<第186回国会 2014年5月20日 農林水産委員会>


生産者米価の下落問題と農政改革について国の責任を追及

○農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、農政改革で農産物価格がどうなっていくのか、とりわけ米価について質問したいと思います。
 米の直接支払交付金は今年度産から半減ということですね。私は、政府の農政改革について、各地ずっと回っていましていろいろお話を聞いてきましたけれども、富山のある大規模生産者は、米六十キロ当たり一万五千円ないと採算取れないと言うんです。価格がちゃんと出ていれば補助金に頼らなくてもいいんだけれども、今の価格水準では経営できないというふうに言われました。
 米の価格、相対取引価格がどうなっているかということでいいますと、これ平均ですけれども、二〇一〇年産が一万二千七百十一円、二〇一一年産が一万五千二百十五円、一二年産が一万六千五百一円、一三年産は一万四千円台というふうに落ちてきているわけですね。一方、六十キロ当たりの生産費はどうかと、生産費。こっちは、二〇一〇年産が一万六千五百九十四円、一一年産が一万六千一円、一二年産が一万五千九百五十七円と、これも落ちてきているんだけれども、しかし、取引価格よりも生産費の方が上回っている。逆を言えば、生産費の方が取引価格よりも高いわけですから、これは赤字になると。だから、農産物価格だけでは再生産できない状況ということですね。
 直接支払交付金を半減すると、そういう中で。半減するというのであれば、これ価格対策を何かすべきではないですか。いかがですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この主食用米の価格でございますが、基本的に需給動向等に応じて民間取引の中で決定されるということだと考えております。二十六年産米から水田活用の直接支払交付金を充実しまして、数量払いの導入など飼料用米等のインセンティブを高める、それから産地交付金を充実して地域の創意工夫を生かした産地づくりを進めていただく、それから国によるきめ細かい需給・価格情報、販売進捗・在庫情報等の提供を行っていくということでございます。民間取引の中で米の価格が決定されるわけですが、こうした今申し上げたような取組を通じて引き続き米の需給と価格の安定を図っていきたいと、こういうふうに思っております。
    〔委員長退席、理事山田俊男君着席〕
 また、あわせて、米や畑作物の価格低下等に伴う収入減少、これが農業経営に与える影響を緩和して安定的な農業経営ができるように、農業者の拠出に基づくセーフティーネットとして、引き続き収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策、これを行っていきたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 現在の米の需給状況についてちょっとお聞きしたいと思うので、ちょっと御説明をお願いいたします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 平成二十五年七月から平成二十六年六月までの一年間の米の需給関係を申し上げますと、二十五年六月末の民間在庫量が二百二十四万トンございまして、二十五年産の主食用米の生産量が八百十八万トンということで、全体の供給量につきましては千四十二万トンということに相なっております。
 これに対しまして、需要につきましては七百八十七万トンというふうに見通しておりまして、今年の六月末の民間在庫量につきましては二百五十五万トンと相なるというふうに見込んでいるところでございまして、この二百五十五万トンにつきましては、近年の中では高い在庫量と相なっておるところでございます。

○紙智子君 今御説明いただきましたけれども、二〇一二年産の価格は高めで需要が減少と、二〇一三年産の作況が一〇二あって、二〇一四年の六月末の民間在庫、今お話あったように二百五十五万トンということで、在庫水準が上がっているということですよね。
 民間在庫量がこれ二百五十五万トン、米はちょっと過剰ぎみかという感じだと思うんですけれども、米穀安定供給確保支援機構というのがありますよね。ここが、販売の見込みが立たなくなった二〇一三年産の米の主食用米約三十五万トンを買い入れたと、非主食用米として販売することを決めたということなんですね。これはなぜ市場から隔離しているのか、お答え願います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 先ほど申し上げましたように、この在庫量が二百五十五万トンということになっていまして、その前は二百二十四万トン、その前は百八十万トンというふうなことで、まあ二百万トン台程度かなという感じでありますが、それが二百五十五万トンということで、やはり販売業界におきましても在庫圧力といったものが高まってきたということで、先ほどございました機構におきまして三十五万トンの主食用からの非主食用への処理を行うといったようなことが決められたところでございます。

