<第183回国会 2013年6月13日 農林水産委員会>


TPP説明会の公開を求め、公開が実現。HACCPや未承認遺伝子組み換え小麦の流通問題、アベノミクスによる燃油高騰問題を追及。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、法案の質問に先立ってTPP問題ですけれども、十七日、政府のTPP交渉に関する業界団体への説明会が非公開で開かれることが報道されておりますけれども、これは一般国民向けの説明会はないと、パブリックコメントも予定されていないということで、なぜ非公開なのか、そしてこういうパブリックコメント、国民への説明というのは当然やるべきだと思いますけれども、まずこの点について農水大臣に伺います。
○国務大臣(林芳正君) これは、先ほど平山先生のときに少し触れました、TPP政府対策本部というところがございます。ここで説明会をやると、こういうことでございます。
 各分野に関心、利害、知見を有する関係団体を対象に説明を行って意見を言っていただくということで、今お話があったように情報提供ということが大事でございますので、この説明会で政府が使用する説明資料等は広く国民に情報提供するために対策本部のホームページに掲載をする予定にしております。また、別途ほかの団体等からも意見を聞くことも検討されているということを聞いておりますので、我々といたしましても、しっかりとこの農業者、農業者団体等々、また水産、林野の関係の方にも丁寧な説明それから情報提供を行っていきたいと考えておるところでございます。
○紙智子君 そういう説明会は非公開じゃないんでしょうか。広く一般の国民も含めて参加できる、要請があれば参加できるようになっているんでしょうか。そこのところを今お聞きしたんですが。
○国務大臣(林芳正君) これは、申し上げましたように、関心や利害を有していらっしゃる関係団体を対象に説明を行って、説明する方は、どなたでも見られるように掲載をするということでございます。今度は、その団体の御意見を聞くというところは、こういう説明会でじっくりやるということで、こういうふうにしておられるんだろうと、こういうふうに思いますが、いずれにしても、対策本部の方でおやりになるということで、詳細は対策本部の方にお聞きいただければと思います。
○紙智子君 業界団体でそのやり取りする場面というのは当然必要ですけれども、一般の国民の皆さんも含めて説明の場所をつくるべきだし、野田内閣のときにも、情報公開がされていない、国民に納得いくようなことがされていないということで批判があったわけですし、やっぱり当時は野党だった自民党さんからもそのことに対する批判も多く出されていたと思うんですよ。
 それで、やっぱり徹底して国民に説明する機会と意見やり取りできる場所を設けるべきだし、民主党政権のときにもやったその説明会というのは、農水省の側から、政府の側からの説明が一方的であって、疑問とか質問出されてもちょっとしか時間が取れなくて相当批判もあったわけで、そこはこの先随時やっぱりやっていく、説明の会を設けていくということを是非おやりいただきたいということを申し上げたいと思います。ちょっとこれに対しても一言お願いします。
○国務大臣(林芳正君) 大事なことでございますので、政府対策本部の中でどういうことができるのか、情報提供の観点からしっかりと検討してまいりたいと思います。
○紙智子君 それでは、HACCP法案について質問します。
 厚生労働省に、この間、HACCPを採用している企業の過去十年間の食中毒事件について報告を求めたところ、ありませんでしたということだったんですね。しかし、二〇〇八年に大手食品企業の伊藤ハムの東京工場でウインナー製造に使われる地下水からシアン化合物が検出されて、それでも一か月間製造を続けた事件が起こりました。
 HACCPシステムでは、食品加工に使われる水というのは重要な監視ポイントになって、その監視ポイントに異常が見付かれば直ちに食品製造を中止するということがこれHACCPシステムの大原則です。ですから、伊藤ハムという大手企業がHACCPシステムの基本原則を理解していなかったということなんですね。
 HACCPシステムというのは、衛生設備を導入してシステムをつくれば終わりということではないわけです。絶えざる点検と検証が不可欠なわけで、果たしてどれだけそのことを理解してもらえているのかというふうに思うわけですね。
 このシステム導入の企業に対する指導体制がどうなっているのか、最初にちょっと厚生労働省と農水省、それぞれ簡潔でいいですからお答えください。
○政府参考人(新村和哉君) お答えいたします。
 HACCPを導入いたしました食品衛生法上の総合衛生管理製造過程の承認施設に対する監視指導でございますが、国の地方厚生局の方では三年ごとの更新時は必ず、また必要に応じてその間も立入調査を行っております。
