<第186回国会 2014年6月13日 本会議>


農政改革二法は、環太平洋連携協定(TPP)を前提に、農業の「構造改革」を推進し、多面的な家族農業と集落営農の経営を一層困難に追い込むもの

○農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案に反対の討論を行います。
 安倍政権は、二〇一三年に日本再興戦略を閣議決定し、TPP参加を前提に農業の競争力強化、大規模化や企業参入の加速化等を推進することを決めました。今後十年間で全農地面積の八割を担い手に利用させ、米の生産コストを四割に削減し、法人経営体を五万法人にするための大胆な構造改革を行うとしています。両法律案はその方向を推し進めるもので、多面的な家族農業と集落営農の経営を一層困難に追い込むと言わざるを得ず、認めることはできません。
 担い手経営安定のための交付金交付に関する法律案は、交付金の対象者を、全ての販売農家から、認定農業者、集落営農、認定就農者だけに絞り込むものです。これにより対象農家は八万三千八百四十八戸から三万八千五十三戸へと半分以下になることが明らかになりました。農村集落に差別、選別を持ち込むことは容認できません。全ての販売農家を認定農業者などの担い手に絞り込めば、食料自給率向上にも逆行するものと言わざるを得ません。また、交付基準を面積払いから数量払いに変えれば、中山間地域などの条件不利の農家は、交付額が削減され農業経営に大きな打撃となるものです。
 多面的機能促進法案は、担い手の営農負担を減らすために水路や農道等の管理などを地域住民に求めるものです。担い手への農地の集積、規模拡大を図り、担い手経営安定法案と一体に農業の構造改革を推進することを認めることはできません。また、農地を担い手に売却した農家の失業対策事業になりかねません。本来の多面的機能の趣旨をゆがめ、地域に格差を生むことになりかねないものです。
 農業者が求めているのは、農業を支えてきた集落の社会的つながり、コミュニティーを維持することであることが参考人質疑で明らかになりました。農業の生産活動が縮小すれば、耕作放棄地や鳥獣被害、廃棄物が増え、災害発生にもつながります。生産活動と切り離した支援では多面的機能を発揮できないのは明らかです。
 岩盤に穴を空けると称する安倍農政改革は、規制改革会議と産業競争力会議をよりどころに、生産調整の廃止、全国農協中央会の廃止、全農の株式会社化、農業委員会の公選制廃止など、農政全般に及んでいます。
 農業委員会委員の公選制を廃止することは、市町村長の任命で農業委員を少数にするもので、農民の代表機関、農民の議会という基本的な性格を奪い、行政の下請機関に変質させるものです。農協については、全農を株式会社化し、准組合員の事業利用を制限するなど、多くの問題点を含んでいます。いずれも家族農業とその共同を中心とした戦後の農政の在り方を根本から覆すものです。
 これらは、安倍総理の言う、世界で企業が一番活躍しやすい国づくりの農業版であり、この間、関係者から厳しい意見が相次いでおります。政府は、この間の質疑で、農業関係者から廃止の要望が一切出ていないと認めましたが、現場の声を聞かず押し付けるやり方は、まさにファッショ的とも言えるもので容認できません。
 今年は国連が定めた国際家族農業年です。国連は、飢餓や貧困、環境問題の解決には多数の家族農業の存在が欠かせないとして、世界各国に正当な評価と支援を呼びかけました。昨日の質疑で見解を求めましたが、総理は答弁に立ちませんでした。政府が真面目に取り組んでいるとは思えません。家族農業は食料の安定供給や農地の多面的機能の維持にとって欠かせません。担い手不足、耕作放棄地が増大する日本でこそ実践されるべきです。家族農業を支えるためには、農業者の協同組合の重要性は増しています。農協や農業委員会、農地制度の基本は将来に引き継いでいくべきです。
 我が国の農政に今最も必要となっているのは、大多数の農家が農業に励める条件を国の責任で整えることです。農業の担い手を確保するために、国や自治体、関係団体が総力を挙げて取り組むことです。我が党は、農業を国の基幹産業に位置付け、食料自給率向上を柱に据え、適切な国境措置や価格保障、所得補償の実現などによる総合的な農業再生プランを示していますが、その実現のために、農協や農業委員会など、共同を広げ、安倍政権による農業潰しを阻止するために全力を尽くす決意を述べ、反対討論といたします。(拍手)