<第186回国会 2014年6月3日 農林水産委員会>


TPP交渉・譲歩を重ねる日本の姿勢を批判/飼料米の生産支援/国際家族農業年にふさわしい支援を要求

○農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、TPP問題について質問いたします。
 五月二十九日から三十日に開かれました日米TPP事務レベル協議が終わったわけですけれども、まず、その結果について明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) お答え申し上げます。
 二十九日から三十日、アメリカのワシントンDCにおきまして、大江首席交渉官代理とカトラー次席代表代行との間で事務折衝を行いました。二日間にわたり延べ九時間ほど協議を行ったわけでございます。
具体的には、四月の時点で、方程式合意と呼んでいる、その方程式を構成する様々なパラメーターがあるわけですけれども、その中身をどうするか、そしてそれをどう組み合わせていくかと、そういう議論をしたわけでございます。一つだけ例を挙げますと、例えばセーフガードの在り方のような、そうした個々の構成要素について細かい詰めの議論を行ったわけでございます。
 ただ、こういう議論の中身に入りますと、お互いの立場の違いが非常に鮮明になりますのでなかなか難しいということは、これは五月二十日のシンガポールであったときにもお互いにそういう話をしていたわけでございまして、予想どおりと申しますか、一進一退、厳しい協議であったわけでございますが、少しは前進をしたということでございます。
 次回は、七月の首席交渉官会合の前に、恐らく東京ということになろうかと思いますが、再度事務折衝を行う予定でございます。

○紙智子君 一進一退とか少しは前進したという話ありましたけど、引き続き協議ということですよね。
 それで、甘利大臣は五月二十七日に、この日米事務レベル協議というのは閣僚会合に上げる懸案項目が具体的に絞り込めるかどうかの大事な会議なんだというふうに記者会見で言及するほどの位置付けをされていたわけです。それが結局、引き続き協議ということになっていたということでは、今後のスケジュールが大きく狂ってくることになるんじゃないですか。いかがですか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 日米の協議は八合目まで来ているということを甘利大臣が申し上げているところだと思いますが、八合目に来ますとだんだん空気も薄くなってくるということで、これ今朝の甘利大臣の記者会見で、かなり高いところに来ているのでお互いに高山病にならないように、まず八合目の環境に慣れるということが必要なんじゃないかと。そういうことで、多少踊り場的な現象が今あるんじゃないかと。
 正直申しまして、アメリカのステークホルダーの様々なリアクションでありますとか、あるいは、まさに私ども、日々先生方とこうやって御議論させていただく中で大変厳しい御意見も頂戴していると。お互いにそういう環境にある中で、これから更に残りの二合を詰めるということはお互いにとって大変厳しいことでございますので、そこはやはり多少時間が掛かるということではないかというふうに思います。

○紙智子君 厳しい厳しいという話があるわけですけど、当初のスケジュールでは、この日米事務レベル協議で話をまとめて、七月の十二か国の首席交渉官の会合で確認をして、それを受けて閣僚会合を開催して大筋合意というスケジュールだったんじゃないかと思うんですね。今回の日米事務レベル協議というのは七月の首席交渉官会合の成否を左右するというふうにされていたわけで、それが、厳しいか空気が薄いか知りませんけれども、継続協議ということになると、甘利担当大臣が極めて大きな山場なんだというふうに言ってきた七月の首席交渉官会合も、これ困難になっているんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 五月の十九、二十日で開催されましたシンガポールの閣僚会合におきましては、各閣僚の共通認識といたしまして、七月、まだこれ日にちとか場所は決まっておりませんが、首席交渉官会合を開く前に市場アクセスについてのバイの協議、これは日米だけではなくてほかの国同士も含めますけれども、さらに、ルールの分野についても事務方による交渉を加速させて、できるだけ間合いを詰めるということを七月の首席交渉官会合の前までできるだけ努力をするということでございます。
 今回、一進一退ということで、甘利大臣の言う踊り場現象ということでありますけれども、引き続き協議を行う。今回の先週の木、金の協議を踏まえて、お互いにこれから次の協議に向けてどういう対応をするかということを持ち帰っておりますので、そうしたことを踏まえて、次の会合、さらにはまた、首席交渉官会合の間もいろんな協議は続くと思います。そうしたことを通じて、なるべく間合いを狭める努力をするということだと思います。
 七月の首席交渉官会合の後、閣僚会合を開く開かないについては、これはまだ首席交渉官会合の結果を見てということになっているところでございます。

