<第184回国会 2013年11月5日 農林水産委員会>


TPPと諫早干拓水門開門問題を追及

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、TPPについてお聞きします。
 日本政府は今年の七月末にTPPに参加したばかりですが、にもかかわらず、十月のバリ島でのTPP首脳声明で、年内妥結を目的に困難な課題の解決に取り組むことを確認したということで、この年内妥結に前のめりになっています。そのため、日本政府はTPP交渉で足を引っ張ることができなくなって、最も困難な関税交渉で日本自らの自由化率を上げなければならなくなっていると。
 そこで、現在、重要五品目を含めて、これまで日本が自由貿易協定で関税撤廃をしたことがない農林水産品目、これ八百三十四品目あるわけですけれども、そのうち聖域とされる重要五品目の農産品、これ五百八十六品目となります。この重要五品目の関税撤廃を避けるということになると、これ自由化率が九三・五%にとどまると。これはTPPのほかの参加国にとっては納得を得られないと。既に五か国からは、いや、自由化率は一〇〇%でなきゃ駄目なんだというふうに言われているわけです。
 そこで、自民党の西川TPP対策委員長は、この重要五品目に立ち入って、加工品や調製品の関税撤廃に向けての検討作業を開始するということを表明して、その作業を行って、先日、関税区分の細目、タリフラインごとにこの自由化の影響の検証作業を終えたというふうに報道されている。政府は三十一日に、TPP参加十一か国と関税撤廃、削減などの品目ごとの取扱いを示す提案をしたということが報道をされていると。
 この点についての経過というか、実際はこういうことがやられているんですねということで、大臣の認識を明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 十月八日のTPP首脳会合、今委員もお触れいただきましたが、包括的でバランスの取れた協定の年内妥結に向けて、残された困難な課題の解決に取り組むことが合意されたと、こういうふうに承知をしております。これは今までの先生方の御議論の中でもあったところでございます。
 この首脳会合においては、市場アクセス分野について、最もセンシティブな物品の取扱い、これはこれからの課題として残っているということがTPP貿易閣僚より報告をされておりまして、今後、十二月に閣僚会合を開催する方向で調整が行われていると、こういうふうに聞いております。
 西川先生の御発言は、自民党のTPP対策委員長としてのお立場からなされたものであると、こういうふうに認識をしておりまして、その後の政府に対するお話は先ほど御答弁をしたとおりでございます。
 いずれにしましても、TPP交渉に当たっては、これも繰り返しになりますが、この農林水産委員会も含め、衆参両院の委員会決議を踏まえて、国益を守り抜くように全力を尽くしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 十月二十四日の参議院の予算委員会で、与党議員、これ山田さんですけれども、質問に答えて甘利大臣が、別にこれは党が勝手にやっていると突き放すつもりはありません、党の方は党の方でいろんなリスクを考えて取り組んでいただいているんだと思います、それについては、政府は、情報提供は最大限、これは農水省を中心にやらせていただきたいと思いますと言って、農水省が協力していることを明らかにしているわけです。ですから、大臣は当然、この重要五項目の加工品や調製品の検討作業を知っているはずだと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) 甘利大臣も御答弁をされましたし、私も国会で、会見だったかもしれませんが、申し上げておりますが、党でやられる作業につきまして必要な情報の提供等々についてきちっとやらせていただくと、こういうことは申しております。
 先ほどお答えしたとおりでございますが、西川委員長の方でいろいろ検証されたということ、そして、その甘利大臣の会見で、甘利大臣がおっしゃったように、事務方の方に伝えられたということも承知をしておりますが、どういう内容についてどうだったかということについては、これも先ほど申し上げましたように、具体的な内容にかかわることでございますので、ここでは控えさせていただきたいと思います。
○紙智子君 情報提供をさせていただいているということです。
 大臣は所信で、交渉に当たっては、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の重要品目の聖域を確保すること等の衆参両院の農林水産委員会での決議を踏まえ、国益を守り抜くよう全力を尽くしてまいりますというふうにおっしゃっているわけです。それは当然、この重要五品目の五百八十六品目を確保することを意味するはずですよね。確認します。
○副大臣(吉川貴盛君) 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などのこの重要品目につきましては、除外又は再協議の対象とする、さらに、農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先すると衆参両院のこの農林水産委員会の決議においてされておるところであります。
