<第189回国会 2015年5月27日 国際経済・外交に関する調査会>


経済交渉は「衰退産業に対する保護は見極めが重要」(渡邉参考人)などと答弁

○我が国の経済連携への取組の現状と課題について
☆参考人
 内閣官房内閣審議官 澁谷和久君
 慶應義塾大学総合政策学部教授同大学院政策・メディア研究科研究委員 渡邊 頼純君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。お二方、どうも今日はありがとうございます。
 澁谷審議官は度々農水委員会でもお聞きしていますので、渡邊参考人からお聞きしたいと思います。
 渡邊参考人は、以前、ガットの事務局や外務省の官房参事官なども経験をされて、経済外交問題に大変お詳しいというふうに思いますが、二〇一三年末の熊本日日新聞のインタビュー、さきにいただいている資料の中にありますけれども、その中で、TPPは言わば日米軍事同盟の経済版だというふうに述べられております。それはどういう意味なのかということを一つお聞きしたいのと、それから、TPPは十二か国の交渉ですので、この日米軍事同盟の経済版という価値観をそのまま十二か国全ての国に共有する価値観ということになれば、これは少し飛躍があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○参考人(慶應義塾大学教授 渡邊頼純君) 紙先生、ありがとうございます。
 そうなんですね、私、別のところでも、TPPというのは日米の経済安全保障だという言い方をしております。軍事面あるいは政治面での安全保障につきましては日米安全保障協定があるわけでございますが、実は経済については、日米の経済関係について、何といいましょうか、これを見ていく枠組みというのは、これまではマルチのガットないしはWTOしかないわけですね。
 ですから、戦後の日米の経済関係を見ますと、例えばそれは一九五〇年代の繊維に始まり、そしてそれが鉄鋼、造船、ボールベアリング、そしてテレビも白黒テレビに始まりカラーテレビ、いつも日米の間で、日本側の輸出の自主規制でありますとか、あるいはボールベアリングの場合のように一方的にアメリカからアンチダンピング税を取られるとかそういう形で、日本は、アメリカのマーケットの大きさ、あるいはアメリカのマーケットに依存している日本経済の特質として、やはりアメリカからの圧力に対してなかなか抗し難いというところがあったと思うんですね。
 今回のTPPというのは、一つは、これはある意味で日本経済にとって究極のマーケットであり、日本経済にとって究極のパートナーであるアメリカとの間で、そういう貿易紛争とか経済紛争というものをルールに従って解決する、そういうルール、つまり英語だとリーガルインスツルメント、法的な手段といいましょうか、法的な道具といいましょうか、そういう面が非常にあると思うんですね。
 ですから、TPPというのは十二か国でございますが、その中でGDPで八割を占める日米があらゆる広い分野、マーケットアクセスに限らず投資とか知的所有権とかいろんな分野でルールを共に作って、その共に作ったルールに従って、問題があったときには紛争解決をルールに従ってすると。かつてのように、アメリカから圧力を掛けられて、日本側が泣く泣く自動車の自主規制をするといったようなことではなくて、ちゃんとルールに従って、場合によっては日本がアメリカをTPPの紛争処理の中で訴えるというようなこともあるかもしれません。
 ですから、日米安全保障の経済版であるということを申し上げたのは、そういうルールに基づいた問題解決、紛争防止、そういうことがこのTPP協定によってできるということでございます。ですから、軍事同盟の、何といいますか、ホットウオー的なことを想像していただくとちょっとミスリーディングになってしまうと思います。
 ですから、言葉遣いは私も気を付けなきゃいけないと思うんですが、日米の経済同盟というのは、日米の経済安保というのは、そういう形でお互いにルールに基づいて問題解決をし、あるいは問題を未然に防いでいく、そういう法的な受皿がTPPであるという意味で申し上げているわけでございます。
 以上です。ありがとうございます。

○紙智子君 参考人も資料の中で書いておられますけれども、TPPの出発というのは二〇〇六年のP4協定から始まっていて、この四か国で例外なき関税撤廃と非関税障壁の撤廃を原則にして始まっていると。恐らく、最初のところはそれぞれの国にとって利益になるという中身で話し合われて出発したんだと思うんですけれども、二〇〇八年に米国がここに参加をして、より高度で包括的な自由化を進めようということで、P4協定にはなかった中身を加えて大きくやってきているんですけれども、それ以降、私、性格が変わってきているんじゃないのかなというふうに思うわけですよね。