○紙智子君 間合いを狭めてということなんですけれども、日本政府が今回の日米事務レベル協議について長い日程を提案していたわけですけれども、それに対して米国政府からは二日で十分だという返事があったと、報道でそういうふうに書いてありましたけれども。日本政府関係者からは、そういうアメリカの態度に対して、本気で懸案を解決する気があるのかという声が漏れているということも報道されているわけですけれども。
 実際は、米国から見ると、関税ゼロではなくて、いつまでも例外を維持しようということでやっている日本にしびれを切らせて、もういいかげんにしてほしいという感覚になっているんじゃないのかと思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) シンガポールの閣僚会議の二日目、五月の二十日だったと思いますけれども、甘利大臣が、物品の市場アクセス、さらにはルールも含めて、各国どうしても譲れないという点があるんだと、そうした点お互いに認め合わないとまとめモードには入らないじゃないかということを甘利大臣が発言をされて、かなりの国の賛同を得たわけでございます。アメリカからも甘利大臣の意見に対して特段の異議は出なかったということでございまして、現時点、我々は日米の協議も含めて、そうした日本の立場、十分理解を求めながら進めているというふうに理解をしております。

○紙智子君 米国政府の交渉姿勢に影響をこの間与えてきているのが、米国の畜産団体を筆頭とする農業団体だというふうにされているわけです。
 五月二十八日には、全米豚肉生産者協議会、それから国際乳製品協会、米国米連合、全米小麦生産者協会、それから米国小麦連盟、この五団体が、日本が十分な農産物の市場開放をしなければ、日本抜きでTPP交渉の妥結を求めるという共同声明を発表したということも報道されているわけですけれども、その点について、その声明内容などをちょっと明らかにしていただきたいと思います。外務省ですね。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 森健良君) お答えいたします。
 五月二十八日、御指摘の五つの農業団体が声明を発表いたしまして、内容を少々はしょって申し上げます。
 まず第一点目は、甘利大臣は、シンガポールにおいて、日本はセンシティブな農産品についてはいずれも完全な自由化はしないと発言したと。それで、日本はTPP交渉に参加した際には、二〇一一年のTPP貿易閣僚による報告書にあるとおり、全ての分野で包括的かつ野心的であり、関税及び貿易や投資の障壁を撤廃する協定を追求する、そういうことに合意した。にもかかわらず、甘利大臣は、他の交渉参加国に対して、日本は聖域と考えている五品目については関税を撤廃しないと述べたとされていると。日本が要求しているような広範な例外は、ほかの国にもセンシティブな分野の自由化を差し控えることを促すことになるであろうと。米国の交渉官には日本に意味のある農産品の市場アクセスを提供するよう働きかける機会がまだあると。それに失敗する場合には、代わる代替案としては、日本との交渉を当面中断し、当初考えられていた野心の水準を満たす意思がある国との間で真に包括的な協定を妥結することができると。
 概要は、以上の声明が発出されました。