 この重要五品目の内容につきましては、決議に書いてあります文章そのものでありまして、それ以上それ以下のものでもございません。
 いずれにせよ、この決議を踏まえて、国益を守り抜くよう全力を尽くす決意でも、考えでもございます。
○紙智子君 決議に書いてあるといって言わなかったんですけれども、重要五品目というのは五百八十六品目なんですよ。聖域ということはそれに手を付けないということなんですよ。その重要品目の聖域にまさに手を突っ込んで、加工品や調製品の関税撤廃対象品目をピックアップする作業というのは、これ与党だって国会決議に真っ向から反する作業ですよ。それに抵抗しなければならない農水省や農水大臣が協力しているということになるわけですよ。
 これは、決議を踏まえる、決議を守るというふうに言っておられますけれども、そう言いながら真っ向から否定することなんじゃないですか。おっしゃっていることとやっていることに矛盾がありませんか。
○国務大臣(林芳正君) 今、副大臣から御答弁させていただいたとおりでございまして、先ほど小川委員が推理と想像と、こうおっしゃいましたけれども、我々、今、紙委員がおっしゃったことをこういうふうにやっているということを申し上げたことは一度もございませんで、西川委員の方でいろんなことをお考えになって検証をされておられる、それに必要な情報の提供はいたしておると、これを申し上げているところでございます。
○紙智子君 バリの会議は実は私も現地に行っておりました。そこで西川対策委員長は、年内妥結に向けてスピードを上げてやらなければならないというふうにおっしゃった。五品目の中から抜けるか抜けないか急いで検証するというふうに言われているわけです。何のために検証するのかといったら、それは聖域から外せるものは何なのかということを、外すためなんじゃないんですか。
 大臣は、衆参両院の農林水産委員会での決議を踏まえて国益を守り抜くというふうに言いました。あなたにとっての国益は何かって先ほども徳永議員から質問がありましたけれども、それに対して農水大臣は、国益とはまさに衆参両院の国会決議なんだというふうに言われたわけですけれども、農林水産大臣の林大臣は、国益といえばまさにこの日本の農林水産業を守るために体を張って奮闘するということが当たり前で、内閣の閣内の中でそれを軽んずるような動きがあった場合はそれを牽制するというのが当然だと思うんですよ。歴代の過去の農水大臣の姿を見ても、やっぱりここぞという大事なところでは体を張って頑張るという立場でしたよ。
 そこでは、確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとするということが決議に明記されているわけです。重要五品目、五百八十六品目が守れないんだったら脱退すると、それを閣内で主張するのが林農水大臣の役割なんじゃないでしょうか。いかがですか。
○委員長(野村哲郎君) 吉川農林水産副大臣。
○紙智子君 大臣に聞いています。
○副大臣(吉川貴盛君) その前に私にも答えさせてください。補足があれば大臣からお答えをさせていただきたいと思います。
 TPPを通じてアジア太平洋地域の活力を取り込み、力強い経済成長を実現することが我が国のこれは国益だと私どもは考えております。他方で、衆参両院の農林水産委員会におきまして重要品目の聖域を確保することなどが決議をされておりまして、農林水産省といたしましては、この決議も踏まえてTPP交渉に当たることが国民を守る観点から不可欠と考えているところでございます。
○紙智子君 確保できなければ脱退も辞さないと、これ本気でやる覚悟はおありになるのかどうか、これはお聞きしたいと思いますよ。だって、選挙のときだって、自民党の議員の皆さんそうですけど、さんざん言われていたわけですよ。選挙が終わった直後に、北海道でもそうですけど、マスコミの方からもし守れないときは脱退するんですかと言われて、脱退しますというふうに言われていましたからね。そういうことを約束をしてこられた。農水大臣は、そういう意味では、今内閣ですけれども、自民党の議員でもあるわけで、本当にそれを守る覚悟があるのか、国民はそこを本気でやる気があるのかということを見ていますよ。
 先週、大臣の下に、北海道から高橋はるみ知事とJAの全中の方が来られて要請を受けられたと思います。そこには、TPP協定に関する緊急要請で、重要五品目はもとより、それ以外にも小豆、インゲンや軽種馬、ホタテ、木材などが重要農林水産物として生産され、今後の交渉の先行きを危惧する声が道内で上がっているというふうに書いています。
 国民への十分な情報提供、説明を行って、万全な対策を行うことを求めているわけですけれども、こういう声にどのようにお答えになるんでしょうか、大臣。
○国務大臣(林芳正君) お話がありましたように、先週だったと思いますが、知事始め関係者の皆様が、もう何度かお見えになっておりますが、いらしていただきました。その今のお話、御要請も受けたところでございますので、その場で、この決議を踏まえてしっかりとやっていきたいというような趣旨のことも申し上げたところでございます。
