<第187回国会 2014年10月29日 東日本大震災復興特別委員会>


放射線量の影響に苦しむ福島県の農家の健康対策を要求

○東日本大震災復興の総合的対策に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず最初に、集中復興期間について質問いたします。
 私も先日、復興特別委員会で委員の皆さんと一緒に宮城県の石巻に行ってまいりました。そして、八月の末は、岩手県の陸前高田、大船渡、住田町に行ってまいりました。もう被災からは三年八か月ですか、時間がたっているわけですけれども、ようやく復興公営住宅ができて入居ができたというところもあるんですけれども、やっぱり、みんな共通の思いですけど、まだまだこれからだなという状況です。
 それで、被災地を訪問しますと、復興事業が集中して人材不足であると、あるいは資材ですね、資材が高騰していて事業が思うように進まないということが言われます。特に原発事故のあった福島の復興というのは本当に遅れた状態になっていると。大臣のところにも被災各県からも要請があったと思いますけれども、集中復興期間、これについて延長してほしいという要請もあったと思いますし、長期にわたる復興関連事業の財源を確保することが必要だというふうに思います。
 その点で、大臣の見解をまず初めにお聞きしておきたいと思います。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 集中復興期間終わった後の財源をしっかりしろと、そのとおりだと思うんです、私もそう思うんです。ただ、なかなか、じゃ、こうこうこういうお金がありますよと簡単にひねり出せるような金額ではどうもなさそうでありますので、これは、先ほどからお話ししておりますように、一回立ち止まって、何ができていないかと、あるいは新たな需要は何があるかと、そしてそれはどういう優先順位を付けてやらなければならないかといったような、見直しといいますかレビューをしっかりやった上で中長期的に考えていかなければならない課題だと。今は、やるべきことは二十七年度までの集中復興期間にしっかりと仕事をやっていくことであろうと、こう思っております。

○紙智子君 やり始めている現地の皆さんにとっては、途中でやっぱり宙に飛んでしまっては困るという思いが本当に切々と伝わってくるもので、やっぱりそこは、とにかく集中期間、全力を挙げてという話なんですけれども、その後のこともやっぱり大事だと思いますので、そのたびごとにというか、しっかりやっていく必要があるんだと思います。
 次に、福島のことなんですけれども、特に農業従事者について質問をしたいと思います。
 大臣は所信的挨拶で、福島の復旧が緒に就いた段階というふうにお話しされています。そこで、福島の農業の現状についてなんですけれども、福島の農家の皆さんは、大震災によって、地震、そして津波、そして原発事故ということで被害を受けたわけです。とりわけ原発事故による打撃というのは本当に大きくて、これがなければもっと進んでいるのにということもある事態なわけですね。
 それで、福島の農家の方は、放射能に対する消費者の不安を解消するために二重三重の努力をしながらやはりやってきたと、農産物の販売も行ってきていると。なかなか思うように進まない東電との損害賠償の請求にも苦しんでいるわけです。それから、野外で作業をするということもあって、健康の不安も抱えながら生きていると。次の、自分たちの世代の後の世代ですね、次世代に農業を引き継ぐことができるのかどうかということでも、非常に大きな不安を抱えながら今あるというふうに思うんですね。
 こういう福島の農家の苦しみや不安を一つ一つやはり解消しながらやっていくということが政治に求められていると思うんですけれども、この点についての大臣の見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 紙委員お話しのように、福島県の農家の皆さん方には、まさに二重三重の被害を受けている中で大変御苦労をしていらっしゃること、十分に認識をいたしております。
 そういう中で、福島の場合、やっぱり農業は大きな大きな基幹産業でありますし、米もそう、野菜もそう、それから、いろんな果物が季節に応じてできてくるというのが福島の農業の特徴でありまして、そういう状況の中の皆さん方が被災に遭われ、さらに風評被害というなかなか消しても拭いてもどうやってもなかなか消えない難しい問題と闘いながら、地域の経済の柱である農業というものをしっかりしていこうと努力していらっしゃる姿、頭が下がる思いと同時に、もっともっと支援しなきゃという思いを持ちながらやっておるところでございまして、地域の現状に応じまして農林水産省や県が営農再開の指導や支援を具体的に実施してきているということを私どもも承知しておりますので、その中で、一つは、農作物の中にある放射性物質の低減対策、これ、一つは、今マーケットに出ているものは安全なものなんです。例えば、米でいいますと、福島の米は全袋検査という世界に例を見ない安全性重視の政策を取って、全袋検査をして安全なものを出している。野菜あるいは魚類にいたしましても、きちっと検査をして出しておる。安全なものしか出ていないんですが、福島というだけで残念ながら敬遠する消費者がいることは、これは残念ながら事実でございまして、こうした風評被害をどうやって消していくか、我々も懸命な努力をしていかなければならない。
 私では余り、力不足ではありますが、総理にどんどんそうした風評被害に遭っている作物を買っていただくとか食べていただく、それをマスコミで報道していただく。あるいは歌手の皆さんですとか俳優の皆さんですとか、人気者の皆さん方にそういう活動に参加をしてもらって、安全だよということを認識をしていただく。数字の上で幾ら安全ですと言っても安心していただけるかどうかはまた別の問題でありまして、これを乗り越えなければ風評被害というのは払拭することはできない。これからも懸命に努力してまいります。

