<第183回国会 2013年5月21日 農林水産委員会>


成算のないTPP交渉撤退を求めるとともに、諫早干拓の開門調査問題を追及

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私、今のやり取りを聞いていまして、大臣の答弁が変わっているなと、前回私が質問させていただいたときと随分変わっているなというふうに思って聞いていたわけですが、それはちょっとまた違う機会にやらせていただいて、また私も違う角度から質問したいと思います。
 五月八日の予算委員会のときに安倍総理に質問したんです。そのときに、私の、日本の農産品の重要品目について何か一つでも守れる約束は取れたんでしょうかというふうに質問したのに対して、現在これは絶対大丈夫だということを申し上げることは残念ながらできませんというふうに総理はおっしゃって、農産品の重要品目について、今何一つ守れる約束がないということを明らかにしたわけです。
 まず、この点で、農水大臣としてはどのようにこれ受け止めておられますか。
○国務大臣(林芳正君) これ、五月八日の予算委員会は紙先生の御質問に対しての総理の答弁ということですが、紙委員の御質問は、何もまだ取れていないと、約束取れていないということですかと、こういう御質問でございました。総理の答弁は、まだ日本は正式にこの交渉に参加をしていないわけでございますので、現在これは絶対大丈夫だということは申し上げることは残念ながらできませんがと、そしてその後、まさにこれから始まる交渉の中においてと、こういう文脈でございましたので、これは御本人に聞いていただくのが一番確実だとは思いますが、このやり取りを見させていただければ、当然まだ入っていないので、今の段階で取れているものはないという趣旨で答弁をされたんだろうなというふうに私は受け止めております。
 まさに、総理が御答弁されたように、交渉の中で議論をしていくということでございますから、先ほど平山委員とやり取りさせていただきましたように、党や国会の決議を踏まえて、また共同宣言等々で農産物のセンシティビティーというのをきちっと、日本にあるということを両国の合意事項として、共通認識としてうたっておりますので、そのことを使いながらしっかりと確保に全力を尽くしていきたいと思っております。
○紙智子君 米国との二国間の協議の中でもこの話というのはされているはずなんですけれども、それをめぐってもまだ何ら要するにそういう話合いができていないということの表れだと思うわけですよ。だって、オバマ大統領と安倍総理が二月に共同声明を上げたときに、要するに例外なき関税撤廃が前提ではないという話を確認できたということを言っているわけですから、当然その進み方としては、じゃ、日本の重要品目についてはこれこれのものを守りたいと思っているんだと、それについては確認できるんですかということは、二国間であっても本来しているはずなんですよ。それが何ら明らかにされていないということがあるわけです。
 日米共同声明で、両国共に二国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつと、表現としてはしつつとしながらも、この日米の事前協議の決着で明らかになったことは何かというと、米国のセンシティビティーである自動車分野については最大限の関税の後ろ倒しという形で最大限の配慮がなされていると。さらに、日本の自動車市場の更なる開放という、この日米自動車協議を続行していこうということも決めているわけですね。
 さらに、四月二十四日の米国政府の、米国議会上院と下院ですね、この議長への書簡というのが出されていますが、これでは日本のセンシティビティーなどは一言も触れていないんですね。一言も触れていないですよ。
 農水大臣、こういう取扱いになっていることについて日本政府は何かアクションをしたのか、それとも唯々諾々とこれ米国政府に従っているんですか。
○大臣政務官(稲津久君) 経緯も踏まえて私の方から御答弁させていただきます。
 今、紙委員からの御指摘のこの四月の二十四日の米国の通商代表部の件でございますけれども、これは、米国通商代表部から米国の議会へ通知された書簡については、これは米国内の手続に基づいて米国通商代表部が国内向けに説明を行ったと、このようなものであるということで承知をしております。
 我が国の農産品に関するセンシティビティーについてですけれども、これは先ほど紙委員からも御指摘もありました二月の日米首脳が出しました共同声明、それから四月の日米合意の往復書簡、この中で確認をされていることでございまして、我が国としては、これらの日米間の共通認識、これをしっかり踏まえて国益を守り抜き、聖域を確保すると、このことに全力を尽くす考えでございます。
