<第189回国会 2015年7月7日 農林水産委員会>


米TPA法、日本の影響分析を/マクドナルドハンバーガー異物混入、食の安全を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、TPP、TPAについてお聞きします。
 アメリカにおいて、この大統領貿易促進権限法案、TPA法が六月二十九日に成立をしました。
 私は七月三日の本会議で質問しましたけれども、TPA法が米国議会で可決されると、安倍総理は、大きな前進だ、日本とアメリカのリーダーシップで早期妥結に力を尽くすと述べました。また、甘利大臣は、七月に妥結すれば十月末、十一月頭には署名ができると、前のめりの姿勢を示しています。TPA法の成立を手放しに喜んでいいのかということなんですね。
〔委員長退席、理事野村哲郎君着席〕
 TPA法の条文には、主要な交渉の諸目的というところがありますけれども、その(B)で、一定の期日までに合衆国の輸出のための市場機会を減じている関税そのほかの諸負担を削減ないし撤廃する、あるいは主要な生産諸国において相当高い関税、あるいは補助金体制の下に置かれている農産物の市場開放に優先順位を置く、あるいは交渉相手国の関税を合衆国の当該産品と同じかそれより低い水準まで削減するなどが書いてあります。
 この条文が持つ意味を、日本への影響ですね、分析をされているでしょうか。内閣府、澁谷さん、お願いします。

○政府参考人(澁谷和久君) 御指摘いただいたように、アメリカ時間の二十九日にオバマ大統領の署名を得てTPA法が成立したというところでございます。今御指摘いただいた、TPA法のトレード・ネゴシエーティング・オブジェクティブスという、交渉上の目標というところに、今御指摘いただいたような文言が入っているということでございます。
 二〇〇二年法にも同様の文言が入って、まあ書きぶりが微妙に変わっているところはございますけれども、これについていろいろ御評価があることは承知をしているところであります。しかしながら、二〇〇二年法の下でも、この目標にちょっとでも外れたものは全く議会が承認していないかというと、これは必ずしもそうでもないし、逆に二〇〇二年法の下でも様々なことがあったというふうに承知しているわけでございます。
〔理事野村哲郎君退席、委員長着席〕
 いずれにしましても、我が国としては、いずれ国会で御承認いただけるような内容の協定として、しっかりとその交渉をした上で、合意した内容については再協議を許さないという姿勢を更に一層明確にしていくと、そういう姿勢で臨んでいきたいと思っております。

○紙智子君 私は、中身について分析されているんですかと聞いたんですね。日本は各国に一応国会決議を示して交渉しているということが言われました。アメリカ政府は日本と同様にこのTPA法の条文を示して妥結を迫ってくる可能性があるわけで、それなのにどうしてその条文の中身の持つ意味について分析しないんでしょうか。

○政府参考人(澁谷和久君) 例えば、アメリカの関税以下にしろという目標が二〇〇二年法の下であったわけですけれども、必ずしもそうなっていない協定が結ばれているということも確認をしているところでございます。
 フロマン代表は七月の一日、朝食講演会を、これオープンにしておりますけれども、我々は議会が何を求めているかよく承知している、TPPが議会で承認されることに強い自信を持っているという発言をしているところでございます。そういう中で我々は交渉しているところでございます。
 TPA法の審議、私もずっと中継を見ておりました。TPAではなくてTPPに反対だという意見も数多くあったのを私もずっと聞いておりましたが、そのTPPに反対する意見の多くは労働とか環境に関することであったように私は理解しているところでございます。安倍総理や甘利大臣が日米連携してという話を申し上げておりますが、それは関税とかそういうことではなくて、労働とか環境とか二十一世紀型の協定の中身について、ここは日米がリードしてという、全体の合意を得やすいようにという、そういう努力はしていくという趣旨で申し上げたと理解しているところでございます。

