<第186回国会 2014年5月27日 農林水産委員会>


農政改革二法・地方公聴会/米価の安定、農村の維持など農家の思いに応えていない

○農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○公述人
出雲市長     長岡秀人君
いずも農業協同組合常務理事     岡田達文君
有限会社グリーンワーク代表取締役  山本友義君
農事組合法人小松地営農倶楽部理事 美郷町副町長   樋ケ司君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。最後になりますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、長岡市長さんにお聞きしたいと思います。
 先ほどの公述の中で、今度の出されている法案が日本再興戦略に位置付けられて、十年間で今後、全農地の面積の八割を担い手にと、そして生産コストを全国平均比で四割削減をして、法人経営体数を今の二万五千から五万にするという方向ですよね。それで、端的に言えば、これからでいうと、企業参入の加速化と、企業経営ノウハウの徹底した活用をやって、六次産業化、それから輸出拡大を通じて付加価値の向上と、若者も参入しやすくと、そういう農業の実現を目指して大胆な構造改革を進めるということが書かれているわけですよね。
 それに基づく今回の法案ということで、この担い手の方の法案でいうと、そこで提起されている中身というのは、一つは、今までの交付金でいうと、戸別所得補償制度のときには販売農家全てを対象にということで交付されていたわけですけど、今回のやつは限定すると。だから、ゲタ、ナラシの話もさっきありましたけれども、これもそれぞれ担い手、交付する対象は認定農業者と集落営農と認定就農者ということに限定と、絞り込むということですよね。先ほど、面積要件はなくすんだからということで話あったんだけど、面積要件なくしても絞り込むという本質は変わらないんだというふうに私は思っています。
 それからもう一つの中身として言えば、交付基準が変わるということですよね。つまり、今まででいうと、面積と品質、七対三の割合で面積と品質ということで交付する基準にしていたわけですけれども、これを数量払いを基本にするということになっているわけですよね。
 そうすると、私は、やっぱりその数量払いということを基本にした場合に、特に中山間地域というか条件不利地域、こういうところを多く抱えている島根県のようなところというのは、これ、数量でいうと、そういう条件の悪いところというのは収量を上げるというのはなかなか大変なことだというふうに思うんですね。そうすると、今までよりももっと交付額が減らされるということもあるんじゃないんだろうかということを思って、その点での受け止めというのはどうなのかなということが一つあるわけです。
 そこでなんですけれども、今、島根県全体でいうと、現在、担い手が利用している面積が二九%だと、それを十年後には六七%まで集積する計画だというふうに言われているわけですよね。
 それで、一つは、ここ、出雲市なので、市長さんいらっしゃるので、出雲市では担い手への農地の集積目標をどういうふうに決められているのかということです。
 それから二つ目に、担い手以外に担う農地、つまり、約七割近くをこれから集積していこうということなんだけれども、じゃ、それ以外の三割ぐらいのところが出てくるんだけれども、ここはどうするのかということなんです。それで、国民への食料自給率を上げるということでいうと、やっぱり本来担い手がどんどん減っていって、耕作面積が増えればいいんですけれども、それがちゃんとなるのかということですね。その点でどうなのかということが二つ目。
 三つ目は、兼業農家が農業から切り離されるということになった場合に、地域に住む意味がなくなって離農したり転居することになる可能性も出てくるんじゃないのかなという点でどうですかということを市長さんにお聞きしたいということです。
 それからもう一つ、岡田公述人にお聞きしたいんですけれども、島根においてはやっぱり農地をいかに維持するかという話も、昨日も何度も聞きましたし、地域経済の維持と、それから生活支援や福祉、環境保全などの生活維持を目的にした地域貢献型集落営農を推進するんだということを目指しているというふうにお聞きしたんですね。その場合、そのことをやろうとしたときに、今回の言ってみれば構造改革と言われている中身がどういうふうに影響するんだろうかというところをお聞きしたいんですね。
 それで、今回の多面的機能も充実させようという法律も出ているんですけれども、一般論で言うと、多面的機能を充実させるという、これはもう誰も反対しないと思うんです、大事ですから。一般論ではそうなんだけれども、私は、今回、これセットで出されているというところに何か腑に落ちないところがあるわけですよね。それはさっき岡田さんも言っておられたんですけれども、今の情勢が厳しい中で、法人経営など担い手に施策を集中すればするほど個別の農業経営というのは解体していって、兼業農家が農業から切り離されたら地域に居住できなくなるんじゃないか、そうすると、やっぱり動きが取れない高齢者の方が残ることになるんじゃないか、その辺のところはどうなんだろうかというところをちょっとお聞きをしたいと。
 まず最初に、お二人にお願いします。

