<第188回国会 2015年1月14日 農林水産委員会>


畜産物価格の引き上げ並びに所得を増やす畜産政策を求める

○畜産物等の価格安定等に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、総選挙が終わって報道されていることなんですけれども、一月の六日に沖縄の翁長雄志知事がサトウキビ交付金関係の政府要請で上京した際に、大臣は、JAの沖縄の幹部とは面談したけれども知事の出席を認めなかったということが言われているわけですけれども、これ、昨年までは知事とお会いされていたのに、なぜ今回、知事に会わないのか、甚だ遺憾だと思うんですね。
 やっぱり誠実に対応すべきだし、次回はちゃんとお会いするべきだと思いますけれども、何かあれば一言。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) この一月の初旬、年明け以降、予算編成等でスケジュールが立て込んでおりました。そういう中で沖縄県知事から面会の要請をいただいたということを知ったわけですが、残念ながら七日に時間を取ることはできなかったと、こういうことであります。
 今回は、知事との面会はかなわなかったのでありますが、県の要請内容については大臣室にお届けをいただきました。担当部局に検討を指示し、今回の価格決定に際してはこれを十分踏まえたものであると、こう考えております。
 今後、面会の要請をいただき、日程の調整が付くということであればお会いをしてお話合いをさせていただくと、こういう考え方でございます。

○紙智子君 サトウキビというのは本当に沖縄にとっては生命産業ともいうものですよね。その問題で来ているわけですから、やっぱり農水大臣としてちゃんと受け止めて対応するべきだということを申し上げて、本題に入りたいと思います。
 畜産物の価格についてですけれども、一月九日に私たち日本共産党議員団として畜産、酪農問題で申入れをいたしました。そのうち、加工原料乳の生産者補給金についてお聞きをしたいと思います。
 実搾乳量のキロ当たりの所得推移をJA北海道中央会が調査をしています。十年前、二〇〇三年度ですね、ここまで生乳を一キロ搾ると農家の所得は三十円程度になっていたけれども、現在は二十円以下と。下がっているときでは大体十四円とか十六円とか、そういうときもありました。年間二百戸を超えて離農していると。JA北海道の飛田会長は、酪農家の離農に歯止めが掛からない、懸念するのは中堅層が将来に見切りを付けて経営中止をしていることだと実情を訴えています。
 二〇一三年の北海道の牛乳生産費は一頭当たりで見ると六十七万千百七十八円で、前年度に比べて一・一%増加しています。生産費は増加していると。アベノミクスの円安誘導政策で飼料代で九・二%、電力会社の相次ぐ値上げで電気代などの光熱費などで八・一%増加していると。ところが一方、労働費はというと、約八百円減っているわけですよ。つまり、生産コストの上昇分を酪農家の賃下げで対応しているという状態になっていると思うんですね。
 先ほど大臣は、十二円九十銭ということで、交付対象についてこれも諮問をされたという話をされていて、まだ参議院の審議が終わっていないのにもう諮問したのかなというふうに思ったわけですよ。何のために前倒しで委員会やろうとしているかというと、審議会の前にちゃんと議論を踏まえて反映させようということでやっているわけで、これはいかがなものかというふうに思って聞いていましたけれども、それに加えて対象の数量も百七十八万トンということで諮問しているということですから、これ減っているわけですよね。これも納得できないというふうに思って聞いていたわけです。
 安倍内閣の農政政策の目玉というのは、これ所得倍増じゃないですか。総選挙でも、もうさんざん皆さん訴えられてきたと思うんです。所得倍増のためなんだと言っておられたと思うんですけれども、現実は所得が減っているわけです。所得を倍増するためには、やっぱり加工原料乳の生産者補給金は大幅に引き上げるべきじゃないでしょうか。いかがですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) この問題でありますけれども、毎年同じですけれど、加工原料乳生産者補給金の単価は法律に基づいて計算をすると、こういうことになっております。そういう中で、配合飼料価格あるいは光熱動力費、また副産物である子牛価格等の直近の動向をよく見ると、こういうことになっております。餌は確かに上がっている、電気代も上がっている、一方で、取った子牛は値上がりしてこれは所得増につながると、こういう状況を全部勘案をしまして、算定ルールにのっとり、食料・農業・農村政策審議会での意見を聴いた上です、聴いた上でこれから私どもも適切に決定してまいりたいと、こう考えております。

