<第187回国会 2014年11月12日 地方創生に関する特別委員会>


相次ぐ農産物輸入自由化によって地方が疲弊した。地方創生と言うなら1次産業をどう立て直すかが最も重要だと指摘。

○まち・ひと・しごと創生法案(内閣提出、衆議院送付)
○地域再生法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 地方創生問題についてお聞きをいたします。
 政府の基本方針を見ましても、また長期ビジョンの骨子、総合戦略骨子を見ても、共通しているのは、なぜこのように地方が疲弊してきたのか。疲弊ということで言えば、農家の所得が減って地域全体の経済が縮小する、あるいは農山村で高齢化、人口減少ですね、都市に先駆けて進行していると、小規模な集落が増加をし、集落機能が低下するというような、こういうことについての原因に対する分析が何一つないということです。
 原因の分析がなければ、その原因、しっかりとそれを除去して真に実効ある対策が打てるわけがないというふうに思うわけで、そこで、石破大臣にお聞きしますけれども、端的に長期にわたる自民党政権の下で、なぜこのような地方の疲弊に至ったのか、明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) ここ数十年政権を担当してきたのは我が党でございます。今起こっているのが地方の疲弊という現実であって、我々地方から選出をされております議員は常に地方の発展とか地域産業の振興とかいうことを訴えてまいりました。それが実現をしていないことについて、我が党に責任がないとは申しません。それは私どもがよく反省をしていかねばならないことです。それは、やはり地方でありますとか農林水産業でありますとか、そういうものに対する施策というものを、更にもっとウエートを掛けていくべきであったにもかかわらず、その部分が足りなかったのではないかということは、我々が反省をしなければいけないことでございます。
 〔委員長退席、理事岡田直樹君着席〕
 と同時に、いろいろなインフラの整備はいたしてまいりました。以前に比べれば、これだけ高速道路が走り、これだけ新幹線が走り、これだけ航空路が充実するというのは、それは私どもがやってきた政策が実現してきた結果でございます。ただ、それを生かして地域を発展させるということにこれから先はもっと創意工夫を凝らしていかねばならないし、それは地域と中央がいかに連携をするかということが重要であると認識しております。

○紙智子君 今、幾つか述べられました。その中で、農林水産分野に関わってのウエートが非常に少なかったんじゃないかということも反省点の中に入れているということであると思います。
 それで、地方にとって、やはりとりわけ農村地域にとっての農林水産、一次産業が中心となってこそ活発な経済活動が行われていくというふうに思います。関連事業に従事する人が多く集まって町に活気が生まれて若い人も集まるという方向を確立されていれば、今のような疲弊ということがなかったはずなわけです。
 ところが、実際にどうだったのかということで少し遡って見てみるならば、例えば一九六〇年代、六一年、選択的拡大を標榜して成立した農業基本法というのがありました。その下で、小麦と大豆、米生産から畜産、酪農、果樹生産に転換したわけですけど、そのとき転換した農家というのは、その後、一九八八年、これは牛肉、オレンジの自由化がありました。その中で大打撃を受けたわけですね。岩手県の当時、中堅の若手の畜産農家が首をくくるというような本当に胸の痛い事態も起こりました。それから、ミカンの産地は至る所でミカン園が雑木林に変わっていくということにもなりました。
 その時期、我が党の先輩議員たちが全国一斉の農業調査を行いましたけれども、その当時から、牛肉、オレンジの農家はもちろんですけれども、米生産農家からも、米価が安いということも出されましたし、子供たちに農業を継がせるわけにいかないと、こういう声がずっと出されて寄せられていたということを聞きました。
 それから、またさらに一九九五年、このときはWTOですね。WTO協定で日本は米の輸入自由化ということも認めるということになっていったわけですけれども、七十七万トンのミニマムアクセス米を受け入れると。米の需要と供給に国が責任を負わないということになって生産者価格も下落をすると、米の生産農家の展望をそれによって失わせるということになってきたと思います。ですから、農業後継者への経営の移行というのがそこから進まないという状況が続いてきた。農村地域の高齢化が進行していくということになってきたと思うんですね。
 農業の所得ということで見ますと、これは一九九〇年度、六兆一千億円だったわけですけど、これが二〇一一年度には三兆二千億円ということで、二十年間で半減したわけですよ、農業の所得ですね。それから、山村も、木材の輸入自由化でもって、これ壊滅的な打撃を受けるということになりました。日本の山村集落は深刻な危機に直面したわけです。
このような、やっぱり農産物の輸入自由化と地方の農村地域の疲弊ということについてどのように受け止められているか、もう一度お答えください。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 経済連携が進むたびに農産物が市場を開放してきたと、こういう歴史を繰り返してきたと思います。
 それで、米のミニマムアクセス米は、平成五年の十二月十五日、時の細川内閣のときに調印をした。あれは米の消費量が減っている中で毎年〇・八%ずつ増える、スタートは四%ですよと、こういうことでありましたが、米の消費量が減っているときになぜ増えるこの協定を結んだのかというのは、私は平成八年当選組ですので、早くこの幾らかでも伸び率を下げていこうと、そういうことで関税化に踏み切るために努力をさせてもらいましたが、常に経済連携と一緒に市場を開放していくと、こういうことだと思うんです。
 日豪EPAはそこを注意しまして、抱き合わせで乳製品を輸入するとか、それからセーフガードを掛けて日本の農業生産に直接影響が出ないようにするとか、こういうことでやってきたと思います。
 私は、食料の消費の動向を見ながら許容範囲で収めていかなければならないと、こう考えています。

