<第189回国会 2015年4月22日 国際経済・外交に関する調査会>


飢餓削減への自給率の向上を。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 三人の参考人の先生方、どうも今日はありがとうございます。
 それで、人口問題、食糧問題というのは本当に大きな問題で、それぞれ関連もあるわけですけど、今日はまず三人の方にお聞きしたいんですが、食糧問題で国連食糧農業機関、FAOが昨年の九月に報告を出しているわけです。世界で飢餓で苦しむ人たちが二〇一二年から集計期間で約八億五百万人となったと。過去十年間で見ると一億人以上減っているんですね。九〇年代からでいうと二億人以上減少したという報告になっています。
 報告書によりますと、発展途上国全体での飢餓人口の減少は、適切かつ即時に対応が図られるならば、二〇一五年までの飢餓人口の割合を半減するというミレニアム開発目標ってありましたけれども、そこに向けて可能性が出てきているということなんですけど、同時に、全体的に改善は見られているけれども、なお飢餓人口の削減においては後れを取っているということも指摘しています。
 それで、日本のことを考えると、食糧の多くをやはり海外からの輸入に依存しているということもあり、その一方では結構残渣を捨てたりということもあるんですけれども、日本の現状も踏まえながら、今後解決していくためにはどうしたらいいかというところなんです。
 私自身は、少なくとも日本は国民の食べる食糧はやっぱり自分たちで賄えるぐらいの国内の生産を増やすということ、自給率を上げていくということがやっぱり非常に大事だと思っているんですけれども、三人の先生方、それぞれ一言ずつお願いできればと思います。

○参考人(加藤久和君) 済みません、私ちょっと専門的な知識が余りないので、きちっとしたお答えができないので、御勘弁いただければと思います。済みません。

○参考人(佐藤龍三郎君) 私もちょっと専門的なことはできませんが、ただ、一つは、飢餓人口が増えているということは、やはりアフリカなどで人口増加率が非常に高くて、貧困率が改善しても人口は増えてしまうというふうな、そういうこともあります。人口政策というのは非常にデリケートな問題ではありますけれども、やはりそういう地域というのは女性の地位が低いとか、非常にそういった問題がありますので、主に女性の地位の向上とか、あるいはまた子供の死亡率が高いということもありますので、そういったことの向上ということを通して、そういう人口増加の激しい地域ではそこに何かブレーキを掛けていくような形でのサポートということもあっていいのではないかと思います。

○参考人(柴田明夫君) 飢餓人口が二〇〇八年のときは十億を超えていたと思うんですけれども、これは確かに減ってはいるんです。十億を超えたときは世界的な食糧危機で、穀物価格が高騰したときであります。値段が上がることによって買えない層がまた増えたという問題があります。じゃ、値段がなぜ上がったのかというような部分では、一つはやっぱり投機マネーの影響というのもあると思うんですね。
 マーケットは非常に不安定化してきているということでありますと、一つは正しい情報を提供していく、こういうことが必要かと思いますし、分配の問題というのも重要なんですけれども、ただ強制的に分配してしまうと、値段が下がることによって翌年の生産が抑制されて、結局同じことが起こってしまう。もっとひどいことが起こってしまうという可能性もありますから、やっぱり現地における生産能力というのを付けていくということが基本なのかなと。アマルティア・セン先生ですね、飢餓と食の部分で言っているエンタイトルメントというところの重要性が今問われていると思います。

○紙智子君 ありがとうございます。
 もう一つ、柴田参考人にお聞きしたいんですけれども、日本の食糧自給率の問題に関わって、先ほどもありましたけれども。
 それで、柴田参考人、事前に配られた資料を見ておりまして、自給率について、一九六〇年の七九%だったのが二〇〇〇年四〇%までほぼ一貫して低下をして、ここ数年は三九%で低迷していると。その主な原因の中に、米の生産量の減少の問題、それから稲作農業というのが、地域経済、ひいては国土を丸ごと保全していくために不可欠な生産レベルを下回ってしまったんじゃないかという指摘がありました。農村において、農地、水、水源涵養林、人という構成要因が丸ごととして働いてきたんだと。それを維持保全してきた最大要因が稲作農業だったというふうに考えていると。
 しかしながら、米生産が八百万トンを割り込むようになったら、もはやこの国土を丸ごと保全していく機能が決定的に失われてしまうんじゃないかというふうに懸念をされているわけです。自給率目標の引下げが、先ほども話があったんですけれども、その現状を容認することになりはしないかと。つまり、五〇%一応目標だったのが四五%になっているということについても指摘されているんですけれども、この現状を打開する在り方ということで、どのようにお考えかということ。
 あわせて、今報道も毎日されていて、経済連携協定という形でTPPなんかも今交渉されている最中ですけれども、妥結するためにはもっと日本には米を輸入せよということなんかも含めていろいろやり取りがされているんですけれども、国内生産、国産米を努力しなければならないときにもっと輸入をということになった場合にやっぱり大きな打撃を受けるでしょうし、水田そのものも本当に大きく変わらざるを得ないということになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、ちょっとそんなことも含めてお考えをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○参考人(柴田明夫君) 自給率というのは食生活のレベルを意味するものではないわけであります。ただし、自給率が低いということは、生産力、すなわち自給力が下がっているという、そこに問題があると思うんですね。その自給力を支えてきたものは日本の私は稲作であり、水田というのは最も生産性の高い、農業にとってみれば土地でありますから、ここの維持が非常に難しくなってきているというふうに考えます。だから、そこに危機感を持っているわけであります。
 TPPについては、これ、米の今非常に議論されて報道ではいますけれども、私は、実はそんなには入ってくる可能性は少ないんじゃないかな、数万トンのレベルではあると思いますけれども。
 日本向けに米を輸出する国はどこか。中国、アメリカ、オーストラリア、それからタイでありますけれども、いずれも、中国はもう国内で足りないんですね。ジャポニカ米を四百五十万トンぐらい輸入している国であります。それから、オーストラリアは二〇〇七年、八年度、大干ばつで、米の生産は非常にもう水が足りない。アメリカも、カリフォルニアは五百年に一度の干ばつがずっと続いているところで、もはや米は非常に作りにくくなっているということです。タイは、九三年の平成米騒動のときに余り日本の好みに合わないという話ですから、どこから持ってくるのかというと、案外、日本向けの輸出力のある国はないかなと。
 問題は、日本の米離れの方が問題だなという気がしますけれども。

○紙智子君 じゃ、時間ですので、終わります。
 ありがとうございました。