○紙智子君 所得倍増ということですからね、そのことで是非やっていただきたいと思うんです。
 それで、JA北海道では、生乳一キロ当たりですけれども、所得が前年比で〇・二%マイナスで、十年間振り返ってみても全部ずっとマイナスなんですよ。ずっとマイナスで来ているから四・七%マイナスで、今のやり方だったら決してこれ増えないと。所得倍増なんて誰も思っていないですよ、はっきり言って。
 次に、加工原料乳の生産者補給金の交付対象数量と実績について、二〇一三年度、それから二〇一四年度について説明していただきたいと。それから、未消化になっている予算額が幾らになるかも併せて端的にお答えください。

○政府参考人(農林水産省生産局長 松島浩道君) 平成二十五年度の交付対象数量は百八十一万トンに対しまして交付実績は百六十万トン、予算額につきましては二百二十七億円を計上いたしましたが実績は二百一億円でございました。また、二十六年度でございます、これはまだ年度途中でございますけれども、交付対象数量は百八十万トンに対しまして百五十六万トン程度と見込んでいるところでございます。また、百五十六万トンであった場合には、予算額二百三十億円に対しまして約二百億円の実績の見通しとなっているところでございます。

○紙智子君 未消化の予算でいうと、大体今の話だと二十六億円くらいですかね。

○政府参考人(農林水産省生産局長 松島浩道君) 二十六年度につきましては約三十億円の差額の見通しがあるということでございます。

○紙智子君 生乳の生産量が不足するために、この交付対象数量を満たしていないということですよね。数量で二十万トンを残して、予算も二十六億、次は二十六年度は三十億円ということなんですけれども、未消化だと。
 そこで、ちょっとお配りした資料を見ていただきたいんですけれども、北海道JA中央会の資料です。

(画像をクリックして拡大)
 乳製品の用途というのは、加工用、これは脱脂粉乳とかバター向けですね、それからチーズ向け、生クリーム向けがあるわけですけれども、北海道の牛乳生産費は一キロ当たり七十四円四十銭です。取引乳価というのは、バター、生クリーム向けが七十二円四十六銭、チーズ向けが六十三円と。取引乳価は生産費を割っているので、これは赤字なわけですね。バターなどの加工用は補給金が付くので生産費をカバーしているけれども、生クリーム向けというのは支援策がないと。これは売れば売るほど赤字になるわけですね。しかし、生ものですし、いろいろケーキだとかを作るとかいうことで優先的にこれが仕向けられると。そうすると、量は決まっていますから、結局、加工用のところが不足してくると。それがバター不足ということにも結び付いたわけですよね。
 ところが、そういう状況があるわけですけれども、加工原料乳の予算は未消化だと。未消化だから予算を減らしますよというんじゃ、これは困るわけですよ、生産者は。ですから、乳製品全体を見て予算を有効に使える仕組みにこれ考えなきゃいけないんじゃないかということなんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 松島浩道君) 今委員の御質問の趣旨は、加工原料乳の補給金につきまして未消化分があるので、その未消化分を活用して他の支援策に活用すべきではないかという御趣旨だと思います。
 これは、加工原料乳生産者補給金につきましては国から農畜産業振興機構に対する予算でございまして、法律上、脱脂粉乳やバター、それから二十六年度からはチーズも加わっておりますけれども、特定乳製品に対する補給金の交付に限定されてございます。したがいまして、未消化であるということをもって直ちにほかの用途の生乳に対する支援策として使えるということではございません。

