<第186回国会 2014年6月17日 農林水産委員会>


環太平洋連携協定(TPP)は地域ブランド表示に深刻な影響を与える/TPPからの撤退を要求

○特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最後になりますとかなり重なっているところもありますが、確認の意味も含めて質問させていただきたいと思います。
 まず、地理的表示法案についてですけれども、この法案の提出の意義について、まずは農林水産大臣、御説明をお願いいたします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 我が国には、その地域の気候や風土を生かしたり、特別な方法によって長年にわたってその地域で生産されたりしてきた産品、こういうものが多く存在しておりまして、これらの産品は高い付加価値を持つ地域ブランド産品として評価をされております。
 これらの地域ブランド産品の中には、その名称を見ただけで産地と産品の特徴が分かるものがございます。これは、産地が長年努力を積み重ねて産品の特徴をしっかりと守り続けたことで、産地の名称と特徴が深く結び付いたためであると、こういうふうに思っております。
 こうした地域の努力を国が評価をし、産品の名称を地理的表示として国が登録をして、地域共有の知的財産ということで保護する、このことで生産者の利益の増進、それから消費者の信頼の保護、こういうものを図るために今国会にこの法律を出させていただいたところでございます。

○紙智子君 それでは、この法案の前に既に地域団体商標、これが二〇〇六年から導入されているわけですけれども、経済産業省の特許庁長官においでいただいていますが、この地域団体商標について、この制度の導入の目的について御説明をお願いいたします。

○政府参考人(特許庁長官 羽藤秀雄君) 地域団体商標制度でございますけれども、これは、伝統的工芸品などの地域ブランドの名称について、商標権という独占的な利用の権利を与えることによって、ブランドの育成に努力する地域の事業者組合などがブランドの評判に便乗するいわゆるまがいもののようなものを排除をし、当該地域ブランドの信用を維持強化をする、そして、そのことが産業の発達に寄与し、併せて需要者の利益の保護に資すると、このような観点から、当該地域ブランドの信用の維持強化ということの取組を応援するという、こういう目的で、今お話ございましたように、平成十七年の商標法改正によって導入をされ、平成十八年に施行されたものでございます。

○紙智子君 それで、今お話あったように、この地域団体商標の実施状況、配られておりますけれども、これを私も見せていただきました。
 それで、見ていきますと、例えば北海道では、小川委員や徳永委員、横山政務官も北海道なので大体身近な話になるわけですけど、北海道でいうと、この中に登録されているのが、十勝川西長いも、それから鵡川ししゃも、豊浦いちご、はぼまい昆布しょうゆ、それから大正メークイン、大正長いも、大正だいこん、苫小牧産ほっき貝、幌加内そば、虎杖浜たらこ、それからほべつメロン、大黒さんま、めむろごぼう、それからめむろメークイン、十勝和牛、北海道味噌、東川米、これは先ほどありましたけど、びらとりトマト、それから十勝若牛、いけだ牛、釧路ししゃも、北海道米などがこの地域団体商標を受けていて、それぞれ地域農協や漁協などが申請者となっています。これによって、地域ブランド名ということで保護されているわけです。これだけ地域団体商標が浸透しているという中で、今回、この地理的表示が積極的に受け入れられるかどうか、ネックになるというか、スムーズに申請になるかどうかというふうに思うわけですけれども、まずその点で農水省としてどのように考えていますか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) お答え申し上げます。
 紙先生御指摘のとおり、既にこの商標法に基づく地域団体商標制度が存在しているわけでございます。しかしながら、我が国の地域団体商標制度では、商標登録の際、産品の品質基準の登録、品質の確認までは求められておらず、一定の品質基準を満たすものを保護する、そういった制度とはなっていないというふうに理解しております。また、この地域共有の知的財産である地域ブランド産品の適切な活用を図るためには、一定の品質基準を満たす地域内の生産者であれば誰でも地理的表示を使用可能とすることが望ましいわけですけれども、この地域団体商標制度は登録権者にのみ商標使用を認める制度でございまして、そういった要請に対応するものとはなっていないというふうにこれも理解しております。
 このような状況の下で、我が国の農林水産業の強みである品質やブランド価値を守り、攻めの農林水産業を展開していくためには、地域ブランドをより強力に保護していくための制度が必要である、かような考え方から本制度を導入することとしたわけでございます。