 また、施設を管轄する都道府県におきましても、毎年度、監視指導計画を策定して立入調査を行っておりますが、この総合衛生管理製造過程を実施している施設に立ち入る場合には、それが確実に実施されているということを確認することとしております。
 今後とも適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
○副大臣(加治屋義人君) HACCPは、食品製造工程において継続的に監視、記録を実践することが最も重要であります。施設や体制を整備するだけでその目的が達成されるものではありません。取組状況のフォローアップが必要であることは紙先生御指摘のとおりでございます。
 これまでも研修等を通じて日々の取組の重要性の周知を図ってきましたけれども、反省を踏まえまして、今年度から専門家を派遣し、HACCP導入状況のフォローアップを行い、改善点の指導等を行う取組に対して支援を行うこととしたところでございます。
○紙智子君 この伊藤ハムの役員からの聞き取りで明らかになったもう一つの問題点というのがあって、HACCPマークがないと営業ができない、あるいは作っても業務用にしか売れないという、営業部門からそう言われるんだという認識があったわけです。結局、売上げを上げる活動の道具としてHACCPが扱われるという現実があると。食品産業センターでも、対外的に認証取得をPRしたいという理由だけでHACCPの認証を目指すというのは、これはかえって自社を危険にさらすことになりかねないんだということも言っているわけです。
 それで、農水省として、こういうHACCPの取扱いがなされないように対策を取っているかということについてもちょっと一言お願いします。
○大臣政務官(稲津久君) お答えいたします。
 このHACCPの認証取得が具体的にどういう影響があるかということについての中で、議員から今御指摘の、PRに利用されるだけじゃないか、そういう側面がないかという御質問でございますけれども、これは農水省が実施しました調査のことを一つ例に取って御紹介させていただきたいと思うんですけれども、この調査によりますと、HACCP導入の企業のほとんどがHACCPの導入効果として、品質、安全性の向上、それから従業員の意識の向上、これは非常に高く、九五%また七八%と回答いただいております。
 こうした結果から見ても、HACCPを導入した企業、これが、食品の安全性の向上、衛生それから品質管理徹底、こういったことで、HACCP本来の目的を実現できるようにHACCPに取り組んでいただいているものと、このように認識しているところでございます。
 それで、その上で農水省としての取組のことについて簡潔に申し上げたいと思いますけれども、このHACCP本来の目的をやはり実現するということが一番大事なことでございまして、そのために、高度化基盤整備の具体的内容を有識者また業界関係者にも、交えて検討した上でその普及を図る、それから一番大事なポイントとして人材の育成研修、それから専門家を製造現場へ派遣する、こうしたソフト面での支援もしっかりやっていくと、このようにしているところでございます。
○紙智子君 HACCPの導入が、先ほども議論になっていましたけれども、中小企業に進まないというのはある意味当然とも言えるわけです。
 なぜかといえば、本来、このHACCPというのは衛生設備の問題ではないわけですよね。衛生設備の問題ではないのに、それがセットになっていると。それから、システムについても当然監視要員が必要になるので人件費が掛かると。別にHACCPを導入しなくても、食品衛生法上は何ら問題はないと。
 本来、HACCPを導入するかどうかということではなくて、大事なことは、食品衛生基準をどうきちんと守るかということがすごく大事なことで、それをきちんと守っている企業が更に衛生水準を上げたいと、あるいは、輸出する際に相手国がHACCP対応じゃなきゃいけないという場合にそれを導入するということになるわけで、とにかくもうしゃにむに自己目的化して、それやらなきゃいけないということではないと思うんですよね。その点ちょっと、厚生労働省、いかがでしょうか。
○政府参考人(新村和哉君) 御指摘ございましたとおり、食品の安全性につきましては、現行の食品衛生法に基づく規制によって基本的には確保されているというふうに考えております。
 一方、HACCPという手法ですが、これは国際的にも食品衛生管理の手法として推奨されているものでございまして、欧米を始め各国で義務化しているところもあり、また導入が推進されていると承知しております。
 厚生労働省といたしましても、HACCPは食品製造施設等における衛生管理の手法として有効と考えておりますので、総合衛生管理製造過程の承認制度を設けておりますほか、監視指導の上でも、食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針といったものを設けて、この中で講習会の実施など導入推進を図ってきたところでございます。
