<第186回国会 2014年4月22日 農林水産委員会>


日豪EPA合意は畜産農家に深刻な影響が出ることを告発

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 日豪EPAの基本合意についてまずお聞きをしたいと思います。
 今回の基本合意を受けて、日本自動車工業会会長の豊田章男氏は、大筋合意したことを歓迎する、自動車業界としても、本協定を生かし、お客様のニーズに合った商品、サービスをより幅広く提供するという談話を出されました。一方、北海道の農業団体は、これにより、道産牛肉の価格の低下など本道の牛肉生産や酪農などに大きな影響が及ぶことが懸念されると見解を表明しました。
 これまで、農産物の輸入自由化の歴史でいうと、自動車などの工業製品の輸出のために日本農業が犠牲になるという歴史が再び繰り返されようとしているわけです。農林水産大臣として、このようなことについてやむを得ないと考えているのかどうか、まずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) この日豪EPAでございますが、この四月、二〇〇七年に交渉を開始して以来、大輸出国であります、いわゆるケアンズ・グループの中心でありますオーストラリアと、向こうの要求は関税撤廃でございました、全品目について。これに対して我々は、決議を踏まえて、政府一体となって、交渉期限を定めず、粘り強く全力で交渉を行ってきたというところでございます。
 まず、米については関税撤廃等の対象から除外、食糧用麦、それから精製糖、一般粗糖、バター、脱粉については再協議と、こういう一定の柔軟性を得ております。牛肉についても、先ほど申し上げましたように、冷蔵、冷凍、四%の税率差、セーフガードそれから長期の関税率削減期間ということで一定の柔軟性が得られまして、国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となったと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 私が今お聞きしたのは、これまでもそうだったんですけれども、自動車などの工業製品の輸出のために日本農業が犠牲になるというようなことを仕方がないと思うかどうかというふうに聞いたんです。

○国務大臣(林芳正君) したがって、今申し上げましたように、今回、牛肉についても国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束になったと、こういう認識でございますので、犠牲になったという認識ではないということでございます。

○紙智子君 両立し得るというふうにおっしゃるんですけれども、私は、何を根拠にしておっしゃっているのかよく分からないわけですよね。
 今し方もちょっと議論ありましたけれども、やはり貿易というのはもちろん大事なところはあるけれども、今回やっぱり非常に問題になるのは、工業製品と同列視して、それで食料や農業について、こっちが良ければこっちは少し低くなっても、全体それで均衡取れて、国民、日本の利益になるかどうかという考え方じゃないと思うんですよ。
 食料、農業をどう位置付けるのかというのは、これは国の在り方に関わる基本的な問題で、やっぱり位置付けの問題というのは非常に大事だし、農林水産委員会というのはやっぱりそのことをしっかりと発信していく委員会なんじゃないかと思うわけですね。
 そこに立って更にちょっとお聞きしますけれども、今回の合意内容を見ると、極めて日本の酪農、畜産に厳しいものがあるというのが分かるわけです。冷凍牛肉の関税率は、締結後二年間で一〇%も引き下げられると。冷蔵牛肉の関税率も、締結後二年間で七%も引き下げられるわけです。
 このことについて、豪州の、オーストラリアの方の食肉畜産生産事業団がどう言っているかというと、こう言っています。豪州産冷凍及び冷蔵牛肉への関税削減は前倒し的に実施されます。つまり大幅な引下げが協定後の最初の数年間で導入されることになります。また重要なことは、豪州産冷凍牛肉に関わる関税は協定一年目に八%、冷蔵牛肉においては同じく一年目に六%引き下げられます。これは日豪貿易協定発効の最初の年に貿易環境に大幅な変化がもたらされることを意味していますというふうに言っているわけですよ。極めてこれ端的に述べているんですね。
 これが今回の日豪EPAの本当の意味じゃないかと、日本の酪農、畜産に深刻な打撃を与えるというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(林芳正君) 既に発表させていただいておりますように、この牛肉については段階的に関税を削減し、冷凍については十八年目に一九・五%まで削減、冷蔵については十五年目に二三・五%まで削減と。
 一年目に三〇・五、二年目に二八・五、三年目に二七・五、三年目二七・五%から十二年目二五・〇%まで直線的に削減、十二年目二五・〇から十八年目一九・五まで直線的に削減と、これが冷凍でございます。それから、冷蔵は、一年目三二・五、それから二年目三一・五、三年目三〇・五、三年目三〇・五から十五年目まで二三・五%まで直線的に削減と、こういうことでございますので、その最初のところを、どなたか今お触れになった方はおっしゃっておられるんだろうと、こういうふうに思いますが、先ほど申し上げましたように、こういう長期間にわたって削減ということに加えて、一定量を超えた場合には譲許税率を引き上げて元の三八・五%に戻すセーフガードを措置したところでございます。

