<第189回国会 2015年4月6日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


ロシア水域のサケ流し網漁の存続交渉/プーチン大統領の核兵器使用発言/沖縄県の辺野古サンゴ破壊調査

☆平成二十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成二十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成二十七年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(内閣府所管(内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。十五分の時間ですので、できるだけ答弁は簡潔にお願いいたします。
 初めに、流し網漁を禁止するロシア政府の動きについて質問します。
 昨年十二月に、ロシア連邦院に二〇一六年一月からロシア水域における流し網漁を禁止する法案が提出されたと聞いています。ロシア水域でサケ・マス流し網漁が禁止されれば北海道漁業に与える影響というのも非常に大きいわけで、ロシアにおける審議の状況と日本政府の対応について御説明をお願いします。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) お答えいたします。
 ロシア連邦水域におけます流し網漁業の禁止に関する法案につきましては、現在ロシア国内の関係機関の意見集約が行われている段階にあり、その後、国家院において審議が行われる予定と承知しております。
 日ロ間の漁業協力は、日ロ関係の重要な協力分野の一つであります。日本政府として、流し網漁の禁止が日ロ関係全体に与え得る影響にも鑑み、我が国漁業者の操業機会が適切に確保されるよう様々なレベルで強く働きかけを行ってまいりました。
 具体的には、昨年十一月の北京APECの際の日ロ首脳会談において、安倍総理からプーチン大統領に対して直接働きかけを行いました。また、岸田外務大臣からシュワロフ第一副首相に対し、また西川農林水産大臣当時からフョードロフ農業大臣に対して、それぞれ書簡による働きかけを行ったほか、原田駐ロ大使から関係方面へ累次にわたり申入れを行ってきております。二月十二日に行った日ロ次官級協議でも日本側から強く申入れを行ったところであります。
 外務省といたしましては、日ロ間の漁業協力の重要性、資源状況の科学的根拠などを含む日本側の立場がしかるべく考慮され、流し網漁が禁止されないように、引き続き関係省庁と連携してロシア側に対して働きかけを行っていく考えであります。

○紙智子君 サケの資源量についてなんですけれども、資源量が減っているという指摘もあるんですが、日ロ政府間協議で科学的な根拠に基づいての漁獲量を決めていると思います。
 サケ資源がどういう状況にあるか、端的にお答えください。

○政府参考人(水産庁長官 本川一善君) 御指摘のように、毎年の日ロ漁業合同委員会におきまして、ロシア系サケ・マスの資源に関して議論を行っております。
 昨年、日ロ漁業専門家・科学者会合を十一月に開いて意見交換を行っておりますし、今年三月の日ロ漁業合同委員会におきましても意見交換を行った結果、我が国及びロシアの双方が、アジア系サケ・マス資源は全体として良好な状態にあるということで一致しているところでございます。

○紙智子君 全体としては良好な状況だということですね。
 それで、サケ漁が禁止されると、これ北方隣接地域に与える影響大きいわけで、ロシア水域で三十八隻が操業していて、乗組員が五百人、水揚げ量が六千トンと、水揚げ金額が約三十億円になるというふうに聞いています。根室を中心として、春はサケ・マス漁、夏から秋がサンマ、冬はタラ漁ということで、年間通じた操業を行っています。
 雇用をやっぱり維持をして、水産加工業を始めとした関連産業が生まれているわけで、このサケ漁が禁止されるということになると、根室を始め北方隣接地域の地域経済にも大きな影響が出るというふうに思うんですね。
 大臣の認識も、ちょっと一言でいいんですけれどもお聞きしておきたいと思います。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)山口 俊一君) ただいま御指摘いただきましたように大変大きな影響が考えられるわけでありまして、この一市四町、これは領土問題が未解決であることによって望ましい地域社会としての発展が阻害をされておるというふうな面もございます。また、しかも返還要求運動の原点の地という特殊な位置付けがあることから、安定した地域社会として形成をしていく必要があろうかというふうなことで、御指摘の点も踏まえましてしっかり対応していかなければならぬと考えております。