○紙智子君 実は石破大臣にお聞きしたんですよね。農水大臣じゃないんです。
 それで、ちょっと今、細川内閣のときだったんだというふうに言われたけど、もちろん、だから自民党政権のときじゃないという話をされるんだけど、その後また替わって自民党政権の下で推進したわけですから、やっぱり責任は免れないということですよね。
 今、石破大臣はちょっとお答えにならなかったんですけれども。いいですか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 委員とは、麻生内閣で農水大臣を務めておりましたときもこのような議論をさせていただきました。
 今、委員が冒頭に選択的拡大ということをおっしゃいました。選択的拡大というのは本当に実現したのだろうかといえば、私は不十分だったと思っています。選択的拡大が企図したものと違う現象が起こったのではないだろうか。それは、二種兼業農家というものが現出をし、ほかの国にない形態で農作業の時間が非常に軽減をされましたものですから、小さな規模で米作をやる、米を作る、そして主な収入は他産業から得るという極めてユニークな形の農家が誕生いたしました。それをどうするかというときに、まだ食管制度が残っておりましたので、生産費所得補償方式というものを使いました。そのことによって米価は上がっていきましたが、それによって稲作農家は強くなっただろうかといえば、それはそうではなかった面があろうかと思っております。
 〔理事岡田直樹君退席、委員長着席〕
 私自身は、今、新食糧法の施行に伴いまして食管法というものはなくなりましたが、米の一〇〇%自給というものが達成されたときに米の制度というものは変えておかねばならなかったものだと思います。高コスト構造というものがそのまま維持されたことによって、日本の農業というものが、本当に専業で規模を拡大したい、多くの所得を得たいという方に必ずしもふさわしい制度になっていなかったのではないかという反省は、私自身、まだ食管制度が残っておりますときから議員をやっておりますので、その問題意識というものは強く持っておるところでございます。
 輸入の自由化ということについては、私どもとして、西川大臣の下で公約に反するような関税の例外なき撤廃はしないということで交渉しておるわけでございますけれども、同時に、どうやって国内の農業を守っていくかということは、関税を維持すればそれでいいということではございません。いかにして付加価値を上げ、いかにしてコストを下げるかということに政策というものは重きを置くべきだと思っており、そうでなければ農家というものが残っていくことはなかなか難しいのではないかと私は認識をいたしております。