○紙智子君 長期間掛けて段階的に下げるから影響が少ないということなんですか。この豪州の方が言っているのは、最初の一、二年の間、数年の間に大きく掛けるんだと、そこで大分変化が出るんだという話をされているわけですよ。
 しかも、今、セーフガードがあるという話をしたんですけれども、セーフガードによって価格下落は止められるんでしょうか。価格下落は止められないと思いますよ。その影響というのは、いや、止められるというふうにお考えでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げましたように、一年目、二年目、三年目と三年目以降、差を付けておるというのは申し上げたとおりでございます。
 セーフガードの内容でございますけれども、先ほど申し上げましたように発動の基準というのがございまして、初年度、冷凍については十九・五万トン、十年目に二十一・〇万トンと、こういうことでございます。冷蔵については十三・〇を十年目に十四・五万トンと、こういうことでございます。
 ちなみに、冷蔵の豪州からの輸入は二十四年度が十二・七ということでございますから、もうほぼそれと同じ水準でセーフガードが掛かっているということでございます。したがいまして、このセーフガードによって関税率が元に戻ると、こういうことでございます。
 どういう影響が出るかというのは、先ほど申し上げてまいりましたように、貿易の動向、これは需給によって随分変わってくると、こういうふうに思いますし、また為替の動向によっても変わってくるものでございます。したがって、どういう影響が出るか注視をしながら、必要があれば必要な対策を検討したいと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 今の説明を聞いていても誰も分からないと思いますよ。数字ただ並べて、これからいろいろな動向によってしか分からないんだと、無責任な話だと思うんですね。私は、セーフガードをやったところで価格下落には歯止めは掛けられないと思いますよ。間違いなくこれ響いてくるんですね。
 問題は、関税の引下げによる冷凍牛肉とこの冷蔵牛肉の価格の下落ということですよ。締結した直後、二年間で約一〇%の関税下げですから、その分オーストラリア産の安い牛肉が輸入されてくる、したがって日本の価格が下落することになるわけです。当然、競合しているホルスタインの国産牛肉の価格も下落せざるを得なくなると。国内の畜産、酪農生産者は、この協定締結の初年度から二年間でこういう価格下落に直面することになるわけです。
 今でも、肥育農家の人もそれから酪農経営の人も非常に厳しい経営状況で頑張っているわけですよね。そういう中で、こういう価格下落圧力に耐えられなくなったら、これは離農に追い込まれる農業者がどんどん増えてくるということが想定されるわけです。さらに、冷凍牛肉は十八年後には関税が半減する、冷蔵牛肉は十五年目に一五%の削減が決められていますから、肥育農家、酪農生産者にとってみれば全く明るい展望が見えないわけですよ。そうすると、新たに投資をしようとかそういう気にもならないわけで、離農圧力がもっと強まって、経営の負債が、これ以上傷が広がる前にじゃ撤退するかということにならざるを得なくなるじゃないかと。そうならないという保証があるんでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) これは繰り返しになりますが、やはりこれをこういうふうに決めさせていただいたわけでございます。したがって、今御説明したように、どういう影響が出るかというのは実際の貿易の動向、為替の動向、こういうものによって影響されるわけでございますので、今の段階でこういうふうになるということを逆に断定的に申し上げることがいろんな影響を与えかねないと、こういうふうにも思っておりますので、そこはしっかりと留意しつつ、必要に応じて対策を検討していきたいと、こういうふうに申し上げているところでございます。

○紙智子君 ですから、先ほど来も議論になっていますけど、どうなるか分からない、これからだという話自体が本当に無責任なんですよね。今までだって、農水省は、もしこうなった場合どうなるかということを試算したりしてきたわけですよ。
 そうやって、そういう影響が出たら困るから対応策も考えなきゃいけないと、やっていないけれども、その先に立って今までは試算して出してきたと思いますよ、その影響については。
 今回、乳製品も、プロセスチーズの原料用のナチュラルチーズの関税割当てで、四千トンから結局二十年間掛けて二万トンに、五倍にするというわけですよね。それから、下ろしチーズ及び粉チーズ、これ二百トンから十年掛けて一千トン、これも五倍にすると。アイスクリームも百八十トンから十年掛けて二千トン、十一倍にすると。こうやって関税割当てを導入することになったわけですよね、これ決めているわけですよね。
 これらは直接、日本の酪農経営にマイナスの影響を与えるわけです。日本におけるプロセスチーズの原料用のナチュラルチーズの生産量というのは、二〇一二年度で二万五千七十一トンです。ですから、結局、二十年間でプロセスチーズの原料用国産ナチュラルチーズというのは、全てこれオーストラリア産に置き換わることになるわけです。
 結局、日本の酪農チーズの生産からの撤退に日本が追い込まれかねないということです。それが日本の酪農生産者に非常に深刻な影響を与えるということは、これ明確なんですね。
大臣、この影響について、本来やっぱりちゃんと、どうなるかという予想も含めて、どうなるか分からないじゃなくて、調べるべきじゃないんですか。

