<第184回国会 2013年12月4日 東日本大震災復興特別委員会>


子ども放射線健康調査を求めたのに対して「発がん性のリスクはない。予算はつけていない」(石原環境相)と答弁。医療・介護の減免復活を求める。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、復興大臣にお聞きいたします。
 子ども・被災者支援法についてですけれども、まずその前に、原発事故の現状についての認識をお聞きしたいと思います。
 民主党政権のときには、原子炉の状態がどうなっているのか分からないし、放射能被害の対応も不十分だったわけですけれども、収束宣言を出して、これは批判を浴びました。政権が交代して、今度、安倍総理が、汚染水はコントロールされている、ブロックされていると、つまり状況は管理されているというふうにおっしゃいました。
 本当に管理されているのか、原子炉は本当に管理されているのか、放射能汚染水は管理されているのかというふうにいえば、放射能汚染水の総量さえはっきりしていないわけです。本当に管理されているというふうに言うのであれば、やっぱりお母さん方や農業者や漁業者がなぜこの不安が収まらない状況なのか、この点について、まず大臣の御認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(根本匠君) 汚染水の問題については経済産業省が担当でありますが、福島第一原発では、貯水タンクからの汚染水漏えいなどの個々の事象は発生しているものの、福島近海での放射性物質の影響は発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルに限定されていると承知をしております。また、外洋においても、福島県沖を含む広いエリアでしっかりモニタリングしているが、基準濃度をはるかに下回る値であると聞いております。こういった状況を踏まえて、汚染水の影響は全体として状況はコントロールされているという総理の発言になっていると認識しております。
○紙智子君 民主党政権のときの収束宣言、それから自民党政権のコントロールされている話、言葉は違うんですけれども、やっぱり安全であるかのような言い方をするというのは、被災者の皆さんから見ると非常に不安を感じるわけですね。それで、福島県の浪江町の町議会は、状況はコントロールされている、影響は港湾内に完全にブロックされている、健康に問題はないと約束するなどと事実に反することを述べたことを無責任な発言だというふうに断罪をして、強く抗議する意見書を全会一致で採択をしました。被災者の気持ちを逆なでするような発言は、私は、これどこでも、予算委員会でも我が党やっていますけれども、撤回すべきだというふうに思います。要求をしておきます。
 その上で、子ども・被災者支援法についてですけれども、私もこの法律の発議者の一人になっておりますけれども、子ども・被災者支援法は、福島を始めとする、福島に限定せずですね、子供たちを放射能被害から守りたいという全国のお母さん、お父さん、皆さんの声と被災地の皆さんの運動、力によってこれは成立した法律だと思っています。
 法律が成立したのは昨年の二〇一二年の六月ですけれども、この基本方針が閣議決定されたのが今年の十月十一日と。ですから、一年四か月もこの基本方針の策定が遅れたわけですけれども、これ、なぜ遅れたんでしょうか。
○国務大臣(根本匠君) 子ども・被災者支援法の基本方針で定めることとされている支援対象地域あるいは一定の基準、これについてはこれまで様々な議論や意見がありました。例えば、子ども・被災者支援法案の国会審議の際には、多様な事情を総合的に勘案して決めていく必要がある、あるいは人々を引き裂いてしまうことにもなりかねないといった議論があったと承知をしております。また、ほかに留意すべき意見として、風評被害がようやく落ち着きつつある中で、放射性物質に関する誤った情報で新たな影響が出ないように配慮してほしいと、こういう様々な意見もありました。さらに、支援対象地域や一定の基準、これについては放射性物質の影響という専門的な内容を含むため、専門的、科学的、技術的観点から検討を行う必要があったものであります。このような点について様々な検討を行うために、基本方針の策定までに一定の時間が掛かりました。
 一方、具体的な被災者支援、これについては今回の基本方針の策定を待つことなく、既に様々な施策を講じてきておりまして、本年三月にはこのような施策を取りまとめた原子力災害による被災者支援施策パッケージを公表しているところであります。
○紙智子君 私は、八月に復興庁に基本方針の策定状況を聞きました。八月ですね。その際、復興庁は、基本方針策定のめどが立っていないと繰り返しおっしゃっていたわけです。しかし、被災者が国の不作為を問う訴訟を起こすと、一転して、基本方針案を策定したとマスコミが報道したんです。それで、そのときも復興庁にそうなんですかというふうに聞きましたら、復興庁は、マスコミ報道は確認できないという返事だったわけです。ところが、その直後、八月三十日に基本方針案を公表したと。全くその点では復興庁の真剣さが率直に言って感じられなかったわけです。