○紙智子君 私がお聞きしたのは、農産物の輸入自由化の路線と地域の疲弊ということとの関係をどういうふうに考えるのかということをお聞きしたわけで、そのことにちゃんと答えられていないなと。やっぱり、長年、そういう食料自給率も下がることにつながってきたわけですけれども、この自由化路線に対して一貫して反省がないというのは、私は本当に大きな今の自民党政権の問題点だというふうに思っています。
 地方創生というのであれば、やはり一次産業をどう立て直すかということが最も重要なことです。それ抜きに地方創生といっても、農業・農村地域に暮らす人々に希望を示すことはできないというふうに思うんですね。
 それで、これ多分御覧になっていると思いますけれども、全国町村会が今年の九月に都市・農村共生社会の創造ということで発表しました。全国町村会は、農村のかけがえのない価値として、生存を支えるということを筆頭に、国土を支える、それから文化の基層を支える、自然を生かす、新しい産業をつくる、この五つを掲げています。私は、二〇〇一年に初めて国会に来て、そのときに全国町村会がこれを発表したんですけど、非常に新鮮に受け止めましたし、非常に感銘を受けたわけです。
 とりわけ、農村は、農業生産を通じた食料の供給により国民の生存を支えているだけでなく、森林等による二酸化炭素の吸収や水源の涵養などを通じて環境の保持や国土の保全にも重要な役割を果たしていることを指摘しているわけですけれども、石破大臣は、この農村の役割ということに対する認識、いかがでしょうか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 御指摘の全国町村会によります農業・農村政策のあり方についての提言というのは、私もいただいてすぐに熟読をいたしました。そこにおいて書かれております農村の価値というのは、あそこに記されているとおりでございます。
 提言におきましては、農村の価値として、生存を支え、国土を支え、文化を支え、自然を生かし、新しい産業をつくるという五つを掲げておるところでございますが、今年九月の提言では、このようなものに加えまして、少子化に対するとりで、そして再生可能エネルギーの蓄積、災害時のバックアップ、新たなライフスタイル、ビジネスモデルの提案の場等々、農村の新たな可能性が示されておるところでございます。
 農村の持つ多面的機能ということがよく言われますが、新しい提言にありますように、少子化に抗する、あらがうというふうに言ったらいいのでしょうか、そういうものに対しても農村が大きな力を持つでありましょう。そしてまた、これは山村等、つまり農山村ということで林業と農業と共にやっているという生産体が多いわけでございますが、再生可能エネルギーの蓄積であり、あるいは生産でありということについても大きな役割を果たすものだと思っております。
 そして、田舎暮らしということに新しい価値を見出す方々、本当に地方というのは悲惨で苦しくてというところだと言われますけれども、田舎の価値、農村の価値というものを見出した方々がその農村の魅力というものを最大限に生かし、それを伝えていくという意味でも、新たなライフサイクルの場としての農村の意味も大きいものだと認識をいたしております。

○紙智子君 次に、農水大臣にお聞きします。
 二〇〇二年から国連食糧農業機関、FAOが世界農業遺産というのを始めましたけれども、その意義と日本の認定状況についてお示しいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 世界農業遺産でありますが、私も不勉強で、御質問を受けて勉強してきたつもりでおります。
 次世代に継承すべき重要な農法あるいは景観、文化、生物多様性、これらを有する農業生産のシステムを国連食糧農業機関、FAOが認定する制度であるということでございまして、現在、世界十三か国三十一地域が認定されており、我が国では石川県の能登の里山里海など五地域が認定されております。なお、今後、岐阜県の長良川上中流域など三地域が新たにFAOに対して認定申請を行う予定であると、こういう状況であります。
 世界農業遺産につきましては、地域の人々が自らの地域、資源の価値を再認識し、誇りと自信を取り戻すとともに、農業や地域の振興に向けた取組が活発になるといった意義を有するものと考えております。今後とも、この制度を活用し、地域のにぎわいを取り戻してまいりたいと考えております。