 今年四月の末に日米の首脳会談があって、その中でも、経済のみならず、これは安全保障に資するんだという、そういう文言も入っているんですけれども、本来やっぱり自由貿易というのは対等、平等の立場でやられるべきもので、お互いの国の違いを尊重しながらやって成り立つものだというふうに思うんですけれども、やっぱりこの交渉というのは、参加各国のそれぞれの国の経済や国民生活に非常に大きな影響を与えるにもかかわらず、国民や議会の、交渉の内容が秘密になっている、全然肝腎なことが知らされないままやられているということ自体、各国の主権を侵害する可能性もあるんじゃないかというふうに非常に心配もしているわけですよね。
 ちょっとそういうことも含めてですけれども、もう一つ参考人にお聞きしたいのは、資料の中を読んでいきますと、保護主義に対して批判的だなというふうに思います。その保護主義というのはどういうことなのかということと、それから、各国が重要な産業をそれぞれ保護するというのは当然だというふうに思うんですけれども、やっぱり農業なんかもそうなんですけれども、主要な国で農業を保護せずに完全自由化やってうまくいっている国があるのかなと。まあシンガポールという国はちょっとまた違うんですけれども、それ以外でそういう国があるのであれば紹介をしていただければと思います。

○参考人(慶應義塾大学教授 渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。
 私、もう今日の場に来るときに、共産党の先生からはきっと難しい質問が来るだろうなと考えていたんです。といいますのは、私、一九九四年にWTO特別委員会というのがありまして、そこにやっぱり参考人として意見陳述を求められたことがあります。共産党の先生の御質問というのは、本当にある意味で非常にアカデミックなんですね。ですから、そういう意味では学者としては非常にうれしい部分もあります。
 御質問にお答えしようと思いますが、そうなんですね、確かに二〇〇六年にP4としてスタート、発効したときというのは、これは四か国、ニュージーランド、それからシンガポール、ブルネイ、そしてチリでございます。これ、いずれも、どちらかといえば小国で、オープンエコノミーというのをその性質として持っている非常に開放度の高い国々です。ですから、そこでは非常に例外なき関税撤廃ということを掲げていて、これら四国は確かにほとんど例外がないですね。一部、若干ございますけれども、ほとんど例外がない。非常に高いレベルの、さっきのガットの二十四条の表現を借りますと、本当に実質的に全ての貿易を自由化しているということが言えると思います。
 日本が入るまではやはりその方向で来たと思うんですが、日本が二〇一三年の七月二十三日から交渉に入った段階から大分変わってきたと。それは、アメリカが変わったというよりは、むしろ日本が入ることによってTPPの在り方が大分変わった。それはまさに、先ほども澁谷審議官が言われたように、各国のセンシティブなセクターに配慮するという形で変わっていって、ある意味で一番配慮してもらっているのは日本かなと。特に日本の農産品において配慮が各国から提示されているというのは、日本にとっては非常によかったことだと思っております。
 ですから、アメリカが入ったことによって変わったというよりは、日本が入ることによって、少なくともマーケットアクセスの部分については各国のセンシティビティーに配慮するということが基本線になったというふうに申し上げていいんではないかなと思います。
 それから、アメリカが入ったことによってTPPの安全保障的な面が強調されるようになってきたというお話でございますが、ただ、これは翻って考えてみますと、経済統合で安全保障的な要素を全く勘案しない経済統合というのはあるのかと。
 私どもは、やはりガットとかWTOの多国間の貿易体制が一番いいと思っています。しかし、実際には、先ほど申しましたように、ジェトロの調査によると、二百五十件以上のFTAがある。これ、二百五十件のFTAは、ほぼ全て必ず政治的な検討に基づいて行われていると思いますね。
 例えば一番いい例はEUであって、EUも当初、政治的な思惑、つまり、東を見たらソ連があって、西を見たらアメリカがあって、あの伝統のヨーロッパが沈没していく、ヨーロッパが両大国に挟まれてその存在感が薄れていっている、そんな中から一念発起してヨーロッパの復興、没落する西欧ではなくて、もう一度復活する西欧というのを取り戻そうとしたと思います。