 その姿勢は、パブリックコメントの扱いにも表れたというふうに思っています。基本方針案の公表が八月三十日で、パブリックコメントの締切りが九月十三日で、僅か十五日間ですよ。十五日間でどれだけの意見を聴取できるのかと。国民からの批判、そして子ども・被災者支援議員連盟、被災者議員連盟ですね、要請を、申入れをする中で、不十分だけれども九月二十三日まで延長したと。これは余りにも被災者に背を向けた対応じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(根本匠君) 我々は、この基本方針の策定、様々な粛々と議論を進めて、様々な観点から検討をして基本方針を取りまとめました。そして、この基本方針を取りまとめるに当たっては、我々も、言わば復興庁も、団体の会合に参加してお話を聞く、様々な形で意見を聞いてまいりました。そして、その上で、今回基本方針を取りまとめさせていただきました。我々も真剣に取り組んできたつもりであります。
○紙智子君 被災者の皆さんはそういう受け止めにはなっていないと思うんです。国がやっぱり勝手にどんどん物事を進めるということがあってはならないと思うわけですけれども、この法律を具体化するに当たって、関係者の意見を聞く、あるいは関係者の同意を得るなどの本当に丁寧な進め方が必要だと思うんですけれども、この点についての大臣の認識をお聞きします。
○国務大臣(根本匠君) 委員御指摘のとおり、子ども・被災者支援法に基づく施策の実施、これに当たっては、関係者の方々の御意見を丁寧に伺うことが重要だと認識しております。このため、この法律の基本方針に盛り込まれた施策、この施策については、支援が必要な方々に必要な支援策を講じることができるように、各施策の担当省において、必要に応じて関係者の意見も伺いながら、施策の趣旨、目的等に応じ施策ごとに支援すべき地域及び対象者を定めているところであります。
 復興庁においても、被災者を支援する民間団体などとも協力しながら、引き続き、被災者の御意見を伺いながら、必要に応じ施策の充実等を検討していきたいと思っております。
○紙智子君 ということは、これから先も、被災者の皆さんからの要請があれば、その声を聞いてほしいし、こういう要望があるということの申入れがあれば、それは大臣としても対応されるということでよろしいですか。
○国務大臣(根本匠君) 引き続き、被災者の意見などをお伺いしながら、必要に応じて施策の充実等を図っていきたいと思います。
○紙智子君 次に、環境大臣にお伺いいたします。
 健康調査の問題、医療の提供の問題です。
 法律の十三条の二項で、「国は、被災者の定期的な健康診断の実施その他東京電力原子力事故に係る放射線による健康への影響に関する調査について、必要な施策を講ずるものとする。」というふうにあります。
 私は、実は、関東にお住まいの方で若いお母さんからお話を聞いたんですね。福島ではないところですけれども、ホットスポットがあるんですね。非常に不安だと。甲状腺の検査をしたら娘に嚢胞があったと。元々あったのか、それとも原発由来なのか、判断できないというふうに言われたと。非常に不安だと、こういう思いを自分だけじゃなく、たくさんそういう思いを持っている方もいらっしゃるというお話、言われたわけですけれども、こういう不安にどのようにおこたえになるでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) もう委員が御立法の中で御苦労されたことは十分に承知しております。
 放射線に関する不安、また放射線に関する症状というものは、やはり私たちは、科学者あるいは医療関係者、専門家、こういう方々の判断にまつというのが、この物事を判断していく上で私は基調になるべきで、エモーショナルなものに流されてはならないと思います。
 甲状腺につきましても、発症率は低い。また、これまでこのような大規模な形での甲状腺検査を実施したことがございません。それによって、成人でありますと嚢胞があるという方は意外に多く発見される。こういうものがどれだけの発がん性のリスクがあるのか。発がん性のリスクにつきましては、WHOや国連の科学委員会等々が今回の事案によってがんの発生リスクが高まるおそれはないと、このように申しておりますから、このような状態をしっかりと認識した上で、適時適切に御判断をしていくということになるんだと思っております。
○紙智子君 リスクはないという判断という話なんですけれども、専門家の間では、そこのところは必ずしも結論が出ているわけじゃないと思うんですね。いろいろやっぱり意見というのはあると思うんです。ですから、そこはやっぱり丁寧に慎重にやっていかなければいけない話だというように思うんです。