○紙智子君 報道では、全農が、二〇一三年産の持ち越し米ですね、これが十月末で六十万トン発生するというふうに見込んでいたと。今回の過剰米対策で三十五万トン市場から離すということですから、隔離するということですから、そうすると、六十万トンということでいうと二十五万トンの持ち越しが発生すると。供給過剰感というのは解消されないんじゃないかと。ですから、過剰米対策決定も効果は限定的というふうに報じているわけですね。
 米の過剰感というのは解消されないというふうに思うんですけれども、このことについての御認識を伺います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この平成二十五年産米の直近の相対取引価格ですが、銘柄の加重平均で六十キロ当たり一万四千四百四十九円ということで、二十四年産米の同時期の価格に比べてマイナス二千八十五円と、こういうことでございます。
    〔理事山田俊男君退席、委員長着席〕
 これは、二十四年産が比較的高めに推移していたということもあって、それとの比較ということもあるわけでございますが、その前の年の二十三年産が一万五千三百三円ですから、これと比べるとマイナス八百五十四円。さらに、二十二年と比べますと、一万二千七百五十円でございますので、プラス千六百九十九円と。
 こういうことで、やはり先ほど来から御議論ありますように、各年において様々な状況がございますのでプラスになったりマイナスになったりということもあるということでございまして、そういう意味でも、民間取引の中で、先ほど郡司委員にもお答えをしたところでございますが、米の価格については取引で決定されるということでございまして、国が今後の見通し等について言及することは適切ではないと、こういうふうに考えておりまして、動向について引き続き注視をしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 二〇一三年産の相対取引価格が一万四千八百七十一円で始まって、今お話あったように、今一万四千四百四十九円と下がってきているわけですね。その年その年でいろいろプラスマイナスあるという話なんですけれども、今年の秋には過去最低だった二〇〇九年産の再来の可能性もあるという指摘もあるわけです。米の過剰状態が続いて生産者米価が低下してもやむを得ないという御認識になるんでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 繰り返しになりますが、米の価格、これは民間取引で決定されるということでございます。したがって、先ほど申し上げましたように、価格低下等に対しては、収入が減少するということが起こった場合に農業経営に影響が出ますので、これを緩和して安定的な農業経営ができるように、農業者の拠出に基づくセーフティーネットとしていわゆるナラシ対策、これがございます。これを引き続き行っていくことにいたしたいと思っております。

○紙智子君 生産者の拠出がされるということがあるわけなんですけど、私、いろいろ価格が上がったり下がったりという中では、アメリカでも市場価格が融資保証価格を下回った際にはその差額を補填する制度があるわけですけれども、日本ではもう市場に任せるという考えになっているわけですね。
 日本の場合、備蓄米というのがありますけれども、これは米の不作に備えるということになっているわけです。二〇一三年の買入れ数量が備蓄米でいうと十八万トンだけというふうになっているわけですね。農水省は市場から米を買って価格調整はしないと、一貫してこの間そういう立場できているわけですけれども、しかし、米穀安定供給確保支援機構が買い入れた三十五万トンというのは、これは既に市場からは隔離された米で価格に影響が出ることはないわけですよね。政府の備蓄米としてこれ機構から買い上げるということも検討したらどうかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 御指摘のあった米穀機構の事業でございますが、通常年の月別の販売数量から見て今後の主食用としての販売の見込みが立たないということで、三十五万程度を加工用、飼料用等に販売するということでございます。こうした取組は、集荷業者や販売業者の皆さんがこの米穀機構のメンバーでございますので、まさにこういう民間の皆様の間で対応することが適当だと、こういうふうに考えております。
 豊作や需要の減少で米の供給が過剰となったときに国が直接市場に介入しまして政府が買入れを行うこと等については、食糧法上、政府買入れは備蓄の円滑な運営を図るために行うと、こういうふうになっておりますので、需給調整のために行うこととはなっておりませんので適当ではないと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 そういう、何というんですか、備蓄はあくまでも不測の事態のときにとなっているんだけれども、過去に、そういう仕組みであるけれども備蓄を買い入れるという、そのやっぱり範囲の中で本当にひどく下がったときに国としてそのまま放置できないので対応したことがあるわけですよね。
 それで、市場から隔離された米をやっぱり備蓄米として買う、こういうことも一切やらないということでいいのかというのがあるわけです。機構が隔離した米というのは、これは二〇一三年産米なわけですよね、一番新しい方の米なわけです。備蓄米として政府が買い取って保管している古い米を出せばいいんじゃないかと。大分もう古くなっている、五年前のお米もあったりするわけですから、やっぱり主食用じゃなく加工なり飼料なりに回すということになるんだと思うんですけれども、市場に影響を与えないわけですから、そういうこともやっていいんじゃないかと。
 生産者、とりわけ専業農家は、再生産できる農産物の価格があってこそ経営を続けることができるわけです。
 米が過剰で価格が低下しているのに、これは民間任せだからということで政府が全くそれに対してどうともしないということではなくて、やっぱり全体を考えて何らかの責任を持つというふうにするべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今の御質問を聞いておりまして、昔、かつて三Kと、国鉄と米と、もう一個は健保だったと思いますが、その話を思い出していたわけですが、先ほど郡司前大臣からも、これだけはやらない方がいいと、こういうふうに言っていただいたわけでございますけれども、一度それをやると、またそういうことがあるだろうということで価格が形成されて、それに頼るようになってというのが我々が歴史から学ばなければならないことではないかと。私もそういうふうに思っておりますので、先ほど御答弁したとおり、しっかりと対応してまいりたいと思っておるところでございます。