 ですから、経済統合というのは、やはりそういう意味では何らかの政治的な思惑あるいは安全保障上の思惑というのに基づいて行われている。TPPもやはりそうだと思います。
 FTAにせよ、EPAにせよ、TPPにせよ、そういう政治的な検討を踏まえた、政治的な考慮を踏まえた経済統合体の価値は、それがどこまで本当にオープンかということだと思うんですね。
 ですから、そういう意味では、先ほど長峯先生の御質問にお答えしたときに申し上げたように、中国に対しても、中国を敵視するものではない、将来中国が入ってくることも想定しております、中国を排除する目的がこのTPPにはありませんということを明確にするということはとても重要だと思うんですね。それによって、TPPのオープンネスといいましょうか、開放性というのを維持しているということ、これはアメリカも日本も恐らく共有をしているということだと思います。
 主権を侵害しているのではないかという御指摘がございました。
 これも、経済統合体、例えばEUのような関税同盟、NAFTAのようなFTA、そして今のTPP、いずれも、関税自主権という関税を自ら課すという国家主権、経済主権の一部を譲渡しているわけですね。ですから、経済統合をよしとするということは、つまり一定の国家主権に対する制限を諦めて、その代わりに経済的なメリットを得よう、獲得しようとして努力をするということだろうと思います。ですから、主権は確かに一部、関税自主権という経済主権については制限をするわけですけれども、それによって得られるメリットが大きいということだろうと思うわけでございます。
 保護主義について御質問がございました。
 私どもは、ガットにしても、WTOにしても、あるいはFTAにしても、何といいましょうか、ちょっと表現は悪いですけれども、丸裸にすることが目的ではないと思います。そこに、まさにこのTPP交渉がそうでありますように、センシティビティー、つまり非常に触れば痛い部分があるということをお互いに理解をする、そしてそれに対して一定の考慮をお互いに払う、その上で可能な限り貿易に対する制限、投資に対する制限を下げていこうということであって、国際経済学の教科書の中にあるような完璧な自由貿易というのを求めた経済協定というのはないんだろうと思うんですね。ですから、そういう意味では、やはり適切な保護をセンシティブな分野に与えつつも、しかし可能な限りその保護は減らしていくということが基本線だろうと思います。
 では、保護主義はどうしていけないかと私が考えているかといいますと、保護主義というのは、比較優位を失って衰退産業になってしまっている産業をいつまでも保護していたのでは駄目だということなんですね。ですから、もう一度保護することによって息を吹き返す産業もあれば、もう衰退産業になって比較優位を失っていることが歴然としている産業もある。そこに国民の、大事な国民から与えられた税金を掛けて補助金を与え続けるというのは、これは血税の浪費になる可能性もあるわけですね。
 ですから、そこは、衰退産業に対する保護というのはやっぱり見極めが重要だと。日本は、やっぱりそういう意味では、農業についてはそういう見極めを今しつつあるのではないかなというふうに考える次第でございます。
 以上です。ありがとうございます。

○紙智子君 時間が来ていますので、また後で時間があったらお聞きしたいと思います。
 終わります。

   ――(略)――

○紙智子君 ありがとうございます。
 先ほど時間がちょっと足りなくなって、渡邊参考人に途中まで答えていただいたんですけど、あとやっぱり日本農業の問題で、先ほどの話の中で、ちょっと確認もしながらなんですけれども、衰退していく傾向にあるところはやっぱりもう一回見直さなきゃいけないんだという話だったのかなと思うんですけど、日本農業がそういうことなのかということと、私はやっぱり食料というのはその国その国の基本になる問題、農業もそうですけど、したがって、その保護というのは必要なことだと思っていますし、世界を見ても保護をしていない国というのはむしろない。アメリカもそうですし、ヨーロッパなんかもそうだと思うので。
 日本は、じゃ特別保護をされ過ぎているかというと決してそうではなくて、むしろやっぱりもっとちゃんとやった方がいいというふうに思うぐらいなんですけど、そういうふうに思っていることについてどう思われるかということを一つお聞きしたいと。
