<第186回国会 2014年3月19日 予算委員会>


TPPからの撤退を/安倍「農政改革」は所得激減策/家族経営への支援を

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 TPP問題と安倍政権の農政改革について質問いたします。
 TPPについては、依然として国民の間に大きな不安があります。交渉参加国の間の矛盾も大きく、大筋合意にも至らなかったのに、安倍総理は相変わらず秘密交渉を盾に情報を隠したまま交渉を行っています。二月に行われましたシンガポールのTPP閣僚会議の結果について、甘利大臣は、決裂も漂流もせず、次に向けての確かな一歩になったと答弁をされておりますけれども、米国を始め、日本に対してあくまで関税撤廃求められているんじゃないでしょうか。

○国務大臣(甘利明君) まず、我が国はTPPに参加するに当たって、総理が訪米をして日米会談をして前提条件の確認をいたしました。つまり、最初から全てを聖域としないで関税撤廃を前提とするか否かということでありました。その点につきましては、日米間で確認できたことは、両国ともそれぞれセンシティビティーというのを持っている、最初から全てを聖域とせずに交渉に臨むということではないけれども、しかし、そのセンシティビティーというのは交渉の結果として出てくるものであるということでありました。
 でありますから、我が方としては、党の公約、そして衆参農水委員会での決議を踏まえて、その決議と整合性を取れるようにすべく、我が国のセンシティビティーを最終的交渉結果として勝ち取れるように、今厳しい交渉をしているというところでございます。

○紙智子君 ですから、今の答弁というのは、結局、いろいろ確認があったと言うけれども、それ自体がもうそうじゃなくなってきているということなわけですよ。
 先日、ワシントンで日米の実務者協議が開かれましたけれども、進展もなく、大江首席交渉官代理は頂上が見えないくらい遠いと表現していますし、アメリカの通商代表部も、進展は限定的と、大きな隔たりが残されたと言っていますし、引き続きそういう中で日本に関税の完全撤廃を迫っているわけです。米国の五つの農業団体も十三日には、日本に改めて農産物の関税撤廃を求めたと伝えられているわけですね。
 そもそも、TPPの原則というのは、四か国、スタートしたときの四か国、ブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランド、このP4協定が出発点なわけです。全ての関税が撤廃だと、例外なき関税撤廃が原則だったわけですよ。それを基にして始まっているから、だから我々は始めからこれは参加すべきでないということを繰り返し主張してきたわけです。
 ところが、あなた方は、昨年総理は、二月にオバマ大統領と共同声明を発表して、聖域なき関税撤廃が前提でないことを確認したと、確認したと言ったわけです。我が党は交渉力を持っているんだと、いかようにでもなるんだよというようなことを豪語して交渉に入ったと。しかし、その結果どうなっているか。今の状況は、アメリカは聖域どころか今また関税撤廃を求めてきているわけですよ。ですから、国益を守るどころか、これは日本の経済と国民生活に取り返しの付かない重大な打撃を与えかねない危険な状況に立ち入らせているわけです。
 総理、あなたの責任、この重大さを認識するのであれば、国会決議にあるとおりに、守れないならば脱退を辞さずということが書いてあるわけですけれども、これを今こそ判断すべきときではないですか。いかがですか、総理、次は総理です。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) このTPP交渉は、関税だけではなくてルールについての交渉も行っているわけでございます。知財の問題あるいは電子商取引もございますし、国有化企業等々の問題もあるわけでございます。同時にまた、関税におきましても各国それぞれが様々な事情を抱えているのは事実でございまして、その中におきまして、各国は自国の国益を守るための交渉を続けている。当然、日本も日本の守るべき国益、それをしっかりと守るために交渉をしているところでございます。
 その中におきまして、今の段階で撤退するしないということを私から申し上げるのは控えさせていただいた方がいいと、こう考えているところでございまして、実り多きものにしていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 もちろん関税だけじゃないということは百も承知ですよ。知的所有権の問題や環境問題や、いろいろありますよ、労働問題もありますよ。
 重大なのは、総理が、日本の農業を守り、食を守ることを約束する、国民との約束をたがえてはならないと、こういうふうに繰り返し言いながら、農産物の関税をめぐる協議では、米国などの出方によっては重要五品目についても譲歩する考えを示唆していると、このことです。甘利大臣は、一つ残らず微動だにしないというのでは交渉にならないという答弁をしたんですね。私はもうびっくりしましたよ。これは国会決議に明らかに反することです。
 国会決議では、先ほども議論がありましたけれども、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるように除外又は再協議の対象とすること、十年を超える期間を掛けた段階的な関税撤廃も含め認めないこと、残留農薬や食品添加物の基準、遺伝子組換えの食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制や原産地表示など、まあそのほかにもありますけれども、こういう守るべきものを列挙して、それが守れないときは脱退も辞さないと。ところが、政府は、妥結を優先する余り、なし崩しにする答弁をこの間やっているわけです。私、絶対許せないですよ、これは。
 最近の答弁でいえば、決議は衆参の議会の意思だから政府としては答える立場にないなんていうことを平気でおっしゃる。関税撤廃の原則に反するこの例外措置の具体的な扱いや定義は個々の交渉の中で決められるというふうな答弁をしているわけですけど、今まで何て言ったかというと、国会決議は守りますですよ。守ります守りますと言って、それが今になって、その国会決議については我々は何も言えないんだと、議会で決めたことだと。こんな理屈が通るんだったら、国会決議を守る公約なんていうのは意味がなくなってしまうじゃないですか。本当にひどいと思いませんか。

