<第183回国会 2013年5月20日 決算委員会>


福島原発事故によって放射線量が高く、帰還困難となっている区域の賠償問題を質問、安倍首相も国としても被害者の皆様の実態に沿った賠償を検討してまいりたいと答弁。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東日本大震災から、その被災から二年が過ぎて、住宅問題はどの被災地でも切実な問題になっています。今日は、福島原発事故によって放射線量が高く、帰還困難となっている区域の賠償問題について質問いたします。
 まず、この地図を見ていただきたいと思います。

資料:避難指示区域の概念図
図

※クリックすると拡大します
 この赤枠が帰還困難区域です。この区域にある例えば浪江町、浪江町は、役場を二本松市に移して、住民の多くは仮設住まいをしています。
 私は先日、二本松市に行って浪江町の方から話を聞いてきました。一時帰宅で自分の家に帰ってみたら惨たんたる状況だった、二年たった今でも二十一・四マイクロシーベルト、雨どいの下では百二十マイクロシーベルトを超えるところもある、事故前は〇・〇三マイクロシーベルトだったので、事故前に戻るには百年以上掛かると言われていると。仮設住宅に住んでいる方は、部屋が狭く、壁が薄いため騒音が気になります。精神的不安の解決にとっても住む環境を整えたい、家には帰れないので早く新しい土地で生活できるよう賠償してほしいなど、切実な声が出されています。事故がなければこんな苦しみを味わうこともなかったわけです。被災者には何の責任もないわけです。しかし、現実には、今のこの東電の査定では、新しいところに家を建てたいと思っても、補償金は全く足りないということです。
 今日は東電の廣瀬社長においでいただいていますのでお聞きしたいと思います。東電は住民が事故が起きる前と同じような生活を取り戻すことに責任を持つべきではないでしょうか。
○参考人(廣瀬直己君) 私どもの事故によりまして、もう二年二か月を超えておりますけれども、今なおたくさんの方々に御迷惑をお掛けしておりますことを改めましておわび申し上げたいと思います。
 御指摘の点でございますけれども、もとより私どもの起こした事故でございますので、しっかり賠償していくということでずっと、この一年半近くですけれども、やらせていただいているところでございます。
○紙智子君 今賠償しているというふうに言いましたけれども、賠償するといっても、これ宅地については公示価格、つまり固定資産税評価額で補償するということですよね。ちょっと確認します。
○参考人(廣瀬直己君) お問合せのいわゆる宅地や建物の賠償、いわゆる財物の賠償と呼ばれている点でございますけれども、これはいわゆる避難指示の期間の中で生じた財物価値の減少という点を取って対象とさせていただいておりまして、中間指針あるいは中間指針の二次追補、さらには昨年の七月、政府の方針等々を踏まえて私どもとして検討させていただいております。
 また、当然国とも協議させていただいておりますし、自治体のお声も聞いて、今私ども、事故があった直前の時価相当額を財物の賠償価値の基準ということで始めさせていただいております。ちょうど一か月半が始まってたっておりますけれども、既に二割の方がこちらに書類をお届けして始めていらしておりまして、その中にはもう既に賠償金をお支払いさせていただいた方も出てきておるところでございますので、引き続きしっかり迅速にやってまいりたいと思いますし、また個別の事情についてもしっかりお聞きして取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 今いろいろと言われたんですけれども、要は公示価格ですよね。もう一回はっきり言ってください。公示価格ですよね。
○参考人(廣瀬直己君) 幾つかの選択できるスタイルになっておりまして、建物につきましては私どもの計算する、お示しする形を選択していただくということでございます。
○紙智子君 宅地。
○参考人(廣瀬直己君) 宅地については、これも私どもお示しして、いわゆる計算して出せる部分もございますし、それからいざとなった場合には見ていただくとか、そういったようなことを考えていこうと思っております。
○紙智子君 答えていないですよ。公示価格ってはっきりおっしゃってください。そうでしょう。それ以外ないじゃないですか。ちゃんと答えてくださいよ。
○参考人(廣瀬直己君) いわゆる固定資産評価額をベースにしてやらせていただいております。
○紙智子君 早く言ってくださいよ。最初からそう言ってほしい。
 それでは買えないんですよ。地元では、現場では、この東電の査定では福島市や郡山市などの中通りで土地を買って家を建てようと思っても無理だと言っているわけですよ。私が聞いた方の場合は、帰還困難区域で、六百九十坪、農業をやっているんですけれども、路線価格、これ国税庁が発表する土地評価額ですけれども、これで見ると、震災前の浪江町の駅周辺の住宅地の価格は一平方メートル当たりで二万円ですよ。現在の福島市の価格はどうなっているかというと、仮設住宅が建設されている福島市の南矢野目地域ですね、ここの価格が実売価格で四万三千円程度になるわけですよ。ですから二倍以上なんですね。
 東電の補償額でこれどうやって福島市に家を持つことができるのかと。いかがですか。
○参考人(廣瀬直己君) 私どもといたしましては、原子力損害賠償法の考え方にのっとって、いわゆる私どもは事故が起こった直前の時価を相当額として賠償させていただくという考え方で進めさせていただいておるところでございます。
○紙智子君 指針に沿っていると言うんですけれども、ちょっと文科省にお聞きします。
 原子力損害の範囲の判定に関する中間指針第二次追補、これについて、政府による避難地域等の見直し等に係る損害と、これどうなっていますか。
○国務大臣(下村博文君) 原子力損害賠償紛争審査会は、避難指示区域の見直しに伴い、平成二十四年三月に中間指針第二次追補を策定しており、その中で財物の賠償について触れております。
 お尋ねの帰還困難区域内の財物賠償については、帰還困難区域内の不動産に係る財物価値については、本件事故発生直前の価値を基準として本件事故により一〇〇%減少したものと推認することができるものとされております。さらに、パネルを用意されておりますが、その三のところでございますけれども、本件事故発生直前の価値については、例えば居住用の建物にあっては同等の建物を取得できるような価格とすることに配慮する等、個別具体的な事情に応じて合理的に評価するものとするとされまして、再取得価格についても考慮するように示されております。
○紙智子君 このパネルにも書かせてもらいましたけれども、このとおりですよ。同等の建物ということで言っているわけです。それで、公示価格でいいなんということは一言も書いていないわけですよ。それなのに、なぜ公示価格で、それでやろうとするんですか。おかしいんじゃないですか。
資料:東京電力株式会社第1、第2原子力発電所事故による原子力損害の範囲等に関する中間指針第2次追補
資料