○紙智子君 よろしくお願いします。
 北海道としても、これ、ロシアの農業大臣に書簡も出しています。政府は、サケ・マス流し網漁が存続できるように、繰り返ししっかり交渉するように要求しておきたいと思います。
 それから次に、ロシアのプーチン大統領の核兵器使用に関わる発言についてお聞きします。
 三月十五日に放映されたロシア国営テレビの番組でプーチン大統領が、クリミアの状況がロシアに不利に展開した場合に核戦力を戦闘準備態勢に置く可能性はあったのかというふうに問われて、我々はそれをする用意があったと明言したんですね。これは、核兵器の速やかな廃絶を求める世界の世論と運動に逆行する許されない発言だというふうに思います。
 ところが、安倍政権としては、このプーチン大統領の発言に対しては、日本から何か発信するということは考えていないと、これは菅官房長官ですけれども、抗議すらしていないわけです。
 被爆国の政府としてこういう発言を見過ごしていいのかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) お答えいたします。
 本年は被爆七十年であり、四月末から五月にかけて五年に一度のNPT運用検討会議が開催される予定であります。唯一の戦争被爆国として、我が国は核軍縮・不拡散の取組を前進させる決意であります。
 御指摘のプーチン大統領の発言は、三月十五日、ロシアのテレビで放映されたドキュメンタリー番組の中で、質問に答える形で、昨年三月のクリミア併合に際して、あらゆる事態に備えてロシア軍に指令を出し、核戦力も即応態勢に入らせる用意があったとの趣旨を述べたものと承知しております。
 政府といたしましては、核軍縮・不拡散の動きを逆行させるような結果につながらないよう、ロシアにも建設的な協力を求めていく考えであります。いずれにしましても、核兵器の使用は二度とあってはならないと考えており、引き続き核兵器のない世界に向けた取組を進めていく考えであります。

○紙智子君 私は、やっぱりきちんと抗議するときはしなきゃいけないというふうに思うんですよ。
 日本はやっぱり、圧倒的多数の国民が求めている核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連の総会決議、このとき棄権をしているということもあるわけですけれども、やっぱり被爆国の政府として情けない態度は取るべきでないというふうに言っておきたいと思うんですね。
 それで、昨年、プーチン大統領の来日予定が延期になったという背景にウクライナ問題もあったわけですけれども、日本はロシアとの領土交渉を控えているわけですけれども、やっぱり言うべきときに言うべきことはちゃんと言うということでなければ領土問題も解決できないというように思いますので、そこも引き続いてきちっとした態度を取っていただきたいというように思います。
 今年四月末には五年ぶりにNPTの再検討会議も開かれるわけで、ロシアを始めとして核保有国は自らの国際公約をちゃんと守って核兵器をなくす道を考えるべきであって、逆行する発言は許されないということでは、やっぱり日本が被爆国としてしっかりとふさわしい行動を取るべきだということを併せて申し上げておきたいと思います。
 それから次に、辺野古の問題についてなんです。
 沖縄県名護市の米軍新基地建設作業についてですが、防衛局は新基地建設の作業で最大四十五トンの巨大コンクリートブロックを海に投入したと。翁長沖縄県知事はサンゴ破壊の調査をするために作業停止を指示したわけですけれども、防衛局は同じ政府である農林水産省に行政不服審査請求をしたと。
 行政不服審査法については、先ほども資料が出されましたけれども、行政庁の違法又は不当な処分に対して、ちょっと省略しますけれども、国民に対して広く行政庁に対する不服申立ての道を開き、国民の権利利益の救済を図るものだと、国民の救済を図るというものなわけです。国民の権利を守るための法律を、強い権力を持つ国が地方自治体を訴えるという、これはやっぱり法律の悪用と言わざるを得ず、強く抗議をしたいというふうに思います。
 そこで防衛省にお聞きしますけれども、防衛局として同地域で潜水調査を実施しているわけですけれども、これ、なぜ調査をすることができたんでしょうか。

○政府参考人(防衛省地方協力局次長 山本達夫君) お答え申し上げます。
 普天間飛行場代替施設建設事業の実施に当たりましては、平成二十六年六月、臨時制限区域を設定し、沖縄防衛局が共同使用することにつき日米間で合意をしたところでございます。その下で、キャンプ・シュワブにおきまして沖縄防衛局が行っている調査につきましては、米側に立入り申請を行い、許可を得て実施しているところでございます。