○紙智子君 今のが上がった決議、声明の中身だということなんですけれども。
 それで、報道によりますと、二〇一二年の米国の畜産業界の政治献金が約一千百万ドルに上っていると。それで、貿易政策を扱っている下院の歳入委員会では、牛・豚肉生産で上位五位の州から選出された議員が四割に上っているんですね。農業団体の支持なしにTPPを議会で通すのは不可能だというふうにされているわけです。
 現に、五月八日に開催された米国上院の財政委員会では、共和党のハッチ上院議員が、日本は農産物の関税を維持しようとしているが論外だという発言をしている。それから、民主党のワイデン上院財政委員会委員長は、対日交渉では米国の農家が期待する結果を求めると、厳しく追及されていると。そして、最も政治力が強いとされている全米の豚肉生産者協議会の会長であるハワード・ヒル氏は、日本は特別扱いを求めているが、我々は日本の豚肉の関税撤廃を要求するんだということを声明で言って、その要求を明らかにしているわけです。
 ここで林大臣にお聞きしますけれども、こういう状況で四月に日米首脳会議で合意したと言われる方程式が成立すると考えておられるのかどうか。既に米国政府はこの方程式の一つになっているセーフガードの導入も拒否をしているということも報道されているわけですけれども、いかがですか。

○国務大臣(林水産大臣 林芳正君) このアメリカの農業団体が日本が意味のある市場アクセスを提供しない限り日本抜きで交渉を妥結させることを求める声明、今外務省から御紹介があったとおりで、発表されているということは承知をしております。
実は、同じような声明が同じ団体から、昨年秋から今年にかけて何度か出ております。この間も我が方は米国政府との間に粘り強く衆参両院の農林水産委員会決議を踏まえて交渉を行ってきたところでございますので、今後も同じようにしっかりと決議を踏まえて、国益を守り抜くように粘り強く交渉に取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 私今聞いたのは、方程式と言われていた、甘利大臣が言われていた、まあだから関税の撤廃を段階を踏んでとか、あるいはこのセーフガードも一緒にというパッケージという形で方程式という話があったわけだけれども、その方程式の一つのセーフガードの導入の問題をめぐってもいろいろ出されている中では、これ成立するのかどうかということですよね。そのことに対しての御認識をお聞きしたんですけど。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) セーフガードは重要な一つの要素であると、こういうふうに思っておりまして、今回の日米協議でも、このセーフガードも含めて、日米間に残された課題について議論が行われたと、こういうふうに承知をしております。
 関税というものを議論するときには、削減幅ですとか、削減の期間ですとか、セーフガード、こういう複数の要素を併せて議論をすべきものだと考えておりまして、そういった意味で、しっかりと決議を踏まえて、国内農業の再生産を確保し得るように交渉を行ってまいりたいと思っております。

○紙智子君 何となく額面どおりの答弁だなという感じなんですけれども、実際上は、今紹介したように、アメリカの議会の中でいうと四割を超える議員が牛や豚肉生産で相当影響力を持ってこういう発言もしているというやっぱり現実があるということですよね。
七月の首席交渉官会合で合意が形成されなければ閣僚会合にも進まないわけですよね。そうすると、米国議会は八月に入ると夏季休暇に入る、その後は中間選挙になだれ込んでいくわけですよね。TPP交渉どころではないということになっちゃうわけです。
TPPは、やっぱり今、日本政府の表現を使えば、漂流を始めているということでもあるわけですね。米国の農業団体に日本抜きのTPP交渉の妥結とまで言われて、それでもまだ、農水省、あなた方は交渉を進めようというのかなと思うんです。
 やっぱり、これまでも何度も提起してきているように、真剣にやっぱり、国会決議を踏まえてと言われるんだけれども、そこに明記されている撤退の検討を今本当に真剣にすべきじゃないですか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 先ほど申し上げましたように、この農業団体は農業団体のお立場で声明を発表されておられますし、これ、今までも同様の声明も発表されておるところでございます。昨年の秋から、発出されたその間も我々は米国との間で交渉をやってきたところでございます。七月の首席交渉官会合の前に、先ほど西村副大臣から答弁があったように、また米国との協議も予定しておるところでございます。
 これ、何度も申し上げていることですが、特定の期限を切って、いつまでに交渉するということを申し上げますと、相手がそこに足下を見てくると、こういうことでございますから、やはり我が国の国益を実現するということが最優先であるということも併せて申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 今の現状から見ても、どう見てもやっぱり日本が優勢に回っているとは思えないわけで、決議そのものも、守るというふうに言われていたところからも大幅に日本は譲歩しているように見えますし、そういう意味では追い詰められていく一方じゃないかと、そういう交渉からはやっぱり撤退すべきだということを改めてまた言わせていただきたいと思います。
 さて、TPPのように、経済連携協定の名の下に各国の貿易障壁を外して多国籍企業の利益のために貿易拡大を進めるという流れがある一方で、それとは別に、貧困や飢餓の撲滅や世界の食料の安全保障という視点からの国際的な大きな流れも前進しているというふうに思います。
 FAO、国際連合食糧農業機関などで議論をされて、国連は今年、二〇一四年を家族農業年に設定したと。この国際家族農業年にした目的について御説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 松島浩道君) 御質問ございました国際家族農業年でございますけれども、これは、家族農業が持続可能な食料生産の基盤として食料安全保障と貧困の撲滅に大きな役割を果たすことを広く世界に周知させることや、また各国のそれぞれの取組を奨励することを目的としまして設定されたものと認識しております。

