<第184回国会 2013年11月28日 国土交通委員会>


レール検査データ改ざん問題、4労組と安全協議を表明(JR北海道社長)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私も北海道の人間ですので、JRは頻繁に利用させていただいている一人であります。
 それで、二〇一一年の五月のあの石勝線事故の直後に私も現地に調査に行きました。それで、非常に無残な車両の姿を見て衝撃を受けました。乗客自らの判断で避難をしたので、けがをする人は出ましたけれども、しかし命を奪われるということはなかったわけです。しかし、もし逃げ遅れていたならば、本当に大変なことになっていたということを痛感をいたしました。
 JR北海道は、現場と経営陣の意思疎通の悪さを問われて、そのとき、現場と膝詰めの対話を行っていくんだと、安全最優先の鉄道会社に生まれ変わるんだというふうに言って、安全基本計画を作成をされたわけです。北海道民はもちろん、多くの国民がこれを機に本当に安全第一の会社に変わってほしいと期待をしたわけです。
 この間の一連のトラブル、とりわけレール点検の改ざん問題というのが発覚をしまして、これは本当に驚き、そして怒りを感じているわけです。改ざんというのは、これ鉄道事業法に違反する行為で、国民を欺く悪質な行為だと、到底許せるものではないというふうに思います。国民の命を乗せて走っている、そういう鉄道事業者の資格が問われている問題だというふうに思います。
 衆議院で行われた参考人質疑でもっと事実を明らかにされるのかと期待しましたけれども、逆に道民、国民は失望したと。北海道新聞の社説で、「JR国会招致 信頼さらに失墜させた」と書かれております。
 まず、このレール検査のデータの改ざん問題についてお聞きいたします。
 改ざんは、十一月十一日の報道で明らかになりました。しかも、それは外部からの告発によるものです。JR北海道が自ら明らかにしたものではなくて、この告発があってその後調べたということであります。その後の調査で、一か所ではなくて九か所であったというふうに聞いて、これはもう言葉を失いました。JR北海道の信頼を回復する上で、この参考人質疑でやっぱり事実を隠さず明らかにするということがこれからの対策を考えるためには本当に大事なことだと思います。
 それで、最初に、九か所、それぞれ誰の指示で行われたんでしょうか。
○委員長(藤本祐司君) 笠島参考人。
○紙智子君 社長に、社長に質問。
○委員長(藤本祐司君) 社長に質問ですか。社長、お答えになられますか。
○参考人(野島誠君) 九か所の保線管理室におきましてデータの改ざんが確認されたということは、先般の衆議院の国土交通委員会で私から御報告させていただいたところでありますが、どのような仕組みといいますか、誰の指示でどのようにやったかということは、午前中も笠島から御回答させていただきましたが、まだ現在調査中であります。その実態については私どももまだ完全に、調査中にあるということで、御説明は今まだできないということでございます。
○紙智子君 新聞報道で、これは読売の十一月二十三日ですけれども、ここに、取材して書かれているんだろうと思いますが、上部組織の函館保線所長だったことが同社関係者の取材で分かったというふうに書かれていますけれども、これは事実なんですか。
○参考人(野島誠君) 午前中、笠島からも回答させていただきましたが、私どもの調査の中で函館保線所長が関与しているという事実は確認されておりません。
○紙智子君 それでは、その検査ですけれども、本線、副本線、側線、分岐器、それぞれのやり方が違うというふうに聞いています。この四つのうち、どの箇所の検査データが改ざんされたのかということを明らかにしてください。社長、お願いいたします。
○委員長(藤本祐司君) いいですか。笠島参考人、どうぞ。
○参考人(笠島雅之君) 函館保線管理室につきましては、分岐器それから副本線での改ざん、データの不一致があったと記憶してございます。
○紙智子君 そのことも新聞報道で書かれている中身でありますよ。