○紙智子君 米側に申請を求めて許可してもらったということですか。

○政府参考人(防衛省地方協力局次長 山本達夫君) はい、さようでございます。

○紙智子君 沖縄県は、コンクリートブロックを設置したときにサンゴ礁を破壊された可能性が高いということで在日の合衆国の軍隊に対して立入り許可申請を行ったわけです。これ、三月十一日に外務省は、沖縄県に対して、米側から運用上の理由により今回の申請を受けることができない旨の連絡をしたというふうに言っているわけですよね。地位協定の第三条に関する日米合同委員会の合意の合衆国の施設及び区域への立入許可手続に基づくものだと、防衛局が調査をできているのに沖縄県が調査できないと、その理由はと言われたら運用上の理由という回答のみなわけですよ。これ、誰しもおかしいと思うわけですね。同じような時期に申請しているのに、片や運用上の理由でということでこれは拒否されると。
 これ、外務省にお聞きしますけれども、これで本当に説明責任が果たされているように思いますか。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) 日本政府といたしましては、米軍の運用に係る事項については承知しておりません。いずれにしましても、米側は、沖縄県が施設・区域内に立ち入ることを希望していること及びその理由を十分に承知した上で、施設・区域の管理を行う当事者として、運用上の理由により立入りを認めないとの結論に至ったものと認識しております。
 一方、沖縄県は、外務省を通じて米側に再度立入りを申請しております。現在、米側においてその可否を検討中であることもありまして、その結果について予断することは差し控えたいと思います。

○紙智子君 この間、何回も外務省にもお聞きしているんですけれども、その米側の言い分についてはそういう言い分なので関知しないということを繰り返されているわけですよね。
 合衆国の施設及び区域への立入許可手続というのは、名前のとおり手続を定めたものにすぎないわけです。調査を拒否された理由が分からない、納得できないというふうになっている以上、本来、外務省は、沖縄県が調査できるように外務省自身が外交努力をすべきじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) 繰り返しになりますけれども、沖縄県は外務省を通じて米側に再度立入りを申請しております。現在、米側においてその可否を検討中であることから、その結果について予断することは控えたいと思います。
 いずれにしましても、沖縄県からの立入り申請につきましては、所要の手続にのっとり外務省から米側に再度申請しており、政府として、手続にのっとり、しかるべく対応してまいる所存であります。

○紙智子君 今の回答は、要するに、外務省としても、沖縄県ができていない理由についてなぜなのかというふうに米側に聞いて、そして再度ちゃんと調査をさせてほしいということを外務省としてもそれを申し入れているという理解でよろしいんでしょうか。

○委員長(風間直樹君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕

○委員長(風間直樹君) 速記を起こしてください。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) お答えいたします。
 沖縄県からの立入り申請につきましては、所要の手続にのっとり外務省から米側に再度申請しております。政府として、手続にのっとり、しかるべく対応しております。
以上です。

○紙智子君 所要のとはどういうことですか。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) 日米合同委員会の合意に基づき所要の手続を取っているということでございます。

○紙智子君 それでは分からないんですよね。日米合同委員会の合意に基づきという話があるんだけど、なぜ片や防衛局がやるのは許可されていて、県が要請したのができなかったのかという、その理由についても分からないままなわけで、それも含めて明らかにするように交渉すべきだというふうに思うんですよ。
 それで、もう時間なんですが、答えられますか。

○副大臣(外務副大臣 城内実君) 繰り返しになりますけれども、日米合同委員会の合意に基づき、外務省としましては所要の手続にのっとり米側に再度申請しており、政府として、手続にのっとり、しかるべく対応しております。

○紙智子君 いずれにしても、日本政府なわけですから、やっぱり、沖縄県がそういうことでいろいろ疑義を呈しているときに、その声をちゃんと米側に伝えて、そして納得いく回答を得るというのは、本来、外務省がやらなきゃいけないことだと思いますよ。
 沖縄県は、県の調査が終了して改めて指示するまでの間工事は止めてほしいというふうに、非常に控えめな、そういうことを言っているわけですよ。政府は、やっぱり地方の民意を酌み取って政策にしっかり反映させると、これが民主主義の基本だと思うんですね。外務省は、外務大臣も、そういう意味では外交努力をするべきだし、実際にまだ会ってもいないわけで、県知事と、菅官房長官がようやく昨日お会いになりましたけれども、外務大臣も会うし、総理もそうだと思うんですけれども、しっかりその話を、やり取りをして、やっぱり民意をきちっと受け止めると、無視するようなやり方はやるべきではないということを強く申し上げて、質問を終わります。