 前段のところで、脱退も辞さないものとするということについてのお尋ねもございましたが、これも先ほどどなたかの御質問に対するお答えの繰り返しになって恐縮でございますが、決議の第六項に、「それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。」と明記をされております。ここも含めて、決議を踏まえてと、こういうふうに申し上げております。
○紙智子君 守れなければ脱退を、農水大臣は総理に対しても、それからほかの閣僚に対してもはっきりと主張するということで確認をしてよろしいですか。
○国務大臣(林芳正君) この決議は、私のみならず、閣内で少なくともこの仕事に携わっている皆様方に対しては共有をされておるものと、こういうことでございますから、皆さん同じ気持ちでこれはやっていただいているものと、こういうふうに考えておりますし、また、どういう場合にどのラインで脱退ということを軽々に発言いたしますと、これも先ほどのどなたかに対する御答弁と重なりますが、そこから交渉が始まってしまうという意味で軽々に申し上げることは控えたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 既に国民から見ると、非常に条件的な闘争に入っているんじゃないかというふうに心配しているわけです。これをめぐって、やっぱり農水大臣が本当に日本の農業を守るという立場からしっかりと行動していただかなければ国民の公約は全くほごにされるということになるわけで、これはもう絶対許されないというふうに思います。
 ところで、大臣所信の中で、食料自給率についての言及がありませんでした。これはなぜなのかと。国内生産を高めて食料自給率を向上させるというのは、これまでの農林水産省の大方針だったと思いますけれども、これについていかがでしょうか。
○大臣政務官(横山信一君) 私の方から御答弁申し上げます。
 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、国民に対する国家の最も基本的な責務でございます。国内農業生産の増大を図り食料自給率を向上させることは当然重要なことと認識しておりますが、先日の委員会における林農林水産大臣の所信的挨拶は、本臨時国会期間中において特に取り組むべき重要課題を申し述べたものでございます。
○紙智子君 ということは、自給率を向上させるということは変わらないと、基本方針変わらないということでよろしいんですか。
○国務大臣(林芳正君) 今、横山政務官から答弁させていただきましたとおり、この臨時国会期間中において特に取り組むべき重要課題を所信的挨拶では申し述べさせていただきましたので、この食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、法律にも定められておりますし、私自身も基本的な責務であると認識しております。
○紙智子君 私は、入っていなかったことが、TPPで関税を撤廃した場合に、これは食料自給率が下がることが免れないわけですよね。だから言わなかったのかなと一瞬思いました。しかし、そうではないということであるならば、もっと今の時期こそそのことをはっきりと明言しなきゃいけないときじゃないかと思いますよ。
 やっぱり自民党のJ―ファイルですか、そこの中にも書いてありますよね、食料自給率、カロリーベースで五〇%を目指すと。食料自給率をどう上げていくのかというのは重要な課題でありまして、これはどんなに時代が変わっても、この基本というのは変わらないと思いますよ、国際的なルールとして、万国共通のやっぱり非常に基本となる考え方ですから。これは、今こそはっきりと自給率の向上という問題は掲げて取り組むべきだというふうに申し上げておきたいと思います。
 それから続いて、米の生産調整、減反廃止ということも先ほど来議論になっています。大臣がこれを打ち出している目的というのは何でしょうか。
○大臣政務官(横山信一君) これは生産調整の検討状況をお話しすることで理解していただけるかと思うんですけれども、元々自民党の選挙公約の中にございました経営所得安定対策見直し、そしてまた多面的機能に着目した日本型直接支払と、こうした議論の中で、米の生産調整を含む米政策全般について農林水産省としても検討を重ねてきているということでございます。
 また、米政策全般について申し上げますと、水田活用対策等を充実させることで生産者、集荷業者・団体が、国の需給見通し等を勘案しながら、主体的な経営判断や販売戦略に基づき、需要に見合った米生産の実現を図るための環境を整備する必要があるというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 収入保険を導入して賄っていくということも言われて、さっきも議論になりましたけれども、この仕組みというのは、農家が自ら積み立てる保険料を基にして農産物の急激な価格下落による収入減のときに支払える仕組みということなんじゃないかと。そうすると、負担できない農家は入ることできなくなるんじゃないかという心配があるわけです。
