<第186回国会 2014年5月29日 農林水産委員会>


構造改革を推進する多面的機能促進法案/農村地域に混乱を持ち込み、農家の期待に応えるものでない。

○農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。最後になりますので、ちょっとお疲れですけれども、頑張っていきたいと思います。
 先週五月二十二日に農政改革二法案の参考人質疑、そして今週の二十六日から二十七日まで島根県で中山間地域の調査、地方公聴会ということで意見を聞いてきたわけです。
 それで、二十六日ですね、一日目に、飯南町の宇山集落というところで中山間地域等の直接支払の実情をお聞きをしました。意見交換もして、十六戸が加入し、営農、生活、交流活動を行っていたと。それから、出雲市の南部の中山間地域の窪田ふるさと会というところを訪ねました。ここは、四百八十戸全体で七つの振興協議会をつくって、農地の荒廃を防いで地域の振興に取り組んでいるということでした。
 どちらも経営上、運営上どちらかというとうまくいっている、最もうまくいっているところなのかもしれませんけれども、そういうところですけれども、意見交換の中で出されたことは、私たちのところは恵まれた環境にある、でも、一つ山を越えた隣は今のままでは存続できなくなってしまいかねない状況がある、そこに日の当たる政策をお願いしたい、私たちの集落だけが元気でも駄目でやっぱり地域間で差が出ないようにしてほしいと、こういう率直な意見が出ました。
 そこで、まず地域政策についてお聞きをしたいと思います。
 農林水産業・地域の活力創造プランというのがありますが、これは、活力を取り戻すために、農林水産業を産業としていく産業政策と国土保全といった多面的機能を発揮するための地域政策を車の両輪として政策を検討するとしています。
 そこで、お聞きしますけれども、地域政策といっても抽象的で分かりづらいと。地域政策とは一体何をいうのか、多面的機能を維持することが地域政策なのかどうか、まずお答え願いたいと思います。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) 今回の農政改革において、この法案の提案理由説明で大臣が申し上げたとおり、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立し、農業を足腰の強い産業としていくための産業政策と、地域の共同活動等を通じて農業の有する多面的機能の維持、発揮を促進する地域政策を車の両輪として推進していくこととしているということでございまして、産業の振興に着目して講ずる産業政策と対比させて、地域の振興に着目した政策として地域政策というふうに称しているのではないかと考えております。
 今の部分でございますけれども、農業の有する多面的機能の維持、発揮を促進するために必要な地域の共同活動等に対して支援を行う政策について地域政策に当たるという考え方を表しているものであって、その多面的機能を維持するための政策がすなわち地域政策であるということを言っているものではないと考えております。

○紙智子君 共同活動を支援するということですか。共同活動を支援して、要するに地域を成り立たせていくということなんですか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) 先生おっしゃるとおり、御提案しているこの法律に基づいて支援対象となっている事柄は、地域の共同活動等を通じて農業の有する多面的機能の維持、発揮を促進するものでありまして、それはその地域のということに着目して講じられる地域政策に該当するということであると考えております。

○紙智子君 ちょっとなかなか分かりづらいんですけれども。
 それで、農村地域を回りますと、農業の生産活動が縮小すると、これは空き家が増える、耕作放棄地や鳥獣被害が増えて廃棄物が不法に投棄されたりすることが大問題になります。それから、災害が発生した場合にその影響が下流域に及ぶこともあると。過疎化が進んで限界集落というのが今地域でいうと問題になっているわけですけれども、この農水省が言っているところの地域政策で、今言ったような問題や過疎化、限界集落に歯止めが掛かるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今日もその部分については何度か御議論をいただいたところでございますが、先ほど局長から答弁いたしましたように、地域政策というのは広い概念でございますので、多面的機能をやるための政策はその中の一つであると、こういう整理をしておるわけでございまして、これ以外に地域政策がないのかといえば、当然そうではなくて、先ほどどなたかの質疑でお答えさせていただきましたように、他省庁のもの、それから県や市町村がおやりになっていることも併せてやっていくということが大変大事なことであるというふうに思っております。
