<第189回国会 2015年4月16日 農林水産委員会>


馬産地が抱える経営困難の現状を把握し、必要な対策を/競馬法改定について。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私どもの党は、競馬が健全なスポーツとして発展することを望む立場で、競走馬の生産地の経営の安定も考慮しつつ、この間、法改正に当たって、例えば今話もありましたけれども、三連単の導入などのようなギャンブル性を高めて射幸心をあおる内容については反対をしてきました。
 本改正案の海外競馬の勝馬投票券、日本での発売については、一定の限定の下、現行競馬法の枠内で行うということで、生産地の期待もあるだろうというふうに思っております。したがいまして、以下いろいろお聞きしたいと思います。
 初めにお聞きしたいのは、海外の主催者が行うレースの競馬の勝馬投票券を主催者ではない日本が、日本中央競馬会、それから地方競馬主催者ですね、が日本国内で発売できるようにするという、そういうふうにするんだということなんです。その理由について最初に伺いたいと思います。

○副大臣(小泉昭男君) 御指摘いただいたことでございますが、近年、我が国の競走馬が海外競馬の競走へ出走をしておることは、もう先ほどからのお話の中で御理解いただいているわけでありますが、おかげさまで好成績を上げておりまして、海外競馬に対する競馬ファン等の関心が高まっていると、こう考えております。現行の競馬法では、海外競馬の勝馬投票については何ら規定がございません。その勝馬投票券を国内で発売することは、現実できない状況にあるわけであります。
 このため、そのような海外競走の売上げを原資とした畜産振興への貢献ができない状況でもございますし、国内競馬では有力馬不在による勝馬投票券の売上げの減少も心配されるわけでありまして、このままでは畜産振興という競馬の目的に十分対応できない、こういうことを懸念しているわけであります。このため、国内競走馬の出走を通じまして馬の改良増殖等見込まれる農林水産大臣が指定する海外競馬の競走について、日本中央競馬会等が勝馬投票券を発売することができるように措置することによりまして一層の畜産振興への貢献を図ろうと、こういうことを目的といたしております。

○紙智子君 今のお答えとも重なるのかと思いますけれども、改めてお聞きしますけれども、今回の法案で、第一条に「馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するとともに、地方財政の改善を図るために行う競馬に関し規定するものとする。」と。
 新たにこういう趣旨規定を設けたというのはなぜでしょうか。

○大臣政務官(中川郁子君) 今般、海外競馬の競走についての勝馬投票を競馬法上に位置付けるに当たりまして、海外競馬の競走についての勝馬投票が競馬法上の競馬の一つとして行われることを明らかにするため、法律に趣旨規定を追加するものといたしました。
 競馬法に基づく競馬は、競馬の競走そのものを通じまして馬の改良増殖に寄与するほか、競馬の売上げの一部を財源として馬の改良増殖その他畜産の振興を支援することを目的としており、また、地方競馬の収益が地方公共団体の収入となって地方財政に貢献することとなるものであり、海外競馬の競走を対象とした勝馬投票もこのような目的のために行う競馬の一つとして位置付けられることを明確化したものでございます。

○紙智子君 競馬の振興にとって基本は、いかに良い馬というか強い馬をつくるかというところが大事だと思うんですね。私も地元北海道ですけれども、北海道日高地方はまさに馬産地ということで、そこにおける軽種馬生産というのは、古くは明治時代における軍馬の育成から始まっていると。
 第二次世界大戦後の財政逼迫の中で競馬法が制定されて、それ以降、高度経済成長のときに国策として、米の減反政策なんかもやられている中で、軽種馬生産への転換が急激になされてきたということがあったと思います。
 生産者の皆さんは、今までやっぱり良い馬をつくるということで頑張って、数々の名馬を生み出してきて、例えば有名なところでいうと、オグリキャップとか、ディープインパクトもそうじゃないかな、それから、高知でもう負け続けたのになぜか人気があったハルウララという馬も実は北海道の日高の誕生だったんですよね。そういう次々といい馬を生み出してきたという点では、国産馬の生産を行って中央競馬や地方競馬を支えてきたという、そういう意識は強いわけですよね。
 そういう馬産地の現状についてどのように大臣は認識されているでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 軽種馬の需要は、平成十三年以降、地方競馬主催者の撤退、賞金額の引下げ、それから景気の低迷による馬主の購買意欲の低下、こういうことがございまして需要が減少して、これに伴って軽種馬の生産頭数も減少してきたところでございます。
 この結果、我が国最大の馬産地である、今お話しいただきました北海道日高地域の軽種馬生産者の経営、これが非常に厳しい状況になっていると、こういうふうに認識しております。