○紙智子君 ここはこの後ずっと議論しても多分平行のままだと思うので、次に主食用の需給見通しについてお聞きします。
 農水省は、平成二十五、二十六年の主食用米の需給見通しを発表しています、その注というふうに、注意の注と書いてあるところに、平成二十五、二十六年においては、需給事情から見て、販売の見込みが立たなくなった主食用米が需要が期待できる加工用、飼料用に販売されることが想定されると書いてあるわけですね。これ、需要が期待できる加工用、飼料用に販売されるということが想定されるとあるんですけれども、これはどういう意味なのかと。始めからもう決まっているかのような書き方なんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 今の紙先生のお問合せでございますが、米の需給状況につきましては、昨年秋の段階でございますが、需要の減少や豊作等により平成二十六年六月の民間在庫数量が、先ほど申し上げましたように、これまでにない高水準となるということが見込まれていたところでございます。こうした中、昨年十一月の初旬でございます、十一月の八日でございますが、米穀機構におきまして、保有する資金を活用した対策の実施について検討するといったことが決定されたところでございます。
 これを受けまして、二十五年十一月の米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針におきましては、こうした米穀機構における取組を念頭に、平成二十五、二十六年においては、需給事情から見て、販売の見込みが立たなくなった主食用米が需要が期待できる加工用、飼料用等に販売されることが想定されると明記したところでございます。

○紙智子君 農水省の需給見通しを受けて、全農が、今年の加工用米の売渡価格を九千円、これは六十キロ持込み税別ということですけれども九千円、農家向けの概算金は七千円に決めたというふうに言われています。前年よりも、これ三千円も下回る水準なわけです。
 それから、関西地方の農業者から訴えがあるんですけれども、経営所得安定対策の説明会で、昨年まで続いた減反政策が廃止された、TPP交渉の懸念事項がほぼ合意に達していくような様子だと、今年度の農協の米価買取り価格が大幅に低下するということで、概算払は従来の三十キログラム当たり六千円、今年は三十キロ当たり三千五百円にするという話が出ているんですね。これ、現場ではこういう話が出ているわけです。
 ですから、政府のメッセージや情報や農政改革あるいはTPPの動きが価格の下落をあおっているんじゃないかというふうにも思うんですけれども、大臣、これどう思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) まさに私が注意して先ほど来答弁をしておりますように、需要と供給で価格は決まると。政府が何か先ほどの御提案があったようなことをするとか、逆のことをするということでやはり市場に影響を与えてはいけないということで、これは米以外の農産物もそうであるように、しっかりと需給によって価格が決まっていくと。
 ただ、それを、市場で決めますからというのではなくて、需給が安定するように需要に応じた作物を作っていただくように、そういう環境を整備していこうということで、今度の改革を打ち出しているところでございます。