 農村地域は、御案内のように高齢化、人口減少が都市に先駆けて進行しておりますので、集落機能の著しい低下、今お話がありましたように、ここはいいんだけれども山越えた向こうのところは大変なんだと、私も地元でよくそういうお話を聞くわけでございますが、往々にして、そっちへ行くと、やっぱり隣の方が大変なんでうちは大丈夫だと、こういう美しい助け合いもあるというふうに私は思っておりますが。
 したがって、先ほども少し申し上げましたように、基幹集落というのを決めて、そこと周辺集落とどうきちっと位置付けてトータルとしてやっていくのかということが全体としては大事なことだと、こういうふうに思っておりまして、多面的機能の支払もその中の一つとして、農村における地域の共同活動を支援していこうということで、よってもって維持、活性化にも貢献していくということでございますが、これに加えて、地域資源を活用した地場産業の振興ですとか、これは他省庁にもわたりますが、日常生活機能、定住環境の確保等への取組、それから日常生活に不可欠な医療等、福祉等、施設等の基幹集落への集約と周辺集落とのアクセスの手段の確保、先ほど申し上げたとおりでございますが、こういうものを各省庁と連携して総合的に対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 今、各省庁と連携してもっと幅広くやらなきゃいけないんだというお話をされました。地域で生活するには、今お話もあったように、医療とかそれから福祉政策も含めて充実をさせていかなきゃいけないんだと思います。
 今回視察をした島根県の飯南町の宇山振興組合では、農福連携の取組ということで努力をしていて、お米のほかに、これは先ほど徳永さんもおっしゃいましたけれども、サツマイモの栽培を行って、障害者施設でこれを加工したり商品化して販売するというようなことなんかも努力をされていました。
 それから、地方公聴会のときにも、やっぱりそこに住み、生活できる総合対策が必要なんだという意見が出されました。多面的機能のための地域政策ということではなくて、やっぱり地域資源である第一次産業で生活できる政策が必要なんじゃないかというふうに思うんですね。
 活力創造プランで、担い手の農地利用が全農地の八割を占める農業構造の確立というふうにしていますけれども、残り二割の農地の生産活動というのは一体誰が行うのでしょうか。販売農家が生産を行うことになるのか、また支援策はあるのか、これについていかがでしょうか、大臣に。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 担い手が利用している農地面積の割合、この十年間で三割から五割まで来たわけでございますが、成長産業としていくために更に集約化を加速するということが必要でございまして、十年間で五割から八割まで拡大するということを目標としております。そうしますと残りが二割と、こういうことでございまして、この農地については担い手以外の小規模零細な農家が野菜、果物等の生産を継続する、直売所で販売をされたり、それから自分のところで消費をされる、これ結構あると思いますが、米の生産をされたりすると、こういうことがあると思っております。そうした方々を含めて、この日本型直接支払制度を活用して地域活動に参加をしていただくということが大変に大事だと思っております。
 小規模零細な農家の方々も地域の一員でございます。地域における人・農地プランの作成、見直しに向けた話合いの中で、それぞれの地域に合ったやり方というものをこの人・農地プランの作成、見直しの中で紡ぎ出していっていただければと、こういうふうに思っておるところでございます。

○紙智子君 今お話あったように、全国的には八割を担い手に集中する、その残り二割なんですけれども、島根県の場合でいうと、現在が大体三割のところに担い手が利用しているという話ですよね、これを十年後には六七%まで集積する計画を持っているわけです。しかし、国民への食料の供給とか自給率の向上ということから見ると、この二割、三割の農地の生産活動も非常に重要な役割を果たしているということを私は強調したいというふうに思うんですね。