○紙智子君 それで、国連決議についてもお聞きします。
 決議には、家族農業や小規模農業は食料安全保障を達成することを目的とする持続的な食料生産にとって重要な基礎であることを確認しとあります。これ、どういう意味なのかということ、それから、家族農業と小規模農業は、食料安全保障を提供すること及びミレニアム開発目標を含む、国際的に合意された開発目標の達成における貧困を撲滅することに役割を果たし得る重要な貢献を認識しとありますけれども、これについてどういうことかということで、御説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 松島浩道君) 国際家族農業年につきましては、二〇一一年十二月に国連決議が行われておりまして、そこで決定されているということでございます。
 その国連決議には前文がございまして、そこにはこの国際家族農業年を設定した背景が記述されているわけでございますけれども、その第五パラグラフにおきまして、引用いたしますと、家族農家や小規模農家が食料安全保障の達成を目的とした持続可能な食料生産の基本であることを確認すると。また、その第六パラグラフにおきましては、家族農家や小規模農家が食料安全保障や貧困削減を通じて国連のミレニアム開発目標などの国際合意された目標の達成に貢献することを認識すると記載されているところでございます。
 我が国としましては、この国連決議を支持しているところでございます。

○紙智子君 国連のミレニアムサミットは、飢餓に苦しむ人口の比率を二〇一五年までに一九九〇年の対比で半減することを決定しています。
 国際機関は、市場競争によって非効率な経営、つまり小規模、家族経営が淘汰をされ、効率的と言われる経営をもてはやしてきたという経過について、これについても議論されて、しかし、二〇〇八年の食料危機を経て、市場原理モデルでは世界的な食料危機に対応できないという認識に達したと。同時に、家族農業の有する自然的、文化的、社会的、様々な価値への再評価がされて、国際家族農業年を設定することになったと言われています。
 それからまた、日本では、食料を輸入に依存する在り方を変えて日本の自給率を上げることは国際的にも重要なんだと、日本においても家族農業の役割が私は非常に大事だというふうに思うわけですけれども、その価値や役割について農水大臣にお聞きをしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 度々この委員会でも取り上げていただいておりますが、農村地域での高齢化や人口減少、これは都市に先駆けて進行しております。したがって、集落機能が低下するというような厳しい問題に直面をしておるわけでございます。
 こういう状況に対応して、国民に対する食料の安定供給、それから多面的機能の発揮を図るために農地や農業の担い手を確保するということと、農業生産活動が継続して行われるよう集落の共同活動を維持していく、これが重要であると思っております。多面的機能支払は、このため、担い手以外の農業者や、農業者以外の住民も含む活動組織等が取り組む地域の共同活動を支援するということにしておるわけでございます。
 こうした中で、今お話のあった家族農業それから小規模農業、こういったものに取り組む方々については、地域の実情に応じて担い手への農地集積を行いながら、地域の共同活動、六次産業化等の取組に参画していただく。また、担い手の規模拡大が当面難しい地域、こういうところでは、農業生産の継続、農地等の保全、こういうものに一定の役割を果たしていただくということが期待をされているところでございます。
 こうした取組を通じて、家族農業、小規模農業に取り組む方々も含めて地域住民が役割分担をしながら、共同活動、六次産業化、こういったことに取り組む環境、これを整備することによって農村コミュニティーに配慮した農業の振興に努めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 この間、何度か私、政府に対しても、国際家族農業年という、そういう取組についても積極的に予算も付けてキャンペーンも張って取り組むべきじゃないかということを提案をしているわけです。農水省はようやっと四月にホームページで紹介しているというふうに言われているわけです。それで、国連決議が世界に求めた注意喚起、認知度を高めると、そういうことで取組を提起しているわけだけれども、余りそういうふうになっていないなというふうに率直に言って思います。
 それで、ちょっと今日お見せしようと思って持ってきたポスターがあるんですけれども、これは十年前の二〇〇四年のときの国際コメ年のときのポスターなんですよね。(資料提示)これはTOKIOが出ていますけれども、かなり貼ってあるとインパクトはあるんですけれども、こういうポスターも作って、当時キャンペーンを張っていたわけですよ。
 それで、今回、政府の国際家族農業年の取組でいうと、こういうことすらもやっていなくて、やっていいんじゃないかと、もっと。もっとちゃんとキャンペーンを張って熱心に取り組むべきじゃないかというふうに思うんですよね。今からでも遅くないので、是非ちょっと強めていただきたいということを一言申し上げておきたいと思います。
 それから、日本において、この後はちょっと飼料米の話に移りますけれども、その前に、今のことについて一言ちょっと、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今のポスターはなかなかすてきなポスターだなと、こういうふうに思いましたけれども。
今回、ホームページ、これはIT環境の発展も踏まえてポスターに劣らぬ認知効果もあると、こういうふうに思っておりますのと、それからもう一つ、国際会議でもこの家族農業年、こういうものが出てきておりまして、私もいろんな国際会議の場でそれを踏まえた対応をしていくことの重要性ということにも触れさせていただいておるところでございます。また、この間ヨーロッパに出張いたしましたときに、フランスの大臣とも会談をいたしました。その場でもこの国際家族農業年ということの重要性について認識一致をいたしまして、先方から何だか宣言をするんでサインをしろと、こう言われまして、その場で即断いたしましてサインもしてきたところでございますので、せっかくの今年は国際家族農業年ということですので、いろんな取組に努めてまいりたいと思っております。

