<第183回国会 2013年3月26日 農林水産委員会>


水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、震災の復興問題についてお聞きします。
 東日本大震災から二年がたちました。それで、気仙沼市や宮古市など幾つか私も回りましたけれども、まだ復旧復興には程遠いという実感です。そして、被災者のニーズは変化をしていまして、今の段階に合った対応や新たな支援が求められているということを感じています。特に、今最も強い要望として出されるのが住宅再建支援なんですよ。漁業者の皆さんも、最初はとにかく海に、早く仕事をと、仕事を優先してやってきたわけですけれども、二年経ましたら、やっぱり落ち着くところ、住む家が仮住まいのままの状態でいるわけです。不安の日々を送っているわけですね。震災復興が遅れることで、生活基盤がない、なりわいがなかなか軌道に乗らない、先が見えてこないという中でストレスがたまって、目に見えない問題、心の問題が今非常に深刻になってきていると。ですから、今必要とされていることにかみ合った丁寧な支援をまず要望しておきたいと思います。
 そこで、水産加工資金についてなんですけれども、東北経済産業局が一月に発表していますグループ補助金交付先アンケート調査というのがありますね。これは、水産・食品加工業者の資金繰りを見ますと、調達済みというのが三九・三%、それから調達見込みというのが二五・四%、合わせて六四%なんです。資金調達というのは本当に簡単じゃないわけですね。調達先も地元の金融機関など民間が圧倒的です。ですから、水産加工資金を含む政府系の金融ということでいうと、これ一六・五%にとどまっているわけです。
 水産加工資金は、グループ補助金や復興交付金などの震災関連補助事業の自己負担分の八〇%まで融資を受けることができると。そこでちょっとお聞きしたいんですけれども、二〇一二年度の利用実績、これを端的に教えていただきたいと思います。
○政府参考人(本川一善君) 平成二十四年度につきましては、十二月末現在の融資実績三十二件中二十件が震災関連の実績となっており、さらに、そのうち十二件が補助残に当てられているという実態にございます。
○紙智子君 ありがとうございます。
 今、震災関連で二十件中十二件という話がありましたけれども、大臣、この数字余りにも少ないと私は思うんですけれども、どういうふうにお感じになりますか。
○国務大臣(林芳正君) 数が多いか少ないかというのは、全体の中でのということもありますし、過去に比べてどうかと、いろいろあると思いますが、この水産加工資金の利用をする場合には、無利子化をするということと、それから三年間延長する特例措置と、こういうことを講じておりまして、また先ほどちょっとこの窓口の敷居が高いという御指摘もあったんですが、被災者からの相談にやはり親身に対応していただこうということ、そのことと併せて、なかなかそういう手続に慣れておられない方もいるということもございましたので、提出書類の簡素化とか手続の迅速化ということで、なるべく負担軽減をしていこうということでやっております。
 漁港の施設の復旧、先ほどもどなたかの御質問がありましたが、そういうこともありまして、これから水産加工業者の復興というのが本格化をする地域もあるんではないかと、こういうふうに思っておりまして、今からこういう、先ほど申し上げましたこの資金のメリットが現場の水産加工業者に浸透しますように、こういう制度があるので是非御活用くださいということで周知を図ってまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 岩手県の宮古の漁業水産業者の方からお聞きしますと、やっぱりこのグループ補助金の四分の一の自己負担分、ここを工面しようと必死になってこの間頑張っているんですけれども、とうとう工面できずに再建を諦めたという会社の社長さんの話も私はお聞きしているんですね。民業圧迫という議論もあって遠慮しているという面もあるのかもしれませんけれども、やっぱり必死に努力している方に対して国が支援しなくて誰が支援するのかというふうに思うわけで、今大臣もきちっと周知徹底を図ってと言いましたけれども、是非積極的に活用されるように対策を打っていただきたいと思います。
 加えて、震災後、大型補正予算が二〇一一年度末になってしまったと。それで、補助事業ができる前に事業を再開した方から補助事業の遡及の適用を求める声が上がっているわけです。例えば、養殖業者からは、支援を待っていられずに自力で設備投資したと、ところが一年目のカキは経費が掛かり過ぎて生活できるような水揚げにはなっていない、赤字だということなんですね、その分について遡って補助できないかという声です。それから、船の中古品を自腹でとにかくいろいろ資産をなげうって買ったという人もいますし、水産加工業者も津波ですっかりやられてしまったんだけれども、自力で直した部分もあって、そういうところまで遡って支援から漏れた部分を適用してほしいんだという声が出されているわけです。