○紙智子君 続いて、農水省にお聞きします。
 原発事故の後、福島では平常よりも高い放射線量が計測されて、除染を行いながらこの被曝線量を減少させることが急がれているわけですけれども、農業は野外で作業するわけですね。そういうことが多いということで、健康への不安を抱えています。
 放射能への健康不安に応える対策というのは取られているでしょうか。

○副大臣(農林水産副大臣 小泉昭男君) 紙議員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。
 おっしゃるとおり、現在、制限地域ございますが、居住制限区域や帰還困難区域以外の地域におきましては特別な線量管理を行うことなく営農に取り組んでいただける状況にあると考えております。
 一方、お話にございましたとおり、農業は野外での作業がほとんどでございますから、不安をお持ちの農業者がおられることを踏まえまして、農林水産省といたしましては、労働安全の確保のために必要な事項を盛り込んだ農業生産工程管理の導入を始めといたしまして、有識者による健康講座の開催、さらには、農作業に当たり放射線の影響を減らすために注意すべき事項を盛り込んだチラシの配布等、取組を支援しているところでございまして、このような取組を通じ農業者の不安の払拭に努めてまいりたい、このように考えております。
 また、先日、今大臣が御答弁された風評の関係の被害を払拭させるということで、西川大臣を始めとして政務三役が福島産の農産物の試食会を行わさせていただきまして、私も以前、八百屋をやっていた経験がございまして、そのときに福島の二本松のキュウリも本当に棚もちが良くてお客様に人気がございました。
 福島産の農作物が風評被害に遭わないでしっかりと皆さんに認識されるように私たちも取り組んでまいりたい、このように思っております。
 以上でございます。

○紙智子君 農家の方の健康に対する不安というのはやっぱりちょっと付きまとっていて、今、農業生産工程管理も使ってという話があるんですけど、これはやっぱり自己管理というのが基本になるわけですよね。
 それで、ちょっと厚生労働省にお聞きしたいんですけれども、厚生労働省は、原発事故後、除染等の作業に従事する労働者の放射線による健康障害をできるだけ少なくすることを目的に、除染電離則を定めて、除染等業務ガイドラインと特定線量下業務ガイドラインを定めました。
 それで、除染等業務ガイドラインは、原発事故によって放出された放射性物質、放射性セシウムの濃度がキログラム当たり一万ベクレルを超えたものを除染したり取り扱ったりする作業のためのガイドラインなわけですけれども、特定線量下業務を定めた理由について、ちょっと簡潔に説明をお願いします。