○国務大臣(甘利明君) そんなにひどいことを言っているつもりはないんですけれども。
 国会決議は、私からも、そして総理からも、しっかり受け止めますという答弁は何度もさせていただいています。だから苦労しているんでありまして、最初から国会決議守らない、守るつもりがないんだったら交渉なんというのはもっと、特に日米交渉なんてもっと簡単に済んでいるわけでありまして、いろんな国から農産品五品目について要求が来ます、それについて厳しい交渉をしているからこれまで長引いているわけであります。
 それから、国会の決議の中身について、その解釈については、それは国会で決議されたわけでありますから、政府の側が勝手にこれはこうですよというような都合のいい解釈はしていないわけでありまして、その解釈は決議をされた国会に委ねるということは、これはかなり誠実な答弁だというふうに思っております。
 五品目について、微動だにしないことでは云々という発言を確かに私はいたしましたけれども、それについて、我が党の幹事長も、貿易実績が全くないということまで云々ということを言っているわけではないという表現もありましたように、決議の中でも、我々は、ここまでの協議であるならばその結果は国会決議と抵触しないで整合性を取るんではないかということを探しながら協議をしているわけであります。
 もちろん、最終的に政府が合意した中身について判断されるのは国会であります。ここら辺まで頑張ったんだったらそれは評価しようという評価が下るのか、あるいはこれでは我々は納得できないとされるのか、それは最終的に議会で評価をいただくと。その評価に堪え得るように今タフな交渉を続けているというところであります。

○紙智子君 全然誠実な答弁なんかじゃないですよ。国民との公約はどうだったんですか。選挙のときにそのことを言ってきたわけですよ。公約を守りますと。努力すれば済むんですか、崩れてしまっても。それは無責任というものですよ。
 五百八十六品目の話も今ちらっとされましたけど、それで、結局、国会決議との整合性なんという話が今出てきているわけですよ。最初の頃、そんな話全然してなかったですよ。実績がないものについては譲っても構わないんじゃないかなんという話、一切なかったですから。まあ西川さんが言われたんだけど。
 とにかく、いずれにしても、どんどんと言いぶりが変わってきているわけですね。そうやって整合性なんという話になってきているということ自体、そんないいかげんな理屈が通るわけがない。国民は絶対納得できないですよ。
 米国は、米国の企業利益にとって邪魔なものは命や健康を守る仕組みでも一切許さないという立場です。TPPの本質はそういうところに現れているというふうに思うんですね。もうけのためにはもうどんなことだってやると。だから、マレーシアやオーストラリアを始めとして各国の根強い反発があるというのは当然だと思います。
 ですから、重ねて、直ちにこれは撤退をすることを強く求めておきたいと思います。
 次に、安倍政権の農政改革についてお聞きします。
 政府の農林水産業・地域活力創造プランというのがありますけれども、ここには、農林水産業、農山漁村の現場を取り巻く状況は厳しさを増していると書いています。基幹的農業従事者の平均年齢が現在六十六歳、耕作放棄地は二十年で二倍に増えて、過疎化の進展で農業、農村の再生は待ったなしと指摘されています。確かに、販売農家は百七十四万人だったんだけれども、うち七十歳以上は八十一万人と高齢化が進んでいます。
 なぜこのような厳しい状況になったのか、その原因について、安倍総理はどのように認識をされているでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 農業従事者の減少、高齢化、今委員から御指摘があったようにこれは進展をしておりまして、我が国の農業所得はこの二十年間で三・二兆円、これは平成二十二年度の数字でございますが、三・二兆円に半減するということで、深刻な状況……(発言する者あり)この原因でございますが、これは先ほど徳永先生のときにもちょっとお話ししたように、国民の食生活が大きく変化をする一方で、例えば米のように、経営感覚を持って農業者が自ら作物を選択する環境の整備が遅れまして、需要の高い作物への生産転換、これが円滑に進められなかったこと……(発言する者あり)いやいや、深刻な、原因ということで申し上げておりますが、担い手への農地集積が遅れた、それから、安価な輸入農産物との価格競争で農産物の価格が低迷する中で、消費者の視点を踏まえた農作物の高付加価値化が実現できなかったことと、そしてもう一つ、農村においては、就業機会の減少等に伴って都市部へ人口流出が進んでいると、こういう事情があったというふうに認識しております。