○紙智子君 法外だと、生クリームなんかは法律以外だから使えないということでもあると思うんだけれども、要は、せっかく付けているわけですから、予算を、それをちゃんと有効的に使えるようにすべきだと。そうじゃなかったら生産者は困るんですよ。減るんですよ、結局。それで、使っていないからということでまた限度数量を減らすということになってきちゃうと本当に大変なことになるわけで、そういう有効に使う仕組みを検討すべきだし、あくまでもこれは、やっぱり根本は生乳の生産量が不足していることがその原因ですから、しっかりとした対応を求めておきたいと思います。
 次に、日豪EPAが明日十五日から発効します。関税が引き下げられると。農水大臣は、十二月十六日の記者会見で、これ、冷蔵は十五年掛けて二三・五%まで下がると、冷凍は十八年掛けて一九・五%まで下がると説明されたんだけれども、現実には、もう今年の四月一日からは二年目に入りますから、この冷凍牛肉の関税は一気に一〇%下がるということですよね。
 輸入量が急増した場合には緊急輸入制限でいわゆるセーフガードが適用されるんだというんですけれども、内臓、くず肉の扱いというのはこれセーフガードから対象外じゃないかと、適用されるのかということですけれども、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 松島浩道君) 委員御指摘のとおり、内臓肉、例えば牛タンですとかハラミ等、こういったものについては、セーフガードではなくて関税割当てという仕組みを導入しているところでございます。
 これは、セーフガード、数量セーフガードも関税割当ても同様の仕組みでございますけれども、関税割当てにつきましては、事前に枠を配分いたしまして、その枠を持っている方が輸入したときに低税率が適用される、その枠の配分の量を制限することによって輸入量の急増を防ぐという仕組みでございます。他方、数量セーフガードにつきましては、我が国の国境で毎日毎日の輸入量を把握しておりまして、その輸入量が一定量を超えた場合に自動的に関税率を元に戻すという仕組みでございまして、低税率の輸入量を制限していくという点については関税割当てもセーフガードも同等の効果を持っているというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 今いろいろ説明されたんだけれども、セーフガードの対象外なんですよね、くず肉なんかは。それで、そうじゃない部分と併せてやるということになっても、結局、合わせて二倍入ってくることになったら影響してくるんじゃないか、防げないんじゃないかと。
 二〇一二年のオーストラリアからの輸入実績というのは一万八千トンですよね。その全量に近い一万七千トンが協定発効の初年度から関税率としては四〇から四一%削減されて輸入されてくると。そうすると、内臓、くず肉というのは牛タン、ハラミ、頬肉などで、成形肉にも加工されている、ですから牛丼の材料にもなるわけで、日本の畜産、酪農経営にも影響が出てくるんじゃないかと。
 内臓、くず肉と同時に、これやっぱり日豪EPAが日本の農業に与える影響評価というのは速やかにやるべきじゃありませんか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 今生産局長の方で答えましたけれども、冷蔵肉についてはセーフガードが掛かる、これは御了解いただいたと思います。それで、あとの内臓等については関税の枠を作って私どもは数量を決めてその枠しか輸入しないと、こういうことでありますから、そう影響は出ないと、こう思います。

○紙智子君 そう影響は出ないと言うんですけど、出ないんだったらそれなりの根拠を示してほしいんですよ。余り影響を受けませんと言うんだけれども、根拠が出されないで言われても信用できないということになりますから、これは是非、調査について限定的と言うんだったら出していただきたいというふうに思います。
 それから次に、酪農、畜産政策の見直しについてなんですけれども、これもJA北海道中央会が昨年三月に、二〇一二年度に生乳の出荷をやめた二百五戸の酪農家の調査をしていて、聞き取り調査をやっていて、離脱した理由としては、後継者がいるのに将来不安から継がないとか、二十代から四十代の働き盛りだけれども、設備投資に踏み切れないので離農するとかなっていると。従来は離脱した農家の受皿がほかの農家が規模拡大することでやっていたんだけど、今はもう間に合わなくなっているわけですよ。どんどん離農してきていると。カバーできなくなっていて、やっぱり、さらに今度、地域のコミュニティーが危機的状態になっているというふうに見ているわけですよね。これは本当に深刻な事態だと。
 私、道東で聞いたところで、酪農家の一経営体当たりの労働時間が約八千時間だと。一人一日十時間労働。家族二世帯で、女性労働を〇・五とすると四人働いて所得で一千五百万円。そうすると、借金の返済があるから五百万円そこから引いて、可処分所得を入れると四人で一千万円だと。一人二百五十万と。これでもまだいい方だということなんですけどね。これが実情ですよ。だから離農に歯止めが掛からないし、生乳の生産も減っていると。まさにこれ生産基盤弱体化ということなんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。大臣に聞いたんです、弱体化ということについて。