 以上でございます。
○紙智子君 今の答弁からいうと、結局これは全然そのことに対してアクションしていないということですよね。言われるままに今従っているというようなことだったのかなというふうに思っているわけです。
 それで、あれはアメリカ向けの国内向けに出しているものだからという話するんですけど、その言い方も私絶対おかしいと思うんですね。だって、USTRの作っている文書というのは、これは日本との交渉があったから、それに基づいて国内にも発表しているわけで、これはいいかげんな作り話でやっているわけじゃないわけで、合意が日本とあるところをやっぱり発表しているわけですからね。
 それから、このTPP交渉で最大限の交渉力を発揮してやるんだというふうに言っても、これ、この間の経過からいうと、総理大臣自ら三月十五日の記者会見で、既に合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実ですと言って認めているわけですよ。
 それだけではなくて、七月の会合の参加も、これ流動的なんじゃありませんか。必ず参加できるかどうかということもまだ決まっていないと。現時点で確実に参加できるというのは九月の会合だけですよね。だとすると、このたった一回の会合で日本の農業を守ることができるのかと。守れるって言うんであれば、具体的なその根拠についてどういうことがあるんだということでお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) まず、先ほどのUSTRから米国議会へ出されたものということですが、これはまさに政務官から御答弁をさせていただきましたように国内向けの説明ということで、それでは逆に、日米共同声明ですとかこの四月の往復書簡、これはお互い合意している文書で表に出させていただきましたが、これについての説明を我が国で例えば我々が関係者に対してやるとか経産省がやることについて、一々USTRがこういう文章にしろということを言ってくるんだろうかといえば、それはないわけでございまして、あくまでもそれぞれ自分たちの関係者について説明をすると。ただ、申し上げなきゃいけないことは、この共同声明、それから往復書簡、これは公開されておりますので、全ての関係者の皆様は見ることができるという前提の中でやっているということは申し上げておきたいと思います。
 それから、七月の交渉の見通し、これは今まさに最終段階で、今、大体会合の最後に次の会合の場所、時間等を決めるということでございますから、今やっております会合でこれは最終的に決まるということで、実質的な議論にきちっと参加をできるように引き続き関係国に働きかけている状況であるというふうに考えております。
 その後、九月ということは予定をされておりますが、これも申し上げましたように、今度は七月の会合がもしあれば、あるということで今やっているわけですが、今度は七月の交渉の最後に次はどこでどれぐらいやるかということを決めていくということでありますから、その時点では正式に我々が入っていると、こういうふうに思いますので、しっかりと情報収集、交渉参加しながら、それに向けて対応をするということでございます。
○紙智子君 今のお話聞いていても、全然見通しが見えないわけですよ。何の勝算もなくTPP交渉に参加しようとしているじゃないかとしか言えないわけですね。
 米国政府は、これ五月七日に交渉方針を策定すべく、日本のTPP交渉への参加に関連する全ての要素についてパブリックコメントを求めると、官報の公示を出しました。それで、そこには日本による特定の品目の取扱いということもコメント対象としているわけですよ。つまり、日本が重要品目としている農産品についても、新たに業界団体からコメントを求めようとしているわけです。要するに、TPP交渉で、これ徹底的に日本を追い詰めていって、この関係業界団体、多国籍企業から更なる要求を求めるという場を設定しようというわけですよ。
 そういうふうになっているときに、もうたったその一回しかできないかもしれない、そういう会合で日本の主張をどれだけ反映させられるのかと。言ってみれば、業界団体はもう、米も含めてそうですけれども、日本に対して例外は認めないんだと、もう全部開けろというふうに言ってくるわけですよ。そういう場がたくさん設定されている中で、それに対してどれだけ日本が頑張ってやって取れるのかということでいえば、もう到底その日本の主張を反映させることっていうのは到底これはできないんじゃないかというふうに言わざるを得ないわけですよ。
