<第183回国会 2013年5月29日 沖縄北方特別委員会>


ビザなし交流事業の改善にむけて関係者の要望ききとり求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず冒頭、米軍嘉手納基地の所属のF15戦闘機が沖縄の本島東側百二十六キロの太平洋上に墜落事故を起こしたことに対して、厳重に抗議をいたします。F15はこれまでも、沖縄では二〇〇二年の八月、二〇〇六年の一月に墜落事故を起こしておりまして、米軍基地がある限り事故は何度でも繰り返されると思います。
 普天間基地配備のMV22オスプレイが昨年十月から十一月だけで、これは県の調べですけれども、三百十八件に及ぶ違反飛行をしています。今回の墜落事故に対して沖縄県の仲井眞知事は、一歩間違えば人命、財産にかかわる重大事故につながりかねず、県民に大きな不安を与えたということで訓練の中止を求めています。
 是非これは政府としても米軍に対して訓練の中止を要請すべきだと思いますが、いかがでしょうか、外務大臣。
○国務大臣(岸田文雄君) 今回の事故ですが、米軍の訓練区域内で訓練をしている際に発生したと承知しておりますが、米軍機の運用に際して公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない、これはもう当然のことであります。我が国からも原因究明及び再発防止の申入れを既に行っているところでありますが、今後、米側の原因究明の調査が行われた結果についてもしっかりと提供を受けて、現状を確認をしていきたいと考えております。
 そして、済みません、先生、訓練というのはどの部分の訓練を最後おっしゃっていたんでしょうか。訓練の中止というのは、この米軍の、今後全体について……
○紙智子君 そうです。全体の、オスプレイも含めて。
○国務大臣(岸田文雄君) オスプレイも含めて、全体の話でしょうか。はい、失礼しました。
 まず、こうした安全につきましては、我が国としましても、この日米合同委員会を始め様々な場を通じてしっかりと申入れを行い、米側の対応を求めていかなければいけないと考えております。
 そして、訓練についてでありますが、我が国の厳しい安全保障環境の中で、まずは自らの防衛力を強化していかなければいけない、あわせて、日米安全保障体制の下で日米同盟の抑止力を維持向上させていく、こういったことも大変重要であります。その中にあっての訓練というものの意味についてしっかり考えながら、この訓練のありよう、あるいは移転というものについて考えていかなければならないと思っています。
○紙智子君 原因究明だけじゃ駄目で、やっぱり繰り返されているわけですから、二度と起こさないということを強く言わないと。これは結局同じことを何回も言っているわけですよ。もう絶対許されないということをもう一言申し上げておきたいと思います。
 その上で、今度は北方の関係です。内閣府、外務省、北海道がビザなし交流事業の見直しについて三月に提案されているんですが、二十年間のこの間の事業を振り返って、三年後をめどに全般的な見直しを図るということです。今後、この隣接地域や千島歯舞居住者連盟などの関係団体、関係者の声を丁寧に聞き取って進めていただきたいなと思っております。
 提案の中に、同じ人が何度も参加している問題点の解消ということが指摘されていて、先ほども議論になっているんですけれども、内閣府として、複数回参加による効果的な点というのは承知されているんでしょうか。
○政府参考人(河合正保君) お答え申し上げます。
 北方四島交流事業と申しますのは、領土問題解決までの間に、日本国民と四島に居住するロシア人との間の相互理解の促進を図ると、もって領土問題の解決に寄与することを目的といたしております。同じ方が複数の事業に参加するということによりまして特定の人が向こうの住民と顔なじみになるというようなことはあるとは思いますが、全体として相互理解の増進を図るということのためには、むしろ若い人たち、将来を担う若者などにできるだけ参加していただく、各界各層の幅広い参加を促進していただくことが大事ではないかと考えまして、今回の方針のような措置を行うことといたしたところでございます。
○紙智子君 参加する人たちが幅が広がるということ、これは大事だとは思うんですけど、顔見知りが増えるというだけではないんじゃないかなと思うんですよね。
 現地のロシアの方と人間同士の交流が深まって、やっぱりロシアの人たちにも日本人の歴史とか愛着がしみ込んでいる土地だということがよく分かるということでいうと、その認識を深めるということでいうと、同じ人なんだけれども、行って、本当に深く、何ていうかな、理解し合える関係をつくるという面はあるんじゃないのかなと。必ずしも解消すべき、余り機械的にそこはやらない方がいいんじゃないのかなというふうに思うわけです。是非、様々な御意見があると思うので、そこは把握して再考をお願いしたいと思います。