 現場ではどんな声が出ているかというと、要は、作りたい人はどうぞ作ってください、ただし、米価が下落しても国は面倒見ませんよ、自分で対処してくださいということになって、結局、中小農家というのは切捨てにつながるんじゃないかという不安の声が出されているんです。これについてはいかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 先ほど小川委員からも御指摘があって、地理的、自然的制約のためのゲタということと、それから、やはり自然災害等々の影響で収穫量の減少がどうしても起こるということでナラシと、こういうものがあるということを申し上げましたけれども、まさにそういう意味で、現在の農業共済制度は収穫量の減少、自然災害によるですね、これを対象としておりまして、価格の低下が対象となっておりません。それから対象品目も限定されておりますので、加入単位も品目ごとになっていると。
 こういうことがございますので、やはり複合経営の経営安定、こういうものを考えますと十分でない面があると、こういうふうに思っておりますので、したがって、全ての作物を対象とし、農業収入全体に着目した収入保険、こういうものを調査検討を進めていきたいと、こういうふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 まだ細目がはっきり見えるわけじゃないので、またこの次この問題については議論させていただきますけれども、やっぱり地域を支えている小規模、中規模ですね、こういうところが離農促進を促すようなことにならないようにということを強調しておきたいと思います。
 それで、最後ですけれども、諫早湾の潮受け堤防の閉め切り水門の開門について質問をしたいと思います。
 それで、福岡高裁の判決で義務付けられた諫早湾の干拓潮受け堤防の開門について、実は先日、私、開門の反対から賛成に転じたある組合長さんから意見をお聞きいたしました。この方は、潮受け堤防を造るときに、我々は海が残れば今後も漁ができるという思いで干拓事業に賛成をした、苦渋の思いで賛成したと。しかし、当時はここまで疲弊することは想定できなかった。百名以上いた組合員が五十九名まで半減した。アサリなどが激減し、漁業で生活できなくなった。一日も早く開門して、有明海の調査をしてほしいけれども、本当に国は開門する気があるのか不安でたまらないというふうに訴えられたんです。
 福岡高裁の判決というのは、これは永久に開門せよと命じたものではありません。これは調査するための開門、それがいいかどうかは別としても、調査するための開門を命じているわけです。この福岡高裁判決の履行期日というのは十二月二十日と。国が確定判決を履行しないということになれば、これは前代未聞のことになるというふうに思うんですけれども、大臣の御認識をお聞きします。大臣ですよ。
○大臣政務官(横山信一君) まず私の方から御答弁をさせていただいて、不足があれば大臣がお答えしたいと思います。
 諫早湾の干拓排水門につきましては、平成二十二年の福岡高等裁判所の判決の確定により、国は本年十二月二十日までに開門すべき義務を負っております。開門した場合に被害が生ずるおそれがあるという長崎県関係者の懸念に対応するため、国としては、防災上、農業上、漁業上の対策を提案してきているところでございます。
 大臣と本件の担当である江藤副大臣が二月に現地を二日間にわたって訪問をいたしました。副大臣は八月にも現地を訪問したほか、長崎関係者が上京される機会にその都度面会をし、対話を行ってきているところでございます。また、諫早の現地におきましては、職員が五月の予算成立以降だけでも三百回以上戸別に訪問をさせていただいております。また、工事の説明会を開催もしております。二回にわたって住民四万戸以上に対してパンフレットも配布をさせていただいております。その上で、九月から十月にかけて工事着手を三回試みたところでございます。しかし、地元関係者の反対によって撤退をせざるを得ない、そのような状況でございました。
 このように、地元関係者の反対には根強いものがあり、苦慮しているところでございますが、十二月二十日までの開門義務は確定した法的な義務でございます。すなわち、履行しなければならないということでございます。他方、対策工事なしで開門すれば被害が生ずるおそれがございますので、そうするわけにはいかず、対策工事は不可欠というふうに認識をしております。開門と被害防止の双方を実現しなければならない、それが政府の立場でございます。
 引き続き、地元関係者の理解を求めてまいるよう努力をしてまいる所存でございます。
○紙智子君 大臣に私、御認識を伺ったわけです。それで、これ、もし決まっていて、確定判決を履行しないことになったら、これはちょっと前代未聞のことになると思うんですけれども、大臣の御認識、お聞かせください。
○国務大臣(林芳正君) ただいま横山政務官から答弁させていただきましたように、十二月二十日までの開門義務は確定した法的な義務であり、履行しなければならない。他方、対策工事なしで開門すれば被害が生じるということで、この開門と被害防止の双方を実現しなければならないと。まさに横山大臣政務官が答弁したとおり、私もそのように認識しております。