○紙智子君 ちょっと今、早口にばあっとしゃべっておられたんですけれども、要するに、地理的表示は地域団体商標がカバーできていない当該農林水産物の品質を保証する機能が一つはあると。権利侵害に対しては自ら訴訟などの負担なくブランドを保持できるという点、それから地域的な表示を地域共有のものとして使える点をカバーしているんだということで、この法案を使って申請するメリットがあるんだということですよね。
 それで、品質の確保のための生産行程管理業務というのは、これ生産者団体が自ら行うことになっているということでいいますと、次に聞きたいのは、生産者団体が自ら行うということは負担感が強いんじゃないかなと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) お答え申し上げます。
 我が国の地域ブランド産品の中には、生産者団体が自ら品質基準を取り決め、品質管理を行うことでブランド価値を高めているものも多く見受けられるところでございます。また、地理的表示の登録を受けた産品は、その生産方法や特性が産地と結び付いている必要があることから、その品質管理については生産者団体自らが最も知見を有していると考えております。このような実態を踏まえますと、多くの地域ブランド産品について、本法案に基づく生産行程管理は既に実施している品質管理の延長線上にあるものと考えられることから、本制度の導入に当たってそれほど追加的な負担が生じることとはならないものと考えております。

○紙智子君 追加的な負担は生じないんじゃないかというんですけれども、いや、本当にそうなのかなというふうに思うんですね。
 例えば、北海道米で見た場合に、お米で見た場合に、北海道米のブランドはありますけれども、今の地理的表示でいうと北海道米の品質が変わっていくわけです。例えば、一等米で粒の大きさが何ミリ以上の品質とする場合に生産行程管理業務はどのようになるのかと。これはどうですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) 北海道米の事例を先生挙げられましたけれども、この北海道米につきましては、商標権者であるホクレンにおいて、きらら三九七、それからふっくりんこやおぼろづきなど、こういった約二十の品種について、生産者とJA、ホクレンが一体となり進めている、安全、安心を確保するための取組である北海道米あんしんネットに定められている統一栽培基準や残留農薬の基準を守って生産されたものがその名称を使用できることとされていると承知しているところでございます。
 この地理的表示の登録申請に当たり定める必要のある生産方法や品質等の基準につきましては、地域で議論をして合意形成いただくことになるわけですが、仮に現在のような内容の基準のみを定めるとした場合、登録された生産者団体は、生産者に栽培履歴を記録させ、また、これらの栽培履歴の確認や、残留農薬試験の実施により基準が遵守されているかを確認することになるのではないかと考えております。

○紙智子君 そうしますと、今、生産行程管理業務ということでいうと、これは、今言われた点でいうと、ちょっともう一回言っていただけますか、どういう作業を、業務をすることになるのか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げましたように、生産行程管理業務という、この事例に即して申し上げますと、例えば、生産者に栽培履歴を記録させ、また、これらの栽培履歴の確認や残留農薬試験の実施と、こういったことが確認業務になるのではないかと考えております。

○紙智子君 その品質保証についていえば、例えばEUの場合だと、公的機関又は独立した第三者機関が確認する仕組みになっているわけですよね。
 やはりこの品質保証の客観性ということから見ても、将来的に言えば、今はまだそうなっていないわけですけれども、将来的には、そういうEUのやっているような方向性に持っていかないといけないんじゃないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) お答え申し上げます。
 我が国の地域ブランド産品の中には、生産者団体が自ら品質基準を取り決めて品質確認を行うことでブランド価値を高めているものが多く見受けられること、また、地理的表示の登録を受けた産品は、その生産方法や特性が産地と結び付いている必要があることから、その品質確認については生産者団体自らが最も知見を有していると考えているところでございます。
 このような実態を踏まえて、先生おっしゃいましたEUのような第三者機関が品質管理を行う仕組みではなく、生産者団体が品質管理を行うとともに、国がその品質管理の体制をチェックすることにより、品質確認の効率性と客観性とを両立させ、産品の品質が公的に保証される仕組みとしたところでございます。
 今後、本法案が成立した後には、品質確認の仕組みについて、これは将来のことになりますけれども、施行の状況等を踏まえつつ、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。

