<第189回国会 2015年4月15日 国際経済・外交に関する調査会>


原子力政策に反省ないか。

○紙智子君 参考人の皆さん、どうもお疲れさまです。日本共産党の紙智子でございます。
 エネルギー政策についてお聞きをしたいと思います。
 東日本大震災、福島第一原発の事故から四年たっているわけです。それで、四周年の追悼会に私、福島の浪江町に行きました。そこの町民全体が今も避難生活です、元に戻れない。役場も二本松というところに間借りをして行政をやっているという状況になっています。それから、原発も原子炉の中がどうなっているかいまだに分からないと。
 それから、汚染水の問題もいまだにどう解決するのかということがはっきりもしていないという中で、改めてやっぱりこういう事故は二度と起こしてはいけないということを痛感いたしました。
 そういう中でなんですけれども、原子力政策については、やはり本当にこういう事故もある中で、核のごみの処理の問題も、方法もまだ決まっていない。だから、そういう中で動かせばまたたまっていくわけですよね。そういう事態を考えたときに、やっぱり政府の原子力政策でちゃんと反省しなきゃいけないことというのはあるんじゃないかと。その点を、資源エネルギー庁におられた石川参考人と河野参考人、お二人にお聞きしたいと思います。

○参考人(石川和男君) 御質問ありがとうございます。お答えしたいと思います。
 私も福島県の第二原子力発電所、それから、第一はまだ入れませんでしたけれども、その近くに何回かお邪魔をいたしまして状況を自分の目で見て、津波も含めて、ああこれは本当にひどい震災だったなと、こういう事故というのはもう二度と起こってほしいわけないですよね。もう絶対に起きちゃいけないということで、再発防止策、それを万全に期すのはもうこれは当然のことであります。
 私は今の先生の御質問に対してどういうふうにまず感じたかといいますと、本当にそうなんですよね、その事故がまだ、おとといでしたか昨日でしたか、その炉の中が、1Fの炉の中がロボットが行ったらよく分からない、なかなか難しい状況になるという中で、じゃ日本の原子力発電所というのを再稼働するという一方の政府の方針というのは本当に正しいんだろうかと常に自問自答しながら私もいろんなものを言い続けているわけなんですが。
 私はやっぱり思うに、ちょっと距離を置いて冷静に考えてみると、事故を収束させるためには、原子力発電所というのはやっぱり物すごく大きな工場、プラントでありますので、その再発防止策のためにこんなふうな安全対策を講じなきゃいけない、そのためにはお金と人が掛かるわけですね。
 もちろん物も掛かります。お金が必要なんですね。
 日本の財政がうはうは状態で、もう幾らつぎ込んでもいいというような状況であれば、それはそれでいいと思うんですが、しかし、残念ながら、御案内のとおり、日本はもう一千兆を超えるような借金も抱えていて、ほかにもたくさんやるべきことがあって、そっちにもお金を使わなきゃいけない、でもこっちにも使わなきゃいけないという状況の中で一体どこからお金をやりくりするかというふうに考えますと、それはたまさか日本の中にはまだ五十基の原子力発電所があって、そういう原子力という産業界全体において、その安い電気でもって蓄えたお金で、同じ原子力業界なんですから、そういうところで被災地に対していろんな支援とかそういうことをするというのが最終的には最も国民負担が少ない方法なのだろうと。
 そのときに、当然、原子力発電所で収益を得ようとなると、電気つくらなきゃいかぬわけですね。
 これがいわゆる再稼働という話であります。
 厳密に申しますと、原子力発電所は全て稼働しているというふうに私は思っております。なぜならば、使用済燃料の管理というのはこれは結構な仕事でございますので、稼働はしていますが、発電だけをしていないんですね。ですから、この紙にも書きましたけれども、早期の発電再開というのは、実はこれは前野田総理が御決断されまして、当時は関西電力の大飯原子力発電所三号機、四号機でしたね、これは政治決断ということでされました。もちろん、そのためにいろんな準備をして当時判断したわけですけれども。
 やはり、そういうリスクとコストというものを考えながら、一時しのぎであれ原子力を再開して、それによってきちんと対策を講じ、もちろん1F周辺は当然のことであります、優先的にそちらに御支援をし、そしてほかの疲弊している経済を回復し、そして、私は何遍も言っておりますけれども、とっとと廃炉しちまおうぜと、早くその道をつくろうじゃないかということで、きちんと政府として計画を出して、国民に対して、あっ、いついつまでにやめるんだな、そのための一時しのぎで、我々の子供や孫のときにはもうバイバイというこの絵をちゃんと描くべきと、私はこんなふうに思っております。