 ただ、中小企業におきましては、御指摘もありましたように、人材の確保とか施設の整備とか、困難な面があるということも承知しているところでございます。こういった中小企業も含めまして、HACCPといった手法について事業者に分かりやすいガイドラインを作成して周知していくといった取組も考えておりますので、中小企業の中でも導入可能な施設からHACCPが普及されていくということを期待しているところでございます。
○紙智子君 自己目的化すべきでないというふうに今言いましたけれども、それで、最後、大臣にこの問題で、法律があるからといって、自己目的にHACCP導入を中小企業に押し付けるべきではないというふうに思うんですが、企業の自主的取組の中でやっぱり当該企業が必要だと判断したときに支援をするというスタンスを保つべきだと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今、厚労省からも答弁がありましたように、その段階的にできるところからやっぱりやっていくということが大事でございます。
 HACCP自体は非常に有意義なものであるということは共通認識でありますが、しかし、これを目的化して、とにかくこれ取ることが目的になるということではなくて、あくまで手段であるということはまず基本的に押さえた上で、なるべく過去の今までの実績、先ほど山田委員のときにも議論になりましたが、こういう実績ですから、やはりそれを今回は二段階ということでやることによって、一段階目をやっていただくと更にそういう意識も高まってきて、じゃ、やろうかと、こういうような段階的な取組をやっていくということによって自主的な取組を促していきたいと考えておるところでございます。
○紙智子君 ありがとうございます。
 それでは、次、燃油の問題について質問をいたします。
 それで、先ほどもちょっとこれも話ありましたけれども、アベノミクスで円安が進んで燃油価格が高騰したと。水産庁として六月五日に対策を出して、漁業用燃油緊急特別対策ということで発表されたわけです。それで、特別発動ラインを設定して支援を行うということで、発動ラインが燃油価格で一キロリットル当たり九万五千円と。この水準を超えた燃油代の四分の三を国が負担するというのが特別対策の柱になっていると。
 緊急支援を求めて五月二十九日に中央でも集会ありましたし、その前日は北海道でも集会あって、そこに私も行ってきたんですけれども、それで、集会決議で、急激な円安による燃油等の高騰が漁業経営を襲い、自らの経営、存続努力の域を超えて、出漁の断念のみならず廃業にまで追い込まれる経営体も出現していると。今を、今を乗り越えていかなければ将来はないというふうに言っていて、求められているのは今を乗り切るという対策なんですよね。
 そこで、ちょっとお聞きするんですけれども、この特別対策の発動ラインがなぜ一キロリットル当たり九万五千円なのか。なぜ、例えばもうちょっと低い八万とか九万にならなかったのかということについて、大臣にお聞きします。
○副大臣(加治屋義人君) 先ほども平山先生の方から質問がありました。
 漁業用燃油緊急特別対策の発動ラインについて、現行の漁業経営セーフティーネット構築事業の半数の加入者の積立金が平成二十六年三月末に払底する価格水準、いわゆるA重油のリッター当たり九十五円としたものであります。これらを踏まえまして、この特別対策は、平成二十六年度末までの緊急対策として、現行制度に加え、特別対策発動ラインを超えた場合には、現行制度の加入者に対し上昇分の四分の三を国が負担すると、このことが柱となっているところでございます。
 今どうするんだという話が先ほどありましたけれども、先ほど稲津政務官から話ありましたので省略させていただきます。
○紙智子君 漁業者は、現在の発動ライン、一キロリットル当たり八万円でも経営が苦しいっていうふうに言っているんですよね。それで、八万円から九万五千円の間でもしこの価格が推移した場合に、漁業者への新たな支援があるのかって聞いたら、これ現行制度で行うっていう答弁になるんですけれども、これではやっぱり足りない。現行制度だと結局、国と漁業者一対一なんですよ、ですよね。これでは足りないと。それで、やっぱり漁業者は今を乗り切る対策を求めているわけです。今の、今回の対策でいうと、そういう意味ではまだ十分とは言えないということなんですね。燃油の限界でいうと、一キロリットル当たり六万円でももう本当に厳しいっていうふうに言われていて、漁業によってコストはもちろん違うんですけれども、現行の八万円台でも大変だと。