 それから、島根県では中山間地域に六一%の方が住んでいると。住んでいる人の六一%は中山間地、県全体の面積の九一%が中山間地域と。島根県ってすごい、だからほとんど中山間地域でできていて、それで六一%の人が住んでいるというわけですよね。だから、やっぱり中山間地域の支援も大事なテーマだと。そういうことをも踏まえて多面的機能の促進法についてお聞きしたいと思います。
 それで、多面的機能促進法案は構造改革を後押しするものだというふうに言われているんですけれども、なぜこれ構造改革を促進することになるのでしょうか、説明をお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 島根県のお話が今出ましたが、私の山口県も、まあ瀬戸内海側は少し違いますけれども、日本海側は同じような状況でございますので、先ほど徳永委員がおっしゃったように、北海道から来られると随分違うんだろうなと、我々は逆に北海道へ行くとそういう思いをいつもして、羨ましいなと思って見ておるわけでございますが。
 構造改革がどういうふうに促進されるかと、こういうことでございますが、地域の共同活動で、先ほど申し上げましたように、水路、農道等の維持管理、これが今までずっとみんなでやってきたわけですが、農業者の方が高齢化する、リタイアされるということで、なかなか今までどおりできなくなっているということでございます。一方、担い手に農地を更に集積していくということになりますと、担い手の人は、じゃ、その共同作業を全部自分でやる、こういうことになるのかということを考えますと、なかなかそういった施設を単独で維持、管理する負担の増大ということがネックとなって、拡大を進めるというところに歩を踏み出していくということがなかなかできない、こういうこともございまして、そういった意味で、農業者のみならず、土地持ち非農家、地域住民も含めて、地域全体で水路、農道等の地域資源の管理を支える共同活動に対して支援を行うと、こういう仕組みにしておりますので、それがよってもって多面的機能の維持増進に働くというのが主目的でありますけど、結果として、集積した後もみんなでやれるという見通しを通じて担い手は規模拡大を推進しやすくなるということで構造改革を後押しをする効果も持っていると、こういうふうに考えております。

○紙智子君 今の説明でも分かりますけれども、やっぱり担い手にもっともっと集積をしてもっと拡大していくためには、いろいろ手間が掛かる周辺の管理というか、そういうことを地域で支えてもらおうというようなことなわけですよね。
 それで、島根県でお聞きして、やっぱり公聴会の中でも、長年にわたってやっぱり集落の成り立ちがどうであったかという話がありました。地域コミュニティーを維持する重要性がこもごも語られたというふうに思います。
 担い手に農地を集積をして兼業農家が農業から切り離されるということになると、地域に住む意味がなくなってしまって離農や転居することにもなるんじゃないかと。そうすると、動ける人は転居してしまって、動けないお年寄りだけになる危険性がますます高くなる可能性があるんじゃないかと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) 担い手に農地が集積されて兼業農家等が離農したりするということでございますけれども、今大臣から御答弁申し上げましたように、そうして農業から離れたりした場合でも、その地域の共同の取組に参画していただいて、地域全体としての共同活動に加わっていただくということを後押しするというのがこの制度の趣旨でございます。
 こういったことは今まで予算措置で、農地・水管理支払でも支援してきたわけでございますけれども、今回これを法制化していただければ、法制化されてそれに基づいて支援が行われていくんだということが明確になることによって、こういった取組についての現場での後押しということが一段と強くなるというふうに考えておりまして、そういったこの制度の趣旨を浸透することによりまして地域における取組を継続していただいて、そういう中で、農業を離れてもそこにとどまっていただいて一定の役割を果たしていただく。発展すれば六次産業化とかそういったこと、地域の資源を生かした地域内での産業化といったことの力にもなっていくというようなことも考えられまして、そういったことを狙いとして今回のこの制度化を図っているものでございます。

○紙智子君 政策をつくっている方の都合からいえばそうなってほしいということで出しているものだと思うんですけど、私はこれはやっぱり上から目線じゃないかなというふうに思うんですね。
 二十二日の参考人質疑でも、ここでやった質疑でも、勝部農産の勝部さんが、農地集積の拡大に伴って農家数が減少したと、逆に言えば土地持ち非農家が増加した結果、農業を支えてきた集落や地域の社会的なつながりが希薄化したということをその課題の中に書いてあるわけですよね。それで、農地の集積が進めばコミュニティーの維持が困難になるという問題も提起をされたと。