○団長(野村哲郎君) それでは、まずは長岡公述人からお願いいたします。

○公述人(長岡秀人君) 先ほどの、最初の第一点目の質問については、出雲市としての集積目標、二十四年度の集積率が四七・三%を平成三十二年度には六二%を目標にしているところでございます。
 それから二点目の、七割とすれば残りの三割、農地がどうなるかという話ですが、これはなかなか難しい話でして、そのまま維持されるケースもあろうと思いますし、そうでないケースも。ただ、五年後、十年後の状況というのは、恐らく最終的にはやむを得ずその集積の方へ向かうケースがもっと増えるんじゃないかという気がいたしております。
 それから、兼業農家の、これも同じような話でございますが、先ほど来お話をしておりますけれども、出雲市にとっての農業というのは、単なる産業としての農業だけではなくて、やはり地域をしっかりと守っていただくその中心となる文字どおりの基幹産業という捉え方をしております。そういった中では、専業、兼業問わず、やはり農村地域にあって、それを支えていただく大きな力を持った皆さんでございまして、兼業農家もいずれは専業に転ずることもありますし、この地域にとってはいろんな意味でセーフティーネットのような役割もしているのが農業でございます。地域全体のためには、やはり専業農家の皆さんもしっかりと自覚を持って農業が続けられるような形を守っていくのが私の務めではないかと思っているところです。
 以上です。