 それで、アベノミクスの円安によって生まれているこの燃油高ということですから、やっぱり国がそこは本当に責任持って今を乗り切れるように更に引き上げていくというふうにするべきではないかと思いますけれども、これについて、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(林芳正君) 今お話がありましたように、上昇分の二分の一のところが現行の制度でございまして、八十円という今のライン、補填基準が七中五ですからそうなっておりますが、今回は九十五円に設定させていただいたと。
 私、かねがね異常高騰分についてということを申し上げてきておりました。それは、やはりこういうものは一対一にしても三対一にしても積立てをしていただく、これに加入していただくということがベースでございます。それを根底から変えますと、今実際に積立金を払って加入されている方との公平性ということがどうしても議論になってくるわけでございまして、したがって異常高騰分を先ほど副大臣からお答えさせていただいたようなところに設定するとともに、なるべく入っていただくと。これ単協によってかなり入っていただいているところとまだそうでないところと様々な現場の状況もございますので、先ほど御議論があったように、年度途中でいつでも加入して四半期ごとにプログラムに入っていけるようにするですとか、それから初年度の積立金は全額利子を負担、無利子にして借入れできる、こういうようにしてなるべく入っていただくと、こういうことを併せてやっておるところでございます。
○紙智子君 もちろん入ってもらうようにするというのはそうだと思うんですけれども、今現状では、乗り切るのが大変だっていう現状があるので、そこは、たしか自民党さんの中でもまだこれでも不足だからもっと上げようっていう話が議論されているというふうに聞いていますけれども、是非そこは現場の皆さんの声をしっかり受け取っていただいて、更なる検討を、上増しをお願いしたいと思います。
 ちょっと時間なくなりますので、最後に遺伝子組換え問題でお聞きします。
 未承認の遺伝子組換えの小麦の問題なんですけれども、米国のオレゴン州で未承認の遺伝子組換えの小麦が作付け地帯で自生していることが判明して大問題になっていて、これについてのまず経緯についてお聞きしたいのと、ちょっと時間ないのでまとめて二つ併せて言っちゃいますけれども、それは農水省に聞きます、その経緯についてですね。
 それからもう一つ、併せてですけれども、厚生労働省に、本来はこれ未承認遺伝子組換え作物が実験施設から一般圃場に流出するということ自体決してあってはならないことなんですね。ですから、モンサントがいかにずさんなことをやっているかということなんですけれども、それが現にあったということは、大量に遺伝子組換え作物を輸入に依存している日本にとってもこれ重大なことでありまして、あり得ないことがあったわけですから、これまでの監視体制を抜本的に見直すべきではないかと思うんですね。
 この点について、農水省と厚生労働省、それぞれお願いします。
○大臣政務官(稲津久君) まず、これまでの経緯について私の方から説明させていただきます。
 アメリカの農務省が、アメリカの現地時間の五月二十九日ですか、にオレゴン州の小麦農家の圃場で米国や我が国で未承認となっている遺伝子組換え小麦の植物が確認されたこと、それから、米国その他のいかなる地域においても販売や商業栽培が認められている遺伝子組換え小麦品種は存在しないこと、これを公表したわけでございます。これに対して、当省からはアメリカの政府に対してより詳細な情報の提供を求めるところでございますけれども、現時点において追加的な情報の提供はまだ得ていないところでございます。
 このような状況の中で、農林水産省として念のため、オレゴン州で生産される小麦で我が国へ輸入される可能性が高い、いわゆるアメリカ産のウエスタン・ホワイト及び飼料用小麦の入札、これを五月三十日から暫定的に止めているということでございまして、売渡しを停止したところでございます。
○委員長(中谷智司君) 新村食品安全部長。答弁は簡潔にお願いします。
○政府参考人(新村和哉君) はい。
 我が国で安全性審査が終了していないこういった遺伝子組換え食品の輸入防止は、まず輸出国におきましてきちんと栽培管理が行われることが適切と考えます。
 その上で、厚生労働省といたしましても国内外の関係情報を収集しておりまして、このような安全性審査が終了していないものが混入が発見された場合には、詳細な情報を当然収集いたしますし、その上で検査方法を策定し、必要に応じて輸入時の検査体制を確保するなど、我が国に輸入されることのないように迅速かつ適切に対応することとしておりまして、今回の問題につきましても、農林水産省と連携し、米国における調査結果も踏まえまして、必要な適切な対応を取ってまいりたいと考えております。
○紙智子君 終わります。