○紙智子君 生産者団体が自分たちで品質の評価をして国が助けるという形になっているんだということなんだけど、EUのような体制がないことで、言ってみれば、その体制がない分、安上がりにできるという面はあるんだと思うんですね。そのことが信頼性の確保という点では弱点を持ったものになってしまわないかということもあるんですけれども、そういう心配というのはどうでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) これは、先生おっしゃいますように、第三者機関によって確認するというのが信頼性があるのではないかということでございますけれども、これは生産者団体が確認すると、それで、生産者団体がもし仮にそれを不正を働くといったことになりますと、これは生産者団体取消しというような措置もございますので、そういった措置も含めて国がしっかりと、何といいますか、監視をしていくということをやっていきたいと思っておりますので、現在この制度は生産者団体が品質確認をするということにしておりますので、この施行の状況を見ながら、今後、将来的には必要に応じて検討したいと思っています。

○紙智子君 施行の状況、この後の実際始まった状況を見てということでもあると思うんですけど、やっぱり運用が始まってからいろんなトラブルが起こったり、ちょっと想定していなかった問題が起きるということだってあるわけですから、そこのところは是非状況を見ながら、一番やっぱり望ましいのはEUのようにちゃんと体制を取ってやっていくというところにあると思うので、是非そういう方向になるように要望しておきたいというふうに思います。
 それから、既に地域団体商標を登録している方々が今回地理的表示を新たに申請するということが想定されるわけですけれども、地域団体商標を登録している方々が今回の地理的表示の申請をするということは当然可能だということも先ほどやり取りがあったわけです。
 それで、その申請の際の注意点がないかどうか。これは農水省さんにもそのことについて触れてほしいですし、それから経済産業省にもそのことをちょっと触れていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 山下正行君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、地理的表示の登録を受けようとする産品について既に地域団体商標が登録されている場合は、その産品の商標権者自らが申請する場合又はその商標権者から承諾を受けた場合に限りこの地理的表示の登録を受けることができるということでございます。
 注意点ということでございますけれども、地理的表示の登録後は、言わばこれが地域の共有の知的財産ということで、従来の商標権者に限らずその生産の方法等の基準を満たす地域の生産者全体が使用できることになるという、こういったことに相なるわけでございますが、その点について留意をしていただく必要があるというふうに考えております。

○政府参考人(特許庁長官 羽藤秀雄君) 今御答弁がございましたけれども、地域団体商標制度、これは商標法に基づく制度であります。そして、商標法に基づく制度においては、例えば品質の管理につきまして、商品の品質等の審査であるとか検査というのを国が行うことはありません。また、そういう意味での国による取締りということもございません。
 ところが、地理的表示保護制度におきましては、先ほど来御議論ございますように、生産者団体が品質管理の確認を行うとともに、国が品質確認の体制をチェックするという形での品質等に関する規律がございます。したがいまして、私ども経産省、特許庁の視点から申し上げますと、品質等の維持向上という非常に重要な課題についてこの申請時に地理的表示保護制度における規律というものをしっかりと満たす、これがまず何よりも重要な留意点ではないかというふうに考えております。

○紙智子君 それでは、次に行きますけれども、今回の地理的表示法案は、知的所有権としてTPPやEUとのEPA交渉とも絡んでくる問題だというふうに思います。
 それで、米国とEUとでいいますと、この地理的表示についての考え方が異なっているというふうに思うんですね。その点、考え方の違いについて、ちょっと詳しく説明をしていただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、いわゆるTRIPS協定でございますが、この地理的表示の保護を求めておりますが、具体的にどうやってやるか、これは各国に委ねられております。したがって、各国の状況に応じて制度設計がなされておりまして、EUのように独立した保護制度を設けて、先ほどちょっと申し上げました赤いマークと青いマークと分けて、委員がさっき御指摘になったように、きちっと第三者的機関を置いてしっかりと監視をするという国々もありますれば、一方、よく新大陸といいますが、アメリカや豪州のように商標制度の中でそういう国内担保措置を行っている、こういう国もあると、こういう状況でございます。