○参考人(河野博文君) ありがとうございます。
 今の私のJOGMECという立場で申しますと、原子力に直接関わっている部分はごくごく僅かでございまして、ウランの探査は私どもがやらせていただいております。そういう意味で、日本の原子力の安定供給という意味で原料面から今貢献できればいいなというふうに思っているところですけれども。
 過去、一定期間私も原子力に携わりましたので、この福島の事故は本当に残念でもあり、何がしかの責任があるのではないかと常に自問しているところでございます。しかし、その後の皆さんの活動で、私も全てを知っているわけではありませんが、新しい基準、新しい組織で新たな責任を持って政府が取り組まれるということで、何とか日本の原子力行政を進めていただきたいと願っている者の一人でございます。
 あえて今資源をやっている者として申しますと、先ほど人材のお話がありましたけれども、原子力発電所、現在止まっているとはいえ、今後の廃炉問題なども含めて考えますと、どうしても技術者の確保が非常に重要な課題だというふうに思います。原子力に関するパブリックアクセプタンスが低い、そしてまた現在のように発電に従事できていないという状況の下で、新しい人材をこの原子力の分野で育てていくことは本当に大変なことだなというふうに資源をやっておりまして思いますので、そういった点にも是非とも国会の先生方、また行政府の方々には御尽力をいただきたいというふうに思っております。

○紙智子君 やっぱりこの廃炉も含めて、人材の問題というのは本当に大事な問題だというふうに思っています。
 それで、もう一つちょっとお聞きしておきたい、あとちょっと時間あるのでお聞きしたいのは、昨日、福井地裁が高浜原発の再稼働中止を求める仮処分を言い渡したわけですね。その判決の内容というのは、原子力規制委員会の新規制基準、適合したとしても安全性の確保はできないということをおっしゃっていますし、それから基準地震動が信頼性がないということも指摘しています。
 それで、やっぱり津波だけじゃなくて、揺れの問題も含めてどうなのかということもあるというふうに思っているんですけれども、この判決についての感想なり受け止めをお二人にお話ししていただきたいと思います。

○参考人(石川和男君) 私、昨日この地裁判決を見まして、それでその裁判官の方の御趣旨を拝見しまして、ちょっとこれは司法判断に対してこの場でどうのこうの言うというのは不適切かもしれませんが、私がまず思いましたのは、やっぱりこれは技術の問題、科学の問題であるので、よく裁判官の方が判断できたなと思うんですね。違うというふうによく判断できたなというのは、これは率直な疑問でございます。それがまず感想の一つと。
 それから、今先生がおっしゃいましたように、確かに地震とか津波が全く来ないかと言われたら、それは分からないわけですね。それが二〇一一年三月十日までは来ないというふうにたかをくくっていたのが原子力安全神話だったわけです。それはもろくも崩れ去ったので、もうその神話は駄目です。私もそう思います。
 しかし、じゃ、例えばこの間、大飯原発で野田総理が判断された、再稼働オーケーと、まあもちろん十三か月たちましたから止まっておりますけれども、あのときはやはりリ スクとコストを計算したと思うんですね、一定の確率の下で。まあ来てしまったけれども、東日本では。だけど、大飯原子力発電所については今のままで大丈夫であろうというある種の判断があったと思うんですね。
 さっきも申しましたとおり、未来永劫原子力をやるということは、これはないと思います。これは過渡的な電源であるというふうに私は思っておりますので、いつか必ずやめることになります。
 恐らくやめる時期は、最も最長で今から五十年後か六十年後になると思います。物すごく長いスパンであります。その長い期間の一時しのぎを、厳密に確率計算とかそういったものを勘案しながら、私は再稼働を認めるならば認める、認めないなら認めないということでめり張りを付けて判断をしていくというのが、これは政府の役割であろうというふうに考えてございます。
 必ず来るというふうに言ってしまったらこれは何もできないわけでありまして、そんなことを言ってしまいますと、例えば火力発電所では化石燃料を燃やしているわけですけれども、WHOによりますと去年一年間で七百万人の人が命を落としているわけですね。そういうふうにリスクはあるわけですね。
 ですから、そのコストとリスクのバランスを考えながらどこまでやるのか。ただし、必ず原子力をいついつまでにやめるというロードマップは作る、これは私は国民的コンセンサスの大前提であるというふうに考えております。

○参考人(河野博文君) 大変難しい問題だと思いますけれども、正直申しまして、私も現在、独立行政法人という政府関係機関に奉職しておりますので、司法の判断について余りコメントをさせていただくわけにはいかないかなというふうに思っております。

○紙智子君 時間になりましたので、これで終わります。
 ありがとうございました。