○国務大臣(林芳正君) ちょっと今のお話は御通告をいただいておりませんでしたが、先ほど佐藤生産局長から御答弁させていただいたように、今回の大筋合意、今後の需要の伸びが見込まれるナチュラルチーズについては、対象をプロセスチーズ原料用それからシュレッドチーズ原料用に限定をすると。それから、国内のナチュラルチーズ生産の伸びを妨げない範囲で、プロセスチーズ原料用として四千トンから二十年掛けて二万トン、シュレッドチーズ原料用として一千トンから十年掛けて五千トンの関割り、関税割当てを設定したところでございます。さらに、国産ナチュラルチーズを一定割合で使用するということを枠内輸入の要件とすると、こういう合意になっておるところでございまして、したがって、国内の生乳生産に影響を及ぼさない範囲の合意内容となっていると、こういうふうに考えております。

○紙智子君 今おっしゃったことが、大丈夫なんだという保証にはならないわけですよ。やっぱりどうなるか分からないでそう言っているというのは、本当に私は農水省は無責任だなというように思うわけです。
それで、日本の生産量と同じ量に置き換えられていくということは、生産者にとってはやっぱり、何か今回はぎりぎりで柔軟性を確保できたなんという話あるけれども、そういう話ではないんですね。生産者の立場に立って考えたら、ぎりぎりで何とか確保できたという意識にはないですよ。もう本当にぎりぎりのところで今までやってきているわけで、それを、農水大臣が、ぎりぎりのところで柔軟性を確保できたなんていう話はやっぱりすべきじゃないなと思うわけですよね。
 重要な問題はやっぱり国会決議でありまして、これも何度もこの委員会でも質問してきましたけれども、米、それから小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目は除外又は再協議の対象となるように政府一体となって交渉することと。それから、万一我が国の重要品目の柔軟性について十分配慮が得られないときは、交渉の中断を含めて厳しい姿勢で臨むと。
 だから、この重要性について十分配慮がされないと言っているわけだけれども、これ、されていると思わないわけですけど、この間の政府の答弁は、柔軟性がある程度確保できたなんて話をしているんだけれども、これは違うと。やっぱり国会決議見たときには、今までちょっと私が述べてきたように、これは明確に反するというふうに思うわけです。
 牛肉は、除外どころか関税の引下げで畜産や酪農に深刻な影響を与えるし、乳製品では、プロセスチーズの原料用のナチュラルチーズの生産が丸ごとオーストラリアに置き換わろうとしているわけで、これで国会決議に反しませんというのであれば、国会決議そのものが一体何のためにやったのかと、ないに等しくなると思うんですね。
 やっぱり、議会制民主主義ということでそれぞれ衆参で議論して、それを踏まえて作ったものを根底から壊すことになりやしないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この決議との関係性についても何度かここでも御答弁してきたところでございますが、まず決議の一号、それから三号の関係でございます。
 二〇〇七年四月の交渉開始以来、豪州、これは農産物の大輸出国でありますが、全品目の関税撤廃要求に対して、衆参両院の農林水産委員会の決議を踏まえ、政府一体となって交渉期限を定めずに粘り強く全力で交渉を行ってきたということでございます。この三号の関係でございますが、米については除外、それから麦、精製糖、一般粗糖、バター、脱脂粉乳については将来の見直し、再協議と、こういう豪州側から一定の柔軟性を得たため、今回大筋合意に至ったと、こういうところでございます。
 それから牛肉でございますが、これは先ほどと繰り返しになりますけれども、一号と三号関係で、冷蔵と冷凍の間に、初めてでございますが、四%の税率差を設けたということ、それから効果的なセーフガードを付けたと、それから長期の関税率削減期間を確保したという一定の柔軟性が得られまして、国内畜産業の健全な発展と両立する関税削減の約束となったところでございます。
 それからもう一つ、世界で五番目の農産物輸入先である豪州側に対しまして、食料の安定供給を図るための規定を設けることができたわけでございます。重要な食料について、輸出国内の生産が不足した場合にも輸出規制を新設、維持しないように努めることを確認するものでございまして、今後、中長期的に国内生産、備蓄、輸入を組み合わせて国民に対する食料の安定供給を図っていくと。これは基本計画、基本法にも書いてある観点でございますが、そういう観点からも意義のあるものと、こういうふうに考えております。