○政府参考人(農林水産省生産局長 松島浩道君) 事実関係だけお答えさせていただきたいと思いますけれども、委員から御指摘がございましたように、離農した後にカバーするような形で規模を拡大することがないということが全体としての生乳生産量の減少につながっているというのは事実だろうと思っております。ただ、そのときに、やはり北海道、大変酪農の規模拡大が進んでおりまして、資本装備、機械装備、非常に多額にわたっているということで、それがやはり後継者の方や新規参入者の方のハードルになっているということがございますので、今回、先ほど来委員会でも御議論ございますが、クラスター事業といったものを導入することによってそういった面の負担を軽減していこうと。
 それから、労働力の問題につきましても、そのクラスター事業の中で、例えば搾乳ロボットを導入するとか、そういったことにつきましても積極的に支援をいたしまして酪農家の労働負荷の軽減に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○紙智子君 弱体化の認識を大臣に聞いたんです。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 私、時間当たりの賃金等の話をよく申し上げますけれど、建設業の平均賃金、今千八百五十円超えて千九百円ぐらい行っていると思うんですね。国内の最低賃金がこの間上がったので、七百八十円になっているかと思うんです。
 そういう中で、農業の時間当たりの賃金幾らだということになると、やっぱり三百三十円前後であるということで非常に低いと、こういう認識を持っておりまして、これを上げていく、こういうことのためにどうすればいいかと、こういうことを議論をしながらやっておりますが、これは全農作業を平均した賃金でございますが、これを上げていくように努力をしてまいりたいと、こう考えています。

○紙智子君 いずれにしても、非常に弱体化していると。本当に再生しなきゃいけないということが求められているわけですけれども、食料・農業・農村審議会で議論されているこの新たな酪肉近の基本方針ですね、この議論している方向性として出されているのは、収益性を向上させるための取組として飼養規模の拡大を強調しているわけですよ、飼養規模の拡大と。しかし、規模拡大だけでいいのかという話はさっきもありましたけれども。
 そこでなんですけれども、根室の生産連、JA中央会の根釧支所、それから道の総研根釧農業試験場、ここで調査をして、二〇一二年の酪農経営分析の結果をまとめているわけですね。そこで、乳量の階層別で調べた所得率、これは五百トン未満が一八・四二%で一番高いんですよ。生産規模が八百トンから千五百トン未満、それから千五百トン以上の搾っている階層というのは物財費がその分高くなっていって一〇%を下回る所得率になったという結果も出ているわけです。
 だから、増やせばいいというものじゃないというか、そういうやっぱり所得率の問題は、これは結局乳量五百トン未満が最高という調査なんだけれども、こういった調査を農水省としてもやるべきじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 農水省としても、農林統計、毎年やっているわけでありますが、私のところへも、参考になって全体の生産額が分かることに結び付く、そういう調査が欲しいということでやっておるんですけれども、なかなか私が満足するような資料がまだ出てきておりませんので、これらも含めて、これは全体の話、先ほど私申し上げました、八兆五千億の売上げのとき農家に残る金が一兆幾らになるかと、こういう中から総労働時間で割った額を申し上げましたが、畜産ではどうかというのをこの間も計算はしてみたのでありますが、まだ私が納得できませんので、早く納得のできる数字を見極めていきたいと思います。

○紙智子君 是非取り寄せて、よく勉強してほしいなというふうに思うんです。
 それで、やっぱり規模も、適正規模ということが今本当議論されてきていて、混合飼料を使って乳量が六千から九千に増えたんだけれども、半年たったら病気になる牛が続出したと。七十頭中四十頭も手術して、結局経営悪化して離農しなきゃいけなくなったと。牛も生き物だから、やっぱりストレスを意識した体調管理できるような規模というのがあるんだということも言われているわけですね。
 ですから、これとやっぱり価格政策についても今の算定ルール、さっきもお話ありましたけれども、生産コストの変動率で決めるやり方では結局毎年何銭何銭という、この世界から出られないと。生産意欲が働かない仕組みになっているので、価格制度についても現行の制度を検証する時期に来ているということは、是非そのことも併せて考えていただきたいということで、最後一言だけ答弁を求めて質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 農林水産業に携わる人たちの所得を上げていく、これは紙委員も私も共通の認識だろうと思います。私も所得増に向けて最大限の努力を続けてまいります。

○紙智子君 終わります。