○紙智子君 今、米国について言うと、商標法の中に位置付けるというような話がありました。EUはそうじゃないということで話があったんですけれども、今回、日本が作っている地理的表示法案でいうと、どちらかというとEUに近い法体系になっているわけですよね。仮にEUからカマンベール・ド・ノルマンディー、チーズですけれども、これを地理的表示として指定を求められた場合には、これは当然指定することになるわけですよね。ちょっと確認します。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 本制度は内外無差別ということでございますので、例えばカマンベール・ド・ノルマンディーとかパルミジャーノ・レッジャーノと、こういった海外産品について、我が国の産品と同様に要件を満たすものについては保護対象となり得る、こういうことにしております。
 このため、海外からの登録申請についても、適正手続を確保した公平な審査を経て、本制度に基づいて農林水産大臣の登録を受けることを可能としているところでございます。

○紙智子君 当然、これは指定されるということになる、登録されるということですよね。そうしますと、米国政府はカマンベール・ド・ノルマンディーなどは、これは保護対象にすべきでないという考え方なわけですよね。日本政府とも考え方が異なっていることになるわけです。
 現在行われているTPP交渉でも、知的財産の交渉分野でこの地理的表示が検討対象になっていると思うんですね。仮に米国が主張している証明商標制度に近いものがTPPの中で導入されたら、今回の地理的表示法案もこれは修正を余儀なくされることになるんじゃないかと思うんですけれども、この点いかがですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) このTPP交渉において、地理的表示も含めた知的財産分野についての議論が行われている、よく言われている二十一分野のうちの一つが知的財産でございますので、そこで議論が行われているということでございます。
 具体的な中身についてはお答えは差し控えさせていただきますが、この交渉がどうなるかということにも関わってきますけれども、TPP交渉においても、今般の地理的表示制度を基にして適切に対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 適切に対応してまいりますといっても、これ重大な問題だと思うんですよね。実際上は、中身は言えないけれども交渉されているわけですよね、話がされているわけですよね。
 私、実は、去年の十一月だったと思いますけれども、予算委員会か決算委員会だったかと思いますけれども、質問で取り上げたんですが、二〇一三年の十一月に、インターネット上でTPPの、内部告発サイト、ウィキリークスというところが情報を、TPPの知的財産権に関する議論の中身というような情報が出回ったんですね。そこで、文書の中で、地理的表示について、EU、欧州連合が対外交渉で強く主張している、しかし、米国は消極的で、TPP交渉の中で徹底的に骨抜きにしようと各国に働きかけている姿が文書から浮かんでくるというふうに指摘しているわけですよ。米国の主張は、食品分野の知的財産保護は、登録商標を基本に据え、地理的表示は二の次にすべきということで、この主張に沿った文書にTPPの交渉の中ではなっているということを指摘しているわけです。
 この点、政府としては、外に中身は明かせないと言うんだけれども、こういう議論がされていて、そういう文書があるということが一方で言われているわけですけれども、これどうするのかと問われてくると思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 一度この委員会でもウィキリークスでしょうか、問合せがあって、それはそういうものはないという、本物でないというような御答弁を差し上げたという記憶もございますが、いずれにしても、まだ交渉途中でございます。
 それから、EUの保護制度と日本の今回御審議いただいている制度、全く同じということではないわけでございまして、EUの地理的表示保護制度を参考にしながら、そしてなお、今お話があったように、今新大陸アメリカとEUの間でいろんな議論があると、こういう国際的な議論にも十分配慮しながら設計をしておるところでございまして、そういった意味で、この法律が成立した暁には、この表示制度を基に国際交渉の相手方とも連絡を密にしながら対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 これはやっぱり、いや、そういうことはあるでしょうけれども進めますという、簡単にいかない話じゃないかなと思うんですよ。
 やっぱり、TPPには、TPP交渉にはEUは入っていないわけですよね、EUは入っていないと。だけど、日本とEUとは貿易上の交渉をいろいろやっていて、特にEUに対しては日本側からは車も出していきたいと。そういう点では、EUが求めているような今回のこの表示についても要望に沿ってというか、やらなきゃいけないということもあり、この間進めてきたんだと思うんですよ。EUでできているものを参考にしながら、こういう日本におけるものをつくってきたんじゃないかなと思うんですよ。