○紙智子君 先日、参議院本会議の質問で安倍総理は、諫早湾干拓堤防については、国は本年十二月までに開門すべき義務を負っているというふうに答弁をされました。つまり開門義務があると。それが開門しないということになれば、これは総理の政治責任ということに、そういう性格の問題だというふうに思うわけですけれども、この点はいかがですか。
○国務大臣(林芳正君) これは、政治責任というお言葉が今ありましたけれども、我々は行政として、この司法の場から確定した判決ということで義務を負わせられている、こういうことでございますので、これは先ほど申し上げたとおり法的な義務を履行すると、こういうことでございます。
○紙智子君 国が確定判決を履行しなかったことというのは憲政史上ないんですよね。ないというふうに言われているわけです。ですから、総理が本会議でもそういうふうに答弁をして、義務があると言っていることが、やれないということになれば、これは本当に大きな、大変なことにならざるを得ないというふうに思うわけです。ですから、是非、確定判決は責任を持って守るということでよろしいですね。
○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げたことに尽きるわけですが、確定判決を法的な義務として履行しなければならないということ、そして他方で、対策工事なしで開門すれば被害が生じるということでありますので、開門と被害防止の双方を実現しなければならないと考えておりまして、地元関係者の理解を求めてまいりたいと思っております。
○紙智子君 それで、長崎県は、開門の対策工事に対して強く抗議する、対策工事の着手を取りやめて開門方針の見直しを強く要請するということで、知事の記者会見もありまして、非常に強い姿勢で反対をしていると。このことがあり、開門のめどが立たない状況が今続いているわけです。
 そこで、長崎新聞を見ますと、そこにこういうことが記事が出ていました。「農水省 三者協議前向き」ということです。つまり、農水省としては、全てを裁判で決着させずに話合いで物事を解決し、開門義務を履行できるならそれが望ましいということで、三者での話合いが成り立つならば国は参加を考えているんだという記事がありました。
 やっぱり膠着状態を脱するためにはこの三者協議に応じるというのは私は一つのやり方としては非常に大事だというふうに思っていまして、農水省もそこに参加し、司法のお膳立てがあって、そこに参加し、そしてやっぱり三者が参加していくということでは、長崎もそこに参加してもらうように説得すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(實重重実君) 事実関係について申し上げさせていただきます。
 かねて、三者、今委員御指摘の三者というのは、国とそれから長崎県の地元の関係者の皆様、それから佐賀県あるいは原告団の皆様方と、こういう三者ということになろうと思います。
 私どもも、長崎県の地元関係者に対して繰り返し三者による対話はできないかということを呼びかけてまいりましたが、開門を前提とする話合いには応じられないということで、これに対しては長崎県側は反対という意見を表明されてきたところでございます。
 また、裁判におきましても、高裁で係争中の裁判の中で、裁判長からそのようなお勧めがあったわけでございます。その裁判では、佐賀側の訴えに対し、長崎側の関係者の皆様が補助参加されているわけでございます。国が被告でございます。そういう中で、裁判長からの和解に向けての協議はできないかというようなお勧めも繰り返しあったわけでございますが、長崎県側からは、開門を前提とした話合いには応じられないという御回答でございまして、なかなかその三者での話合いの場が実現するのも難しいという状況にありまして、苦慮しているところでございます。
○紙智子君 そういう状態がずっと続いてきたということなわけですから、やっぱりそれを、同じことを繰り返していたんでは仕方がないわけですよね。そこをやっぱり本当に踏み込んで、強い、もう一つ強いメッセージを出して、何とかやっぱり折り合い付くようにというか説得をするという努力をしていただきたいというふうに思うんですよ。そうでなければ、結局ずっといつまでもこの状態というのは続くわけですから、そこのところは強く私申し上げておきたいというふうに思います。
 私どもとしては、やっぱり漁業と農業が本当に両立するということが願いなわけですよね。元々、宝の海と言われていた有明海の再生を願っているわけで、農水省はやっぱり、過去ずっとかなりもう時間たっているわけですけれども、強引にこの排水門を造って一次産業を担う農業者と漁業者に対立を持ち込んだと、これは私は国の責任が非常に大きいというように思います。
 福岡高裁の判決というのは、先ほども言いましたけれども、永久に開門せよということを命じているものじゃありません。調査するための開門だと。その開門を行って、農業も漁業もやっぱり両立できると、また、その宝の海も復活することができると、そういう道を目指すということこそ対立を持ち込んだ国の取るべき行動だというふうに思うわけです。そのことを強く強調いたしまして、質問とさせていただきます。