 それから、基本方針で六つの新規拡充を示しています。福島近隣県を含めて外部被曝状況の把握がこの基本方針の中でいろいろ拡充しているんですけれども、この問題をめぐって、有識者会議で、この後、子ども・被災者支援法の基本方針に基づくものを設置をさせていくということもお聞きしているわけですけれども、そのことについては、有識者会議の中で検討するということについてはそのとおりでよろしいんでしょうか。確認をしておきたいと思います。
○国務大臣(石原伸晃君) この問題につきましては、委員の質問に先立って御質問をされました御同僚の川田委員の中でも、私どもの井上副大臣と、また塚原部長との間で御議論がございました。幅広く検討をさせていただきたいと考えております。
○紙智子君 議員立法そのものは福島県に限定しておりませんから、しっかりそれ以外のところも含めて支援することが必要だというふうに思っています。
 それから、来年度から福島近隣の健康把握をするための予算は付けられるんでしょうか。環境大臣。
○国務大臣(石原伸晃君) ございません。
○紙智子君 来年度からの予算に付けるということは考えていないというお答えだったと思うんですけれども、そうすると……
○国務大臣(石原伸晃君) 来年度予算にない。
○紙智子君 来年度予算に……
○国務大臣(石原伸晃君) 専門家委……
○委員長(蓮舫君) 済みません。
 石原環境大臣。
○国務大臣(石原伸晃君) 御丁寧に御説明をさせていただきますと、先ほど来の議論を聞いていられましたので御承知のことだと思いますが、幅広く検討をすると。そして、結論が出るのが、四回ぐらいの会合を行った後にある程度のものを出していかなければならない、その御提言を受けまして政府部内で検討をして結論が出る。当然、来年度の予算の締切りは十二月の末日でございます。その中に予算要望として、専門家委員会の結論が出ておりませんし省内でその案件につきまして議論をしておりませんので、新たな要求というものはございません。
○紙智子君 ということはやっぱり結論待ちということで、今の段階では付けるということは決まっていないということになるわけですよね。
 そうすると、福島県以外の被災者は一体いつになったら健康診査などができるのかということですよ。来年度は予算措置はもし付かないということになったら、二〇一一年の三月から、結局、原発事故から三年、四年掛かっていまだに受けられないということになるんじゃないでしょうか。
 有識者会議の結論によってどうなるか分からないと。法律は、子供たちを放射能汚染、被害から守りたいという全国のお父さんやお母さんのそういう声を受けて成立した議員立法であって、やっぱりこれは、それに対する対応自身がもう三年、四年たつということですから余りにも遅いし、やっぱり関係者のお話を聞けば、直ちにこれやらなきゃいけない話じゃないでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(石原伸晃君) 冒頭に御答弁をさせていただいたんですけれども、放射線による影響評価というものは科学者、専門家、医療関係者、この皆さん方のお話を中心に考えていかなければならない。いろんなところで風評被害が起こる、これが最悪なんですね。私のところで子供ががんになった、みんながんになるんじゃないかと。そういうことはないというのがWHOも言っている、国連の科学専門委員会も言っている。
 ですから、慎重に幅広く検討していくことが私は福島県のものを多くの国民の皆様方に食べていっていただく上で、また、そのような事態が他の県でもあるんじゃないかというようなことを言うこと自体が私はその県の食物の風評被害を広げることになる。冷静に判断をしていく問題だと考えております。
○紙智子君 現に不安を持って心配でならないと、そのことで病気になる方もいらっしゃるわけですよね。そういう被災者の本当に追い込まれている状況、そこに、立場に立って考えるならば、もう三年、四年そのまま、県外だということで、風評被害になっちゃいけないということでほうっておかれているわけですよ。私は、やっぱりそういう不安を抱えている皆さんの立場に立ってこたえていくということが必要だと思いますよ。だって、実際にはホットスポットという形で高い放射能の数値示されているわけですから、そういう中で不安を持つというのはこれは仕方ないことだと思うんですよ。
 もっとやっぱり温かい対応策を取る必要があると思いますけれども、もう一度いかがですか。
○国務大臣(石原伸晃君) 私、今日、朝たまたまなんですが、福島産のリンゴを食べてきました。今年食べたリンゴの中で一番おいしいリンゴだったんですね。
 しかし、福島の方々がどういう立場に立たされているか。百ベクレル以下なんですよ。しかし、五百ベクレルであった基準を百ベクレルにしたことによって物が売れなくなったというんですね。ですから、危ない、危ない、不安だというものに全てこたえていったら全部のことが危なくなって、私は冷静に判断していくべきだということをお話しさせていただいております。