 それで、もう調査しているということがずっと専ら、先週、衆議院の質問のときからも今調査中でという回答になっているんですけれども、私は本当に事の重大さを分かっているのかなというふうに言わざるを得ないんですね。外部からのこれ告発がなければ、このレールの改ざん問題というのは表に出なかったわけですよ。つまり、JR北海道は不都合な情報は隠蔽しているんじゃないのかと、隠しているんじゃないかというふうに思われているわけですよ、世間には。
 発覚してからもう二週間たったわけですね。そういう中で、難しいことを、特別専門的な立ち入ったことを聞いているわけじゃなくて、どこの場所で、実際あったのかどうかということはいろいろ聞き取りしている中で分かってきているところもあるんだと思うんですよ。なぜそれを言わないのかということなんですが、いかがでしょうか。
○参考人(笠島雅之君) 九月十九日の脱線事故につきましては、今、運輸安全委員会で調査中でございますが、分岐器手前の曲線部で発生したと私どもも推察しておるところでございまして、本線、副本線の一般軌道を優先して調査、確認をいたしたところでございます。また、今回、当社として現在の線路状況がお客様にとって安全かという観点から、分岐器を含めました本線それから副本線における直近の軌道変位検査データを確認いたしまして、改ざんが明らかになった箇所、又は元データ、野帳と言われておりますけれども、これを破棄したためデータの信憑性が確認できなかった箇所といったところにつきましては再測定を行いまして、整備基準値を超過していた箇所については早急に整備を行ってきたということでございます。
 今後は、定められたルールにのっとりまして確実に検査修繕を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 なお、衆議院国土交通委員会で穀田議員の御質問がありました側線、車庫に入る線あるいは留置線といったものの部分の線路でございますけれども、ここにつきましては定期的な検査を実施しておりますが、今回、今申しましたような事象に鑑みた特別な調査ということは実施しておりません。
○紙智子君 今、側線と分岐器のところという話もあったわけですけれども、その前の聞いた上部からの指示があったのかということも含めて午前中もずっと議論ありましたよ。だけど、それについては明らかにしていないと。だけど、私は、これ私だけじゃなくて多くの国民、道民の皆さんは、勝手にそれぞれのところでやっているとは思わないわけですね。やっぱりどこかの指示があってやられていたんじゃないのかと、これは。組織的なそういうこともあるんじゃないのかということをみんなが感じているわけですよ。
 もしそうだとする場合に、そういうこともその範囲の中に入れてどういう対処をするかということは考えておられるんでしょうか。
○参考人(笠島雅之君) 現在明らかになっている以上のことはこれからも引き続き調査をしていくということでございまして、どういう事柄になるのかはちょっと私も全く予想が付かない今状況でございますので、今議員がおっしゃったような指示というようなことで、現段階では私ども確認できておりませんので、ちょっと何ともお答えできないというのが現状でございます。
○紙智子君 やはり聞き取りは実際にやっているわけで、その証言がどうなのかということは非常に大事なことで、決して曖昧にできないことですから、そこのところはこれからも注目をしたいと思います。
 それで、経営陣の責任が問われる事態だというふうに思うんですね。この問題は、国が、特別保安監査に入ったわけですけれども、見抜くことができなかった問題でもあるわけです。それで、安全統括管理者を置いてこの間やってきているはずなんですけれども、安全に直結する重大な問題が見過ごしにされたと。つまり、国土交通省の対応もこれ問題になっているわけです。国土交通省は元々、監査というふうにいっても、これ事業者の提出書類や説明をチェックする方法で行ってきたわけです。しかし、改ざんが発覚すると、日時や場所を事前に伝える立入検査を切り替えて抜き打ちに変えたわけですね。対応はこれ、後手に回ったということも指摘されているわけです。
 そもそも、今のこの監査方法が安全を確保する、そういうことになっているのかということで、これは大臣の御認識をお伺いしたいと思います、大臣に。
○委員長(藤本祐司君) まず、土井国土交通政務官どうぞ。