○紙智子君 中身が日本にどういう影響をもたらすのかという話は全然ないわけですよね。
 それで、日米協議が今週九日、十日ということで行われるわけですけれども、このTPA法が成立したことを受けて、アメリカ通商代表部の、USTRのフロマン代表は、日米協議において我々は関税の撤廃を求める以外にも関税の引下げ、輸入枠の拡大など全ての選択肢を使う、例外なく全てが交渉対象なんだというふうに語っているわけです。アメリカ政府は、そういう意味ではTPAを成立させてはっきりとした数値目標などを示して妥結を迫ってくるというふうに思うわけですけれども、大臣にお聞きしますけれども、そういう認識はおありでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) ちょっとフロマン代表がどういう発言をしたか詳細に承知をいたしておりませんが、それぞれ交渉をする当事者であろうかと、こちらは甘利大臣がそのカウンターパートということになろうと思いますが、我々は、どういうふうに相手がおっしゃろうとも、決議を守ったと評価していただけるように最後まで粘り強く交渉していく、変わらずにやってまいりたいと思っております。

○紙智子君 甘利大臣が当事者でやっているから余り自分は中身は知らないということは、ちょっといかがなものかなというふうに思いますよ、農水大臣として。
 TPA法の基準で米国が迫ってくる中で、日本のこの重要農産品を本当に守ることができるのかということが問われてくるわけです。日本政府がやるべきことは、やはりTPPの早期妥結に力を尽くすと言う前に、TPA法が交渉に与える内容を、ちゃんと中身を分析して国民に知らせるということをやらなきゃいけないと思いますし、やっぱり前のめりになって説明責任も果たさないということではいけないと思うんですね。国の在り方を根本的に変えるTPP交渉からは、私はやっぱり、繰り返しになりますけれども、直ちに撤退すべきだということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 食の安全、安心についてお聞きしたいんです。
 ずっと実は気になっていて、これは過ぎ去った過去の話としてはいけないというふうに思っているものですから、質問をさせていただきます。
 全国的に店舗を構えるマクドナルドの異物混入問題、これマスコミでもかなり大きく報道されました。一月でしたけれども、マクドナルドが公表した中身というのは、昨年の八月に、一つは大阪府でポテトに人の歯が混入していたと。昨年の十二月は東京都でチキンナゲットにビニールが混入していたと。それから、昨年の十二月には福島県で、ソフトクリームに混入していたプラスチック片で五歳の女の子が口の中をけがをしたと。また、今年の一月には青森県でチキンナゲットに青色のビニール片が混入していたと。立て続けに異物の混入が続いていたわけですよね。
 女の子が口の中をけがしたということで、これは飲み込んでいたらもっと大変なことになっていたわけですけれども、これらのことについて、農林水産大臣、どのように思われているでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 農業や食を所管する農林水産省といたしましては、国民が安心して食生活を送るために、食品の安全確保、これは国の最も重要な責務の一つと、こういうふうに認識をしております。こういう中で、一連の食品への異物混入事案、これ連続して発生したことは、消費者の食品に対する信頼を失いかねないものと考えております。食品の安全確保に関しては、食品安全委員会、厚生労働省とともに政府一体となって取り組んでいるところでございまして、農林水産省では、農場から食卓までの、生産から消費にわたる安全管理を推進しているところでございます。
 こういう考え方の下で、引き続き食品の安全確保に万全を期してまいりたいと思っております。

○紙智子君 それで、マクドナルドの異物混入が大きく社会問題になったということもあって、厚生労働省は直接マクドナルドから聞き取りを行ったと。一月の五日には、状況確認、原因究明などということで聞いていると。七日の日には、記者会見をやっていますけれども、その記者会見についての報告を受けたと。三回目には、子供がソフトクリームに混入していたプラスチックで口の中をけがしたということもあって、アイスクリーム製造機の対策の報告なども聞いたということなんですけれども、原因究明はできたんでしょうか。

○大臣政務官(橋本岳君) 今回、食品衛生法というものに関わることになるわけでございますけれども、この食品衛生法におきましては、食品事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生を防止するため、必要な措置を適確かつ迅速に講ずるよう努めなければならないということになっております。このため、食品への異物混入等の事案が発生した場合には、事業者において、当該食品に起因する食品衛生上の危害の拡大を防止する観点から、原因究明、再発防止等の措置を行うということがまず基本になっておるわけでございます。
 異物混入の原因というのは様々な要因が考えられるわけでございますけれども、マクドナルドのということで御指摘をいただきました一連の異物混入事案について、事業者が保健所等の指導の下で原因究明に取り組んだものと承知をしております。