○紙智子君 安定していくようにとおっしゃるけれども、安定しないですよ、こういうやっぱり現場の動揺が繰り返されているわけですから。
 それで、TPP交渉をめぐる情報も影響を与えているというふうに思うんですね。
 昨年末、政府はTPP交渉でアメリカから輸入している米の輸入枠を広げる方向で検討に入ったという報道がされました。無関税で今輸入しているミニマムアクセス米というのは七十七万トンなわけですね。このうち、アメリカからの輸入は約半分の三十六万トン。アメリカからの輸入というのは入札なんだと言うんですけれども、量はなぜか三十六万トンと固定しているんですね。この枠を広げるという報道なわけです、更に。
 それから、アメリカの通商代表部が発表した二〇一四年外国貿易障壁報告書、この中では、日本の米の輸入制度は極めて規制的で不透明だというふうに指摘をしています。アメリカ産の輸入米はほとんどが加工用や飼料用などに仕向けられている、アメリカ産の米が日本の消費者に届くのはごく僅かだというふうに不満を言っているわけですね。アメリカは主食用米の輸入をもっと日本にやれということを求めているわけです。しかしながら、この主食用米の輸入量が増えれば日本の米生産の多大な影響が出てくるわけです。
 そこでちょっと確認をしたいんですけれども、農水省は日本とアメリカの米の生産コストを比較していると思うんですけれども、これについて説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) まず、我が国の水稲の平均の作付面積でございますが、これが一・二ヘクタールでございまして、平成二十四年産米の六十キログラム当たりの生産コストが約一万六千円というふうに相なっております。内訳といたしましては、物財費が九千七百円、労働費が四千百円、その他が二千二百円となっております。また、これは平均でございますが、十五ヘクタール以上層の大規模経営では、それよりも生産コストが三割程度低い約一万一千円となっておりまして、物財費が七千円、労働費が二千五百円、その他が千九百円と相なっているところでございます。
 他方、アメリカでございますが、まず水稲の平均の作付面積でございますが、これが百六十ヘクタールでございます。二十四年産米の六十キログラム当たりの生産コストにつきましては、我が国の十分の一程度の水準でございます約千七百円。内訳といたしましては、物財費が九百円、労働費が百円、その他が六百円と相なっておるところでございます。
 このような生産コストの格差の要因でございますが、先ほど申し上げましたような規模の問題でありますとか、あるいは、アメリカでは航空機によりまして播種あるいは防除等が行われている、あるいは外部委託を行うことによって労働費が安いといったこと、あるいは、日本の米に比べまして、やはり単収が大きく影響する日射量あるいは病害虫の発生の多寡等の環境要因というものが相なりまして、このような結果に相なっているところでございます。