○委員長(野村哲郎君) 紙委員、澁谷参考人、森参考人に御質問ありますか。

○紙智子君 いや、この後は結構です。
 どうもありがとうございました。

○委員長(野村哲郎君) それでは、お二人は御退席いただいて結構です。

○紙智子君 さて、日本において低廉な輸入飼料に依存する現状を変えて食料自給率を高める上では、飼料米の生産拡大を本格的に進めるというのが重要だというふうに思います。そこで、飼料米なんですけれども、農水省として五年後を目途に生産調整を廃止して、麦、大豆、飼料用米などの需要がある作物の生産を振興するというふうにしています。そして、主食用米からの転作作物として飼料米の生産を振興する、その潜在的な利用可能量は四百五十万トン程度あるというふうに言っています。飼料米の振興を本当に定着させるためには、何人もの方も質問されていますけれども、栽培技術の問題、コンタミ問題、それから耕種農家と畜産農家の連携の問題、流通体制の構築など幾つか課題があると。
 そこで、稲のコンタミの問題ですね、コンタミネーションですけれども、主食用米と飼料用米が混ざり合って区別できなくなってしまう、これをどう防ぐのかということが課題でもあるわけです。前年作った飼料用米の後に主食用米を栽培したり、同じ刈取り機械で使ってやるとこれ簡単に混入すると。相当徹底しないと大きな被害になるということから、県によってはしばらくはちょっと主食用を作付けをして、飼料用米については様子を見るというところもありました。こういう問題をどう対策を取っているのか、伺いたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 今の紙先生の御質問は、以前、大臣の方からお答えしたことがあるかと思いますが、やはりこの問題については現場での取組といったものが非常に大事かと思っておりまして、私どもといたしましても、現場で具体的にどのようなコンタミの方法が取られているかといったようなことも事例を幾つか調べてきております。
 まず生産段階、圃場、生産段階のコンタミ防止でございますが、ある県の例でいきますと、やはり作付けする前に集落内の飼料用米生産者の皆さんが集まりまして話合いを行いまして、多収性専用品種の作付け圃場といったものを団地化する、一つのまとまりにするといったような、そうした話合い活動によってそうした団地化が形成されたような事例。またその際には、収穫する品種の切替え時にコンバインの清掃を徹底するといったような取組が行われているといったような事例が一つございます。また、違う県では、コンタミ防止のために多収性専用品種と主食用米とで苗箱の置場を区分しておくということで、うっかりした間違いがないようにするといったようなこと。それと、農家は田植から収穫前の肥培管理までを行いますが、稲刈り以降は、収穫以降はもう特定の受託組織が行うことで収穫時のコンタミのリスクを低減するといったような取組をしているところでございます。
 また、乾燥調製施設のコンタミ防止策といたしましては、主食用米品種より熟期が早い多収性専用品種を導入しましてカントリーエレベーターへの受入れ時期をずらしていると、こういったような取組がなされておりまして、私どもといたしましては、こうした取組を参考にしまして、飼料米の基本的な栽培方法、あるいはコンタミ防止対策を記載した飼料用米栽培マニュアルと、こういったものを作成しまして、各県の普及組織、関係機関と連携してその周知に努めているところでございます。