 シンガポールなんかは本当に小さな国なので、農地造るといったって無理ですよね、そもそも。だから、やっぱり最初から国の行き方というのは、その道は無理なので食料は輸入というふうになっていて、その代わりということでいろいろやっていると思うんですけど、やっぱり基本的には日本のように作れるところは作って、食料のないところもあるわけですから、貢献していくということが必要じゃないかということで一つお聞きしたいということ。
 それから、澁谷審議官にお聞きしたいんですけれども、先日、五月の十五日に一般の方を対象に初めてTPP対策本部主催の説明会を開いて、そのときに澁谷審議官が説明をされたということなんですけれども、国会決議を、相手国に対して今まで何回も日本の立場というのを言ってきたんだと。まだ個々別々のことについては決まっていなくて、パッケージで議論をしているから、一品目ごとに内容を決めているわけではないと。論点はほぼ出尽くしているので、あとは政治決断だというふうにおっしゃったというふうにちょっと聞いているんですけれども、あとは政治決断ということは一体どういうことなのかということについてお話しいただければと思います。

○参考人(慶應義塾大学教授 渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。
 紙先生、ありがとうございます。
 さっきの保護主義との兼ね合いで、保護主義はいけないと。保護主義というのは、衰退していく産業を保護すること、これがいけないんだという、そういうことを申し上げたのに対して、果たして日本の農業をそういう衰退産業と考えているのかという御質問が最初にあったかと思います。
 私は、日本の農業というのは衰退産業だとは全く考えておりません。これは、私もこういう分野いろいろ見てまいりまして、例えば北海道なんかに行きますと、もう耕作放棄地、耕作放棄された土地というのが北海道なんかは出ないんだそうですね。つまり、誰かが耕作をやめるということになりますと、引退されるとかで、そうすると必ず手が挙がって、それを貸してくれ、ないしはそれを買いたいというような形で、北海道なんかでは耕作放棄地が出てこないというようなお話も聞きます。
 私が北海道の十勝の方で見学をさせていただいたある農家は、四百ヘクタールの土地を耕して、ジャガイモでありますとか麦でありますとかてん菜大根を作っていらっしゃいますが、さぞかし四百ヘクタール、日本の今の一農家当たりの平均の面積は二・一ヘクタールぐらいですから、二百倍といったような物すごく大きな規模の土地を持っていらっしゃるわけですが、何人ぐらいでやっていらっしゃるんですかと言ったら、その方は三十八歳ぐらいの方でしたが、自分と家内、二人でやっていますと、こう言われるんですね。二人で可能なんですかと言ったら、これを見てくださいと言われて拝見したら、農機具、農機具といいましても非常に大きな農業トラクターなんですね。その名前が、何かアマゾネスというんですね、すごい名前です。どこで買われたんですかと言ったら、これはフランスでやっている農機具の博覧会に行って、そこで買い付けてきたものですと。それで、その機械は自動的に、例えばジャガイモのつるを植えて、上から均等に土を掛けてという、全部オートマチックでやるらしいんですね。自分は乗り込んで冷房とGPSのスイッチを入れたら、寸分のたがいもなくきちっと四百ヘクタールに植え付けていくと、こうおっしゃっていました。
 そういう農家が、やはり少しずつ北海道や九州やというところで出てきているということが非常に農業の将来を明るくしているなと私は思いました。
 あるいは、長野県、本州ですと、川上村の村長さんとお話をするチャンスがございましたが、そのときに川上村の村長さんが言われたのは、自分のところでは葉物野菜、特にレタス、白菜、キャベツといったようなものを作っていらっしゃる。これが、かつて物すごい寒村で、本当に大変だった寒村の村で、葉物野菜をブランド化することによって、今、見事にこの川上村の再興にこれが重要な役割を果たしているというようなお話を聞きました。
 これはオフレコでと言っても、オフレコになるかどうか分かりませんけど、その村長さんに、何といいましょうか、川上村の成功の秘訣は何ですかと聞いたら、いや、この村は寒村で貧し過ぎてJAが振り返ってもくれなかったんですと、こう言われたんですね。そういうところもございます。
 ですから、日本の農業というのは、私は衰退していく産業どころか、むしろこれからますます伸びる可能性があると思っています。ですから、私はもうかねてから、TPPというのは日本の農業を良くするための起爆剤になるんだということを申し上げてまいりました。