 やっぱり、それにしても参加枠の問題というのはあると思うので、更に多くの人が参加できるように枠を増やすということは考えるべきだなと。その方策の一つとして、例えば、今、夏期に限定されている船舶での交流ですけれども、これは夏なわけですけれども、冬期間のということを考えると、航空機利用、これについても今から検討するべきではないのかなと。
 「えとぴりか」が就航して、これ自体がこれからも大きな役割を果たすということで期待されるんですけれども、専用船の導入にしても、これ検討を始めてから十年以上たっているんですよね、実際にでき上がるまで。それ考えると、いずれやっぱり飛行機ということになるんでしょうから、今からこの航空機の利用も次のステップとして検討に掛かってほしいなと思います。これについて、担当大臣、お願いします。
○国務大臣(山本一太君) 北方四島交流事業については、現在、北方四島交流船「えとぴりか」、今お話出ましたが、これを活用することによって、北方四島への訪問事業を年八回実施することによって行っております。年八回だと思います。大体一回四日少なくとも掛かるので、四、五日ということだと思うんですが。これを増加させる、本当に増加できれば、簡単に増加できればこれにこしたことはないんですけれども、ロシア側との調整というのが必要で、これはかなり厳しい調整が予想されるかなと考えております。
 また、「えとぴりか」は訪問事業以外に四島住民の受入れ事業に年五回、それから元島民のふるさと訪問である自由訪問事業に年七回使用しています。北方四島海域の気象条件、御存じだと思うんですけれども、冬は非常に悪天候が多いものですから、これによって事業の実施がどうしても五月から九月末までになってしまうと。こういうことがあって、訪問事業の回数を増やすことには物理的にもなかなか困難な部分がございます。
 航空機を活用した訪問事業は、平成十九年の十月二十三日の日ロ外相会談で、航空機利用の可能性について検討を始めるということについては意見の一致を見ておりますので、これは検討しなきゃいけないと思うんですが、航空機の利用は日ロ両国の法的立場を害さないことが必要だというのがあるほか、新航路の設定とか費用の問題とかまだまだ様々問題ありますので、関係省庁、関係団体とも十分相談しつつ慎重に検討していくことが必要かなと考えております。
○紙智子君 ビザなし交流は、日ロ間に領土問題が存在しているということのあかしでもあると思います。ですから、是非、ロシアの方と知り合って領土返還まで着実に進めるということで、今検討されているということなんですけれども、やっていただきたいなと思います。
 それから、ビザなし交流の受入れ事業でいいますと、今後、若い世代の参加の拡大、青少年同士のサマースクールの実施などが挙げられています。
 外務省は、四島住民の日本語習得の事業を札幌で実施しているというふうにお聞きしましたが、こういう事業を根室で実施するのはどうなのかなと、やったらいいんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょう。
○政府参考人(上月豊久君) 今御質問いただきました四島交流事業の中の日本語習得事業について、これ大変重要な事業と考えておりまして、四島交流事業の枠内で、日本語の習得を希望する北方四島住民、ロシア人を受け入れて日本語の学習とともに日本国民との交流事業を行う、これをもって一層の理解を図るということを実施しておりまして、これは、この人たちが今後の四島交流事業の補助等の役割を担うものとなることも期待しておりまして、二〇〇一年から実施しております。
 研修機関をどこにするかということの御指摘でございましたけれども、本件事業の実施団体であります北方領土復帰期成同盟が企画競争方式により選定しており、これまで札幌の機関が選定されている経緯がございますけれども、今御指摘のありました根室も含めました北方領土隣接地域に所在する研修機関も本企画競争への参加は当然可能であると考えております。
○紙智子君 根室というやっぱり北方の玄関口としての地の利を生かした、そういう取組にできないかというふうに思うわけですよね。
 地元から上がっている声としては、実は今、根室の西高という高校が生徒数が減っていて、存廃について今年度議論が行われるんですけれども、根室市には二つ高校があるんですけれども、この一校が廃校されるということは、これ地域の影響も大きいわけです。それで、その根室西高を活用して、日ロの若い世代の交流に役立てる方策を検討できないかと。例えば、日本語コースを設置して四島からの生徒を受け入れる、あるいは日本人の生徒を受け入れてロシア語コースを設けるなど、日ロの若い世代の交流と学びの場として西高の活用をできないだろうか、検討できないだろうかということが上がっているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本一太君) 今のお話、西高で例えば日本語コースをやって若い世代の交流に活用する等々については、ちょっとその可能性を検討させていただきたいと思います。