○紙智子君 この問題と併せて、作った飼料米がどれだけ売れるのか。これは何人の方も質問されていましたけれども、それほどの需要が見込めないんじゃないかという不安は依然として大きいと思います。
 富山県に行ったときには、既に今までも鶏農家と連携してやってきたので、県内でこれ以上受皿が増えるとは思えないから作らないというのもありました。それから岡山県でも、しばらくは様子を見て判断するというように言われていました。北海道も、質問で出ていましたけれども、反すう動物の牛には米は食べさせられないと。需要は養豚農家と鶏の農家ぐらいで、牛はやっぱり草を食べるようにできているので、少数だったらいいけれども大量に与えると体調を壊すという獣医さんの話もありまして、初めからそういう意味では牛は余り対象にしていないというところもあると。それで、需要がないところに飼料米を作れないという声もあったわけです。
 そんな話を聞いていましたものですから、先日、島根県に行ったときに驚いたんですよね。島根県では、まい米牛だということで、米を食べさせているのをブランドにしてやっている、売りにしているということで、思わずその生産者の方に大丈夫なんでしょうかというふうにお聞きをしたら、大体二〇%から二五%ぐらいに限定していると、量をですね。余りたくさん食べさせていないわけですよね。
 やっぱり輸入飼料が高いので、本当はもっと切り替えた方が安く付くという話はされていたんですけれども、大丈夫なのかどうかということも含めて、やっぱり耕種農業と畜産農業の連携を図る上での飼料米の与え方、どういう給餌水準をするのが適切なのかということについてはどうなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 以前、餌米の潜在需要ということで四百五十万トンといった数字を御紹介したことがあるかと思います。このときは、試験研究機関のこれまでの知見等を踏まえまして、今先生の方からお話ございましたように、畜産物の品質あるいは健康状態への配慮と、こういったことで広く安定して利用できる配合可能割合といったものを出したところでございまして、その際、肉用牛では三%程度、乳牛では一〇%程度と見込んでいたところでございまして、この餌の切替えによります肉質や乳質等への影響について心配する畜産農家が多うございますので、こうした皆さんの心配、懸念を払拭する意味での数字といったものを出させていただいたところでございます。
 先ほど、先生の方からお話ございましたように、この飼料米については家畜にとってトウモロコシと同等の栄養価を持つ優良な飼料穀物でございますが、牛の場合につきましては、加工した飼料米は消化の速度が速いということから、飼料米を、これ多給といいますか、多く給餌いたしますと、消化器の障害、いわゆるルーメンアシドーシスといった消化器障害を起こす可能性がございまして、飼料の切替えをゆっくりと行って、粗飼料を十分給与するなどの注意が必要といったものでございます。
 試験研究機関の報告によりますと、牛の場合、先ほど肉牛三%と申し上げましたが、注意してやれば、二割から三割程度の配合割合であれば畜産物や家畜の健康等に影響を及ぼさないというふうにされておりまして、実際、肉質等への影響を及ぼさずに配合飼料の一、二割を飼料米に置き換えて給与し、差別化を図っている事例も見受けられるところでございます。

