<第184回国会 2013年12月5日 農林水産委員会>


農地中間管理機構法案第2回目質問

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 前回に引き続いてなんですけれども、ちょっとまだ声がなかなか出にくいので、少し抑えてというか、ゆっくりやらせていただきます。
 前回の質問のときにお聞きしたんですけれども、その中で幾つか大臣の明確な答弁がなかったので、改めてお聞きします。
 日本再興戦略で打ち出された全農地面積の八割を担い手に集約し、米生産コストを四割削減する、さらに法人経営体数を五万法人にする、この根拠についてお聞きしたんです。数的なことをいろいろ言われたんですけれども、中身について、例えば何で八割というふうにしているのか、それから、例えば米生産コスト四割削減というのは何で四割なのか、三割じゃ駄目なのかとか、あるいは法人経営の体数をどうして五万法人というふうになったのか、その根拠について聞かせてほしいということを言いました。もう一度お願いします。
○国務大臣(林芳正君) 前回は詳しい御通告がなかったもので、少しざくっとした答弁になっていたかもしれませんが、今のそれぞれの数字の根拠ということでございますけれども、それぞれ農地の集積、米の生産コスト、法人経営体数について再興戦略で目標を決めておるところでございます。
 まず、担い手への農地集積でございますが、これまでの実は流動化をやってきた結果として、既に担い手の利用面積、これは二百二十六万ヘクタールになっておりまして、既に五割でございます。この担い手という概念でございますが、個人経営や法人経営で認定農業者となっている皆さんと、それから集落営農が含まれておりまして、二十七万経営体となっております。
 実は、過去十年間で三割から五割まで来ておりまして、今度は中間管理機構も整備をすることによって、今後十年間でその過去のトレンドを少し超えて一・五倍にしていこうということで、現状から三割増加の八割ということを目標とさせていただいたということでございます。
 それから次に、米の生産コストでございますが、二十三年産で見ますと、全国平均で米の生産費が約一万六千円です、これは六十キロ当たりでございますが。今後十年間でこの四割削減の九千六百円に目標を設定しております。規模拡大が進んだ作付面積が十五ヘクタール以上の層、これは既に生産コストが一万一千円台でございます、全国平均一万六千円に対してですね。それから、大区画化が進んでいる層では一万円台になっているということでございますので、今後この担い手への農地集積、集約化を進めていくということに加えて、産業界の努力も反映して、例えばコストの方ですね、コストというか、外から調達する肥料や農薬、農機具等の資材コスト、これを低減していこうということ。それに加えて、大規模経営になってきますと、省力栽培技術それから品種の開発、導入と、こういうものを推進していくことによって更に担い手の生産コストを引き下げることが可能であると、こういうふうに考えまして九千六百円という目標にさせていただいたということでございます。
 それから、法人経営体の多くは家族経営や集落営農、これが発展して法人化したものでございますが、この法人経営体の数についてもこの十年で実は二倍以上に増加しておりまして、一万二千五百法人に平成二十二年にはなっているところでございます。
 これも今回の法案で、担い手への農地集積それから法人に対する出資制度も併せて改善をさせていただいておりますので、やはりこの増加ペースを加速させるということで、十年間で現状の約四倍、過去十年間の二倍のペースということを目標に定めまして五万法人ということを目標にさせていただいたと、こういうことでございます。
○紙智子君 改めて聞いて、いや本当にそういうことでいけるのかなというか、実際現場でこういうふうにコストを下げ、十年掛けてという話なんですけれども、一俵の値段がですか、一万六千円を九千六百円台にということで計算をしたということなども含めて、法人の数もこの間こういうふうに増えているからということなんだけど、そんなふうに単純にいくのかどうかというのは非常に甚だ疑問に思っております、まずは。
 それからさらに、前回、農業委員会について、法案の第十九条のところで、市町村は、一又は二の協力を行う場合において必要があると認めるときは、農業委員会の意見を聴くものとすることとして、この必須事項から外したわけですよね。その理由についてお聞きをしたわけですけれども、そうすると、農業委員会というのは市町村の中の独立行政委員会でございますので、地方分権の観点で、国の方でこの市町村の意向にかかわらず意見を義務付けると、こういうことは適当でないとして、法律事項として義務付けることはできないというふうにおっしゃっているわけなんですね。