○政府参考人(厚生労働省労働基準局安全衛生部長 土屋喜久君) お答え申し上げます。
 お尋ねのございましたガイドラインは平成二十四年に策定をしたものでございますが、これは避難区域の区分の見直しに伴いまして、そういった地域で除染等の業務以外の生活基盤の復旧復興の作業に、順次開始される見込みとなったことを踏まえまして、これらの業務に従事する労働者の放射線障害の防止対策を講ずるために、平成二十四年七月にいわゆる除染電離則を改正をいたしまして、これに合わせて、この特定線量下業務において事業主が講ずべき事項を一体的に示すという目的でガイドラインを定めたところでございます。

○紙智子君 それで、除染等業務従業者、あっ、従事者ですね、特別教育テキストというのがありますよね。これを読みますと、除染電離則を定めた理由として、この規定は、除染等を行う作業者には被曝限度が定められているわけですけれども、その限度内であれば被曝低減のための対策は不要ということではなくて、更なる被曝低減のために努力する必要があるというふうにあるわけですね。つまり、更なる被曝低減の努力が必要だということですよね。
 それで、特定線量下業務というのは、農業もこれ適用対象になるんでしょうか。

○政府参考人(厚生労働省労働基準局安全衛生部長 土屋喜久君) 特定線量下業務につきましては、これはそれに従事する労働者を対象としておりますので、作業内容に限定はございません。したがって、農作業であっても、労働者を使用して行う場合には当然適用があるということでございます。
 また、このガイドラインでは、労働者の防止対策を目的としつつ、同時に、自営業あるいは個人事業者の方々についてもこれが活用できることを意図しているところがございまして、線量管理などにつきましては、自営業として農業を営む農家の方にもこれらの業務を行う事業者とみなしてガイドラインを適用するという考え方を取ってございます。

○紙智子君 それで、そのガイドラインに、事業主を対象にしているんですね、基本はそうですよね。それで、そのことについての労働者教育、健康管理を行うことになっているんですけれども、農業者に対しては誰がやるんでしょうか。

○政府参考人(厚生労働省労働基準局安全衛生部長 土屋喜久君) お答え申し上げます。
 農業者の方でも、それが労働者である場合には当然事業主の方がやっていただくということになりますけれども、自営業として農家を営んでおられる方々については、これはこのガイドラインにおきまして、これらの業務に従事する労働者に対する教育と同様であることが望ましいというふうにしているところでございます。
 したがいまして、自営業者の方々には、今お話がありました教育用のテキストもホームページで公開をしておりますので、これをお使いいただいて実施をしていただくことができるのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 今のお答えは、要するに、労働者に対してはいろいろそういうのがあるんだけれども、農業者に対しては参考にして自分でやってくださいという話なんですよね。
 それで、環境省に次お聞きしますけれども、福島県は県民健康調査をやっているわけですね。県民健康調査には、被曝線量を把握する基本調査と健康状態を把握する詳細調査があるわけです。基本調査は、全福島県民を対象にした、原発事故後の四か月間の行動の問診票を送付して回収しているんですけれども、回収率どうなっていますか。

○政府参考人(環境省総合環境政策局環境保健部長 北島智子君) 福島県が公表しております平成二十六年六月三十日時点の集計によりますと、市町村によって差はございますが、行動記録の回答率は福島県全体で二六・四%であります。

○紙智子君 二六・四%ということですから、県民調査やっているから大丈夫、安心ということにもなっていない、不安が消えるわけじゃないということなんですね。
 それで、ちょっとお配りした資料を見てほしいんです。これは、福島県の農民運動連合会が、二〇一三年ですから去年の十一月から今年にかけて、福島県伊達郡を中心に約八百地点で行った土壌調査の一部なんです。
 それで、米の全袋検査などで農産物には問題ないんですけれども、土壌の放射線量は、高い地点で見ると、米の水口で平方メートル当たり約百四十二万ベクレル、空間線量は毎時一・一マイクロシーベルト、野菜は八十万ベクレル、〇・九マイクロシーベルト。畑作やりますと土ぼこりが舞うということもありますから、吸い込んだときに内部被曝しないのかという不安も持っているということもあるんです。一番下の方をちょっと見てもらうと、桃ですね、桃は約八十万ベクレル、一・〇マイクロシーベルトと。果樹園は除染が難しいというふうに言われています。
 農家の持っている土地はそれぞれ違うわけですよね、水田もあれば畑もあればと。いろいろあるんですけれども、やっぱりそういう状況が違う中で農家が不安に思うのは当然だというふうに思うんですね。常に放射性物質の濃度を観測をして、除染をし、健康管理をすることが必要なわけで、労働者には、被曝を低減して、労働者教育も行って健康管理をする対策があるのに、農家にはそういうのがないということなんですね。
 大臣、今のこの施策で農家の不安に応えられるとお思いでしょうか。

