<第189回国会 2015年6月1日 東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会>


自治体負担は復興のブレーキ/自主避難者への住宅提供を終了する圧力をかけるな/孤独死出さない対策を要求

○東日本大震災復興の総合的対策に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、復興庁が公表しました平成二十八年度以降の復旧・復興事業のあり方についてお聞きをいたします。
 復興庁が発表しました集中復興期間の総括及び平成二十八年度以降の復旧・復興のあり方についてということなんですけれども、復興庁は、五月二十六日に復興推進委員会で、岩手、宮城、福島の知事から意見を聞かれました。それで、今後六月末をめどに、復興推進会議で、二〇一六年、平成二十八年以降の復興支援の枠組みを決定するとしております。
 しかし、市町村長さんは政府と話す機会がないというふうに言っておられます。総括と今後の方向性ということですから、これは県だけではなくてやっぱり市町村や被災者からも聞き取りを行うべきじゃないのかと。発表された内容のタウンミーティングを行うとか、やっぱり方法というか、やり方はいろいろあるんだと思いますけれども、やるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 私自身、今年度に入りまして、市町村長あるいは知事からいろんな、東京へ上京をされて陳情を受けたり議論をしたり、あるいは私自身が被災地へ行って市町村長たちと議論をした機会、今年度に入ってからだけで二十八回行っております。
 意見を聞いてもらえないという市町村があるというふうにおっしゃいましたが、それ以外にも、政務官、副大臣が行っております。多分、今年度に入ってからだけで八十回とか百回とかというレベルの意見交換をしてきております。言っていただければいつでも対応いたしますので、かなりの意見のやり取りはしてきております。

○紙智子君 まとめた形ですから、これを基に、また再度このやり取りをしていただくというのも必要じゃないかというふうに思うわけです。
 今までもちょっと議論の中で紹介されていましたけど、やっぱり被災者の皆さんから様々な要望が出ていますよね。例えば、今お話あったように防潮堤の話も出ていて、防潮堤の再建、整備ということでは、数十年から百数十年の頻度で発生する津波に対応する規模というので、高さ十メートル前後の巨大な防潮堤の建設が進んでいる。被災者の方から、実際に出てくると海が全く見えない、こういうことでいいのだろうかと。高い防潮堤よりもやっぱり避難道をもっと充実してほしいですとか、それから、十数年後になったら再構築ということになったときに費用はどうするのかとか、そんなことも含めていろいろ意見や要望が出ているわけで、市町村や被災者から直接やっぱりそういうお話を聞く場というのは必要なんじゃないのかなというふうに思うんですね。
 今まで何回もやってきていると言われましたけれども、やっぱり引き続いて、当時はなかなか整理されなかったり落ち着かなかったりということの中で、今落ち着いて見てみたら、もっとこれ見直さなきゃということも含めてあるんだと思うので、そこは是非やっていくべきじゃないかと思います。
 それで、復興庁は、集中復興期間における取組の総括ということで言っておられるんですけれども、各分野における取組が書かれていますけれども、そもそもこれは、私どもも読んでいて、集中復興期間で掲げた目標というのは何だったのかなと、その目標が何で、それに照らして現状はどうなっているのかというのがよく見えないんですよ。
 それから、例えばこれまで問題になってきてもいるんですけれども、漁業関係者などの反対を押し切って進めた水産特区の総括というのは特に触れていない。さらに、国は医療費や介護保険の利用料の免除措置を打ち切っているんですけれども、その総括も触れておりません。やっぱり、家をなくし、家族が犠牲になった被災者にとっては、この医療、介護の免除制度というのは本当に切実、仮設住宅なんかに行って話しますと本当に切実な問題としてまずこれ出てくるわけですよね。やっぱりやってほしいというのが出てくるわけで、なぜこうしたことが総括されていないのかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 総括という表現で様々なことを述べさせていただきました。ただ、全ての一つ一つの項目について、これはこうです、これはこうです、これはこうですという形の総括ではないことは事実でございます。全てそこに書いてあるという状況ではないと。まだ途上のものも幾つもございますし、それから、何を目標にしてやって、どういう成果が上がったかと。スタート時点で目標すら立てられないという、どこからどう手を付けていいかという状況だった部分も結構ありますので、目標といいましても、家を建てることを最優先するといったような極めて漠然とした目標を取らざるを得なかったということも是非御理解をいただきたいと思います。
 それから、国民健康保険、介護保険等につきましては、平成二十四年九月末までの間は被災地の全域において免除額全額国が財政支援を行ってきたことは事実であります。これは、被災によって所得が減少した場合に、減少後の所得に基づいて窓口負担の月額上限額や保険料が決まる時期まで特別の措置を講じたものでございます。平成二十四年十月以降も、保険者、つまり市町村の判断によりまして、窓口負担、保険料を減免することは可能でございます。減免による財政負担が著しい場合には、減免額の十分の八以内について国が財政支援を行っているところでございます。
 二十八年度以降の復旧・復興事業のあり方として、いわゆる福島の十二市町村、警戒区域などにおける医療保険制度等の特別措置に必要な事業について復興特会で実施する方向は明確にお示しをさせていただいているところでございます。