○大臣政務官(土井亨君) 保安監査につきましては、できるだけ現場に入ること、鉄道事業者の問題に応じて対応することが大変重要であると考えております。現在、第三回目の特別保安監査におきましても、できるだけ現場に入って事実関係や問題の背景を徹底的に把握をし、また、データ改ざんという問題に対処するため、無通告で本社や現場に入り、期限を設定せずに事実解明をすることといたしております。
○紙智子君 元々、通告のときにここは大臣に答えていただきますと言ってありましたので、大臣政務官の出席については、大臣が答えるんだったらいいですよというふうに言っていましたので、そこは守っていただきたいと思います。
 大臣、それじゃお願いします。
○国務大臣(太田昭宏君) 保安監査の在り方については、九月の第一回目から、従来これは五、六人でやっているということが多いんです。人数を増やしてやるというところから始まりまして、従来にない監査体制、現在一つ一つの、函館も含めて、現場に入ってとか抜き打ちとかいうこと自体は今までにないことをやっておりまして、現在もまた監査に入っているメンバーに、その背景というようなことについての調べ方、そういうところまで私が指示している状況でございます。
○紙智子君 前回のこの委員会で我が党の辰已議員も質問しましたけれども、やっぱり見逃してはいけないわけですよね。そういう点で、やっぱり監査の仕方も会社任せにしないで、国自身がしっかりかかわってやるべきだという話をされていると思うんですけれども、命にかかわる安全の問題ですから、そういう意味では、事実上、事業者任せにしていたところが今本当に問われているというふうに思います。
 それで、次に行きますけれども、会社の姿勢の問題についてお聞きしたいと思います。
 会社経営が危機に直面したときに、やっぱり社長の姿勢というのは非常に鋭く問われる問題だと思うんですね。
 東日本大震災のときに津波で八つの工場が全壊した水産会社の社長さんが、八百人の従業員を一人も解雇せずに、雇用を維持しながら工場の再建を目指しました。この社長さんは、解雇すると地域での糸が切れて外に出ていってしまうと、それでは町の復興にはならないというふうに考えたんだというふうに言われて、その社長の発言を、従業員の皆さんがそれを聞いて、よし、本当にそういうことであれば復興に向けて頑張ろうという意欲が広がって、地域ではやっぱりそういう頑張りが見えて、みんなで支えようと、応援しようというふうに広がったというふうに聞きます。三陸鉄道でも同じような話を聞きました。
 そういう危機に直面したときに、そのときこそやっぱり会社が一丸になって会社の再建や、道民に信頼される、愛される、そういう鉄道会社に生まれ変わるということが大事なんじゃないかと思いますけれども、野島社長、いかがでしょうか。
○参考人(野島誠君) 今委員御指摘のとおり、先ほど来私もお話ししておりますが、二十三年の石勝線の列車脱線事故以降、今年に入りましても車両のトラブルあるいは線路関係のトラブル、さらにはレールデータの改ざんといったような事象を発生させ、当社に対しますお客様からの信頼、これが今なくなっているというような状況で、先ほど来お話ししておりますが、会社発足以来の最大の危機にあるというふうに考えてございます。
 私も、このことを、社員全員とこの危機感を共有いたし、何としても北海道の鉄道の再建に向けて私が責任を持って先頭に立って取り進めていくという覚悟でございます。
○紙智子君 そういうやっぱり会社が一丸となって本当に変えていこうというところで、国自身もそこをしっかり指導するということを求められていると思うんですけど、一言、大臣、お願いいたします。
○国務大臣(太田昭宏君) とにかく安全ということが確保できるように、いろいろ考えて指示をさせていただいているところです。石勝線の事故以来二年半経過しますが、今日も何回か申し上げたんですが、本当に立派な全体計画、あるときには大変分厚いものが出たりしています。それが現実には実行されない。そういうことについて、どうすればこのJR北海道が実行という段階に入るのかということも含めて、厳しく指導していきたいというように思っています。