 農家がいなくなってしまったら、これ農村地域が成り立つのかというふうに問題意識を持つんですけれども、この点はいかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 勝部さんのお話は先ほどあったところでございまして、確かにそういう御意見があるということも承知をしているところでございます。
 これは、最終的にといいましょうか、中長期的にどう見ていくかという視点というのがあって、確かに今のまま、規模が小さい方がずっとそのままでやっていかれれば当面は集落がそれぞれ営農されるということで維持されるということですが、それをずっとやってきて今平均年齢六十六歳、耕作放棄地が滋賀県並みと、こういう現状もあるわけでございますので、そこに、じゃ、次の世代を担う方がIターンなりUターンなりで帰ってこられるかということも含めて考えていきますと、やはり担い手に集積をしていくことによって規模の効率化もできるところがきっちり各都市でできていく、そこに新しい担い手も入ってきてくれるということと、集落の維持というもので、それをみんなで、耕作自体はその方に集約したとしても集落に残っていくと、この両立をさせるために今回のパッケージをつくらせていただいたということでございますので、そういう方向にきちっとなっていくように、これは上から目線、下から目線ということでなくて、キャッチボールということでしっかりとやってまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 参考人で来られた方もそうだし、私たち地方公聴会で聞いた方もそうなんですけど、やっぱり地域で何とかしようということで、もう高齢化になってできない人たちの農地を頼むと言われて引き受けて、やっぱり断れないで引き受けてきてだんだん大きな規模になって、そういう形で何とかやっていこうとか、あるいは集落を何とか維持しようということで、元々地元の中でつながりをつくりながらやってきているところで、そういう形になってみんなで支えようというのは分かるんですよ。
 ただ、そうとばかり言えるのかというのもあって、二十七日の地方公聴会で発言された方、法人の方、現地の方いましたけれども、これまで自分たちがつくってきた集落を維持するためにどうするのかと、もう懸命に考えておられるということがよく分かりました。企業に入ってもらう考えは特に出てこなかったんですよね。
 しかし、農地中間管理機構が設立をされて、これは公募方式で企業は外から参入することが可能になるわけですよね。通常、企業だったら自分の水路などの管理のメンテナンスとかは自分でやると思うんですけれども、企業の営業活動を地域の集落がサポートをすることが求められていくと。そうすると、地域の方が企業をサポートするというふうな気持ちでモチベーションが続くのかどうかというのはちょっと思うわけですよね。
 それから、同じ世代でもってやってきているのであればそのつながりでやろうと思うんだけど、世代交代していったときに、しばらく離れていた人が戻ってきて、果たしてそういうふうになっていくのかということを考えると、なかなかこれ大変な難しい問題も含むんじゃないのかとか、あるいは、もうやめたと、もっと便利なところに移っちゃおうということで離れていったときに、頑張ってとにかく引き受けてやってきたところが、今度は担い手の人がそれを存続できなくなるというか、大変な困難に立ち至るということもあるんじゃないかというふうに思うんですけど、この辺のところはいかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) まさに、先ほども申し上げましたように、今のままいくとどうなるかと、それぞれ同じ世代の方がということで、今の規模のままでいく中でどうなるのかと、それをそのまま見ているかということと比べてどうなのかと、こういう視点も必要ではないかと、こういうふうに思いますし、今委員が幾つか例をお出しになっていただいたように、それぞれの地域で様々な御事情がおありになるということで、人と農地プランというのを作っていただいて、なるべく集落集落でそういう具体的なお話をしていただくと。