○紙智子君 やっぱり医療や介護の免除制度の復活を求める声というのはずっと引き続きありますし、岩手県のように、県独自で、国が切ってしまったけれども、やっぱり必要だということで予算を組んでやっているところもあるわけですよ。だけど、切ってしまった県は、同じように苦しんでいる人たちがいても差が出てくるという状況というのは、やっぱりこれ改善しなきゃいけないというように思うんですよね。
 それから、復興予算の総括についてもお聞きしたいんですけれども、以前もこれは質問したことなんですが、二〇一二年に今後の復興関連予算に関する基本的な考え方というのを発表していて、使途を厳格化したんですけれども、既往の国庫債務負担行為などは例外扱いしたために、例えば武器購入費などに使われているということを指摘させていただきました。
 全国防災事業など復興特会に例外的に計上している予算については、使途をより厳格なものにするために、二〇一六年度以降は予算に計上しないというふうに書いてあるわけですよね、今回。当然のことだと思うんですけれども、全国防災対策費というのは三兆円です。復興予算の一割を超えているわけですよね。これを今回やめるというふうに言っているんだけれども、やめるというふうに言っているだけで、なぜやめるのかという説明が書いていないと。本来だったら、こういう使い方がよかったのかということを分析して、やっぱり総括すべきじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 全国防災事業についてでございますが、国民に広く負担を求めて、そして復興事業をやる、その復興財源の一部が被災地の復興との関連が薄い事業に充てられているという指摘を招くことになりまして、復興関連予算の使途の厳格化というのをこれまで行ってまいりました。
 まずは、二十四年十一月に、全国向け予算については、学校の耐震化等に限定した上で、例外的に引き続き復興特会で計上することとされたことが一つ。それから、平成二十五年七月には、全国向け事業に係る基金についても使途の厳格化を行い、被災地又は被災者に対する事業に使途を限定し、基金の返還要請も行ってきておるところでございます。また、復興特会に例外的に計上している全国向け予算については、例えば学校の耐震化は平成二十七年度中におおむね、これ九八%ぐらいですが、完了する見込みとなっていることでございます。
 こうした総括を踏まえまして、全国向け事業については、復興財源の使途をより厳格にするという観点から、平成二十八年度以降は復興特会において予算計上しないことといたしておるところでございます。

○紙智子君 だから、結論はそういうふうに言われるんですよね。だけど、なぜそうなったかというのがないなと、その総括がよく分からないというふうに思うんですよね。やっぱりそこをちゃんとやらなきゃいけないじゃないかということを申し上げておきたいと思うんです。
 それからもう一つ、孤独死を出さない対策なんですけれども、平成二十七年度に終わる事業とされている震災等対応雇用支援事業についてお聞きします。
 この事業は仮設住宅の見守りなどに活用されているわけですけれども、被災者は、津波で財産をなくし、初めは避難所、それから次は仮設住宅、そして災害公営住宅ということで、移動を余儀なくされているわけです。移動を重ねて、築いてきたきずなが絶えてしまうということもあるわけです。岩手県では、仮設住宅で二十七人、災害公営住宅で四人、宮城県では六十二人の方が孤独死をされたというふうに聞いています。
 孤立を防止するという支援は、やっぱりこの後もますます重要になってくるんじゃないかと思うんです。被災者一人一人に寄り添った支援ということでは、もっとやっぱりここの部分というのは拡充するべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) おっしゃるとおりだと思います。拡充します。現実に、三県合わせて八百人ぐらいの見守りの皆さん方を四百人増やして千二百人にしたいという方向で今作業を進めております。
 これ、仮設が長引く、そして心のケア、健康ケアということだけではなくて、これから新しい公営住宅に帰っていただいた後も、やっぱり引きこもりが起きたり、あるいはコミュニティーがうまく形成できないと、いろんなところから集まってみえますので知らない人たちが結構いて、このコミュニティーができなければ本当の田舎の強さというのは出てまいりませんので、そういうことも含めて、我々がやらなければならないのは、ソフトの部分というのはますます重要度は増していると。おっしゃるように、充実していかなければならないと思っております。

○紙智子君 よろしくお願いします。
 次、山谷防災大臣にお聞きしますけれども、自主避難者への住宅提供の問題です。
 災害救助法に基づいて県は避難者に住宅を提供しているわけですけれども、報道では、二〇一六年に自主避難者への住宅提供を終了するということになっているわけですよね。その中で、県幹部の方は、避難生活が長期化することで復興の遅れにつながりかねない、国も早く終了を決めてほしいと言ってきているというふうにあるわけですよ。
 国は、住宅提供を終了するように圧力を掛けたということがあるんでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(防災) 山谷えり子君) そのようなことはございません。