○紙智子君 冒頭で北海道新聞の社説を紹介しましたけれども、会社が一丸になるという姿勢がなかなか伝わっていかないということがあります。衆議院の参考人の質疑で社長の発言をとらえて、道新の社説は、「JR国会招致 信頼さらに失墜させた」と書いたということも紹介しました。道民のみならず国民はこの社長の発言を聞いてがっかりしたという話も出ているわけです。
 全社一丸になって取り組むというのであれば、やはりJR西日本があの尼崎の事故を経て行ったように、全社を挙げた労使会議を行わないのかと。石勝線事故以降、膝詰めの対話が行われたというふうに言われているわけですけれども、結局その後も事故は防がれていなかったわけですね。やっぱり立場の違いを超えて本当に一丸となるという点で、この間も議論が少しありましたけれども、やっぱりその姿を本当に国民に示すことが今ほど求められているときはないと思います。会社と社員そして組合が一堂に会する労使安全会議、これを設置すべきだということ、これ衆議院のときに我が党の穀田議員も提起をしましたけれども、これについてはいかがですか。
○参考人(野島誠君) 当社ではこれまで、安全問題や事故防止に関します事柄について、各労働組合との労働協約に基づき、各組合と個別に団体交渉等で協議をしてきておりました。しかしながら、一連の事故、事象を契機といたしまして、当社は現在、御利用されるお客様を始め各方面の方々から当社の安全確立に向けた取組に対して多くの御意見また御批判もいただいているところであります。こうした状況を謙虚に受け止めまして、安全は労使の垣根を越えて一致協力して取り組むべきテーマであるという考えに立ち、今回新たに、会社として安全問題について四つの労働組合と一堂に会して意見交換を行う場を設けてまいりたいと考えておるところでございます。
○紙智子君 先週、衆議院で穀田議員がこのことを提起したときには、それはやるつもりないという答弁だったんですが、この一週間で変わったということになりますけれども、その変わった心境といいますか、どういうことがあってそういうふうに改められたんでしょうか。
○参考人(野島誠君) 今お話しさせていただいたところでございますが、安全ということについて労使の垣根を越えて一致協力して取り組むべきだというふうに考えを致しまして、今回、四組合と交換を行う場を設けたいと考えた次第でございます。
○紙智子君 それはいつからおやりになるかと、もう十二月からということになるんでしょうか。
○参考人(野島誠君) 今、これから準備をいたし、なるべく早く実施したいと考えておるところでございます。
○紙智子君 やはり形だけこういうふうにやりますということじゃなくて、その中身が本当に実質が伴うものでなきゃいけないというように思うんですよ。そういう意味でいいますと、JR西日本でやったときには、それこそ各職種ごとの専門委員会というのをつくって、やっぱり本当にきめ細かく、どうやって打開するかということも含めて、それも随時やられているということも紹介されていると思うんですけれども、そういうことなんかも含めておやりになるおつもりでしょうか。
○参考人(小山俊幸君) 具体的な中身につきましては、これから検討の上、各組合の方にお話をしたいと考えてございます。
○紙智子君 これから各組合に呼びかけをしてやっていくということになるんですか。社長、今の点について、社長の方から。
○委員長(藤本祐司君) 野島参考人、申合せの時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。
○参考人(野島誠君) はい。
 これから各組合に話しかけていきたいと考えております。
○紙智子君 是非、実のあるものとして、本当にそれが改善に向かうようにしていただきたいということを心から言いたいと思います。
 もう時間になりましたので、やっぱり人の安全や命にかかわる、そういう問題で情報隠しをするということが不信を広げることになるわけですから、そのことをしっかり自覚していただきたいと思います。
 一連のトラブルを受けて、JR北海道に対する不信というのが広がって、やっぱり鉄道離れにつながってはいけないわけですよね。多くの人がもうこれからは自動車にしようとか、そういう話も出ている中で、やっぱりしっかりと道民、国民が応援したくなるような、そういう会社として再生されるように、そのことを心から申し上げまして、私の質問を終わります。