○紙智子君 今ちょっと紹介いただいたんですけれども、石破大臣に短く、長くならないように端的に、その意義について大臣の言葉でお願いします。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) それは誇りじゃないでしょうか。
 そこにそういうものがあるということ、そこに住まうということ、だから農業なんてね、農村なんてねという話をする人がいますが、そこに住まい、そこでいろいろな活動を営むことに対する誇りが持てるというのがこれの、世界農業遺産の持っている一番の大きな意義だと私は思います。

○紙智子君 私も、実は世界地図で見て、これ、日本がその中に指定されているというのは、今、世界で三十一地域なんだけれども、先進国の中では日本だけなんですよね。しかも、五か所ということになっていて、非常にその持つ意味というのは大きいというふうに思ったわけですけど、これは、なぜかということでいえば、やっぱり日本では先人から引き継いで持続的に行われている生産活動に携わる農家がいるから、こうした普遍的に高い価値を有しているんじゃないかと思うわけです。
 さらに、今年は国際家族農業年です。日本の家族農業経営は、女性や高齢者の稼得機会の提供や小規模であるがゆえの土地利用の持続性、それから収入の多様性などの優れた特徴を持っているわけです。日本の家族経営は、国連が言うところの飢餓や貧困の撲滅、食料の安全保障及び栄養の提供、生活改善、天然資源管理、環境保護、そして持続可能な開発を達成する上で家族経営や小規模農業が担う重要な役割に合致しているものだと。
 このような家族経営を中心とする農村を維持、発展させる意味について、短く、大臣。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 家族経営の形態を私どもは決して否定をいたしません。それはそれで伸ばしていくべきものだと思います。
同時に、いかにしてコストを下げ、いかにして付加価値を上げるかということにふさわしい、そういうような経営形態も模索をしていかなければいけません。

○紙智子君 そこでなんですけれども、この町村会の提言は、農村では知恵と工夫次第で所得は都市並みでなくとも豊かに暮らせる、ただし、そのためには農村が将来にわたり自律し持続していく必要があるとして、五つの条件を提示しています。それは、一つは、地域資源を有効活用した農業が持続的に行われていること、二つ目は、循環型社会であること、三つ目は、集落の機能が維持され開かれていること、四つ目は、若者や女性が活躍できる場であること、五つ目は、交流が継続していることと。
 この提言は、この五つの条件の条件整備が進められれば一九七〇年代から欧州各国で始まっている田園回帰を日本でも進めることができるだろうとしています。これは、大臣、どのように受け止められますか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) そのとおりです。

○紙智子君 それで、自律していく上でも、やっぱり必要な国の支援は不可欠だというふうに思うわけですね。
 さらに、この提言は、産業としての農業の生産性や効率性の向上のみに着目した農業振興施策は、時として農村振興の阻害要因ともなり得る、また、水田農業において規模拡大による大規模農業者への農地集約を無秩序に進めていくことは、地域の働く場やコミュニティーの場を喪失させることになりかねず、ひいては農村人口の減少を加速させることが懸念されると指摘をしているわけですけど、これについてどう思われますか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) それは、いたずらに規模の集積というものにのみ特化して政策は進めるべきものではありません。
 しかしながら、ある程度規模の集積をしていきませんとコストダウンができませんので、それは連担化というものを進めていかなければならないものでございます。そこにおいて、農業の場合には、所有と経営の分離というものがなお行われねばならない。ところが、林業の場合には、所有と経営の分離が余りに進み過ぎたので雇用というものが失われたということもあろうかと思います。その点は、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしでございます。