 今までちょっと聞かなかったんですけど、急にこの間これを聞いたというふうに思ったわけですけれども、もしそういう論理ということになると、これ農業委員会は農林水産省の農地法の関連立法では地方自治体に対して意見聴取の法的な義務付けをすることができなくなるということにならないのかと。
 これはすごく重大なというか、大変な、もう大転換にかかわるような大変なことを大臣は御答弁されたわけなんですけど、ちょっとまずその前に、大臣に聞く前に、内閣法制局の方いらしていると思うので、内閣法制局にちょっとお聞きします。今の問題、いかがでしょうか。
○政府参考人(北川哲也君) 農地中間管理事業の推進に関する法律案第十九条第三項についてのお尋ねでございますが、同項の規定は、同条第一項それから同条第二項の規定を受けまして、市町村が農地中間管理機構に対し必要な協力を行う場合において必要があると認めるときに農業委員会の意見を聴くものとするものでございます。第三項におきまして必要があると認めるときと規定しておりますのは、農地中間管理機構が市町村に求める協力につきましては様々なものが想定されます中で、あらゆる協力につきまして市町村に対して農業委員会への意見聴取を義務付けることは合理的ではないためでございます。
 このように、必要があると認めるときとすることは、地方公共団体への義務付けを最小限にするという地方分権の観点からも適切であるというふうに考えてございます。
○紙智子君 今回のこの中間機構つくるに当たって、議論はされているわけですか。法制局の中で話合いはされたんですか。何か議論をしていなかったというふうに聞いているんですけど。
○政府参考人(北川哲也君) この第十九条第三項の規定につきましては、ただいま申し上げましたように、地方分権の観点から見ても合理性があるというふうに考えておりますが、法案審査の過程におきまして、農林水産省の担当者から、特に地方分権の観点からこのような規定にするという説明は受けてございません。
○紙智子君 だから、特に受けていなかったわけですよね。ほかのことも含めて、全体にあまねくそれが適用されるということになると大問題でありまして、全く今までのあれをはみ出すことになるわけで、これは本当に重大だというふうに思うわけです。
 それで、農地法でも農業経営基盤強化促進法でも同様の規定というのは幾らでもあるわけです。例えば、農地法の四条では、都道府県知事が第一項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。それから、農地法の二十条では、都道府県知事が第一項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。それから、農地法の四十七条、都道府県知事は、前条の規定による調査をしたときは、その調査に係る土地等を国が買収することの適否について都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。農業経営基盤強化法の五条は、都道府県知事は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ都道府県農業会議の意見を聴かなければならないなど、これは今後、農地法の改正が想定されている中で、大臣、農業委員会というのは市町村の中の独立行政法人でございますから、地方分権の観点で、国の方で地方自治体の意向にかかわらず意見聴取を義務付けると、こういうことは適当でないというような、こういう発言になりますと、それがもう全部広がってしまうということになりかねないわけですよ。
 それで、こういうことを理由にして法律事項として義務付けることができないということになったら大変だというふうに思うんですけど、もう一度、その点について、大臣、お答えください。
○国務大臣(林芳正君) 農業委員会の権限についてということだと思いますが、先ほどまさに引いていただきました農地法四条と今回の基本的な違いというのは、四条の場合は農地転用そのものでございまして、この農地の出し手と受け手、すなわち民間の相互間の権利移動について農業委員会が行政庁として関与していると、こういうケースでございます。
 今回のこの法案というのは、こういう場合の、民間同士の出し手と受け手の間の移動ということではなくて、農地中間管理機構という公的な機関が農地利用配分計画というものを作るわけですが、これは自らが、機構自身が公的な主体として貸付けを行うと、こういうところでございまして、さらに、この機構が行う貸付けについては、法律それから事業規程でルールがあらかじめ決まっているということでございまして、機構自身が計画を作成するのが本来の在り方だと、こういうふうに考えておりまして、その旨を十八条に規定をさせていただいたところでございます。その上で、この機構の監督権限を持つ都道府県知事の認可公告により法的な効果が生じると、こういう立て付けになっております。