 ですから、今こそこれ、農林水産業を守るためには交渉撤退を決意すべきだと、もうこの段階で決意すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 同じお答えになってしまうかもしれませんが、交渉参加国は本年中の交渉妥結を目指して交渉を続けているということでございますが、しかし実際の交渉がどういうふうになっていくかということはまだ予断を許さないところでございますし、我々も交渉に参加すれば、先ほど平山委員とのやり取りで言わせていただいたような方針できちっと交渉してまいると、こういうことでございます。
 したがって、今の段階で委員がおっしゃっているような、もう駄目だからやめてしまえということはないのではないかというふうに考えております。
○紙智子君 私は、もうちょっと見通し持てないなというふうに思いますよ、率直に言って。ですから、是非撤退すべきだと。農水大臣はそのことを是非閣僚会議の中でも言っていただきたいし、その立場で力を尽くすべきだと思います。
 あとはまたやりますけれども、今日もう一つ最後に質問しておきたいのは諫早湾の干拓事業の問題です。農水省としてこの開門に伴う有明海などの環境変化を調査するわけですが、その調査のスケジュールが出されています。こういう形で出されているわけですけれども。
 それで、二〇一二年から二〇一三年にかけて事前の調査をやると、二〇一三年から二〇一八年にかけて開門時の調査をやって、二〇一八年から閉門後の事後調査をするというふうになっているわけですね。なぜ閉門なのかと。福岡高裁の判決は、これは排水門を開放して、以降五年間にわたってこれを継続するということは決まっているわけですけれども、閉門時期については何ら書いていないわけですよ。何でこれ閉門ということになっているんですか。
○副大臣(加治屋義人君) 諫早湾については、紙先生全くおっしゃったとおりでございまして、福岡高裁の判決、これは、国は本年十二月までに排水門を開放して、以後五年間にわたって開放を継続せよと、おっしゃるとおりでございます。これを受けまして、従来から意見交換等の機会に、開門は五年間行うのであって、五年たったら閉門すると説明してきておりまして、昨年、当時の郡司農林水産大臣が長崎を訪問されたときにも、長崎県関係者に対して同じ旨を述べておられます。これは、判決文において、五年間にわたって開放を継続せよとされている以上、五年たった後の時点についてまで国は法的に拘束されるものではないとの考え方に立っているところでございます。
 以上でございます。
○紙智子君 趣旨は、やっぱり実際に開けて調査しなきゃいけないと。その結果、改善されるかもしれないわけですよね。改善されても止めてしまうわけですか。改善されたらやっぱり開けて、もっとやっぱりそれに、確かめられた中身に基づいて進んでいくというのは当たり前であって、それをもう最初から、そもそも開けてもいないうちから閉めることを言うというのはおかしいんじゃないですかね。
○国務大臣(林芳正君) 今、副大臣から答弁いたしましたように、裁判の判決は五年間にわたって開放を継続せよと、こういうことでございました。したがって、その後については法的な拘束はないということで、我々としては、郡司前大臣の時代でございましたけれども、長崎関係者に対してそういう説明を行ってきて、開門は五年間行うのであって、五年たったら閉門するという立場を取ってきておりますので、今、同様にそういう立場を取らせていただきたいと思っておるところでございます。
○紙智子君 全く納得できないわけで、今、長崎側に閉めることを説明してきたんだというんだけれども、実際に原告団は全然説明を受けていないわけですよね。本来だったら、これ勝訴した側の意見もちゃんとやり取りして、その後拘束されていないというんだったら余計話し合わなきゃいけないはずなのに、それをやらないで一方的に閉めることを約束するというのは、これちょっと行き過ぎだというふうに思うわけですよ。
 それで、漁業者の皆さんは、やっぱり豊かな海や宝の海を戻してほしいと願っていて、やっぱりそういう立場に立つならば……
○委員長(中谷智司君) 申合せの時間を過ぎておりますので、質疑をおまとめください。
○紙智子君 はい。
 農業も漁業も大事ですから、農水大臣としてはその立場でやっていただきたいということを、撤回していただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。