○紙智子君 ですから、すごく距離があるわけですよ。事業者が基本的にはやるんだと。保健所がそれを取り組んでいるんだということで、国としてはそれについては分からないということになるわけですかね。
 先日、マクドナルドで働いている方から話を聞いたわけですよ。そうすると、二十四時間営業で、常時店を開けている店舗の場合は、お客様の対応を一方でしながら、もう一方で機械の洗浄とか商品の製造などもやるわけですよ。マニュアルはあるんだけれども、限られた人数で、大変な作業量になることもあると。マニュアルどおりにできていないときもあると。アイスクリームの製造機とかシェイクの機械などの、基本はこれ毎日洗浄しなければいけないということになっているんだけれども、人手不足もあったりして、一週間に一度の洗浄にならざるを得ないときもあると。洗浄するときも、機械を分解してまた組み立てるということもあるわけで、しかも、やっている方はアルバイトが多いわけですよね。どんどん入れ替わると。
 ということの中で、厚生労働省として、異物が混入した原因に労働環境などもあるというふうに思われませんか。

○大臣政務官(橋本岳君) 混入の原因というものはもちろん様々な要因が絡み合ってあるのだろうというふうに思っておりますし、先ほど御答弁申し上げましたように、食品衛生法上は、事業者が事案の状況を踏まえ、食品の安全性を確保するために必要な取組を適確に実施をすることが重要でありまして、保健所等においては、異物混入等に関する個々の食品事業者からの相談に応ずるとともに、健康被害につながるおそれがある場合には、必要に応じて事案に即した助言、指導等を行っているというところでございます。
 厚生労働省としても、自治体と連携しながら引き続き食品の安全性の確保に努めてまいりたいと考えておりますし、あわせて、仮に労働基準法等労働法制に反するようなことがあれば、それはそれでまた監督署等において適切に対処すべきものであるというふうに考えております。

○紙智子君 原因にはいろいろありましてということなんですけど、労働問題が絡むことが多いから聞いているんです。労働問題についての環境が、周辺のその原因の中身としてつかまないんですか、そういう問題もあるということを思わないんですかね。いかがですか。

○大臣政務官(橋本岳君) 重ねての答弁になりますけれども、事業者において原因究明というのはされ、対策は打たれてというふうに私どもとしては報告を受けております。当然ながら、その対策の中で様々なことがあり、労働に関することもあればそれはそのように対応されているのではないかと考えております。

○紙智子君 労働に関わる問題もあれば対応するというんですけど、実際に私がこの問題についていろいろ聞き取りをしましたよ、聞いたわけですよ。それで、実際にどういう対応をしているのかと、それもつかんでいないし、聞いて初めて、どういう対応をしているのかというのは聞き取って分かるという状況じゃないですか。それでいいのかなというふうに思うわけですよ。
 国民の健康や安全、食の安全、安心ということに国はやっぱり責任を持っていると思うんですよ。
 やっぱり関わって、そういう周辺までなかなか触っていないと思うんですね、労働問題まで含めて。
 最初聞いたときは、労働問題については私どものところは係じゃありませんからという話ですから、ちょっとひどいんじゃないかなというふうに思うわけです。やっぱり、そういう対応自体が私は問題だし、異物混入で今回口の中をけがしているわけですよ、国民の健康や安全が本当に責任果たされるのかと。
異物混入にかかわらず、例えば食中毒とか、それから、これまで起きている事例で見ますと、やっぱり必ずいろいろ労働環境の問題や人の問題というのが関わっていることが多いわけですよね。
 極端な例で言えば、かつてありました中国の冷凍ギョーザの問題もありましたし、農薬が混入しているということもあったわけですけれども、ずっと背景を探っていくと、例えばその中には賃金や労働環境の悪さに不満を持って、そういう意図的な例もあったりもするわけで、やっぱり食の安全、安心に労働環境なんかも関わっているというところも含めてしっかりと見て対応するということが必要なんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○大臣政務官(橋本岳君) 異物混入の原因というのは、御指摘をいただきました労働の環境ということも含まれることもあり得ると思いますし、一般論として申し上げれば。また、製造工程がどうだったのか、管理の状況がどうだったのか、様々な要因があろうと思います。そうしたことも含めてその事業者が責任を負うということに食品衛生法上なっているということでございまして、それも含めて御対応いただいているものと考えております。