 それが、TPPの交渉の中で、TPPは、EUは入っていないけれども、アメリカが主導して各国に対してアメリカの言ってみればルールに基づく中身でやれよという話になってきているという中で、これもし、今TPPも早く妥結しなきゃいけないなんていうことを安倍総理は言っているわけだけれども、これは大変なことだと思うんですね。変えなきゃいけなくなるんじゃないかと思うし、それから米国の大統領貿易促進権限法案、これも予算委員会でも議論、質問しましたけれども、TPA法案ですね、これも、向こうの、アメリカで出しているTPA法案の中身を見ると、そこにいろいろと書いてあることを見ると、ここでも地理的表示が米国販売に障害をもたらさないようにということが入っているわけですよ。
 そうすると、これ、交渉途中で明かせないと言うけれども、どっちにしたって日本は対応を求められることになる、どうするのかということを求められることになると思うんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) まず、基本的な認識として、なぜ地理的表示保護制度を日本でやるかというのは、通商政策上の理由というよりは、先ほど私が先生の御質問に答えて冒頭申し上げたように、やはり農業者の所得を向上していく、地域で培われたブランドをきちっと保護していくために、我が国の国益と言っていいと思いますが、そのために必要であるということでやるということでございます。
 したがって、法案が成立した暁には、これは我が国の制度ということでございますから、これは当然この設計をするときには、先ほど申し上げましたようにEUの表示保護制度も参考にさせていただきましたけれども、同時にこの地理的表示をめぐる今御指摘があった国際的な議論、これにも十分配慮しながら仕組みを設けてきたところでございます。
 したがって、しっかりとこの保護制度、法案が成立をすれば我が国の守るべき立場ということになろうかと、こういうふうに思いますので、日・EUのEPAの交渉、既に始まっておりますし、TPPも同じように始まって、並行してやっておるわけでございますから、双方の国際交渉にしっかりとこの地理的表示の保護の仕組みがある我が国の立場を主張してまいらなければならないと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 もう一つちょっと紹介しておきたいんですけれども、アメリカとEU間のFTA交渉開始と、アメリカ・EU高級作業部会最終報告書ということで、茨城大学の准教授の方が、荒木先生という方がいろいろ論文書いていて、それを読んでみますと、こう書いてあるんですね。
 地理的表示保護の在り方こそが、米・EU間の最も大きな相違であることは米韓FTAとEU・韓FTAの規定ぶりから明らかであって、EU側が極めて強い関心を持つ、重要な知的財産権上の課題の一つであることも明らかだというふうに書いていて、GI、地理的表示法ですね、GIにつき、米韓FTAではこれを商標として保護対象たり得ることを確認するのみであり、米韓のFTAではとにかく保護対象たり得ることを確認するのみということになっていて、それ以外の定めはないと。他方、EUと韓国のFTAでは、このGIに関する詳細な定めを商標に関する定めとは別個に多数設けていると。特筆すべきは、EU・韓FTAがTRIPS協定上はワインとスピリッツのGIのみに与えられている強力な保護をその他の食品や農産物のGIにも及ぼしていることであるというふうに言っていて、だから、それぞれの交渉の中でいっても、そういうふうにもうはっきりと、一番そういう意味ではEUとアメリカとの間の対決部分でもあるということを言われるぐらい知的財産権のところでいうと非常に大きな問題なんだと思うんですよ。
 ですから、今成立した暁にはという話もあるんですけれども、やっぱりこれ、この間、日本とEUとのEPAについても言えることだと思うんですけれども、二〇一三年に日本とEUとのEPA交渉に際しては、EUのザイミス通商部長が、日本との経済連携協定交渉の中で最も重視しているものの一つが地理的表示保護をしっかり行ってもらうことだというふうに明言していたわけで、この法案で言いますと、EUも今回日本がこうやっているということを歓迎しているというわけですよね。
 EUは、やっぱり、日本が今こういうのをつくっているということについては歓迎しているんですよね。ちょっと確認したいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ちょっと御通告がなかったので記憶をたどりながらになりますが、基本的には、こういう制度が新しく法律が提出されてつくるようになっていくということについては、歓迎という言葉だったかどうかあれですけれども、そういうことだったと思いますが、中身を詳細に見ますと、先ほど申し上げましたように、EUの制度と我が国が今御提案している制度と全く一緒ではございませんので、その辺の違いについては若干リザベーションみたいなものがまだ残っているということだったというふうに記憶をしております。