 実は、農地中間管理機構というのも、その人と農地プランの中でこういうものがあればいいなというところから出てきたアイデアでもあるわけでございまして、そういうものをしっかりと活用をしていただくと。これは、これができたので何か企業がそれを使って入ってくるのでそれに協力しろと、こういう形というよりは、農地中間管理機構の審議のときにもお答えしたように、まずは人と農地プランで、その地区で担い手、地域内でこういうふうにしていこうということが一番望ましいわけでございますので、それがどうしても中山間地等で見付からない場合にどうするかということで、ほかの地区の方にやっていただくとか企業がリース方式で参入するということも、しっかりと農地中間管理機構においてはそういう引受手のストックをして持っておくということが大事だろうと、こういうことを申し上げたと思いますけれども、そういうことで、それぞれの地域に合ったいいやり方をしっかりと人と農地プランを中心につくっていただく、それをいろんなメニューで支援をしていくと、こういうふうに取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 地域で共同活動に参加する人が少なくなった場合、建設業者に草刈りや水路なども頼まざるを得ないということもあるわけで、これは現に参考人質疑の中で勝部参考人が、草刈りを建設業者に依頼しているという話も出ました。それで、建設業者が作業を行う場合も、これ多面的機能支払が支払われるんですよね。ちょっと確認をします。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) 多面的機能支払で地域の共同活動を支援するということでございますが、その際、活動によっては地域で担い切れない作業を建設業者等の方に委託をして行うといったことも可能でございます。

○紙智子君 それはそれとしていいと思うんですけれども、それで、地域共同で多面的機能を維持するというふうに言っているわけですけれども、農地中間管理機構の一般公募に応じて参入した企業が農業経営も建設業もやっているとした場合に、その企業がやっぱり農業は採算に合わないなというふうになって撤退するということだってあり得るわけですよね。その撤退したときは一体どうするのかと、誰が責任を持つのかということなんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) まず、中間管理機構の方の仕組みの方からお答え申し上げますけれども、中間管理機構の受け手の募集に応募して外部から参入した企業が仮に撤退をしたような場合、機構は出し手から借り受けて、また新たな受け手に貸すということをすることとしております。それによりまして、機構が改めて農地利用の集積、集約化に最も資する受け手を選定するということでございまして、撤退企業が耕作していた農地を新たな担い手に円滑に結び付けるということを考えているという仕組みでございます。
 ただ、今回のこの多面的機能支払によって地域の共同活動を支援するという、そういう活動の中に参入企業も入っていただいて、先ほど儀間先生の質疑の際に大臣からお答え申し上げましたように、リース方式で参入してきた企業についても、参入前は否定的に捉えられていたところが、そのような見方が減っているという趣旨のお答えがあったと思いますけれども、そういった形で地域に参入された企業が地域の住民、農家の方々と一緒に共同活動をしていただくと、それを国としても法制度に基づいて支援措置で後押しをするという中でやっていただくということを通じて、企業にいろいろ御都合、御事情等もあろうと思いますけれども、できるだけその地域でその企業に活躍していただく、活動していただくといったことも期待できるというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 私は、やっぱり地域で本当に話し合いながらいろいろなことを進めるということが基本だと思うんですね。
 それで、確かに真面目に頑張るところもあるんだと思うんですけど、そうじゃない場合もあるわけで、もう責任取らずに撤退してしまうということもあるわけで、やっぱり地域で共同して作業する、コミュニティーを大切にする上で、やっぱり兼業農家も含めて生産活動に携わって生産活動と一体になってこそこの多面的機能が発揮されるんじゃないかと思うんですけど、大臣、この点、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 先ほどからここは御議論になっておるところでございますし、いろんな考え方があると、こういうふうに思いますが、やはり現状、耕作放棄地がどんどん増えていく、また農業者の平均年齢がどんどん上がっていくということを踏まえますと、今のままで集積をせずに今の方がそのまま耕作を続けていくということだけではなかなか中長期的なやっぱり集落の維持ということに結び付いていかないのではないかということで、今回の日本型直接支払を含めた農政の改革のパッケージをつくらせていただいたところでございます。