○紙智子君 要するに、厳しい状況になっていて改革しなきゃいけないという話になっているんだけれども、なぜそうなったのかということの原因を聞いたわけですよね。
 それで、私は、原因ははっきりしていると思うんです。それは、自民党農政によって輸入自由化路線が取り入れられて、市場任せにして、米価などの農産物価格を引き下げて農家の所得を減らしてきたからだと思います。もうからない農業、生活できるだけの収益が見込めない農業では、これは子供に後は継がせられないと、現役の農家の皆さんが自分の世代でもう農家は終わりだというふうに考えてきた。そういう状況をつくってきたのは、一時政権交代はありつつも、基本的には自民党政権の下での農政によってつくられてきたんじゃないかと思うんです。
 そこで、ちょっとパネルを見ていただきたいんですけれども、(資料提示)日本の農業所得は、アメリカそしてEU諸国などと比べても下降の一途をたどってきたというのは明白です。これは、一九九〇年を一〇〇として二〇一〇年の農業所得の総額の伸びをグラフにしたものです。アメリカは一〇九と増えているわけですね、少し。EUは九九・五で横ばい。日本は五八・九へと減少の一途をたどっていると。この二十年間、日本では半減近く減っているわけです。
 これで農業者が営農意欲を持てると思いますか。

○国務大臣(林芳正君) まさに半減したということは先ほど申し上げたとおりでございまして、その要因も述べたとおりでありますが、一方、アメリカ、EUのこの図を示していただいておりますが、まず、これ、EUは九〇年、これは脚注に小さく書かれておられますが、十一か国だったんですね。十一か国の一〇〇に対して二〇一〇年はEUは二十七か国になっております。二十七か国で九九・五と、こういうことが客観的な事実としてあるということを申し上げておきたいと思います。
 それから、アメリカの場合でございますが、世界の穀物需要が増加して小麦を中心にした穀物の価格が上昇傾向ということで、アメリカの場合の上昇は多くはこういう要因ではないかと、こういうふうに思っております。
 また、これ、円で作られておられると思いますが、この間に為替が大分変動しておるという要素も加味していかなければならないということを申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 今いろいろとお述べになったんですけれども、もう一つ、ちょっとパネルを見てください。
 諸外国の例はこうだこうだという話もあったんですけれども、問題は日本の農政がどうだったのかと。自民党の農政がやっぱり原因であるということは、私は一目瞭然だと思うんですね。
 このパネル見ますと、一般歳出総額に占める農林水産関係予算の比率の推移ということなんですけれども、一九八〇年、このときは占める割合は一一・七%、農林水産予算ですね、それがどんどんどんどん減り続けていって、二〇一四年四・一%に、半分以下になっているわけです。
 つまり、農業に掛ける予算を縮小させてきた中で、農家の所得を確保する必要な予算も確保できずに農政の貧困を生んだということ、輸入自由化路線で価格下げ競争の中にさらしてきたということの責任が大きい。そう思われませんか。