○公述人(岡田達文君) 御質問の農地の維持という話ですけれども、今から二十数年前、まあ三十年くらい前までは、各農家が個人的に農業をしとったんですね。少数の四、五人ぐらいのグループでいろんな農機具を持って、各個人的に三百万くらいの負債を抱えながらというか設備投資をしていって、十二月の二十五日というのは近代化資金の償還日ですから、ここに自分が稼いできた、ほかで稼いできたお金をそこへつぎ込んでいって農地を維持していたんです。これが現実だったんです。
 それから、だんだんだんだん農地というものを、転作になってくる、あるいは集団転作をするとこういうふうにしますよとか、これをするとこうなりますよというようなところで、少し言葉は悪いわけですけど、ニンジンをぶら下げながらしてもらって、農地を集積していって集落営農組織をつくったり、認定農業者をつくったり。この集落営農組織と認定農業者というのがおおむねのこの担い手というふうに位置付けています。
 集落営農組織というのは、集落そのもので、私も集落営農組織を立ち上げた男ですから。二十数年前までは、六十、七十のおじいさんとおふくろさんが二人して田んぼへ行って、日曜日だと、若い人が、苗は出すんだけれども知らぬ顔しとったんですね。それが、集落営農組織をつくると、若い三十歳ぐらいから四十歳くらいの人が、今までコンバインも乗ったことがないとかトラクターも乗ったことないという若い人間が出てくるんですね。僕乗ったことがないけんて言うが、少々曲がっとろうが何しようが曲がった米はできせんと言って乗せるわけですよね。
 集落営農組織というのは、集落を守っていきながらやっていくんですよね。その代わり、そんなにすごい収益が上がりません。四百万、五百万ももらえるわけじゃないです。まあ年間百万とか、自分のところのできた米代と、自分が出した従事分配当みたいなものもらうだけです。米ほどはただでいって、自分もその集落出ていって、縦のつながりをつくっていきながらコミュニケーションをしていくと。こういうやり方をしていきながらやっていくんですね。
 集落営農組織には、担い手というのは、たまにことんって亡くなられる方がいらっしゃるんですね。そうすると、農協大変です。どこどこの誰さんが入院されたと。もうできらんようになったらどげするだっていう話ですよね。で、一生懸命になって、ほんなら誰々さんに作ってもらおうじゃねえかとか、まだ分からないのは、例えば死んでしまうと、どこのを受け取っとられたか分からぬだったみたいな話ですよね。もう大変なんですよね。ところが、そういうことからいうと、集落営農組織というのは、わしが入院さがしながあ、まあそれはみんなのチームワークでやっていることだからやるんですね。そういうコミュニティーというところがやっぱり農村部にはあるんだと。これをなくしてしまうとどうしようもない。
 そこで、聞こえがいいように今頃皆さん方というか国が言っているのは、強い農業をつくるんだとか、強い農業者をつくると。何か、聞こえが本当にいいですね。ああ、国はやってくれるんだなとか何か思うんですけどね。国際競争力を付けてと、そんなもんが付いとるならもうとっくに付いていますよ。そこなんですね。そういうところのきれいな、環境保全がどうだとかいって、そんなものは我々は黙っとったって今までやっとったんですよね、無報酬でやっていたんですよ。そこのところを、やっぱりもう少し現場が分かってほしいなと。
 私、もうそろそろ終わりますから、一つほど言っておきたいのが、わし、地方にずっと住んでいますから。
 誰だとは言いませんけれども、いつだったかの東京都知事さんの方が、東京が潤えば日本全国の経済は潤うんだと言った方がいらっしゃるし、プロ野球のオーナーですけどね、何とか読売とか何とかいうところの人が、読売ジャイアンツほど強ければ日本の野球は面白いんだと言っている人がいたんだというふうに聞いたときに、我々は何なのと。我々は地方に住んで、地方は地方で一生懸命やっているんだけれども、なぜかしら都会の方の考え方を押し付けられてしまって、我々は黙って、もうこんなことになるからみんなが選挙にも行かないし、やるならやれ、おまえたちやってみれ、我々は我々で自分だけしか守る手はないという気持ちにならないようにしてほしいなというふうに思っているんですね。
 もう少し我々の意見が霞が関の方に届くようにやっぱりしてほしいなというふうに思います。済みません。

○紙智子君 ありがとうございました。
 やっぱり生産活動が縮小していったら、結局その地域は本当に守れなくなってきて、鳥獣被害も増えてくるし、災害も起きるしということだと思うんですね。そうすると、多面的機能、多面的機能といっても果たせなくなっていくんだと思うんですよ。
 やっぱり生産活動と切り離した形でやっていくということはどうなのかなというのは、いや、そうせざるを得なかったり、実際にもう年取ってあとやる人がいないから、土地はお任せしますから、その分自分がいろいろ手伝えるところで周辺でやりますという人はいるかもしれないけど、それは自覚的にいるかもしれないけど、上から押し付けていても、それはやっぱりもたないんじゃないかという気が私はしています。そういう点では、ちゃんと生産活動を位置付けるということを法律の中でもやる必要があるんじゃないかということを思っているということが一つです。
 それと、あと時間の中では山本公述人と樋ケ公述人にお聞きしたいんですけれども、法人をつくってやってくる、ここまで来るというのは本当に御苦労があったというふうに思うし、やっぱりそうせざるを得なかったという面もあると思うんですけれども、やっぱり中山間地域で立ち上げてこれから先進めていくということでいうと、私はもっともっと、例えば中山間地域の直接支払なんかも使い勝手が良くなるようにしてほしいとか、充実してほしいということがあるんじゃないかと思うんですよね。その辺りの点で要望というか是非言っておきたいということがあったら、お願いしたいと思います。