 決議の四号でございますが、今後、日豪EPA締結の効果、影響に留意しながら、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、農畜産業について構造改革や生産性の向上による競争力の強化、これを推進するなど農林水産政策の改革を進めてまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 全然かみ合っていないなと思いながら聞いているんですけど、私は、やっぱり農林水産大臣なわけですよね、それで農業を本当に守ろうというふうに思っているんだろうかというふうに思うんですよ、この間のいろいろ発言を聞いていると。
 最初は決議を守るとおっしゃっていたわけですよ。それがいつの間にか国会決議を踏まえてというふうに変わってきたんですね、踏まえてと。その次に、いや、国会決議の整合性はどうなるんだという話になったら、今度は政府としてはこの決議の評価についてはいろいろ言う立場にないと、衆参の議会でそれは評価してもらいたいと、つまり批准のときに決めればいいんだという話になってきているわけですよ。それって、農水大臣の立場なのかなと思うんですね。
 私、今まで二〇〇一年から国会に来て、ずっと農林水産委員会だったんですけれども、一回数えてみたことがあるんですけれども、十七、八人替わっているんですよ。それで、やっぱりいろんな農水大臣おられたけれども、ここぞというときにはやっぱり閣内でちゃんと発言して、守ろうということで頑張っていたと思うんですね。私は、率直に言いまして、林大臣は確かに温厚で人柄もいいという話もありましたけれども、でも本当に農業をそれこそ政治生命を懸けて守る気があるのかということでいうと、そこが見えないんですよ。
 何を発言しているんだろうかなというふうにいつも率直に思っています。
 それで、これは四月八日の北海道新聞の社説で、ちょっと長いんですけれども、読ませてもらいます。
 日豪EPAが交渉入りする直前、衆参両院の農林水産委員会は決議で、米、麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目を協定から除外し、交渉期限を定めないことを政府に求めた。牛肉の関税引下げはもとより、アボット氏の来日を事実上の期限とし、合意を急いだことも決議に違反していると。
 しかも、この決議は、環太平洋経済連携協定、TPP交渉に際し、自民党や衆参農林水産委員会が重要五農産物を聖域とする決議のひな形となったものだと。オーストラリアは、日本の牛肉市場で米国と激しいシェア争いを繰り広げている。一方、米国はTPP交渉で日本の聖域を認めず、関税撤廃を求める姿勢を崩さない。甘利TPP担当大臣は、TPP日米交渉を加速させないと米国産牛肉がオーストラリア産に劣後すると述べて、今回の関税引下げをTPPで米国から譲歩を引き出す手段にしようとしていると。これでは、牛肉を含む重要五農産品はもはや聖域ではなく、駆け引きの材料にすぎない。政府・与党の信用は損なわれ、国内の農業者は営農の展望を描けなくなる。聖域の約束をなし崩しにほごにするようなやり方は断じて許されないというふうに言っているんです。
 私、まさしくそのとおりだというふうに思うんですけれども、大臣、どう受け止めますか。

○国務大臣(林芳正君) ちょっと最初、聞き損じまして、どなたがおっしゃっていたか、ちょっと聞き損じましたが、いろんな方がいろんな……

○紙智子君 北海道新聞の社説。

○国務大臣(林芳正君) はい。報道からも、いろんな報道もありますし、いろんな御意見もあると、こういうふうに存じております。
 紙委員からも、一部お褒めもいただいたような気がいたしましたが、何をやっているんだと、こういうことでございますが、結果が全てでございますので、しっかりと御意見は御意見として受け止めたいと思います。

○紙智子君 それで、国会決議に対する安倍総理の対応というのは、TPP交渉でも更にひどいことになっていると思います。
 現在、TPPの日米交渉が行われていますけれども、マスコミ報道では、米は現在のミニマムアクセス米以外に主食用米として米国枠を設けて輸入を認めると、牛肉関税は一桁台まで認めるなどの合意があったとの報道がされています。これは、まさに国会決議に抵触するばかりか、日本農業に深刻な打撃を与えるもので、こういう妥協案が平然と提示される現在の日米TPP交渉というのは国会決議に背信するんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 報道はいろいろこの委員会でも、また今日午前中の衆議院の委員会でも御質疑があったところでございますが、どの報道を指しておられるか、ちょっと今判然といたしませんけれども、まだTPPの交渉においては、いわゆる農産物の市場アクセスについて何も決まっていないというのが事実でございます。