○紙智子君 今大臣言われたように、外国産馬の出走機会も拡大されてくる中で、国際化の波というか、やっぱりこの分野もあって、地方競馬でいうと、二〇〇〇年から二〇一二年は十の地方競馬が撤退したわけですよね。
 それで、やっぱり相次ぐ廃止、撤退という影響も受けて、負債を抱えて非常に経営困難になったり後継者が不足している、高齢化もしているという中で離農が相次いでいきました。負債も抱えて、このところもまた自殺者が出ているという話も聞いています。それで、生産農家も、過去十年間、一千百七戸あったのが七百九十四戸へと年々減少してきたということがあります。そんな中で、生産農家の皆さんは、何とか生産体制づくりということで経営改善も含めて努力をしているわけですけれども、まだ残念ながら打開に至っていないということですね。
 やっぱり強い馬をつくっていくということが大事なんだけれども、そのためには一定量いないと駄目なわけですよ。ところが、どんどん離農していくと、それも確保できなくなるという事態にもなりかねないということもあって、そういう生産地の現状について是非これを把握していただいて、やっぱり必要な対応策、産地がやっていける対策というのを考えるべきじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 確かに、今お答えしましたように、全体の状況、需要が減るということで厳しい状況ですが、一方で、先ほど来御議論いただいているように、底を打って今上昇に転じているということですから、これが産地の皆様の経営が良くなるということにつながるようにしっかりと振興対策をやっていきたいと思っております。
 日高地域の軽種馬生産専業農家の負債状況というのがございまして、六百四十九戸のうち五百五十戸が専業ということでしょうか、そのうち負債があるところが四百十一戸、その中で五千万円以上負債があるところが百八十五戸ということで、四五%に上っている、こういう状況でもございますので、こういうことの厳しい状況というのは先ほど申し上げたとおりでございます。しっかりと振興してまいりたいと思っております。

○紙智子君 それで、今回の第一条で、さっきも言いましたけれども、競馬法の趣旨を明確化するということで、馬の改良増殖等畜産振興に寄与するということで規定設けているわけで、それがどれだけ馬産地、軽種馬にとって役に立つのかというのは、やっぱり生産者の皆さんからも、産地で使えるようなものになるのかというのはすごく強い要求といいますか、上がっているわけですよね。
 やっぱり以前から私のところに寄せられる声としては、長い間、馬産地でそういう努力をして、実際上がった収益の中から国の財政に入っているわけですから、財政にも寄与してきたと。そういうことをやりながら、実際、一番の現場のところがなかなか厳しい状況というのは何とかならないのかと。それで、確かに競馬でもって上がる収益、そこから対策をするというのがあるんだけれども、やっぱりそこ頼みじゃなくて、国の農水省の対策の中で、畜産対策という中に馬が入っていないというのがよく言われてきたことなんですね。そこをやっぱりちゃんと位置付けてほしいし、そういう対策も考えてほしいんだと。
 これはもうずっと私も現地回るたびにいつも言われていたことなんですけれども、その辺りどうでしょうかね。

○国務大臣(林芳正君) 馬産地の振興対策ですが、JRAの資金を活用した競走馬生産振興事業などによって、先ほどの議論もございましたけれども、種牡馬それから繁殖牝馬の導入、先駆的な軽種馬生産施設の導入、軽種馬の海外販路拡大のための取組、それから市場上場馬の脚部レントゲンとか上部気道の内視鏡検査や馴致への取組、それから先ほどちょっと御紹介しました負債の長期低利資金への借換えと、こういう支援を幅広くやってきていただいておるところでございます。
 今回の改正で、更に勝馬投票券の発売等を通じて支援措置の安定的な財源を確保して、引き続き、馬産地の関係者の要望等も踏まえて、競走馬生産振興事業等を通じて馬産地の振興を図ってまいりたいと、そういうふうに思っております。