○紙智子君 違いはあったとしても、やっぱりこの間の流れからいうと、そういうことだったと思うんですけれども。結局、TPP交渉の結果次第ではこの法案の修正をせざるを得なくなるんじゃないかと。当然、EUとのEPA交渉にも影響を与えるということになるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 確かに、新大陸とEUの間で特によく例に出されますのは、バドワイザーというビールがございますが、これはチェコのビール産地のブドヴァルというところがあるらしくて、そこから出てきた語源だという話もあって、それから、イタリアのパルマ産チーズがパルメザンということになっているということで、これもというようないろいろな例が挙げられております。
 そういう議論があるということは、先ほど申し上げましたように我々はしっかりと把握をしておりますので、その国際的な議論にも十分配慮しながら今回の設計をさせていただいたということでございまして、法案が成立して我が国の制度となりますれば、それは我が国の国益を守るための制度であるということで、その立場でしっかりと交渉すると、こういうことになろうかと思います。

○紙智子君 今回の法律に関わっての、TPPとの関わりということを改めて紹介させていただきましたけれども。やっぱりこの間、TPPをめぐっても、四月に閣僚の会議があり、五月も大筋合意にも至らずということがあり、国内においては衆参でやっぱり本当に公約としてきた決議があるわけですよね。決議をちゃんと守ると、林大臣も踏まえて、国益になるようにと。当然その中には、重要五品目を守るということや、医療の問題やその他の問題も含めて約束してきていることがあるわけですよ。
 それをやっぱりあくまでも貫くということと併せて、今回のこの法律をめぐっては、こういう形で今国内で決めたとしても、結局もしTPPに日本が参加することになっていった場合には、そっちが優先されるということになるわけで、せっかくこの決めたことがやっぱり根本から変えざるを得ないということになるんじゃないのかと。それは日本の主権ということから見たときにどうなのかというふうに思うんですよ。
 改めてそのやっぱり立場といいますか、私はTPPについてはあくまでもこれはもう参加すべきでないと、撤退すべきだということを繰り返し申し上げてきましたけれども、こういうことまで影響するんだということを改めて見たときに、やっぱりこれはもう国民にとっては百害あって一利なしだというふうに思っているわけで、撤退すべきじゃないかとあえて言わせていただきたいと思いますが、どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) いつその話になるかと思っておりましたが、まさに委員はいつもそういうふうにおっしゃっておられますので、そういう前提で御質問いただいているんだろうなと思いながら先ほど来答弁をしておりましたが、まさに委員と私の立場が少し違うのは、やっぱり交渉というのは我々のポジションを主張して、いかにこの我々のポジションを多く取るかということでございまして、最初から相手の言うとおりに全部なってしまうという前提に立ってしまうと、これは交渉する意味自体もなくなってしまうということでございまして、したがって、これについても先ほど来繰り返し申し上げておりますように、法案が成立すれば、その法律の提出させていただいた元々の意義というものがしっかりあって出させていただいているわけでございますので、そういうものをしっかりと守っていくために、また決議も踏まえて交渉をしっかりとやりたいと思います。

○紙智子君 こういう地理的表示の問題をめぐっても深刻な影響も与える、そして国民にとっても何一ついいことがない、こういうTPPについては断固撤退を求めるということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

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○委員長(野村哲郎君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕

○委員長(野村哲郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。