●資料「福島県伊達郡のほ場調査」

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) 関係省庁等の答弁とも重複をいたしますが、これまで政府においては、営農再開への不安解消のための対策について、地域の状況に応じて営農再開指導を行うほか、次のような具体的な対策、例えば、先ほどなかなか難しいとおっしゃいましたが、農地の除染、これを引き続きやっております。
 この除染、二通りありまして、一つは表土を剥いでしまう、どこかへ移しちゃうというのと、表裏ひっくり返す、土をひっくり返すともう出てきませんので、そういう形の除染の仕方もあるんですが、その除染を更に進めていく。それからもう一つは、除染をした後の農業の営農再開技術といいますか、当初はゼオライトみたいな吸収剤をまくというようなことも指導しておったようでありますが、肥料をどれぐらい入れれば、昔の田んぼと田んぼが、あるいは畑の要素が違ってきますので、それをどうやって技術的に農業をやっていくかということなど、難しい問題をしっかり克服していくことが復興庁としての仕事であろうと、そして農林水産省の仕事でもあろうと思っておりまして、現場のニーズを的確に把握すると同時に、いろんな役所と力を合わせて不安の解消に努めていきたいと、こう思っております。

○紙智子君 この間、福島の農家の方、原発事故から三年間にわたって、農水省にも環境省にも、それから厚生労働省にも要請しているんですよ、不安なわけですから、何とかしたいと。
 その際、厚生労働省は、労働者の安全と健康の確保とを所管するけれども農業者は担当じゃないという答弁になるんですね。それから環境省はというと、健康調査は県がやっているので県にそのことは求めてほしいというふうに答弁するわけです。農水省はというと、農水省は健康管理までは所管していないんだというわけですよね。こういう農家の不安にどこも応えない状況がこの三年間続いているというのがあるんです。
 一体じゃどこが本当に責任持って対応するのかということで、やっぱり農家の方の不安というのが解消されていないということがある中で、大臣、この原発事故の責任というのは元々国と東電にあるわけですから、そういうやっぱり不安を解消するための、不安があるわけですから、不安を解消するための対策を取っていくべきじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 竹下亘君) おっしゃるとおり、実は、農家だけではなくて様々な、風評被害の問題もその一つでありますが、安全であると、数字の上では安全であるということと、安心をしていただけるかどうか、あるいは不安を持たないで仕事をしていただけるかどうかは別のことでありまして、不安があるというのは、汚染されているという意味とはまた違うんです。汚染されているから不安があるというのと、汚染されていなくても不安があるという二つの不安がありますので、そうしたものをどう克服していくかというのは、我々も汗をかいていかなければならない課題だと思いますし、どこ行けと言われても、いや、復興庁かな、復興庁で対応できるかな、いや、復興庁がほかの役所を叱り付けることはできますので、それはやらせていただきたいと思います。

○紙智子君 この風評被害で悩んで、そして健康問題でも非常に心配だと、賠償問題もあると。そういうことではやっぱり、放射能を観測して低減させるということももちろんそうですけれども、やっぱり農水省だけで解決できない問題があるので、省庁またがって、復興大臣、復興庁が寄り添ってそこに対しての対応策をやっていただきたいなと、これからもやっていただきたいなということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。