○公述人(山本友義君) 使い勝手のいい補助事業が一番いいと思っていますけれども、民主党さんがいらっしゃいますけれども、当時、何でもいいけん、いいよという事業あったわけですけれども、リース事業もそうでしたね。いいよと、条件は付けないから欲しいもの買えということがあった、更新だろうと新規だろうと構わぬと。
 願わくば、全国の、さっき話があるように、都会地の人間も田舎の人間もお互いに批判するんじゃなくて、私も大阪の方にずっと生活をしていましたけれども、そのときに悔しい思いが、休憩時間になると、何で農業だけがそうしたふうに特別に予算措置、いわゆる過保護をするんだということを、都会地のみんなは日常茶飯事にそういうふうに茶飲み話に話すわけなんですよね。
 私は農家出身ですから、農家は農家の苦労があるということが分からないんだなという思いで、悔しい思いで横で聞いておったんですけれども、やはり地方に帰ってそのことを思うときに、自分らの農業、中山間で農業を張ってやっていくということがどれだけ大事なことでどれだけ必要なことかということをやはり分かっていただきたいと。これは、国会議員の皆さん方にも是非ともお願いしたいというふうに思っております。
 使い勝手のいいのは、やはり我々も、直払いにしてもそうですし、煩雑な事務、これは今年度、二十六年度からは見直すということでございますけれども、補助金もらうために一人事務員が要るぐらいに書類が要るんですよね。ただでもらうんだから仕方ないと思いつつも、その事務量に耐えながら申請、そして後の五年間の報告等々を出さなきゃならない煩わしさ等がございますので、その点は今年の改革、載っていましたけれども、簡単にするということでございますので、是非ともそれを実現をしていただきたいというふうに思っています。

○公述人(樋ケ司君) 私の考え方をちょっと申し述べますけれども、私どもの美郷町、合併を十年前にしておるんですけれども、三十年ぐらい前の農地の面積と現在の農地の面積を比較した場合に、三分の一ぐらいになっているんですよ。米を作る面積です。米を作る農地の面積、三分の一ぐらいまで減っています。大体、一年に全農地の一%ないし二%が荒廃しています。
 去年一年間取ってみても、もう田んぼの管理をできなかったから私の土地を何とか管理してくださいと言う人が、全体の、今米作っている面積、たった二百三十ヘクタールしかないんですけれども、去年一年間でもうギブアップと言った人が十ヘクタールあるんです。
 ですから、すごい勢いで高齢化が進んでいて、すごい勢いで耕作放棄が行われている。何とかしてやろうという人が、リーダーがおる地域については集落営農組合でそれをカバーするんでありますけれども、そういう人がいないところはどんどんやっぱり耕作放棄が出てくる。これは、一ヘクタールないし二ヘクタールがそういうふうにして出てきているんですよね。
 農業政策の中で、様々なこの三十年間を見ても農業政策打ってこられたわけでありますけれども、残念なことに、私どもの町の場合にはそれを防ぎ切れていないというのが現実なんです。私は、これはやっぱり本当に農業政策だけで何とかなるのかなというふうなちょっと気持ちがありまして、過疎問題の権威であります明治大学の小田切先生なんかが言っておられますけれども、空洞化の進み方というようなお話をよくされるんでありますけれども、まず人から始まって、土地に行って、そして村に行って、最後に誇りを失ってしまって村は崩壊するというふうに言われています。
 今、もう村の崩壊と誇りの崩壊のぎりぎりのところまで来ているわけでありまして、本当に農水省さんだけでこの問題が解決するのかなというところがあって、私は、むしろ農水省の守備範囲じゃなくてもうちょっと超党派の総合的な、内閣総理大臣さんのリーダーシップによって全省庁が力を合わせて日本の村を守るんだというぐらいの施策を打っていただかないと、ちょっとやっぱり問題解決できないんじゃないかなというふうに思っております。
 ですから、ひょっとしたら、コミュニティーを守っていこうというような、むしろ総務省さんが強力な対策を講じられるとかいうようなことが、農水省さんだけじゃなくて併せて必要になってくるんじゃないかなということを今感じております。

○団長(野村哲郎君) 時間が来ております。

○紙智子君 ありがとうございました。終わります。