 こういう原則の下で事業を効率的、効果的に行うために、この配分計画の作成に際して、人・農地プランの作成主体である市町村に協力を求めたり、原案作成を要請できるというふうに十九条で定めておるわけでございまして、その中で、市町村の対応の仕方はこの機構からの要請内容に応じて区々になるだろうということで、農業委員会に聴く必要があるかどうかは要請の内容に応じて、先ほど法制局からも答弁がありましたが、市町村内部で判断をすべきものと、こういうふうに考えておりまして、農業委員会の意見を聴くことを法的に義務付けるのはこの間御答弁したように行き過ぎだと、こういう整理でございます。
○紙智子君 ということは、全体にじゃなくて、一般化しないというか、この問題に限って今回そういう言いぶりだということなんですね。
○国務大臣(林芳正君) したがって、これは公的機関が間に入って貸付けをしてもらう、貸出しをするということでこういう立て付けにしておりますので、そうでない、先ほど申し上げましたように、民間同士の貸出し若しくは権利移動、売買と、こういうことになってくれば農地法の原則に戻ると、こういうことでございます。
○紙智子君 ちょっとまだ釈然としないですけれども、次に行きます。
 法案について、前回に続いて聞きたいんですけれども、今回の農地中間管理機構法案の検討が行われているときに、市町村の期待は、やっぱりこれで遊休農地の対策や耕作放棄地の対策が進展するんじゃないかという、この期待が大きいわけです。しかし、産業競争力会議は、生産性の向上につながらない業務を機構は行うべきでなく、機構が専ら耕作放棄地対策として用いられることのないように留意する、あるいは、耕作放棄地を借り入れる場合は、農地として再生した後、貸付けの見込みがあるところに限定する。すなわち、本機構は耕作放棄地対策として創設されるものではないとして、この農地中間管理機構が耕作放棄地対策としてフルに機能することを牽制すると言っているわけですよね。現に農地中間管理機構法案の目的規定に遊休農地対策や耕作放棄地対策が全く言及されていないんですが、そのため市町村の期待も今薄れつつあるというのが現状です。
 大臣、この産業競争力会議の主張を受けて目的規定から遊休農地対策を外したのかどうか、この点について明らかにしてください。
○国務大臣(林芳正君) この担い手への農地集積、それから担い手ごとの農地の集約化、これは大変に大事であり加速化をしていかなければならないというのはまず申し上げておかなければいけませんが、しかし、今委員がおっしゃっていただきましたように、農業者の高齢化等に伴って耕作放棄地が拡大していることも事実でございますので、この発生防止とそれから早期解消ということも極めて重要な課題だと、こういうふうに思っております。こうした課題を解決するための画期的な手法として関連二法案を提出をさせていただいたところでありまして、機構は遊休農地の発生防止、解消等を進めることも目的というふうにしております。
 遊休農地対策は、従来から農地法の中に位置付けられておりました。したがって、今回も農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案の方で農地法を改正して遊休農地対策に機構を位置付けておりまして、具体的には、遊休農地の所有者に対して機構に貸す意向があるかどうかを調査することから始めまして機構への貸付けを誘導するということ、それから最終的には都道府県知事の裁定で機構に利用権が設定されるようにすると、こういった措置を講じておるところでございます。
 したがって、こちらの法律で手当てをしておる関係で、農地中間管理事業の推進に関する法律の方の目的の一条には具体的には遊休農地対策という文言では明記をしておりませんが、「新たに農業経営を営もうとする者の参入の促進等による農用地の利用の効率化及び高度化の促進」、この中に含まれていると、こういうふうに考えております。
○紙智子君 「新たに」という範囲になるんですか、対策。ということなんですか、今までやっているところじゃなくて、新たにする人になるんですかね。
○国務大臣(林芳正君) 新たに農業経営を営もうとする者の参入の促進等で、「等」のところでこれを読むと、こういう趣旨でございます。
○紙智子君 ちょっとそれももう一つよく分からないんですけれども。