○紙智子君 だから、対応しているものと考えておりますじゃなくて、それをやっぱりちゃんと引き取って、国として、厚生労働省は自治体任せ、企業任せにしないと。もちろんやらなきゃいけない責任はあると思いますけれども、国自身が、厚生労働省自身が任せにしないで、やっぱりここに、新たに労働環境まで立ち入って対策を取らなければ解決できないんじゃないかということを申し上げたいわけですけれども、いかがですか。

○大臣政務官(橋本岳君) これはもう重ねての問いになりますので重ねての答弁になりますけれども、食品衛生法上その事業者が対応するということになっておりまして、もちろんその原因として労働の環境そのほか様々な問題があろうと思いますから、そこも含めて取り組んでいただいているのであろうというふうに考えておりますし、私どもといたしましても、先ほど御指摘をいただきましたけれども、その事業者からお話を伺っておりまして、その原因究明及び再発防止策の徹底を求める等の対応を行っておりますので、その中で御対応いただいているものと考えております。

○紙智子君 やっぱりそうであろうと思われますということで、もう何というのか、第三者的な立場に立ってしまっているわけですよ。それで本当にいいのかということです。
 何か虫が入っていたとかビニールの一片が入っていたとかというところはまだ異物混入の範囲ですけれども、それ以上、例えばこの女の子が飲み込んでしまった場合は、それこそおなかの中に入って大変なことになっていたってことだってあるわけですから、そういうやっぱり命に関わるような問題も含めてしっかり携わって、その問題で解明をしていくし対策を取るということでは、是非、これ新たにちゃんと労働環境まで立ち入って把握もするし、その打開策ということも考えて出していかなきゃいけない問題だというふうに思いますよ。
 その上で、最後になりますけれども、農水大臣にお聞きしたいんですけれども、今、農業の分野も六次産業化ということで、生産から製造というところも含めて、そして流通、加工というところまで含めてやっていこうというわけですから、そういう意味では、食の安全に関わることというのは、これは厚生労働の話でということだけにできないというふうに思うんですね、他人事じゃないと。
 食の安全、安心を確保するためにはやっぱり国の責任というのが大きいんじゃないかと思うんですけれども、最後に大臣の認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) 六次産業化の取組に当たっても、食の安全性、品質に関わる問題、これ発生しますと、今お話のありました消費者の健康被害、こういうことが引き起こされる可能性が生じるということにとどまらず、六次産業化商品に対する消費者の信頼が失われて、よってもって生産者の経営にも深刻な影響を及ぼすことになりかねないと、こういうことでございまして、農林水産省としては、本年の二月二十日付けでございますが、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定農林漁業者等に対して、食品の信頼の確保に関する課長通知を発出をしたところでございます。
 具体的には、原材料の入荷から最終製品の出荷に至る製造工程の各段階において衛生・品質管理のなお一層の徹底が必要であること、また、金属片などの異物の混入防止を含めて食品の安全の確保のための衛生・品質管理を徹底するためには特にHACCPの導入が有効であること、衛生・品質管理に係る取組についての情報を自主的に提供していくことが消費者の信頼確保につながること等について地方農政局等を通じて周知をいたしまして、認定農林漁業者等に対し積極的な取組を促したところでございます。
 これに併せて、農林水産省としては、相談窓口を明確にするなど、認定農林漁業者等の相談に積極的に応じる体制を整備をいたしまして、具体的な指導、助言を行うことを通じまして六次産業化に取り組む生産者による食品の衛生・品質管理の徹底を推進してまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 時間ですので、終わります。