 したがって、これは何かこうしなきゃいけないということではございませんので、今委員がおっしゃったように、人と農地プランの中で、みんな若くて元気なんだから、まあ若くてというのは結構お年がいっていてもという意味も含めてですが、頑張ろうじゃないかということでずっとやっていくということであれば、別にそれを否定するものではないと。これはあくまで選択肢でございますので、あいつに集めていこうぜというときに、これをこういうふうに使ってやっていただくことが構造改革の後押しになると、こういうことでございまして、まさに基本は地域においての話合いと、こういうことであろうかというふうに思います。

○紙智子君 やっぱり構造改革を後押しする多面的機能支払、これはやっぱり農業、農村地域に混乱を持ち込む、そして農業の持続的な再生産が困難になる可能性があるというふうに思うんです。構造改革を後押しするものではなくて、農業生産と地域コミュニティーを持続的に発展させる政策が必要なんだと、とりわけ再生産を保障する政策が必要だというふうに思います。
 次に、中山間地域についてお聞きします。
 中山間地域の直接支払についてですけれども、この中山間地域で耕作放棄地が増えているというふうに思いますけれども、平成七年、十二年、十七年、二十二年の耕作放棄地率の推移を説明してください。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) 中山間地域の耕作放棄地の面積、それから耕作放棄地率の推移でございますけれども、農林業センサスの組替え集計によりますと、平成七年では面積で十三万二千ヘクタール、耕作放棄地率で五・六%でございます。それから、平成十二年は十八万八千ヘクタール、耕作放棄地率は八・一%でございます。平成十七年は二十万八千ヘクタール、耕作放棄地率は九・七%でございます。平成二十二年は二十一万五千ヘクタール、耕作放棄地率は一〇・六%。失礼しました。申し訳ございません。ちょっと訂正いたします。申し訳ございませんでした。
 面積は、今申し上げましたように、十三万二千ヘクタール、十八万八千ヘクタール、二十万八千ヘクタール、二十一万五千ヘクタールでございますが、耕作放棄地率は、言い直します、申し訳ございません。平成七年は七・七%、それから平成十二年は一一・二%、平成十七年は一三・三%、平成二十二年は一四・五%でございます。
 申し訳ございませんでした。

○紙智子君 ですから、今聞いたように、平成七年が七・七、次十二年が一一・二、十七年が一三・三、二十二年が一四・五%ということで増えていっているわけですよね。
 中山間地直接支払制度を導入しながら、なぜこれ耕作放棄地が増えているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 三浦進君) まず、中山間地域直接支払制度の効果として耕作放棄地の発生が未然に防止されているということは、この制度の第二期対策の第三者委員会による評価でも示されておりまして、平成十七年から二十一年度の第二期対策の期間で全国で約三万三千ヘクタールの耕作放棄地の発生が未然に防止されたということはそのように報告されております。一方で、やはり中山間地域は、地理的条件が悪く生産条件が不利だということ、過疎化、高齢化の進行が他の地域よりも早いということもありまして、耕作放棄地がやはり引き続き増加しているという現状にあるということでございます。
 なお、先ほど御説明申し上げましたように、依然増加はしておりますので、それはそのとおりなのでございますけれども、その増加の度合いというのは、この中山間地域直接支払の導入前である平成七年から平成十二年の増加の度合いというところと導入後の増加の度合いということを比べると、そこはなだらかになってきているということは見て取れるかと思います。

○紙智子君 耕作放棄地が増える率は少し低くなっているんだという話だったと思うんですけれども。
 それにしても、今いろいろお話あったわけですけれども、実際に現地で島根で話をしたときに、耕作放棄地を出していない、集落協定を締結してやっている集落の方ですけれども、この間頑張って耕作放棄地出していないというところ、窪田ふるさと会のところなんかはそういう話だったわけですよね。ただ、実情を聞きますと、営農活動にこの七年間で六千五百八十五万円の交付金を受けたと言っているんですよね。七年間で六千五百八十五万円だったと。それは一戸当たりにすると大体二十八万円だと、七年間ですからね。このほとんどが、水路を直したりとか、あと鳥獣被害、イノシシの被害対策だとかこういうので消えてしまっているので、本当に何というか、それに膨大なあれがつぎ込まれたというよりも、それもなかったら大変だったというか、だから、何とか耕作放棄地出さないできた地域でももうとんとんというか、そういう形で来ていたんだというふうに思うんですね。