 農地中間管理権を取得する農用地の基準で見ると、農地中間管理事業規程において認可要件として、農用地等として利用することが著しく困難であるものを対象に含まない、そのほかの農用地等の形状又は性質に照らして適切と認められるものという、今大臣がおっしゃったことだと思うんだけれども、非常に抽象的な表現なわけですね。場合によっては、耕作放棄地はほとんど対象にならない可能性も出てくるわけです。本来、日本の食料自給率を引き上げるためには、この農地面積を拡大する、耕作放棄地を抜本的に解消するということがやっぱり必要なことだと、今までもそういうふうに言ってきたと思うんですけど。
 この中間管理機構のかかわりと農林水産省の耕作放棄地の抜本解消の対策についてどうするのかというのは問われているわけですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) おっしゃられましたように、耕作放棄地は二十八万ヘクタール、これは農業委員会の利用状況調査でございますが、その中で再生利用可能なものが十五万ヘクタール、再生利用が困難なものが十三万ヘクタールということでございます。
 例えば、もう森林のようになってしまって、なかなか今からこれを手を入れても難しいということになりますと借り受けないということで、八条三項三号にそういうふうに規定しておるわけでございますが、まさにこの再生利用が困難な耕作放棄地、十三万ヘクタールがここに該当をするんだろうと、こういうふうに思っております。
 一方、そこまで行っていないけれども耕作放棄地になっているこの十五万ヘクタールについては借受けを行うことが可能でございまして、機構は耕作放棄地解消にも貢献をするものと、こういうふうに考えております。
○紙智子君 先ほど参考人の質疑をやったときに、実際に今経営やられている方からも出ていた話ですけれども、この農地中間管理機構法の問題点の一つとして挙げられているのが、農地中間管理機構法案の第二十条の賃借権又は使用貸借権の解除の問題、農業者が離農して農地を機構に貸し付けても、相当の期間を経過してもなお貸付けを行う見込みがないときは解除できるとしています。離農した農業者に農地を返却されても、もう返却された離農者は機械も売ってしまったという中で途方に暮れるしか手はないわけですね。その点について、こういう離農者に対してどういう対応をされるつもりなのか、明らかにしてください。
○国務大臣(林芳正君) 二十条では、先ほども山田委員と大分、観点は少し違うかもしれませんが、やり取りさせていただきましたが、相当の期間を経過してもなお当該農地の貸付けを行うことができる見込みがない場合には解除できると、こういうふうになっております。
 これは漫然とこの相当期間が、先ほど申し上げたように、経過するのを待って契約を解除しなさいと、こういうことではなくて、その一定の期間内になるべく貸付先が見付かるように真剣に発掘をしなさいと、こういうものを求めているものでございます。したがって、公募して、公募したけど来ませんでしたと、こういうことで終わるのではなくて、ほかの地域の法人経営の方とかリース方式で参入したい企業の方の誘致を行うと、いろんな工夫をして見付けてくると、こういうことが重要であると、こういうふうに考えております。
 相当期間の判断は、機構が地域の事情を踏まえて行うと、こういうことで、先ほどまあ大体二、三年ぐらいではないかなというふうに申し上げましたけれども、仮に出し手との契約で地代や管理費が掛からないと、こういうことであれば解除しないという方法もあるのではないかというふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 幾ら中間管理機構における農地の滞留を防ぐためといっても、離農者に返された農地は、今いろいろ言われたんですけれども、耕作者がいないと新たな耕作放棄地が発生することにつながりかねない問題をはらんでいるわけです。耕作放棄地の抜本解消に機能すればいいんですけど、果たして本当に機能できるのかという、逆に耕作放棄地が発生してしまうんじゃないかということも心配されるわけですね。
 続けて言いますけれども、それから農地中間管理機構は、リース方式による農地集積を原則としていると。その集積の目標というのは、全農地面積の今の五割から八割まで及ぶということですよね。問題は所有権の移転ではなくて、リース方式であるということです。そこで生じるのが相続の問題です。現在の民有林が相続による不在地主になっていて、手の打ちようがない状態になっているわけです。 リースで中間管理機構から貸し出された農地が、相続で不在村の相続人に相続された場合で利用権の継続が困難になったときは、集積した農地はばらばらになりかねないと。現在の農地の所有者が高齢化している中で、こういう事態に直面することというのは避けられないと。そういう事態にどういうふうに対応するのかについて、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 中間管理機構が農地を借り受けますと、その農地について、例えば出した方の方が残念ながら亡くなられたということで相続が発生した場合には、賃貸借契約に基づく権利義務、これも相続をされるということでございますので、この賃貸借契約の契約の期限が到来するまでは、機構は出し手との間では農地を借り受けることが可能ということになります。