○紙智子君 今お話しされたように、生産コストの差は、今十分の一と言われたように十倍なわけですよね。六十キロ当たりの生産費はアメリカで千七百円ですよ。日本で十五ヘクタール以上の経営をしている大規模農家でも一万一千四百円という話ですよね。農水省は農政改革でコストを四割削減するというふうに言っているんですけれども、実際、これ、アメリカと競争になるかといったら、とても太刀打ちできないことは明らかだと思うんです。報道では、アメリカの輸入枠を増やす代わりに、タイですね、タイ産などの輸入を減らすというふうにも言われています。
 TPP交渉でアメリカに譲歩すれば、これは当然オーストラリアも、それから世界第二位の米の輸出国であるベトナムも黙っていないわけですよね。今日の日本農業新聞を見ると、現にTPPの交渉でベトナムからは日本に対して輸入拡大を求めるということになっているわけですよ。だから、こういう報道も結局価格の下落をあおっているんじゃないかと。そういう自覚はおありですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 私は報道機関でございませんので、報道機関のやっていることについての自覚ということはなかなかお答えしにくいわけですが、ここで前回も、報道機関がこういう報道があって、特に内閣官房からこういう対応をしたということはございましたので、これ以上私から申し上げることはございませんが、繰り返し申し上げているように、まだ特定の関税ラインで合意をしたというものはないということだけは、はっきり申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 合意はしていないと言うけれども、こういう話がどんどん出てくれば、やっぱり本当に下落につながるし、生産者の方は意欲を失っていくわけですよね。
 関西の説明会を先ほども紹介したんですけれども、生産調整の廃止も価格の下落に影響を与えているわけです。生産調整を廃止すれば、今でさえも下落を続けている生産者米価は更なる下落を招くんじゃないかと。いかがですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 今回の米政策の見直しでございますが、先ほどから大臣の方からるる御答弁させていただきますように、やはり水田活用の直接支払交付金を充実しまして、数量払いの導入といったようなことで飼料米等のインセンティブを高めると。それと、産地交付金も充実しまして、従来五百三十九億円であったわけでございますが、二十六年度では八百四億円ということで、かなりの予算の増額をしておるところでございます。
 また、国によりまして、これまで以上にきめ細かい需給・価格情報あるいはお米の売行き情報、こういったものをきめ細かく提供することにしておりまして、こうしたことによりまして、五年後を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、農業者自らの経営判断によって需要に応じた生産を行える環境を整えていくということにしているところでございます。
 具体的には、今、紙先生の方からいろいろお話あったわけでございますが、やはり米につきましては、いろんな種類の米があるわけでございまして、もう単一のコモディティーというわけじゃないというふうに考えております。家庭用のブランド米でありましたら、需要の三割を占める中食あるいは外食用米の需要等がありまして、こうした多様なニーズに応じた生産、流通を進めるということで、私ども、業務用に適したお米を欲している外食事業者のためにマッチングといったようなことも現在やっているところでございますし、さらに、集荷業者あるいは卸業者の皆さんでできるだけ複数年契約といったものを提携していただくような試みも今進めているところでございまして、こうしたことによりまして安定的な生産、流通の実現を図っていくというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 安定的な生産、流通と言うんですけれども、いろいろなことをやって餌米作ったり多様な用途に基づいてと言うんだけど、私が一番言いたいのは、生産者米価が下落するでしょうと、全体として低くなっていくでしょうということですよ。それはもう絶対止められない流れになっているんじゃないですか。
 昨年、生産調整の廃止が突然打ち出されて衝撃が走ったと。きっかけは、産業競争力会議の新浪さんですね、ローソンの会長の意見ですよ。新浪氏は、減反は価格を維持する仕組みだ、価格コントロールすることがあったら徹底的に究明しようと思っていると。ちょっと何か聞くと脅しに聞こえるような話なんですよね。生産者は価格安定を求めているんですよ。やっぱり少しでも高く売りたいわけですよね。だけど、どんどん下がっていくと。上げちゃ駄目なんだという話をしているわけですよ。もっと下げなきゃいけないと言っているんですよ。これは圧力を掛けていると。
 十月二十四日に出した意見書では、三年後に生産調整を廃止すると要求しているわけです。これを受けて、結局五年後に廃止することを決めたわけじゃないですか。国民の主食である米の需給と価格の安定をどう図るのかという国民的な議論だってないわけですよ。
 大臣、なぜ、まともな国民的な議論もすることなく、生産調整を廃止せよという、こういう要求を取り入れたんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 二十四年の十二月の衆議院選挙の選挙公約とも関連しまして、これは自民党の選挙公約ですが、経営所得安定対策の見直し、それから多面的機能に着目した日本型直接支払、これを公約をしてきたわけでございますので、昨年二月から時間を掛けて議論が進められてきたところでございます。この検討は当然米の生産調整を含む米政策と大きな関係がございますので、我が省においても与党と一緒になって時間を掛けて検討をずっと重ねてきたところでございます。
 産業競争力会議での御議論は今お触れになっていただいたわけですが、そこのみならず、政府・与党における今申し上げたような時間を掛けた議論、慎重な検討を踏まえて生産調整の見直し、正確に申し上げますと、五年後を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、国が策定する需給見通し等を踏まえつつ生産者や集荷業者・団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行える状況になるよう、行政、生産者団体、現場が一体となって取り組むと、これが正式な決定でございますが、こういう生産調整の見直しを決定をさせていただいたところであります。

○紙智子君 ともかく国民的な議論もなしに規制改革会議で議論して、それをやっていくということ自体が本当にひどい話だなと思うんです。
 農水省は、生産調整を廃止して、今後は麦、大豆、飼料米など需要がある作物の生産を振興するとしているわけです。そして、主食用米の需要量が平均して約八万トンのペースで減少していると。飼料米は主食用米からの転作作物として有望で、潜在的な利用可能量は四百五十万トン程度あるというふうに言っているわけですよね。
 そこで、主食用米の需要が年間八万トン減少しているという理由をちょっと簡潔に説明してください。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 減少の原因でございますが、一つは、やはり食生活が欧米化あるいは多様化したほか、あるいは単身世帯の増加などによりまして食の簡便化志向が進展したこと。それと、やはり高齢化等によりまして一人当たりの摂取熱量が減少傾向にあるといったようなことによるものと考えているところでございます。

