<第187回国会 2014年11月6日 外交防衛委員会>


日豪EPAは、日本の農業、とくに酪農に大打撃を与えると反対討論

○経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 私は、会派を代表して、日豪EPAの承認に反対の立場から討論を行います。
 農産物の輸出大国との初めてEPAとなる本協定の交渉をめぐっては、交渉開始の前から、国内の農業に及ぼす影響を心配する全国の農業者、地方からの危惧、反対の声が大きく広がりました。
 衆参両院の農水委員会は、政府に対して、重要品目が除外又は再協議の対象となるよう全力を挙げること、WTO交渉や米国、カナダとの農林水産貿易に与える影響に十分留意すること等を求める決議を行いました。
 こうした経緯に照らせば、当然慎重審議が行われてしかるべきです。にもかかわらず、僅か一日の委員会質疑で承認を急ぐことは許されません。審議は全く不十分であることを初めに強調しておきたいと思います。
 本協定の内容は、広範な農林水産品目について、日本市場へのアクセスに係る関税の撤廃、削減等を認めたもので、危惧されたとおり、国内の農業に極めて大きな打撃を及ぼすものとなっています。重要品目のうち除外となったのは米のみで、牛肉、乳製品で大幅な関税削減、関税割当てを認めるもので、とりわけ牛肉関税の大幅削減によって、北海道、東北、九州を中心として、畜産、酪農及び関連業種が深刻な影響を受けることは必至です。
 この結果は、米国等のほかの農産物輸出国に対しても同等以上の譲許を要求する根拠を与えるものであるとともに、国会決議に反することは明らかです。政府が、自動車関税撤廃と引換えに、農産物の輸出大国を相手に食料主権をないがしろにして国内農業を窮地に陥れる約束を行ったことは重大だと言わなければなりません。断固抗議するものです。
 さらに、政府が協定によって生じる影響の試算を全く明らかにしようとしないことは、農政の責任放棄というべきものであり、到底看過できません。具体的な影響試算を速やかに公表するとともに、それに基づく対応策を提示するよう強く求めます。
 本協定は、米国が主導するTPP協定につながるものであり、国内の農林水産業に一層重大な結果を及ぼす事態を呼び込むものです。
 本協定には、日本が第三国に特恵的なアクセスを認めた結果、日本市場における競争力に重大な変化がある場合には、オーストラリアに対して同等の待遇を与える観点から見直しを行おうとする条項があるほか、重要品目に関する見直しが明記されています。他国との交渉次第でオーストラリアから農産品の受入れの拡大を迫られ、譲歩の連鎖に陥りかねません。日本農業の存立を脅かす事態を断じて招いてはなりません。
 自民党選挙公約によって、国民を欺いて参加に踏み切ったTPP交渉からの撤退を直ちに決断するよう強く求めます。
 以上を申し述べ、討論を終わります。