 したがって、期限が到来して更新をする場合に初めて相続人との間で改めて協議を行うと、こういうことになるわけでございますが、受け手の方がこれを直接やるのではなくて、機構が出し手と契約関係にあるわけでございますので、機構が手続を行うということになります。相続人が農地を分割して相続した場合でも、その所在が確認できていれば相続人に契約を継続していただけるように機構から働きかけを行うということが可能であるというふうに考えておりますし、相続人の所在が確知できない場合には公告手続を経て最終的には都道府県知事の裁定により機構に利用権を設定することができると、農地法四十三条、改正後の四十三条でそういうふうにしておるところでございます。
○紙智子君 ここのところももっと、何というかな、本当に具体的にどうなのかなというのは、もっとやっぱり議論が必要なところなんだというふうに思うんですけれども。五年程度で見ているわけですから、その間に、じゃ、どういうふうに対応ができるのかと、その間税金がどうなるのかとかいうことなんかもあると思うんですよね。その辺のところももっと深めなきゃいけないというふうに思います。
 それから、農業が家族経営を基本として営まれてこれまで来たわけですけど、営まれるというのは、家族がやっぱり営々と農地を耕作をして、子供がその農地を受け継いで、さらにその孫が農地を受け継いで経営を維持拡大するということに、農業の継続性ということが位置付けられるということを意味しているわけです。今の農業農村というのは、これまでの農産物自由化等、絶えざる農産物価格が下がっていく、こういうことを特徴として、歴代の自民党農政の下で痛め付けられてきたと。とてもではないけれども、もうからない農業を子供には継がせるわけにいかないという形で、本当だったら順調にいけばそうやって受け継いできたんだけど、今はもうなかなか子供には忍びないと。なかなか受け継がせるわけにいかないといって、結局、後継者は都会に出ていくとかいうことで育たないで、高齢化した農業者によって維持される事態になっているというのが現実だと思うんですね。子供は外に出ていってしまっているから、不在村となっていると。
 そういう状況の中で、幾らリース方式で農地の八割を担い手に集約するといっても、この農地所有の問題点というのは解決できないんじゃないかと思うんですけれども、これはどうですか。
○国務大臣(林芳正君) 農業の場合はそれぞれの地域で様々な状況がありますので、一律的にこうだというふうに申し上げるつもりはございませんが、先ほど申し上げましたように、既に担い手が五割というところまで着実に上昇してきているということでございます。
 担い手とか法人と申し上げますと、どうも外から大きな株式会社がやってきてやるというイメージをお持ちなのかもしれませんが、法人というのは、何回も申し上げておりますように、家族経営が大きくなって法人でやっておられるケース、それから集落営農をしっかりとまとめていって、それが集落営農法人になるケースというのは結構ございまして、こういうものがしっかりと地域に根を張ってやっていただいておるということが大事であるというふうに考えておりまして、そういう方々がやっていただいているところを、これで更に人・農地プラン等でお話をして担い手を決めてやっていこうということを促進することによって、先ほどおっしゃっていただきましたけれども、きちっとこれで業として成り立っていくような状況をしっかりつくっていくと。
 やはり、後を継いでやっていこうという方も、見通しのないところにわざわざ今の仕事を辞めて帰っていこうということはなかなか難しい判断だと、こういうふうに思いますので、そういう若い方を中心に、将来に夢を持てるような、こういう状況を何とかつくっていかなければいけないと。その一環がこの中間管理機構であると、こういうふうに御理解をいただければというふうに思っております。
○紙智子君 もちろん、法人が、元々は農家が出発して、それで農業法人なんかをつくって大きくなってきているということや、集落営農で、それこそ地域で本当に話し合いながら、協力し合いながらやっていこうということで、家族を単位にしてやっているという形で来ているという、それが大きくなっているというのは、もちろんそれはよく理解しています。