○紙智子君 さらに、こういう指摘もされています。農村のあるべき姿を実現するためには、地域ごとの創意工夫が発揮され得る、地域が自らデザインする農政を実施し得る政策システムが必要となる、しかしながら、農政分野においては、国が要綱、要領により施策の細部にまで規定し、自治体は言わば国の画一的な行政を代行する役割にとどまらざるを得ない政策も少なくなく、自治体の自由度の乏しいシステムとなっていると指摘しているんですね。
 この地方創生で、こうした自由度の乏しい画一的なシステムがなくなるのでしょうか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) これは、農水省を中心といたしまして、その地域地域に合った政策というものができるだけ用意されるようにしていくということだと思います。
 しかしながら、それが国として守っていかなければならない自給力の維持ということにつながるものでなくてはなりません。私は自給率だけが政策目標だと思っておりませんで、農地あるいはサステナブルな、持続可能な農業人口、あるいはため池でありますとかダムでありますとか用水路でありますとかそういう基本的なインフラ、単収でありますとか糖度でありますとかそういうクオリティー、そういうような自給力が国全体として維持をされるということと地域において特性ある農業が展開されるということを両立させなければいけないものでございます。

○紙智子君 自給力の話の前に、やっぱりこれ、生産現場から最も近い自治体だからこそ実感込めて指摘していることなんですね。画一的じゃなくということを言っているわけで、その指摘は重く受け止めるべきだと思います。政策の中身がそうなっていないということを指摘しているわけです。
 それで、農林水産省の、今度は農水大臣にお聞きしますけれども、地方創生に向けた施策の展開方向を見てみますと、真っ先に挙げられているのが農林水産業の成長産業化による所得の向上と。確かに所得の向上は必要です。しかし、日本再興戦略に明記されていることは、農業、農村全体の所得の倍増を達成するためには農業生産性を飛躍的に拡大する必要がある、そのためには、企業参入の加速化等による企業経営ノウハウの徹底した活用、農商工連携等による六次産業化、輸出拡大を通じた付加価値の向上、若者も参入しやすいよう云々かんぬんというふうになっているわけで、要するにこれ、企業の参入を大幅に増やして、参入した企業の所得を増やし、六次化による流通加工を手掛ける企業の所得を増やすということが非常に重く書かれているわけですけれども、これが本当に農村のあるべき姿なのかと。いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 農林水産業のあるべき姿、これは私ども来年三月までにまとめたいということで今やっています。
 それで、今まで農林水産省の数字が、ばらばら統計数字が出ていました。農業生産額は今度は八・五兆円で整理しようと、こういうことになったんですが、そこで私、指摘をいたしまして、各県の数字を足したら本当に違わないんでしょうかと、こういうことを調べましたら、各県からの集計でやると八・六兆円、余り違わないと、こういうことなんですが。
こういう中で、各県が今後何年間でいかに伸ばしていくかと、こういうことは各県から必ず上げてもらうようにやりましょうねと、こういうことで今各県と連絡取っています。各県は各市町村とも連携取ってみて、どういう農業を自分たちはやるか、そして各JAもそうだと、こういうことで、私ども、一番現場に近い人たちからの数字を積み上げていって、あるべき姿を求めていきたいと考えています。
 それで、所得の倍増とか企業の参入の問題で御心配されていると思います。今、生産組織で農業者以外では四分の一しか出資できませんが、そこで幾らにしようかと、競争力会議等では二分の一超えろと、こういう話もありましたが、私どもは、農業者が二分の一以上必ず持つと、これは決定権、農業者に持っていただきたいと、こういうことであります。
 ただ、これから付加価値を付け、あるいは価格決定権を農業が持つと、こういうことにするためには、企業の皆さんにも御協力をいただきたい。まして、八・五兆円のうちの農業の取り分は一二%前後です。周辺産業は四〇%なんです。そこを連携しながらやっていきたいと思いますが、いずれにしても、一つの農業生産の組織は半分は、必ず半分以上は農業者が持つと、この姿勢でこれからもいきたいと考えています。