○紙智子君 なお研究も必要だというふうに思います。
それから、助成単価の問題なんですけれども、飼料米の交付単価は、収量に応じて十アール当たり五万五千円から十万五千円と、かなり開きがあります。それで、十万五千円が独り歩きしてしまっていて、そういうちょっと問題もあるんですけれども。
 富山県でお聞きしたときに、中山間地にお住まいの農業者の方と懇談したんですけれども、減反がなくなるかと思ったら、町から今度は飼料米を作ってほしいと言われたと。中山間地域は米でも収量が少ないのに、飼料米の収量を六百八十キロまで増やすということはできないと。飼料米の助成単価が少な過ぎると。戸別所得補償がなくなって、一万五千円が半減しショックを受けているのに、飼料米の単価がこれでは大変だと、もっと上げてほしいという話だったわけです。
 飼料米を戦略作物として位置付けるのであれば、元々収量が取れない地域もあるわけで、地域の実情に応じた単価設定をしてもいいのではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今回のこの見直しを水田活用の直接支払交付金について行うに当たって、餌米については単収向上の取組へのインセンティブということで数量払いを導入して、八万円プラスマイナス二・五万円と、こういうことにいたしたわけでございます。さらに、地域の実情に応じて独自の支援を行える産地交付金、これを平成二十五年の五百三十九億円から平成二十六年八百四億円まで充実をさせると、こういう見直しを行っております。
 数量払いについては、標準単収から収量が上がるほど助成額が増える仕組みということで、インセンティブ、先ほど申し上げたことをやっておりますが、この標準単収ですけれども、各地域における主食用米の平年の単収に基づき設定するということにしておりますので、地域差が反映されると、こういうことでございます。それから、単収が低い地域でも、その地域内の増収を図れば高い水準の助成が得られる仕組みにそういうことでなっているということでございます。
 さらに、先ほど申し上げました産地交付金の活用によって、団地化と生産性の向上に取り組む場合には地域独自で上乗せの支援を行うということができるようになっておりまして、五月十九日現在で十九道府県で独自の上乗せ支援を行っておられると、こういうことでございます。
 こういった仕組みによって、やはり各地域地域でその地域の実情に合った十分なインセンティブ、飼料用米の増産に向けて実行していっていただきたいと、こういうふうに思っておるところでございます。

○紙智子君 飼料米の販売価格というのはおよそ一キロ当たり三十円なんですよね。それで交付金が出ていると。交付金が出ても実は主食用米の販売価格には及ばないということもありますから、やっぱり、今地域ごとにという話もありましたけれども、この問題は引き続き追求する必要があると思います。
 それから、飼料米の位置付けについてなんですけれども、飼料米の潜在的な利用可能量は四百五十万トンと言われるわけですけれども、この飼料米、輸入されている飼料用トウモロコシと置き換わることになっていくわけですよね。輸入トウモロコシのキログラム当たりの価格と輸入量についてちょっと簡潔に説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 五月二十九日に公表されました財務省の貿易統計によりますと、平成二十五年度における輸入トウモロコシの輸入量は約一千三万トンでございまして、キログラム当たり単価は二十九・六円となっております。