○紙智子君 実際の不安を抱えている皆さんの立場に立って対応してほしいということを言っているのであって、風評被害を広げようとか、危ない、危ないということで、そういうことをやるということを言っているわけじゃないですよ。
 非常に今の答弁に対しては納得できませんけれども、もう一つありますので、そちらの方に移りたいと思います。
 医療、介護の減免制度についてお聞きします。
 被災地で最も強く出されている要望が、先ほどもありましたけれども、医療、介護の減免制度の復活の問題です。私も、仮設住宅の皆さんなどもお話をさせていただいてきたんですけれども、ある仮設住宅では、高齢になると二つも三つも病気にかかる、医療費が八千円掛かった、窓口でですね。冬場になると風邪も引きやすくなるのでお金が必要だと。津波で家も何もなくして、また仕事をしようにも田んぼも今はない、米も作れない、収入はゼロだ。医療費や介護費の免除がなくなって病院にも行けない。やっと助かった命だから、やっぱり亡くなった人の分も何とか頑張って生きていこうと、そう思ってきたけれども、やっぱりこの医療にお金が掛かる、病院に行こうと思ったら食費を減らさなきゃいけないと、そういう事態に置かれているというお話を出されました。
 この免除制度、これを是非復活してほしいという声は本当に切実だと思います。それで、この間のやり取りで、政府は、ほかの震災とのバランスという話をされます。しかし、それは被災者に対して自助努力を迫ることになるわけですね。免除が打ち切られて一年たって、いまだになりわいも生活も回復していないという人たちもいるわけです。
 参議院の決算委員会で先日、愛知副大臣来ておられますけれども、愛知副大臣が、現場の実情に合わせて法律を必要であれば改正しなくちゃいけないし、また運用、そういった制度面も見直していかなければいけないと答弁をされました。従来の枠を踏み出して、やっぱり医療、介護への支援を復活させる時期に来ているんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(愛知治郎君) お答えを申し上げます。
 この御指摘の問題については本来厚生労働省の所管でありまして、先ほど和田委員の質疑の中でも厚生労働省の審議官がお答えをしていることでありますけれども、正確を期するために私からもお答えをさせていただきたいと思います。
 東日本大震災の被災地において、平成二十四年九月末まで、御指摘のとおり窓口負担、保険料の減免額の全額を国が財政支援をしておりました。これは、被災によって所得が減少した場合に、減少後の所得に基づいて窓口負担の月額上限額や保険料が決まる時期まで特別の措置を……
○紙智子君 分かっています。
○副大臣(愛知治郎君) 分かりました。じゃ、結論だけ改めて申し上げたいと思います。
 本来、やはり窓口負担、保険料の減免は、保険者の判断によって実施されるものでありまして、減免措置に対する国の財政支援については、御指摘のとおり、他の震災における対応やこれまでの経緯に照らしますと、改めて特別な財政支援を行うことはやはり難しいと言わざるを得ません。
 しかしながら、しかしながら、御指摘いただいたとおり、私自身もそうですけれども、被災者の皆さん、本当に苦労されている皆さんの声を聞いております。その点、厚労省でも、その声を受けまして、先ほど審議官の答弁にもあったとおりに様々な手段を検討しているということでございます。
 いずれにいたしましても、こういった現状に合わせて、復興庁、厚労省、また地元自治体の皆さん、関係各位の皆さん、力を合わせて、知恵を絞って救済支援をしていければと考えておりますので、また、あわせてでありますけれども、この問題については与党も野党もなくいろんな意見を我々は謙虚に受け止めて、現状に合った施策を講じていかなければいけない、そう考えております。
○委員長(蓮舫君) 紙君、時間が来ております。おまとめください。
○紙智子君 はい。
 本当に、やっぱりバランス論じゃなくて、実際困っている人にどう本当にこの手を差し伸べるかということが大事だと思うんです。
 自治体の判断で今まで頑張って独自に出しているところもあるわけですけれども、しかし、調べてみましたら、自治体の負担も本当に大きく膨れ上がっていて、岩手の予算は六千億だったのが震災後は一兆一千億になっているとか、宮城は八千四百億円だったのが一兆五千億、福島は九千億から一兆七千億というふうに増えていて、ただでさえかさんでいるわけですよね。そういう中で、自治体が独自にやりなさいといってももう限界があるわけで、いろんな手だてをということを言いましたけれども、是非新たなところに踏み出すということで手を尽くしていただきたいということを心から訴えまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。