○紙智子君 私は確かにそれもあるかもしれないと思うんだけれども、言っていないこともありますよね。外食の関係は全然触れておられないんですけれども、約八百万トンある主食用米のうち、三百万トンを外食・中食産業が占めているんですよ。八百万トンのうち三百万トンを外食・中食産業が占めているわけですよ。家庭用が六割で、外食、中食が四割と言われていますよね。
 日本べんとう振興協会は、仕入れる精米価格というのは一キロ三百円前後から三百五十円前後に値上がりすると経営が赤字になると。それで、日本炊飯協会の会長さんは、二十三年、二十四年産の米の高騰を受けてコスト高に対応しなきゃいけないというので、個食量、一人一人が買う、消費する量ですね、この個食量の減量に追い込まれたと。節約した米の量は年間八万トン、外食産業が年間で三十万トンと推測されているということなんですね。
 外食産業で年間三十万トン、需要の減少というのは外食、中食の影響が大きいということなんじゃないですか。いかがですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 今先生の方から御指摘ございましたように、中食、外食向けの米の需要量につきましては、現在では全体需要量の約三分の一程度というふうに考えております。
 それで、今先生の方からお話ございましたように、平成二十四年産米が価格が高いといったようなことから、中食あるいは外食事業者の中には米の使用量、弁当の量を少し減らすといったような動きも見られたというふうにも聞いておりまして、これが主食用米の需要減少の一因になったというふうには考えているところでございます。
 このように、やはり中食あるいは外食のニーズに合ったお米の供給といったものが非常に大事かというふうに思っておるところでございますが、外食のお米につきましても、こだわりの高品質、高価格帯の米のニーズから、やはり業態やメニューに応じた一定の品質を有して手頃な価格の米に対するニーズが出てきておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、こうしたニーズに的確に応えるよう現在いろいろなマッチング等の諸事業を行っているところであります。

○紙智子君 外食、中食は米価が上がると一品当たりの米の使用量を減らすわけですね。報道では、回転ずしに使う米は一貫二十グラムから十八グラムに減らしたといいます。
 それから、ふるさとネットというところがコンビニのおにぎりの量目調査をしているんですね。これは、例えばセブンイレブンとかローソン、ファミリーマート、デイリーマート、シーチキンマヨネーズのおにぎりで調べているんですけれども、これで見ますと、米価が高騰するとおにぎりの量目を減らして、価格が下がると元に戻すコンビニが多いようです。
 ところが、ローソンは違うんですよね。ローソンの会長の新浪さんは産業競争力会議で農政改革を主導しているんですけれども、ローソンの量目は、二〇〇五年が百十一グラム、米価が上がった二〇〇九年には百六グラムにして、今年は米価が下がっているんですけれども百四グラムと。ちょっと細かいようですけれども、ちりが積もれば山となるんですね。更に減らしていると。
 これ、ちょっとどうかと、感想を、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) よくお調べになったなと、こういうふうに思いますが、個社のそれぞれの戦略といいますか、どういうものを作って、どういうふうにお出しして、どういう値段にして、それをどういうふうに流通させて、最終的に消費者がそれをどういうふうに評価をされるかと、こういうことであろうかと、こういうふうに思いますので、私の立場からそれがいい悪いというような評価は避けさせていただきたいと思います。