 先ほど、参考人の方で来られた方たちもそういう方たちが多かったと思うんですけれども、だから、それ自体は別にいいわけですけれども、やっぱり継続性ということで考えたら、その地域にやっぱり住み続けて、そこの地域をつくっていく一員となっていくということだと思うんですよね。
 本当だったらやっぱり若い人たちが、子供や孫なんかが本当だったら出ていかないでやれるというためには、そこで農業生産でやっていけるという、そういう経営の保障というんですかね、価格・所得政策、我が党としてはいつも掲げてきているんですけれども、やっぱりそれでもって家庭を持って子供もつくってやっていけるという、そういう農業がそこにつくれれば、若い人たちが出ていかないでやっていけるんだと思うんですけれども、それをあえて、そういう条件をつくることに本筋を入れなきゃいけないのに、大変な現状をそのままにして外から何か新しいものが来たら、それでうまくいくかというと、そう単純じゃないと、簡単じゃないというふうに思うんですよ。
 そこのやっぱり基本というのかな、継続性を持ってやっていくというためのことを、その仕組みそのものをしっかり考えなきゃいけないのではないかというふうに思うわけですけれども、この点、いかがですか、大臣。
○国務大臣(林芳正君) 珍しくと言うと怒られるかもしれませんが、意見が一致をしておるところでございまして、まさに継続してその地域に根を張っておられる方が中心となってやっていくということは大変大事なことであると、こういうふうに思っております。
 農地法の一条にも、農地については、地域における貴重な資源であるということで、農業上、適正かつ効率的な利用を確保することが権利者には求められておるとともに、地域との調和に配慮した権利取得が求められているところであると、こういうふうに明記をしてございます。
 したがって、今度の中間管理機構が行う貸付けのルールに関しても、法案上、権利設定等を行うための農用地利用配分計画、これを認可するときの要件として、地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれることを求めております。また、地域の農業の健全な発展を旨として公平かつ適正に相手方の選定を行うということも、これ明文化をしております。
 したがって、全く今のままで、一人たりともよそから入ってくることを排除すると、こういうものではありませんけれども、今申し上げたようなルールに従って、しっかりと集落でみんなで一緒にやっていけるようなことを農地法の大原則に基づいて今回も規定をさせていただいたと、こういうことでございます。
○紙智子君 先日、この委員会でみんなで視察に行って、群馬県の甘楽富岡というところに行ったときに農業委員の人たちやいろんな方たちが来ていて、そのときにいろいろ意見を聞いたときに非常に印象に残った言葉があって、新規の担い手はもちろん大事だと、育てなきゃいけないと思うけど、現に支えている、六十代であっても七十代であっても現に支えているところに対して本当にやっていけるように、元気になるような施策をやってほしいということを言われたんですよね。そのことが本当に大事だというふうに思いますし。
 それから、私は今回の法案の審議に当たって福島県に行ったんですけど、福島県でこの法案をどう受け止めているかという話を聞きました。そこで出されたことは、市町村の業務が大変になると。結局いろいろやって大変なことになるんじゃないのかと。市町村の業務が大変になるというのと、特に福島の場合は、原発関連市町村はもうほとんどあれ以来休みなしに、市町村の職員の皆さんも休みなしに働いている状況に置かれていて、それに加えて、今回の農地中間管理機構法で計画原案を市町村が作成することを基本とするというふうにしているわけですから、とても対応できないんじゃないかという指摘がありました。
 これはどのように対応されるでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) この機構は県段階で一つ置こうと、こういうことにしております。したがって、この成果をきちっと出していくためには、市町村、これは人・農地プランも市町村が主体で作っていただいておりますので、密接に連携を取って対応していただくということが必要不可欠であると、こういうふうに考えておりまして、法案でも二十二条で市町村に業務委託できるというふうにしておりますし、それから農地利用配分計画の原案作成、これも市町村に要請でき、それ以外の場合でも市町村に協力を求めるということにしております。