 資料の中にも、水産の食品加工業の復興そのものが非常に厳しいということがうかがえるわけですけれども、是非、この補助事業が遅れたために自力で最初頑張った方に対して支援を検討すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今お話のございました、がんばる養殖復興支援事業でございますが、これは養殖業の実態として、経営を再開する、今委員がお話しになったように、それから出荷をする、そこまで、最初に設備投資等いろいろ入って、最後の出荷のときに収入が得られる、その間収入がないということなものですから、まず人件費とか燃油費等の生産に必要な経費をまず一旦助成して、水揚げ金額からそれを返還してもらうと、こういう仕組みになっておりまして、その際赤字となった場合には、その十分の九を返還不要とすると、こういう事業でございます。
 したがって、その赤字が確定した後、この事業に、最初はなくて、赤字が出たので事業参加するということができるようになってしまいますとモラルハザードが起こるということでございまして、そういう意味から、生産物の販売前に漁協等を通じて事業に参加するということを求めているということでございますので、販売が終了して収入が得られたその後ではなかなかこの事業の対象にすることが難しいということでございます。
 ただ、今委員がおっしゃったケースに当たるかどうか分かりませんけれども、もう資材を買ったと、それが大きな設備投資だったりして複数年にわたってこれを償却していくという場合がもしあるといたしますと、この事業、その途中で参加しても、その参加した後で償却経費の一部、その参加した後に償却分が発生する分、これを事業の中で支援すると、こういうことは可能になる場合がございますので、具体的な事例がもしあれば、それに基づいていろいろと御相談をさせていただけたらと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 いろいろな場合があるんですよね。ですから、やっぱり遡及適用を求める要望が出ている以上は、きちっとやっぱり調査をしていただいて、ちゃんとしっかり手の上に乗せて対応していただきたいというふうに思います。
 いずれにしても、やっぱり想定外の本当に大変な災害を受けていることでもありますから、それはやっぱり通常の枠じゃなくて、本当に今までの従来の枠を超えて、何も、失われてしまって、ない中で復興しようというところに対して力を尽くしていただきたいというふうに思います。
 それから次に、諫早湾の潮受け堤防の問題についてお聞きします。
 昨年、有明海の水産物、大変な被害が出て、私はこの委員会でも支援を求めたわけです。今年も、例えばタイラギは休漁だと、アサリはへい死していると。それから、佐賀県の方でもノリも一部で色落ちや赤腐れ病の被害が発生しているというふうに聞いています。改めて、昨年と同様、この被害調査を求めておきたいというふうに思います。
 そこで、今日は、この諫早湾の干拓潮受け堤防の排水門の開門時期についてお聞きしたいと思います。
 福岡の高裁判決で、国には開門の義務があるわけですよね。原告団は、この裁判の勝利側の権利者なわけです。それで、大臣は二月に会われたと思いますけれども、原告団の方は十二月ぎりぎりではなくて、せめて十月開門をしてほしいというふうに求めているわけです。今、三月なわけですけれども、十月に開門する方法をあらゆる手だてを尽くして検討すべきではありませんか、大臣。
○国務大臣(林芳正君) 諫早湾の干拓事業の排水門につきましては、今委員から御指摘がありましたように、福岡高裁判決の確定によりまして、国は本年十二月までに開門すべき義務を負っているというところでございますが、これは、私も現地に参りまして、今お話がありましたように原告団の皆様ともお話をさせていただきましたし、それに先立って関係者の皆様が大臣室へいらっしゃったり、また現地へお邪魔したときも、原告団のみならず現地の関係者の皆様からも、今お話がありましたように、開門に当たって、ノリ養殖を始めとして漁業への悪影響が生じないようにしてくれと、こういうような御要請の中で、なるべく早期開門できないのかと、こういう御意見も賜ったところでございます。
 十二月までというふうに判決がございまして、これを前倒しということでございますが、現地へお邪魔したときも、佐賀の後、長崎にも参りまして、現実問題として、長崎の地元の関係者の理解というものがこの前倒し開門について得られるということはなかなか難しいのかなということ。それからもう一つは、海水の淡水化施設の設置等々、開門準備のための工事に一定の期間が必要になることということがございますので、開門時期を前倒しすることは非常に難しいと、こういうふうに考えておりますし、その旨、佐賀の関係者の皆様にもお話をしたところでございます。