○紙智子君 元々、六次産業化の議論というのは、農商工連携では生産者の手取りが増えないという問題が指摘をされて、生産者の所得を増やすようにということを議論してきたわけです。ところが、やっぱり企業が参入して企業の利益は増えても農家の所得は増えないということが繰り返されて、それが問題になってきたわけですよ。さらに、現在進行している事態というのは、地方創生どころか、これ、地方破壊の事態じゃないかと思うんですね。
 まず、米価暴落の問題です。これは農水委員会で何回もやってきていますけれども、六十キロ一万円に満たない米の概算金が多くの米生産者の希望を奪っている。営農意欲を喪失させています。国がスピード感ある対策を取らないので、少なくない自治体が危機感を持って上乗せ助成をしたり、今取組をやっていると。政府が米の需給調整を放棄している中で来年以降の米価の見通しも立たず、作付けを放棄する農家が続出しかねない事態なわけです。
 もしそうなれば、耕作放棄地の急増や農村集落の更に深刻な危機に直面することになるわけで、地方創生どころか、これは地方破壊になるんじゃないか。これ、石破大臣、いかがですか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) これ、予算委員会あるいは農水委員会等で西川大臣が答弁をしておられるとおりだと思っております。きちんとした米価下落対策というものを講じるということによって、そういうような事態が生じないようにしていかなければなりません。
 と同時に、やはり打撃を受けるのが大規模な方であり、専業でやっておられる方々に多くの不利益が集中するということを防ぐということでなければ、安定した収入、安定した雇用というものは実現をしないのではないかと個人的には考えております。

○紙智子君 米価対策について言いますと、農水大臣とは何回もやっていますからあえてここで聞きませんけれども、やっぱり豊かな希望が持てる、スピード感のある対策が必要なわけですよ。悠長な対策やっていたんじゃ、これは離農に歯止めが掛からないと。
 アメリカやEUでは、手厚い価格保障、所得補償が行われているわけです。アメリカは、米や麦などの主要作物の生産費を確保する価格保障、所得補償があります。価格暴落時には三段階で補償するようになっています。一つは、生産が続けられる最低水準の融資価格までの支払。二つ目は、面積当たりの一定額の固定支払。三つ目は、それでも生産費の水準の目標価格に達しないときはその差額分の不足払いと。それから、EUも買い支えをやっています。EUも共通農業政策として農業が続けられる最低保証をしているわけですね。穀物や牛肉、乳製品ごとに最低価格、支持価格を決めて、それを市場価格が下回った場合にEU加盟諸国の機関が買い支えて価格を安定させていると。
 下支えもなくしてしまって、価格が下がっても何もしないというのは日本ぐらいなんですね。何よりも、食料問題でいえば、輸入に依存する食料政策を変えなきゃいけないと。日本の食料自給率を引き上げるということが農村地域の振興にも求められているということを強く申し上げておきたいと思います。
 その上で、今政府が進めている日豪EPA、TPPなんですけれども、日本の農業、農村を更に窮地に追い込む貿易自由化戦略だと思うんですね。日豪EPAでは、来年の四月一日から、豪州産の冷凍牛肉が一〇%、豪州産の冷蔵肉が七%、それぞれ関税率が下がるわけですね。それだけこれまでよりも安く日本に輸入されるわけです。日本の畜産、酪農にも深刻な打撃を与えると。
 北海道では、多くの酪農家が将来の経営見通しを持てなくなって、中堅の酪農家を中心に離農が続出しています。そのために、生乳生産が減少を続けていて、既に市場でのバターが不足するという事態にまでなっているわけです。北海道や宮崎県や鹿児島県といった畜産、酪農を基盤としている地域にとっては大変な事態で、これは地方創生どころではないと。
 こんなことを進めていてどうして地方創生になるのかと。これはもう国民に対する、言っていることが逆ですから欺瞞じゃないかと思いますけれども、石破大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 経済連携の推進に当たりましては、地方の産業の存立及び健全な発展を含め、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めるということにより、国益にかなう最善の道を追求していくという考えでございます。
 それは、農水省におきまして、このTPPあるいはEPA、締結した場合に、どの産業にどのような影響が出るのかということは相当、相当というか、極力子細に検討しておるものでございます。ですから、こういう交渉を行うことによりまして、そういうような影響が最小限にとどまるように、あるいはその影響を最小限にとどめるための施策というものは何であるかということを相当詳細に、子細に検討いたしておりますので、御懸念には及びません。