 安全性が確かに重要だということはそのとおりでございます。ただ、私も先生方にお配りさせていただいた著書の中に書いてございますけれども、OECD、経済開発協力機構の調査などによりますと、日本というのはやっぱり、保護のためにお金を使っている順位は、一番がアイスランド、二番がノルウェー、三番がスイスで、四番目ぐらいが日本、五番目が韓国といったような、そういう序列なんですね。今挙げた国は全て、WTOの農業交渉においても農業の自由化には反対な国あるいは慎重な国ということになっております。
 これだけ保護のためにお金を使っている、世界で見ても第四位ぐらいに位置しているということなんですけれども、実はもう一つOECDの報告書は書いていることがあります。それは何かというと、モアサブシダイズド、モアポリューテッドだと言うんですね。つまり、補助金を出していれば出しているほど実は汚染されているという言い方をしています。それは、ある意味で、補助金を出している、単位面積当たりの収量を増やさなきゃいけない、それで化学薬品あるいは肥料、農薬を使うということを意味しているんだろうと思います。これも、ある調査によりますと、日本の単位面積当たりに掛ける農薬とかあるいは化学肥料、それの量というのは、アメリカの平均的な農家の六倍から八倍だというふうに言われています。
 ですから、是非、紙先生にお願いしたいと思うのは、そういう日本の農業の安全性というものを本当にチェックしていただきたいと思うんですね。日本にはラルフ・ネーダーみたいなきっすいの、何といいましょうか、消費者運動をする人がいません。主婦連、地婦連、いろいろありますけれども、皆さん、農協と非常に関係が深いんですね。
 ですから、私も、ある農家を訪れて、あれはメロンの農家でした。メロンというのは、収穫期が近づくとどれぐらい甘いかという糖度検査をいたします。大きな注射器みたいなものをぐっと入れて、それをぐっと抜いて、中の実がどれぐらい糖分があるかというのをチェックします。私は単純に、その糖度検査した後のメロンを、もったいないから皆さん食べるんでしょうと聞いたら、いやいや、そんなの絶対食べないですと。物すごくもう農薬を塗りまくって害虫が付かないようにしていますから、とてもじゃないけど怖くて食べれませんということを言われました。ですから、そういうことを考えますと、是非この際、日本の農業の本当の安全性ということも考えていただければ有り難いなと思う次第でございます。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 五月十五日の一般向けの説明会での私の発言についての御質問でございます。
 実は私、今御指摘いただいた点、二つのことを別々にお話をしたものでございます。
 よく言われる二つの疑問があるわけでございまして、一つは、農産物の交渉で、物品の交渉で、もうさすがに大詰め、もう何度も何度もやっているんだから、大詰めなんだから、特に日米、もうずっとこれだけ長いことやっているんだから、しかももう大詰めだと言っているんだから、さすがに例えば牛肉とか豚肉はもう終わっているんじゃないかと、最後残された品目はちょっとなんじゃないかと、どうなんだと、こういうことをよく聞かれますということと、もう一点、他方、知的財産なんかは物すごくたくさんの論点がまだ未解決でずっと残っているじゃないかと、これがたった一回、最後の閣僚会議をやって本当に終わるのかと。私は、この二つのよく言われる疑問点に対してそれぞれお答えをしたものでございます。
 最初の農産品については、今御指摘あったように、一品目ずつ潰していくというやり方ではできないんですと。例えば、アメリカとある程度やっても、同じ品目についてほかの国が違うことを言うと。ですから、ジグソーパズルのピースを一つ一つ埋めていって最後に一ピースという形じゃなくて、ほかの国とやっているとジグソーパズルの形が途中で変わるんです、物すごく難しいんですという話をいたしました。したがって、これは全部パッケージで決めなきゃいけないので、何かが決まっていてだんだんだんだんということ、そういうことにはならないんですという話をしました。
 二つ目の知的財産に関して、物すごく多くの論点が未解決で残っているのは事実だけれども、交渉官は相当長いこと交渉をしています、お互いの交渉官の家族構成まで熟知していますと。そういう中で、どの論点についてどの国がどういう立場で何がセンシティブなのかということはみんな分かっていますと。したがって、最後の最後、ある国がどうしても欲しいこと、ある国がどうしても守りたいこと、それを全体のパッケージでどうやってまとめていくかということは最後の段階で調整が可能なのではないかということを申し上げたと、この二つのことを申し上げたという趣旨でございます。