○国務大臣(林芳正君) 予算委員会でこの予算額を取り上げていただくということは、激励をいただいているのかなと思いながらも聞かせていただきましたが、昭和五十七年度に三兆七千十億円でピークでございましたが、増減を繰り返しながら減少傾向であるということはおっしゃるとおりでございます。
 大きなフレームで見ていただきますと、少子高齢化が進む中でやはり社会保障費というのがかなり増大をしてきておりまして、農林水産予算にとどまらず、社会保障費以外の財源、これが大変抑制されてきたということで、例えば公共事業費についても財政再建の観点からずっと抑制をされてきたところでございます。
 こういう厳しい情勢の中で、担い手の育成確保、それから担い手への農地集積、農地の大区画化、経営所得安定対策等の直接支払等々、その時々の課題に応じて対応してきたところでございます。
 私は、就任以来、二十五年度予算については、攻めの農政をやっていくという観点で十三年ぶりにこの減少傾向に歯止めを掛けまして、対前年度比で増額を確保をいたしました。二十六年度予算案、今まさに御審議をいただいておるわけですが、これも昨年十二月に決めました活力創造プラン、これを実行するための施策を盛り込んで、二年連続で増額を確保させていただきました。今後も予算の確保には努力をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 そういうふうに言われても、現場では疑心暗鬼というのがあるんですね。安倍政権がやろうとしている農政改革は五つばかり、四つか五つか分かりませんけど、あるわけです。それで、全部は紹介しませんけれども、一つ言うと、米の直接支払交付金を半減をして、二〇一七年に打切りにすると。それから、生産調整を廃止する。減反廃止という話ですね。それから、飼料用米を水田フル活用の中心にして交付金を出す。そのほかにもありますけど、などあるわけですね。
 それで、農業者の皆さんと懇談をしますと、まず最初に出てくるのが米の直接支払の半減についてなんですよ。富山県でシンポジウムがありまして行きましたら、米の交付金、十アール当たり今まで一万五千円だったのが七千五百円に半減されたら大幅な減収になってしまう、経営が続かないと、こういう声が出されます。それで、大規模な営農組合の方が交付金半減されたらどうなるかと計算したら、五百七十五万円減収になるという話が紹介されました。それに米の価格が下がっていて、例えば今度六十キロ一万円になったとすると、もう六百九十万円の減収になるんだと。そこに今度三%の消費税ということになったら、もう本当に来年の決算が恐ろしいという声が出ていました。
 皆さんが、担い手だと思っている人たち自身がそういう声を上げているわけなんですよ。どうですか、その辺は。

○国務大臣(林芳正君) まさに先ほど、この農業全体の額が半分になったという原因の一つに、例えば米のように、経営感覚を持って農業者が自ら作物を選択する環境の整備が遅れ、需要の高い作物への生産転換が円滑に進められなかったと。こういう反省を申し上げたところでございまして、まさに今回の改革は、こういう反省に立って四つの改革を同時に進めていこうということで、米の直接支払交付金についても、今までは小規模な農業者も含めて一律に支給をしてきたと。こういう構造政策と矛盾する面ありましたので、これを減額する一方で、飼料用米等々の戦略作物の助成の充実、それから地域別に使っていただく産地交付金の拡充、これらを同時にやっていこうということ。そして、さらに加えて、日本型直接支払制度ということで、食用の米にとどまらず、農地を維持していただく方、これは畑地であっても草地であってもやっていただく方にはきちっとお支払いすると。こういうものをセットで大きく変えていこうということをさせていただいているところでございます。

○紙智子君 いろいろとこういうことをやっているという話はあるんですけれども、しかし、実際に行ってみると、どこでも不安が出ているということは認識すべきだと思うんです。
 二番目に出てくる話としては、やっぱり生産調整、減反の見直しと。これらは、これからは減反をやめて自由に米を作れるかのように言うけれども、実際は主食用米から飼料米に作れというふうな押し付けがあるということも出されました。全く自由なんかじゃないよと、飼料米を押し付けしないというふうに言えるのかというような声も出ているわけですね。
 また、こういう声もあります。農業者は、やっぱり今までブランド米、質の良い、おいしい主食用米を生産するということに意欲を持って取り組んできたと。ところが、正直言うと、飼料米を作れと言われても、ちょっとモチベーションが下がると。餌米なわけですからね。今までおいしい、質のいいと思っていたやつがそうじゃないものにと言われると、ちょっと下がるという、正直言ってという話もありました。
 所得倍増計画と言うけれども、実際にはこれ所得激減政策じゃないのか、農業潰しじゃないのかと、そして亡国の政治じゃないのかと、こういう声が出されているんですけれども、これに対して何かありますか。