○紙智子君 それで、飼料用の輸入トウモロコシ、今一千三万トンということですけれども、この中の中身としては圧倒的に輸入国はアメリカなんですけれども、日本で飼料米を振興するとすれば、やっぱり輸入量を減らしていくしかないと思うんですね。つまり、アメリカに対してもそのことをはっきりと認識してもらわなきゃいけないわけですけれども、大臣、そのことをきちっと認識させるということではそういうお考えでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これは、畜産の体制強化という意味でも大事なことであろうかと、こういうふうに思っておるところでございますが、一方で、うちで餌米を普及させたいのでおたくは輸出してくれるなと、こういうことはなかなかこういう自由貿易体制の中では難しいんではないかということでございまして、したがって、遜色のない価格で餌米を供給すると、そのために今の仕組みをやっていこうと、こういうことであるというふうに思っております。
 委員もおっしゃっていただきましたように、いろんな課題を解決しながら、この四百五十万トンの潜在的需要というものがあるわけでございますし、ただ、水田のフル活用という意味に加えて、まさに今委員が御指摘いただいたように、畜産のやはり国産の餌の体制という意味でも大変大事な課題でございますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

○紙智子君 今すんなり答えられたんですけど、これ大変なことだと思いますよ。戦略作物に位置付けて、それを今度拡大していくということになったら、当然、この入ってきている飼料との関係でいえば、そこをやっぱり減らしていくということでやらないと国内で今度また余ってくるわけですし、それから、畜産農家やいろんなところがちゃんと回っていくように支えていかなきゃいけないわけですから、そのことをやるとしたら、しっかり交渉でも日本が態度を表明して、やっぱり理解してもらって、アメリカからの輸入を減らしていくという方向にしないと、これ、回っていかないことですよ。
 今のこのTPP交渉なんかをめぐって関税を外してもっと日本は受け入れろという話になっている中で、これ、押し返さなきゃいけない話なわけですから、そんな簡単なことじゃないわけですね。そういう決意があるかどうか、もう一回、大臣、お願いいたします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 全体のトウモロコシ等の穀物の貿易の中でのシェアということを申し上げますと、かなりの変動をしておりまして、例えば平成二十四年度、アメリカにおいて大干ばつとトウモロコシの減産、価格高騰ということで、我が国のアメリカからの輸入割合は、実は平成二十三年度八六%だったものが二十四年度は五二%ということで、かなり振れがあるということでございます。
 こういう、世界的には穀物需要が増加傾向にありまして、供給も増加傾向にございます。アメリカを始めとする穀物の輸出国の生産の動向や在庫水準、こうした穀物の需要に応じて供給をされております。こうした世界の中での我が国の飼料用米の生産量増加ということを数字として見ますと、アメリカのトウモロコシの生産量は三億五千万トンでございますので、我々の潜在的な四百五十万トンと、こういうふうに言っておりますのは、このアメリカの生産量の一%と、全部潜在的なものが置き換わったとしてもそういうことでございますので、輸出国のトウモロコシ等の生産量、輸出量に大きな影響を与えるものではないと、こういうふうに考えております。

○委員長(野村哲郎君) 紙智子さん、時間が来ておりますので、まとめてください。

○紙智子君 はい。
 飼料米そのものをしっかり強化してやろうというふうになったのは、二〇〇八年のやっぱり穀物が物すごい値上がりしたということが一つ契機になっていたと思うんですね。やっぱり、その時々の情勢でその時々で対応するという今のお話なんですけど、やっぱり基本姿勢としてしっかり国内の計画に基づいてそれを進めるということを確立をしながら、やっぱり必要なところで輸入についてはもうこれは要りませんというふうにはっきりおっしゃるべきだということを最後に申し上げまして、時間になりましたので終わります。