 我が省といたしましては、この調整池ですね、これの水位を現状と変えない制限開門の方法ということで、これは環境アセスメントではケース三の二ということになるわけでございますが、これを提案をしておるところでございまして、この方法を取れば諫早湾を越えて影響が及ぶことは想定されないと考えておりますが、これに加えて、一か月掛けて開門は慎重に行って……
○紙智子君 そこまでは聞いていないです。
○国務大臣(林芳正君) よろしいですか。
 したがって、漁業被害の生じることのないように万全を期してまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 今、前倒しはできないという話があったんですけれども、これやっぱり、長崎の関係もちろんあって、協議をしなければいけないというのはそうだと思いますけれども、初めから十二月でいいというのではなくて、やっぱり十月に開門できる方法を示すべきだと、あらゆる手だてを尽くして示すべきだと思うんですよ。
 干拓地の水の確保が必要だというのは、これ、実はもう一年以上も前から原告団の皆さんが言っているんですよ。開けることになれば当然水は必要になるわけだから、そのための手だてを農水省として考えているのかと。いろんな手だてを尽くして、ちゃんと水の確保、十月から十二月の水の使用は十六万立方メートルだというんですけれども、その確保としてちゃんとやるべきじゃないかと。ところが、今農水省が言っているのは、ため池と淡水化施設の二つだけですよね。ため池は来年の三月だと、淡水化施設は十二月だと。これはやっぱり十二月に、何としても前倒しで開けてほしいという、そういう、言ってみれば、勝利者の方の、勝利の、権利を持っている方たちの声をもう最初から聞く気がないというふうに等しい態度だと思うんですよ。
 十月から水を確保しようというふうにいろんな手だて考えれば、いろんなことを考えられると思うんですね。さっき福島の話がありましたけれども、福島第一原発で今、水を海に流さないためにタンクを造っているわけですよ、ためておくための。これはもうすごい勢いで造っていますよ。どんどんどんどん造っていますよ。そういうことを考えれば、技術的に、例えばタンクを造って、そこに水をいろんなところから運び込むということも含めて、用意しようと思ったらできないこともないんじゃないかというふうに思うわけですよね。
 そういう点で、もっとやっぱり真剣に検討するべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今、委員からも御指摘がありましたが、前倒しについては、佐賀県の皆様や先ほどの原告弁護団からの要請というものがあって、いろんな検討をしてきたところでございます。
 まず、ため池でございますが、全ての営農用水、これを貯留するために容量十万トン規模のものが三十二か所程度必要であると。それから、この地域で十月半ばまでに水田に大量の水が必要であるということでございますので、十月から十二月までの必要な水を暫定的にため池に求めようとしても、その造成に相当な期間を要するということ。それから、川の水があるじゃないかと、こういうことも……
○紙智子君 それはいいです。
○国務大臣(林芳正君) いいですか。
 それから、下水処理、これも七倍程度の希釈。それから、地下水というのもございましたが、これは地元の関係者の強い反対があって駄目だと、こういうことでございますので、海水の淡水化の手法を基本とするという以外に適当な方法がないと考えておるところでございます。
○紙智子君 タンクの話も今したんですけれども、そういう、いろいろ知っていますよ、そういうふうに言っているのは。だけど、本当にあらゆる手だてを、できないということを理由を挙げるんじゃなくて、やれることが何かないかということで探してほしいということを言っているわけですよ。
 元々で言えば、やっぱりこれ元々は漁業、農業両方成り立つようにするために国が責任持ってやるのが本当であって、やっぱりあそこは宝の海だったわけですよ。干潟という、本当に生態系を維持できる干潟というものがあったのに、そこに閉め切られて、その宝の海がなくなってしまったわけですよ。今、漁業者の皆さんは宝の海を戻したいと、農業も漁業も両方成り立つようにしたいという思いでいっぱいなわけですよね。
 ですから、そこを本当にやっていける方法として考えるべきだし、この間、長い間時間掛けて、早くから原告団の皆さんは提案しているのに、農水省の方はまともにそれにこたえようとしていないわけですよ。そこが私は問題だと思います。そういう意味で、引き続いてこの問題やっていきたいと思いますので、是非……
○委員長(中谷智司君) 申合せの時間を過ぎておりますので、質疑をおまとめください。
○紙智子君 はい。
 よろしくお願いしたいと訴えて、質問を終わります。