○紙智子君 甘利担当大臣が先週の金曜日に日米TPP交渉から帰国をして、その後、官邸に報告に行かれて、安倍総理と菅官房長官と甘利担当大臣の三者で今後の交渉について協議を行ったことが報道されています。
 林農水大臣はその協議には呼ばれていませんよね。国会決議どころか、農水相自身が交渉の当事者から外されているんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) それも報道でございますので一々コメントいたしませんけれども、しっかりと政府一体となって交渉を進めておるところでございます。

○紙智子君 私は、やっぱり今の現状を打開するためには、農水大臣は、私を入れなかったら駄目だと、協議の中に、大きく農業問題に関わるものなんだから、その三者だけでやるんじゃなくて私を入れなきゃ駄目だというふうにむしろ言っていかなきゃいけないんだと思いますよ。そうじゃなかったら本当に守られないと思うわけですね。
 それで、米国政府は、TPPは関税撤廃であるという原則を堅持して今までもやってきています。
 これは、米国政府に限らず、最初のスタートをした四か国もそうですよね。例外なき関税撤廃が元々の原則だったわけで、四か国もそうだし、そのほかのTPP交渉の参加国もその立場を維持してきていると。今回、日米二国間交渉においても、フロマン代表もその原則の確認を甘利担当大臣に求めて、甘利さんは激高したということが、まあこれも報道されていたわけですけれどもね。元々それが実はTPPの原則で、当たり前のことだったわけです。だから、私たちも何度も今まで、そのTPP交渉に参加するべきじゃないというふうに言ってきましたし、国会決議も重要五品目の除外ないしその再協議をしなきゃいけないんだと明記をして、それができないときは撤退をするべきだと明記しているわけですよ。
 ところが、日本政府はこの間、様々な妥協案を用意して、そしてこの交渉に臨んできたと。その妥協案自体が日本の農業に深刻な打撃を与えるというのはこれ日豪EPAでももう端的に示されているわけで、何でそういう状況が明らかになっているのに撤退を検討できないんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(林芳正君) 日豪EPAの話は先ほど申し上げたとおりでございますが、TPP交渉については、今、報道を基に御質問をされておられますが、報道についてコメントすることは差し控えたいと思いますし、この交渉についてまだ決まったことは何もないと、こういう状況でございます。
 オバマ大統領が来られるというのは、これはもう決まっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、大統領の訪日が一つの節目であることは事実でありますけれども、交渉に期限を設けて何かやるということではないということを申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 二十四日、もう間もなくですけれども、日米首脳会談で、TPP合意を優先して安倍総理が牛肉関税の一桁台への引下げや豚肉の差額関税制度の撤廃に応じかねない、そういう危険が指摘されている中で、自民党の石破幹事長は、有権者に公約をたがえたと判断されれば政権の正当性が揺らぐというふうに言って、関税を撤廃するような交渉は断じて行わないというふうにおっしゃっているわけですね。
 林大臣は、この日米首脳会談で、安倍総理はTPP合意を優先して妥協することをさせないというふうに断言できるでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この決議においては、農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすると、こういうふうに書かれております。この国会決議も踏まえて、重要五品目の聖域の確保も含め国益を守り抜くように期限を定めずに粘り強く交渉を行っているところでありますので、現段階で交渉からの撤退について申し上げることは適当ではないと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 もうはっきりと農水大臣としては言ってほしかったわけですけれども、余りそういうことではなかったと。
 それで、昨日、先ほど小川議員も触れられましたけれども、北海道では、農業だけではなくてオール北海道で、医師会や生協や商工会や、道民会議というのがあって、この五団体が共同で記者会見を開いてアピールを発表しました。道経連の近藤会長は、こういうふうに言っています。TPP参加となれば、独立国家として最低限確保すべき食料の自給力を失い、取り返しの付かない甚大な影響を受けるおそれがあるというふうに指摘をして、工業優先で農業が脇に置かれることがあってはならないというふうに指摘しているんですね。
 それから、JA中央会の飛田会長も、TPP参加で中心的な役割を担ってきた専業農家が一番打撃を受ける、大変な危機感を持っている、安直な合意はすべきではないというふうに語っているわけです。
もう時間なので、私は、やっぱり農業も、農業だけじゃないですね、地域も含めて、これを崩壊させるようなTPP、断固としてこれはもう即時撤退をするべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。