○紙智子君 是非やってほしいんですよね。
 これ、文科省とか北海道が独自に考えて企画できるかというと、そういうテーマではないと思うんですよ、領土のかかわりでいうと。是非、地元にとって、これ高校の存廃って大きな問題なんですけど、それだけじゃなくて、大きな視野で見たときに、やっぱり地元の資源を活用した新たな取組ということの視点からも是非研究をしていただきたいと思います。
 それから、今回、ビザなし交流事業の実施主体の共催化、それから北対協が中心となった一元化ということで提案されていて、この北対協と道の推進委員会とでは財政力等に大きな差異があって、これ必要なことだというふうに思うんですね、一元化というのは。
 それで、安倍総理が首脳として十年ぶりに訪ロをしてプーチン大統領と会談を行ったと。領土返還への期待は高まっているわけで、返還も視野に入れた長期的な隣接地域対策に本腰を入れる必要があるというふうに思います。政府として、対策本部を、返還運動の発祥の地である根室に本部を設けて、閣法も準備をして、総合的な隣接地域対策、後継者対策を検討していただきたい。これについていかがでしょうか。
○国務大臣(山本一太君) 紙委員の問題意識は、省庁縦割りではなくて、北方領土の隣接地域振興を一元的に取り組めないのかということだと思います。前回も同じ趣旨の御質問をいただきました。
 これについては、もう本当に釈迦に説法なんですが、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律、これ、昭和五十七年の北特法に基づいて関係各省が連携しながら政府一丸となって取り組んでおります。その法律において、内閣府は国民世論の啓発、元島民の援護等について取り組むということとされていますし、この北方領土隣接地域振興は国交省の所管とこの法律の中でされているわけでございます。こうして関係各省がそれぞれ適切に事務を分担管理する中で、内閣府北方対策本部が総合調整機能を果たすというのが合理的だというふうに私たちは考えております。
 御指摘の実現のためには、今閣法というお話ありましたが、まず議員立法である北特法の改正が必要であり、国会において議論を深めていただくことが必要だというふうに認識をしております。
○紙智子君 その辺のところはずっと議論になって平行線なのかもしれませんけど、やっぱり調整機関と、内閣府が、これでもって限界があって、もちろん議員立法で議員自身がいろいろ問題提起して改善してやっていくというのはそのとおりなんですけれども、やっぱり主権にかかわる問題ですよね。領土の問題というのは国の主権にかかわる問題であって、いつまでも議員立法でいいのかと。やっぱり国として、きちんと閣法として設けて本来これ取り組まなきゃいけない問題なんじゃないのかと。そうでないと、確かに各省連携してやるんだけれども、結局、いつもそうなんですけれども、これはうちの所管じゃありませんという形でぐるぐる回りになってしまうということがこれまでもあったわけで、そこは是非今後検討していただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。
 ちょっと時間、最後になってしまいますけれども、最後に外務大臣にお聞きします。
 プーチン大統領の引き分け発言、それから双方が受入れ可能な方策ということで、これをめぐって、二島とかあるいは面積の半分化だとか、この数字の議論が進んでいるわけですけれども、領土問題の本質的な解決のためには、やっぱりちゃんとした道理ある主張でなければいけないと。どういう道理ある主張をするおつもりなのかということをちょっと最後にお伺いして、質問にしたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、具体的な交渉につきましては、この中身、これはまさにこれから交渉するわけですので、交渉事項でありますので、ここで具体的なものを申し上げるのは控えさせていただきたいと存じますが、この道理ある結論、我が国の基本的な方針は先ほど来再三繰り返させていただいているとおりであります。日ロ両国間の関係を発展させながら、北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する、こうした方針でしっかり臨んでいきたいと考えております。
 ただ、四島の帰属の問題につきましてしっかり結論が出た場合には、その具体的な時期とか対応につきましては、柔軟な対応が考えられるというのが我が国の基本的な方針であります。
○紙智子君 ちょっと時間になりましたので、またこの問題は続いてやらせていただきたいと思います。終わります。