○国務大臣(林芳正君) 何かあるというよりもたくさんあるんでございますが。
 米の改革ですね、徳永委員とも先ほどやらせていただきましたけれども、まず一つ、この餌米を強制するというのは、我々もう少しちゃんと説明をこれからもしていこうと思っておりますが、せっかく今日はテレビが入っておりますので、これはそういうことはないということを申し上げておきたいと思います。
 これはあくまで選択制でございまして、この餌米を作っていただくと八万円プラスマイナス二・五万円の単価の数量払いにしたものが支払われるようになると。しかし、それは麦であれ大豆であれ主食用の米であれ、それぞれの単価が決まっておりますので、その中で、集落営農であれ、個別であれ集落であれ、水田フル活用ビジョンというのをつくっていただいて、大事な生産装置である水田をなるべくフル活用して、そしてフル活用する中でアウトプット、トータルの売上げを最大限にしていただくということをそれぞれ考えていただこうと、こういうことにしたわけでございます。
 まさにこの餌米、なかなかプライドがというのはよく分かるんです。しかし一方で、主食用の米、これ先ほど申し上げましたように、残念ながら毎年八万トンずつ需要が減っていると。これは厳然たる事実でありますので、このことに対応してきちっと需要のある作物を水田をフル活用して作ってもらえると、このことに全力を挙げて取り組んでまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 我々も飼料米については別に否定していないわけですけれども、ただ、今、一遍に作れと言われても、実際にはその需要がないというか、受入先がないと。
 富山なんかの例でいっても、若い人はもう既に、鶏のために米を食べさせてやるということを既に手掛けていて、だから、これ以上増やせと言われても、もういっぱいいっぱいだと。あとは作ってもはけていかないんじゃないかと、心配だと、そういう声もあって、そのことが一つと。
 それから、飼料米を作ると十アール当たり十万五千円という数字があるんだけど、独り歩きしているんですけれども、これは実際には精いっぱい取れてその額なので、実際にはもっと低くなるということで、現状よりも下がる可能性があるということも現場では問題になっていました。そういう形で、今実際に政府が打ち出しているけれども、現場では非常にいろんな疑問や不安があるということです。
 それで、現場でどういう声が出ているかというと、今回の農政改革について、農業を見て農民と地域を見ない政策だというふうに言われているんですよ。なぜこんな農政になるのか。それは安倍総理の発言にも表れているというふうに私は思います。
 安倍総理は、一月二十二日のスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムの会議で、四十年以上続いてきた米の減反を廃止します、民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を需要の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきますと演説をされた。企業の要求を優先して、抵抗する者は岩盤として破壊しようとする。改革どころか、そこに住んで地域を支えてきた農業者と地域を潰すことになるんじゃありませんか、安倍総理。これは安倍総理の発言なので。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) むしろ、農業に取り組んでいる皆さんが自らの経営判断を生かしながら更に収入を増やしていくことが可能な、そういう仕組みに変えていきたいというのが私たちのこの改革でございまして、お米の生産調整の見直しにおきましては、これまで行政が配分する米の生産数量目標に従って農業者が作物を作っていたものを、農業者がマーケットを見ながら自らの経営判断で作物を作れるようにするわけでございまして、また、需要のある麦や大豆、飼料用米等の生産振興を図ることによって、言わば農地のフル活用を図り、食料自給力の維持向上を図っていくことにしているわけでございます。
 まさに、このような目標に進んでいくことによって、さらに六次産業化等々も図りながら、農業、農村全体の所得を増やしていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 やっぱり顔が見えないわけですよ。安倍総理の演説には地域を支える家族経営を守るという発想がないんじゃないかと。このところ、何かというと、小規模農業で競争力がない、非効率だと、企業が参入して大規模化すれば競争力が付いて進むかのような強調がされるんですけれども、しかし世界の大勢は家族経営が圧倒的なんですね。
 今ちょっとパネルを示しておりますので見ていただきたいんですけれども、世界の圧倒的多数の国は、これ家族経営を中心にして経営が成り立ってきたということです。全農家に占める家族経営の割合ですけれども、そこにちょっと小さく書いてありますけれども、上の方ですね、家族経営というのは家族労働を基本とする農業経営、企業経営というのは雇用労働を基本とする農業経営ということで、グリーンとグレーで分けてあります。日本は九八・二%が家族経営、アメリカでさえも八六・五%、イギリスで九二・六%、ドイツは九三・四%と。だから、圧倒的に家族経営で支えられてきたわけです。
 農業は、食料生産だけでなくて、多面的機能として国土保全や景観の維持、雇用創出、文化伝承等の機能があると。そして、こういう農業の担い手として家族経営は重要な役割を担ってきたわけですよね。これを安倍総理はどのように御覧になっていますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさに家族経営が地域においては地域の文化や伝統も継承してきた、これはまさに共産党の主張というよりも自民党の主張ではないかというふうに思うわけでございまして、この家族経営は私たちもしっかりと支援をしていきたいと、こう思っている次第でございます。
 しかし同時に、私の地元もそうなんですが、家族といっても、残念ながらもうおじいちゃん、おばあちゃんだけで、息子さんたちはなかなか、他の仕事を持っていて地元にいないという状況が生まれているわけでございまして、近い将来、そこは既にもう状況としては耕作がなされない状況になっていくという可能性のある中において、それをまた、もちろん家族等でそれを引き受けようという方がおられれば新たな担い手としてやっていただきたいわけでありますが、経営体において、例えば企業という経営体において土地を集約した形で高い生産性を持って取り組むという人たちがいれば、それはそれで私は活用していきたいと、こう考えている次第でございまして、私たちの政策が家族経営をこれは否定しているということでは当然ないということは申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 それであったら、家族経営を支援する政策はあるんでしょうか。現場を歩きますと、やっぱり今度の農業改革の中では家族経営がどうなるかということが心配だという声があるんですよ。
 今年は国連が定めた国際家族農業年です。これについて、どういう政府として意義や位置付けがあるのか、政府としてどう取り組もうとしているのかということを御紹介ください。