○紙智子君 御懸念には及びませんとおっしゃいますけれども、今頃検討するなんというのは遅過ぎますよ。大体、本当にこれで大丈夫なのかということをこれから検討するというのは甚だ無責任ではないかというふうに思うわけですね。それで、実際には、いろいろセーフガードやるだとか何とかってあるけれども、これでもって価格の下落は止められないわけですよ。そういうことも含めて、これに対しては本当に甚だ遺憾に思っているわけです。
 さらに、TPPは更に深刻で、これ、言うまでもなく多国籍企業のための貿易ルールづくりですよ。そして、関税撤廃が原則と。政府はこの間、例外が認められるからということで日米の交渉を続けてきましたけれども、つい最近も米国側からは米のアクセス拡大を求められていますよね。米ももっと下げろという話になってきていると思うんです。米国政府側の要求は非常に強いと。しかも、米国の中間選挙の結果、米国議会は上院、下院共に共和党が多数を占めることになりました。共和党は民主党以上に自由貿易を目指しているわけですから、今まで以上に全ての農産物の関税撤廃を日本に求めるように米国政府に圧力を掛けていくということは必至だと思います。
 ですから、このままTPP交渉を続ければ、農業の展望の持てない、農業者の離農の拡大というのは避けられなくなってしまうと。それは、幾ら政府が地方創生だと言っても、地方衰退の進行を続けることになるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 私の答弁の仕方が悪かったのかもしれませんが、これから検討するなんぞと悠長なことを言っているわけではございません。
 これは、西川大臣が自由民主党のTPPの委員長であり、私が党の幹事長でありましたときも、本当に密接に連絡を取りながら、どの方々にどれぐらいの影響が出るかということを子細に分析をし、そしてまた、そのことをよく認識をしながら交渉を行うものであって、締結をしてから、協定が結ばれてからそれから考えるなんぞという無責任なことを私どもやったことは一度もございません。
 今の御指摘の点につきましては、そういうものが地方の創生というものを阻害するのではないかというお話でございました。それを阻害しないようにどうするかということを考えていかねばならないのであって、もちろん例外なき関税撤廃なぞはいたしません。しかし、それで守ったからといって、それじゃ、地方が良くなるかといえば、必ずしもそれはそうではない。いかにして付加価値を上げ、いかにしてコストを下げるか、そしてまた、いかにしてそのコミュニティーを守っていくかということを全て実現するのが地方創生でございます。

○紙智子君 誰が見ても、今、日本が有利な状況で交渉しているというふうには思わないわけですよ。仮に自動車産業に有利であっても、地方を支えてきた一次産業が大きな打撃を受けて地域経済がますます厳しい状況にならざるを得ないんじゃないかと。幾ら国が大丈夫だ、大丈夫だと言っても、それはもう不信感でいっぱいなわけですよ。ですから、やっぱりこのTPPについてはもうやめるべきだということを改めて申し上げておきたいと思います。
 さて、地方創生の議論の背景に、日本創成会議ですか、増田元総務大臣らが五月に提起をした市町村消滅論というのがあります。我が国の人口予測で八百九十六市町村が二〇四〇年に消滅する可能性があるという議論が非常に衝撃を与えたと。で、議論されてきたわけです。
 その中で、どうすれば地域が存続していけるのか、真剣に考えて自ら努力をして切り開いてきている例もあると。御承知だと思いますけれども、私、今年の五月に農水委員会で島根県に実は視察に行きました。そのときに、中山間地域でも本当にいろいろな努力をされているということを見てきたわけです。
 島根県の中山間地域の研究センターの調査では、二〇〇八年から二〇一三年の五年間で県内の中山間地域の三分の一を超す七十三地域で四歳以下の子供が増えていると。子供が増加した地域というのは山間部や離島が大半で、役所や大型店がある中心部からは離れたところで子供が増えているというのが出ているんですよね。中心部から離れたところで増えているということ、石破大臣、御存じでしょうか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 承知をいたしております。