 現実には、ほぼ全ての市町村に業務委託をする、また農地利用配分計画の原案作成、これは先ほどちょっとあった農業委員会に基になるいろんなデータがございますので、そこにいろいろとお聞きをしながら原案作成をしていただくと、こういうことになろうかと、こういうふうに思っております。
 したがって、人・農地プランの作成等々、市町村にやっていただくこと、また今回の業務の中で市町村に委託する場合、人・農地プランの作成は元々市町村本来の業務でありますが、今度の仕事、機構からの業務委託の場合は機構から業務委託料を支払うと、こういうことになりますので、市町村のマンパワーの増強も含めて従来以上の取組を行っていただきたいと考えておるところでございます。
○紙智子君 今マンパワーという話もあって、もちろん人は必要なんだけど、誰でもいいわけじゃないわけですよね。結局は地元に長くかかわってきた農業委員の皆さんに力を借りるとかという形があるわけですよ。だから、本当にそういうところを軽視された場合は、実際には回っていかなくなるんじゃないかという声も実は出されていたということも紹介しておきたいと思います。
 今回の農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部改正で、一つ、農業法人投資育成事業に関する計画について農林水産大臣の承認を受けることができるものとして、投資事業有限責任組合を追加する。二つ目に、日本政策金融公庫は、承認を受けた投資事業有限責任組合が承認事業計画に従って農業法人投資育成事業を営むに必要な資金の出資の業務を行うことができる。三つ目に、農地法の特例の見直しで、今まで認めてこなかった承認会社による農業生産法人の議決権保有を総株主の二分の一未満まで認めることにすると。
 今まで認めてこなかったことをこういう形で認めるなどの改正がされましたけれども、これによって投資ファンドが農業法人に投資することができるようになるばかりか、これによって株式会社がこの農業生産法人への支配力を強めさせることになるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) この投資円滑化法上は、事業計画について農林水産大臣の承認を受けた場合は、投資事業有限責任組合を通じて農業生産法人に対し投資することが可能というふうになっております。一方で、農林水産大臣がこの計画を承認する際には、投資円滑化法で定める農業法人の健全な成長、発展に資するものであるかどうかという要件について厳正に審査をすることになっております。
 投資円滑化法上も、投資事業有限責任組合、いわゆるファンドでございますが、最大で農業生産法人の総議決権の二分の一未満までしか投資ができないということでございますので、農業生産法人への過度の経営関与につながることはないと、こういうふうに思っておりまして、今回の見直しで特段の問題が生じるというふうには考えておらないところでございます。
○紙智子君 今、大臣は二分の一しかというふうにおっしゃったんですけど、これ今までは全く認めていなかったものが二分の一というのは、これもう明らかに大きな影響を受けることになるわけです。
 それで、本来、こういう農地法の改正自身が大変な問題を含んでいると思いまして、農業生産法人の企業支配を結論的にはもう強めていって、ひいてはこれ農業、農村の支配、企業支配、こういうことにつながっていくんじゃないかという非常に強い懸念を持っているわけなんですけれども、最後に、大臣、一言それについてお答えください。
○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げましたように、これは計画承認のときに厳正に農業法人の健全な成長、発展に資するかどうかと、こういう要件で審査をすることになっております。したがって、今回の措置も、どんどんどんどんそういう法人が資金調達をやれることによって伸ばしていこうと、こういうことと委員がおっしゃるような御懸念とのバランスをどこで取るのかと、こういうことだろうと、こういうふうに思っておりますので、しっかりと厳正に審査をすることによって御懸念のことが起こらないようにしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 二日間質問させていただきましたけれども、やっぱり本当にまだまだ懸念の問題というのは解決されないままあり、それも最初に冒頭言いましたけれども、僅かの時間の中で、しかもこういうふうに参加もしていない中で、こういう形で本来採決に至るというのは、私は本当に不本意です。
 本当だったら、次にまたいで、延長するか、あるいは次の国会でやるかということにするべき中身の問題であって、今回、こういう形で採決まで至ろうということなんですけれども、それについては強く遺憾の意を示しまして、質問を終わります。