○紙智子君 いや、それじゃちょっと困るんですよね。それでもって、だから、さっきから言われているように、八万トンずっと減り続けているということを理由にしているわけですけど、実際にはこういうことがあるわけだから指導しなきゃいけないですよね。米の需要減少を自らつくり出しながら、自分たちの都合がいい農政改革を要求しているんじゃないかと思うんです。企業の社会的な責任が問われているというふうに思いますよ。農水省は、米の消費が減っている原因を食生活の変化などに一般化せずに、こうした実態も含めて国民にしっかり知らせて、企業の社会的責任を問うことが大事だというふうに思います。
 農水省は、生産調整を廃止して、生産者が生産数量目標に頼らず自らの判断で需要に応じた生産が行われるように環境を整備するというふうに言われるんですけれども、この環境とは、環境整備というのはどういうことをいうのでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) 今回の米政策の見直しにおきまして、昨年十一月に農林水産業・地域の活力創造本部で決定いたしました制度設計の全体像というのがございまして、その中で、需要に応じた生産を推進するため、水田活用の直接支払交付金の充実、中食、外食等のニーズに応じた生産と安定取引の一層の推進、きめ細かい需給・価格情報、販売進捗・在庫情報の提供等の環境整備を進めるというふうにしたところでございます。
 この環境でございますが、この意味するところは、五年後を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、国が策定する需給見通し等を踏まえつつ生産者や集荷業者・団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行われるような環境を指しており、こうした環境が整うよう各般の施策を講じながら生産者、現場の取組を強化していくというものでございまして、具体的には、先ほども申し上げましたが、水田活用の直接支払交付金の充実、数量払いの導入、また産地交付金も充実しまして地域の創意工夫を生かした産地づくりを進めるほか、国によりますきめ細かい需給・価格情報、販売進捗・在庫情報等の提供等のこうした環境整備を進めることとしているところでございます。

○紙智子君 きめ細かい情報を流してということを言うんですけれども、生産調整を廃止をして、農業者は年末から春先にかけて国の情報に基づいて農業者の判断で自由に作付けできるようになるというふうに言われるんですけれども、同じ情報を基に、例えばどこそこ産の、北海道だったら北海道のゆめぴりかが幾ら幾らになりそうだという話を聞いて、どこにシフトするかということを考えているときに、その情報を見て同じ方向に切り替えるということだってあり得るんじゃないかと。そうすると、そこに殺到してしまったらなかなかうまく調整することだって難しいんじゃないかと思うんですよ。
 つまり、数万人もの農業者が米作りに走れば過剰になるし、ほかの作物に向かえば不足するし、自由にといっても、これ生産者を市場競争に駆り立てることになって大きなリスクを負うことになるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) そこは、まさに先ほど大臣からの答弁がありましたように、それぞれの生産者におきまして、需要に応じた、価格動向等も踏まえた生産というものが大事かと思っておりまして、一つには、自信のある農家でありましたら自分での直接販売といったこともあるでしょうし、なかなかそうした情報や何かを取りにくい、あるいは判断しにくいというようなところはまさに農協系統の出番といったようなことがありまして、そうしたものがいろいろと交ざり合わせながら需要に応じた米の生産というものが実現していくんじゃないかというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 いや、そういうふうに言われるんですけど、本当にうまくいくというふうに確信持って言えます。自信持っていますか。本当にそういうふうになると思いますか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 佐藤一雄君) まさに今回の米政策の見直しにつきましては、五年を目途ということで一定の期間をいただいております。その間に我々といたしましては、毎年毎年情報提供のあれを進化させまして、しっかり生産現場が対応できるようにフォローしていくと。先ほど大臣から話がございましたように、生産現場とキャッチボールをしながらこうした理念を実現していくと、こういうふうに考えているところでございます。

○紙智子君 生産現場とキャッチボールしながらと、とてもすごくいい言葉なんですけれども、今まで国は生産目標数量を配分して国、自治体、団体挙げて生産調整しても、米の需給と価格は不安定で混乱しているわけですよね、今までだって。昨年の三月の食料・農業・農村政策審議会の食糧部会で、委員からは、加工用米が不足して輸入米や古米の使用につながる、一部企業は外国産米の調達をしているなどと意見が出ているわけです。農水省は、一番大事なのは生産者サイドと需要サイドのより安定的、長期的な関係をしっかりつくっていくことだと、そのために役所としても支援するというふうに言っているわけですよね。
 農業は気候条件に大きく左右されるわけですよ。その時々、毎年毎年違うわけですね。それなのに農業者の判断で自由に作れと言われたって、価格が安定する保証があるとは思えないんですね。ですから、私は国がしっかりやっぱり需給についても価格についても安定するような責任を持たなきゃいけないだろうというふうに思います。
 そのことを最後に強く申し上げまして、ちょっと時間になりましたので、今回また終わって次にということで、終わります。
 ありがとうございました。