○紙智子君 今言われた対策の中で、現地で使って改善されている中身も、中にはあるんですよ。
 三石なんかはやっぱり牛に転換したり、あるいは花に転換したりして、経営状況を改善するために、馬だけじゃなくてそういう努力もやって何とか乗り越えようとやっているんだけれども、まだまだやっぱり全部それがなっているわけじゃないということでもあります。
 それで、先ほど来話があって、非常に多面的な機能というふうにもあるわけですよね。その走る姿とか牧場の放牧の姿がやっぱり気持ちを癒やすということで、そういう観光のためにも使われるということもありますし、それからセラピーの話もありました。福祉施設なんかで実際に使っているということもありますし、私の知っている経営者で女性の牧場主がいるんですけど、ここのところは馬をやっているんだけれども、不登校になったり学校に行けなくなった子供たちを引き取って、そこで一緒に働きながら、馬と接しながら、やりがいとか生きがいとか、そういうことを引き出していくような取組をやっていることもあるんですよね。そういういろんな多面的な馬と人とのつながりや、文化という話もありましたけれども、そういうところから見ても今非常に大事な生産地でもあるというふうに思うんです。
 ですから、その点では、これまでもやってきた対策の中で、もう期限が切れて、東日本大震災もあって三年間延ばしたんだけど、馬産地の再活性化緊急対策事業ってあったと思うんですけど、これなんかもちょっと廃止になるんだけれども、それに代わるようなやっぱり対応策を考えていただけないかというふうに思うんですけれども、これどうでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 今御指摘のあった馬産地再活性化緊急対策事業、これは二十一年度の補正予算で創設をいたしましたが、二十三年度に終わるということで補正で対応したことでございますけれども、東日本大震災等の影響もあって三年間延長をしたと。この経緯を少し先ほど小川委員にも触れていただきましたけれども、したがって、あくまで緊急対策という性格があったと、こういうことでございます。
 したがって、その終わった後も、先ほど申し上げたような競走馬生産振興事業などによってしっかりと必要な振興対策をやっていきたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 是非一歩踏み込んで対策をお願いしたいということを改めて要求しておきたいと思います。
 最後になりますけれども、中央競馬会の果たす役割もあって、そこで働く方々の、従事員のお話をしたいと思うんです。
 先日もちょっといろいろ話をお聞きする機会があったわけですけれども、その中で、やっぱり従事員の方たちの果たしてきた役割というか、元々は対面販売で券を売ったりもしていたわけですけれども、詳しい知識を得て、初めての人も含めて接客をするということの役割というのは非常に大きいし、元々は公営競技ということもあって、やっぱり大金が動くわけですよね。それは公金で、ちゃんと公正でなきゃいけないと、そういう関わりもあって、やっぱり自覚的にそういうのに関わるということで仕事をしないと大変なわけですけど、今までにそういう事故を起こしたことは一つもないというぐらい、本当に信頼関係で、労使関係も話合いしながら、経営に対してはそれを支えてくる働きをしてきたんだと思うんです。
 JRAの中からも一定の評価があるというふうに聞いているんですけれども、やっぱり皆さん、競馬会を支えるという気持ちで長い間やってきたし、技術と誇りを持って仕事をされているというふうに思います。引き続きそういう役割を果たしていきたいということでは、従事員の方たちのやっぱり安心して働ける環境ということも確保することがますます大事だというふうに思っていまして、これをめぐって大臣の見解を最後にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) このJRAにおかれても、平成九年以降、先ほど来御議論あるように、平成二十三年度まで売上げが減少傾向にあったということで、賞金はもとより開催費、人件費も含めてあらゆる経営コストの見直しに取り組んでこられたというふうに認識をしております。
 JRAにおいては、人件費を抑制する取組は必要であると我々も考えておりますけれども、今まさにお話ししていただいたように、従事員の皆さんは競馬を実施する上でいろんな大変な重要な役割を果たしていることから、競馬関係者の一部だけにコスト削減のしわ寄せが行くということがないようにすべきだと、こういうふうに認識しております。
 このJRAと従事員との労使交渉に当たっては、我々としても十分な意見交換を行っていただくことが重要であると考えておりまして、そういう意味で、適切な指導を行ってまいりたいと思っております。

○紙智子君 終わります。