※クリックすると拡大します
○参考人(廣瀬直己君) 繰り返しになりますけれども、建物に関しましては、そこの今パネルの御指摘もありまして、そうしたことを考慮して、固定資産税の評価の期間を、いわゆる償却期間を公共用地用の収用のときに使うようなやり方で長く取りまして、で、減価を減らすというようないろいろな工夫をさせていただいておりまして、それによりまして、またあと、その一番最後になくなってしまう残存価値といいますか、それにつきましても二〇%程度下限を上げるというようなことを配慮させていただいて、少しでもそうした配慮におこたえできるような形で今賠償を進めさせていただいているところでございます。
○紙智子君 全然配慮しているというふうには言えないと思うんですよ。
 それで、今、国の指針にも基づいてという話があったんですけれども、経済産業省が来られているんですけれども、エネ庁の長官にお聞きしたいと思います。
 それで、資源エネルギー庁、この中で、帰還困難な被災者は新たに家を持てないというふうに言っているわけですね。このままの状態でいいのかということなんですけれども、エネルギー庁長官の方にお願いします。
○政府参考人(高原一郎君) お答え申し上げます。
 御指摘の建物の賠償につきましては、第二次追補では、同等の建物が取得できるような価格とすることに配慮するなど、個別具体的な事情に応じて合理的に評価するものとされております。これに従いまして、東京電力の方で実際に賠償額を算定する際には、できる限りの工夫を行っていると承知しております。
 しかしながら、委員御指摘のように、特に帰還困難区域の住民の方々につきましては避難期間が長期間に及ぶことがあると理解をしておりまして、現在の賠償基準がこのような方々に対しまして実態を踏まえたものであるか改めて検討を行いまして、追加的な措置が必要であれば東京電力の賠償基準に反映させるなど、経済産業省としても対応してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○紙智子君 現場では、公示価格、固定資産税の評価額で基準としたら、これ新しい土地を手に入れて家を建てるのは無理だというふうに怒っているわけですよ。ずっと怒っているわけですよ。
 それで、今お話ありましたけれども、エネルギー庁の基準が中間指針の追補で言っている趣旨と違うんじゃないかと、この間で言っていることが。それで、帰還困難区域については、これ全損扱いで、さっきも話ありましたけれども、事故発生前の価値の全額を補償するということになっているわけで、つまり、中間指針の追補のとおりに本来補償しなきゃいけないと、そこがそうなっていないということが問題なわけです。それで、是非そこのところをしっかりやっていただきたいというふうに思うわけです。
 それで、ちょっと最後に、今やり取りを総理お聞きになっていたと思います。総理も、浪江町を始めとして福島の被災地に行かれていると思いますので御存じだと思いますけれども、放射線量が高くて帰還困難区域の方の場合、今の賠償の基準では新しい土地に家を建てたくてもそれができないという現実があるわけです。事故前と同じ生活を取り戻すということに責任を持つということでいえば、これ経済産業省の、エネ庁の賠償の基準を変えて、やっぱり生活再建ができるように改めるべきではないんでしょうか。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私も何回か双葉郡に参りました。そして、安倍内閣としては、福島の復興が政権の重要な課題の一つでありまして、東京電力福島第一原発事故によって被害を受けた方々への迅速かつ適切な賠償に万全を期していく必要があると、このように思います。
 特に、帰還困難区域の住民の皆様については、避難期間が大変長期に及び、避難者の方が移住せざるを得ないことも考えられるわけでございまして、国としても被害者の皆様の実態に沿った賠償を検討してまいりたいと思います。
○紙智子君 本当は自分の生まれたところというか、自分の家に戻りたい、土地に戻りたい、本当はそうですよ。だけど、戻れないわけですよ、非常に数値が高くて。何年先に戻れるか分からないと、現実には。そうすると、今どうしても別のところに家を構えて住むということをしなければ、元どおりの生活に再建できないわけですよね。
 そういうやっぱりつらい思いの中にあって、私は言いたいことは、それで本当に元どおりになるようにやるとすれば、ちゃんとこの中間指針の中の追補の中で言っている基準のとおりにやっぱりやらなきゃいけないだろうと。そして、本当に多くの皆さんが安心して暮らせるように、一日も早く復興できるようにすべきだということを申し上げまして、質問を終わります。