○紙智子君 防災大臣は、そのようなことはない、国が終了を促すようなことはないということを言われているんですけれども、大臣に、制度上、仕組み上について基本的な認識としてお聞きしたいんですけれども、まず第一義的には知事が判断をするという認識で間違いないでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(防災) 山谷えり子君) 災害救助法に基づく応急仮設住宅の提供期間は原則二年でありますが、東日本大震災で提供しているものについては、特定非常災害特別措置法に基づき、一年を超えない期間ごとの延長が可能となっています。
 同法の規定に基づきまして応急仮設住宅の提供期間の延長を行う場合は、災害救助法に基づく救助の実施期間の特別基準を設けることとなり、都道府県知事が応急仮設住宅の延長について国に協議し、その同意を得た上で延長を決定するという仕組みになっております。

○紙智子君 ということは、第一義的には知事の判断ということでよろしいですね。
 今、国は圧力は掛けていないんだと、そして県が一義的に判断するということで確認をできたと思います。避難者の住まいの安心を確保するために、やっぱり国は積極的な支援をすべきだと思いますので、そのことを引き続き強く要求しておきたいと思います。
 さて次に、財政調整基金の残高の問題で、これは参考人の方ですね、お聞きしたいんですけれども、東日本大震災の被災自治体における財政指標の状況についてということでお聞きします。
 税収は、県においては、消費税の増税など全国的な傾向と同様増えているわけですけれども、例えば岩手県の沿岸部とかそれから宮城県の沿岸部においては、固定資産税の減収などの影響で減少していると、地方債の残高がおおむね横ばいというふうになっているわけです。
 そこで、財政調整基金の残高、これは県も市町村も増えていることになっているんですけれども、その理由について御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(復興庁審議官 北村信君) お答えいたします。
 東日本大震災におきましては、町全体が壊滅的な打撃を受けまして、また、比較的財政力が低く、膨大な復興事業を実施するための十分な財源がないと見込まれる団体が多く被災したところでございます。
 そこで、阪神・淡路大震災等、過去の災害において行われておりました、復旧復興事業の地方負担について起債を充当し、その元利償還金に対して後年度に交付税を講じるという形ではなく、当該年度において必要額を震災復興特別交付税として交付するとした異例の手厚い措置を講じております。
 こうした手厚い措置を講じた結果、東日本大震災の被災団体におきましては、復興事業を実施するに当たり起債による財源確保を行う必要がなかったことから、御指摘のとおり、地方債現在高が大きく増加することなく、おおむね横ばいとなっているというところでございます。
 また、御指摘のありました財政調整基金残高につきましては、今後の復興事業の実施に伴い、財政需要に備えるために基金の積立てを行っているほか、復旧復興事業に係る次年度以降の活用予定額、あるいは精算により返還が予定されている額の影響等もありまして、残高が大幅に増えているものと考えられます。

○紙智子君 それで、復興庁は、基金の残高は震災前と比較し全国平均を上回って増加しているというふうに全国と比較をして書いているわけなんですけれども、活用予定額、つまり予算を繰り越したことで残高が増えているわけです。これまで国費で復興支援を行ったことで自治体は貯金に当たる基金が増えているんだ、だから自治体に負担を求めるというふうにマスコミが書いているんですね。
 私は、これ、誤解を与えるような記述じゃないのかなと、そういうことを書くと間違ったメッセージを与えることになるというふうに思うんですね。だから、全国平均を上回っているというふうにここの書いている基の文章が、その表現がやっぱりそういう間違ったメッセージにつながるというふうに思うので、これは、この表現はなくても通じるので、是非削除すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 確かに、誤解を招く、マスコミの皆さん方が残念ながらそういう趣旨のことを書いていらっしゃることは事実でございますが、事実としてあるのは被災自治体の財政調整基金が積み上がっていると、これは事実であります。ただし、それには、先ほど審議官がお話しさせていただきましたように背景があります。
 私は、それだけではなくて、今まで一回も、財政調整基金が上回って積み上がっているからということを理由にしようと思ったこともありません。というのは、これだけ膨大な事業を各市町村がやっておりますので、これからメンテナンス、維持費等も含めまして相当な負担が生じてくる可能性がありますので、どちらかといえば少し懐に貯金を持っていてもらわなければ、事業が終わった後、大変苦しい目に遭うんじゃないかという心配がありますので、むしろ少し貯金を持ったぐらいでやってほしいなという思いを持っている状況でありまして、財政調整基金が積み上がっているから自己負担をという発想は考えたこともありませんし、一回も申し上げたことはありません。

○委員長(櫻井充君) 紙さん、時間が来ました。

○紙智子君 はい。
 自治体自身は早く復興を進めたいというふうに思っていますけれども、資材や人材不足で思うように進まないということで、復興予算をレビューするというふうに大臣、前に言われましたけれども、一方ではモラルハザードということも言われていて、私はやっぱり、そうじゃなくて、使えないでやっているというのは多いと思うんですよ。
 今回、復興庁が発表した……(発言する者あり)

○委員長(櫻井充君) 時間です。もうまとめてください。

○紙智子君 時間ですね、はい。
 自治体負担を求めれば、これからピークを迎える復興にブレーキを掛けることになるんじゃないかと、そういうふうに言っている首長さんもいらっしゃいますので、そこは、自治体負担の押し付けは是非やめていただきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。