして提示をさせていただいておるわけでございます。
 詳細な御通告がいただけませんでしたので余り不確かなことを言ってもあれでございますが、連関表で計算したときの生産者の取り分というのは、例えば同じ方が加工をやると、その加工で得たお金は多分生産者の取り分にはならなくて、その人がもらってもそれは加工業をやったということでもらうと、こういうことにもなるのではないかと思いますので、したがって、そういうことも含めて全体の農業、農村の所得を増やしていこうというのが政府・与党の今目指す方向であると、こういうふうに認識をしております。

○紙智子君 安倍総理は、農家の所得を増やす改革だというふうにおっしゃったんですよ。どういう形で所得が倍増するのかは示されてこないで来たと。農水大臣は、今もおっしゃいましたけれども、農協システムの見直しだけで所得が増やせるわけじゃなくて、もっと総合的にやるんだという話になっているんだけど。
 そうすると、安倍総理、総理自身の施政方針演説が国民に誤解を与えてミスリードをしたということになるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 総理の所信は、農業を成長産業として、活力創造プランで決めております需要フロンティアの拡大、バリューチェーンの構築、生産現場の強化、こういうことの農政改革をやっておるその背景において、さらに、プレーヤーである農協や法人、農業委員会といったものの改革も一緒になってやっていく、相まって所得の増加を増やしていこうと、こういう御趣旨であるというふうに理解をしております。

○紙智子君 平行線になるかもしれませんけど、この間の議論を通じても、どこに行っても出てくるのが、なぜ所得が増えるのか分からないという話ですよ。生産現場に行きますと、所得倍増だとかいろいろ言っているけれども、どうして増えるのか何回聞いても分からない、こういうことを、どこでも出される疑問なわけです。
 それで、私は、やっぱり所得に関わる重要な資料も出さないし、そして、総理大臣の所信表明演説の中で言われたことも、いろいろなことは言わなかったですから、もうとにかく所得を増やすための農協改革だというふうにおっしゃったこともミスリードだということも認めないというようなことは全くやっぱり問題だというふうに思います。
 今回第一回目ですから、続けていろんな角度からまた質問をしたいと思います。
 終わります。