 それで一方、出雲市の美郷町の農事組合法人小松地営農倶楽部、公聴会のときに見えていたんですけれども、この方は、平成十八年に設立をして十四名で農業後継者で始めてきた、米とソバとトルコキキョウで頑張ってきたと。毎年、面積の一%から二%で耕作できずにギブアップということで耕作放棄地が防ぎ切れていないという発言も現地では実際されたわけです。
 それで、中山間地域の直接支払制度というのは、やっぱり書類の申請もなかなか大変だったり、あるいは対象地域を広げてほしいという話も依然として出ていますし、もっとこの要件を緩和すべきではないかという要求が出ているんですけれども、この点、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 中山間地域等直接支払制度は、多面的機能の低下が特に懸念をされる中山間地域等について、農地の傾斜等、地理的条件から生じる平地との生産コスト格差、これを補正するという位置付けであります。平成十二年度の創設以来、先ほど局長から説明がありましたように、耕作放棄地の発生の伸び率を鈍化させると、こういう効果を上げてきまして、多くの市町村や集落が制度の継続を求めておられるところであります。今委員が御指摘になったとおりであります。
 制度の見直しについては、本制度、五年間を一つの対策期間と、こういうふうに設定をしておりますので、基本的には対策期間が切り替わる際に現場での活用実績等を踏まえた見直しを行ってきたところでございますので、本制度については今年度が第三期対策の最終年度でございますので、現在、今期対策の評価等の作業を行っておりまして、現場の実態をよく踏まえながら次期対策の検討を進めてまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 是非やっぱり続けていただきたいというふうに思います。
 それから、中山間地域は全国の水田面積の四割を占めていると。参考人質疑でも安藤参考人が、中山間地域では主業農家も集落営農もない、構造改革は現実的でない、中山間地域等直接支払制度を主軸に据えつつ別の政策目標を掲げるべきではないかということを言われていました。島根では、やっぱり自由度のある使い勝手のいい支援も欲しいということも出ていました。中山間地域の支援策をやっぱりこの際きっちりと強化すべきではないかと。これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 応援をいただいたと思っておりますが、しっかりといろんな対策を打っていく必要があると常々思っておりますし、この支払制度の見直しも今年ということでございますので、いろんな対策を含めて、今回、多面的機能支払も水田に限らずに畑地、草地ということでこの対象にいたしましたし、中山間地域等に加えて多面的機能が出ると、こういうことでもございます。そういうことも併せて、しっかりとその地域地域に合ったいろんなやり方が、いい知恵が出てくる、こういうことも後押ししながらやっていきたいと思っております。
 御案内のように、コシヒカリ、魚沼産というのは棚田から一番おいしい米ができると、こういうこともよく聞かされるところでございまして、そういういい取組が出てくるようなしっかりとした対策というのもしっかりと検討してまいりたいと思っております。

○紙智子君 しっかりと対策をやっていただきたいんですが。
 それで、二十二日の参考人の御意見をいろいろお聞きする中で非常に印象に残ったのがありまして、愛媛大学の村田参考人の発言で、我が国は先進国で最低の食料自給率だ、したがって我が国の食料の安全保障問題をないがしろにして強い輸出農業を目指すことにはならないんだ、強い輸出農業づくりを農業構造改革だとして零細兼業農家を追い出すことに熱中する農政、あるいは交付金の交付対象農業者を限定しなければ構造改革に逆行するなどという認識はEUもアメリカもなかったんだということを指摘されていました。
 私は、最後になりますけれども、食料自給率をやっぱり向上させていくということをしっかりと据えてやっていく上でも、この中山間地域の農業、農村を持続的にやっぱり網羅して発展させるための支援を一層強く求められているんだということを最後に強調して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。