○国務大臣(林芳正君) 国際連合において二〇一一年の総会で、家族農業が持続可能な食料生産に果たす重要な役割を周知するため、二〇一四年を国際家族農業年、インターナショナル・イヤー・オブ・ファミリー・ファーミングということに決定をしたところであります。
 我が国の食料・農業・農村基本法においても、農業経営の法人化とともに、家族農業経営の活性化を図るということが明記をされております。
 一月十八日でございますが、ベルリン農業大臣サミットに出席をいたしまして、その際の閣僚コミュニケ、それからEUのチオロシュ農業・農村開発担当委員、これ閣僚に当たる方ですが、その方との会談において、家族農業の重要性に対する認識を共有させていただいたところであります。
 この国際家族農業年は、FAO、国連食糧農業機関が中心となって、家族農業をテーマとした式典それから国際会議、そういうところで認識を深めていこうと、こういうことになっておりますので、我が国としても、こうした国際的な取組、積極的に参画してまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 今御紹介いただいたんですけれども、国際家族農業年は、二〇〇八年の食料危機以来、市場競争によって非効率な経営、つまり小規模とか家族経営が淘汰されて、効率的と言われるような経営がもてはやされてきたんだけれども、しかし、市場原理のモデルでは世界的な食料危機に対処できないということが明らかとなって、同時に、この家族農業の有する自然的、文化的、社会的な様々な価値への再評価がされたと、国際家族農業年を設定することになったということですよね。
 我が国こそ、やっぱり家族農業年にふさわしい位置付けと取組が求められているというふうに思うんです。ところが、政府はこの家族農業年の予算も付けていないんじゃないかと思うんですけれども、そんなことでいいんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 国際連合は二〇一一年の国連総会において、家族農業が持続可能な食料生産に果たす重要な役割を広く周知するため二〇一四年を国際家族農業年に決定したところでありまして、我が国の食料・農業・農村基本法においても、農業経営の法人化とともに家族農業経営の活性化を図るとされております。
 国際家族農業年に対しては、FAOが中心となって家族農業をテーマとした式典や国際会議を開催することとしており、政府としては、こうした国際的な取組に積極的に参画してまいりたいと考えております。

○紙智子君 やはり、今後の日本が行くべき方向はどういう方向なのかということでは非常に大事な議論が今されているときだと思いますし、しっかりと農業の位置付けをやって食料自給率を高めていくと、太い方針を持って、そしてやっぱり担い手を育てていくという方向が必要だということで、我が党としてはそのために全力を尽くす決意を述べまして、質問を終わります。