○紙智子君 これ、島根県は随分早くから疲弊ということが問題になっていて、早い時期から住民と自治体とが子育て、住宅、雇用などで定住促進対策に取り組んできたということがあると思うんですね。
 それで、私は、やっぱりそういうところにちゃんとした支援というのが必要だと。もちろん独自で努力しているわけですけれども、やっぱり命に関わる問題とか、子供、子育てに関わる問題というのはお金が掛かりますから、人口が減っているところでそれを支えるということは、国からの支援というのは絶対必要だというふうに思うわけですよ。
 邑南町の話も先ほど出ていましたけれども、地産地消条例を制定をしたと。町内三か所の農産物直売所をつくって、農業関連法人など、小さいながらも元気な農業を支えていると。集落と地域農業の存続のための集落営農法人がIターン、Uターンの人たちの受皿になっているということですね。町では日本一の子育て村を目標に掲げて、第二子以降の保育料無料化、さらに、中学校卒業までの医療費無料で子育て支援に力を入れてきたと。それから、奨学金の制度、新規就農支援、定住支援コーディネーターの配置などを実施してきたと。
 こういう取組に国が支援すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) 邑南町の取組に学ぶべき点は私どももきちんと学ばねばならないと思います。B級グルメばやりですが、いや、そうではないと、A級のものでなければ人は来ないのだということは立派な哲学だと思っております。邑南町というのはかなり交通不便なところでありますが、交通不便でも人は来るのだということ、交通不便なところでも出生率は極めて高いのだ。
 また、ここで極めて注目すべきは、金がなくなっちゃったらばもう支援ができないと、そんな無責任なことはできないのだということで、基金の造成もしておろうかと思います。ですから、国ももちろんそういうものに対する支援、お子さんがもっと生まれるような支援の方策というのは、厚生労働省あるいは有村大臣とも協力をしながらやっていかねばならないことです。しかし、金の切れ目が縁の切れ目ということにならないようにというこの邑南町の取組というのは、私は大変に感銘を受けておるところでございます。

○紙智子君 邑南町については、日本創成会議が邑南町の未来について、二〇四〇年には二十歳から三十九歳の女性人口が約六割減少して消滅に向かうというように予測していたわけですよ。ところが、これが見事に外れて、この層の人口は二〇一〇年の八百一人から一四年には八百十四人に増えたと。だから、やっぱりそういう努力によってそこを克服することができるということを示しているし、その点ではやっぱり必要なところで国のお金は入れなきゃならないだろうというふうに思うんです。
 それで、政府は、中山間地域や離島の小さな自治体は消滅するというようなことに立って、それで地方に人口二十万規模の地方中核拠点都市をつくって財政と施策を集中させて、東京に行かなくてもいいように仕事の場をつくるんだというようなことを言われているんだけれども、しかし、これは気を付けなきゃいけないと思うのは、そうなると、農村部に今まで回すべきお金を、そこを引き揚げてその中核都市に集中するということになったら、それこそ活性化どころか疲弊を生むということになると思いますので、そうは絶対にさせないでしょうねということを最後にちょっと担保を取っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(地方創生担当大臣 石破茂君) それはやはり農地であれ海であれ森林であれ、森林だって日本の面積の六七%を占めておるわけでございます。やはり日本の一番の礎というのは農村であり漁村であり山村であると。そういうものが崩壊し衰退しないようにするのは、与野党とか関係なく日本の国の政治家の務めだということだと思っております。
 委員の御指摘、よく承りました。

○紙智子君 地方創生といいながら地方崩壊にならないようにということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。