<第183回国会 2013年5月13日 予算委員会>


安全置き去り、住民無視に進んでいる大間原発の建設中止を!

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私、大間原発について質問いたします。青森県のこれは下北半島大間町に建設中の電源開発の原子力発電所ですけれども、これ、二〇〇八年の五月に着工し、そして二〇一一年三月の東日本大震災の影響で工事が中断をし、昨年十月に反対の声を無視した形で工事が再開をされました。
 この原発は、使用済核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を全炉心で燃やす世界初のフルMOXの方式です。その安全性は十分検証されておらず、計画段階から危険性が指摘をされていました。MOX燃料は核分裂の制御が難しいとされ、ましてプルトニウムは毒性が強いので、一旦事故が起きれば通常のウラン燃料の原発よりも被害は甚大となるということで心配をされてきたわけです。さらに、専門家からこの大間原発の敷地と沿岸海底に活断層の存在が指摘をされています。

資料:パネル-大間原発の圏内図
図

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 それで、ちょっとこのパネルを見ていただきたいんですけれども、この大間原発発電所のPPAとUPZです。昨年改正された原子力防災指針で、地域防災計画の策定が自治体に求められる地域がこのUPZ、三十キロ圏内です。それから、PPAの五十キロ圏内は防護措置が必要となる地域と。
 それで、この下のところが青森県庁で、函館の方が近いわけですけれどもね。大間原発の五十キロ圏内には、青森側には九万人、北海道側には三十七万人住んでいます。函館と大間の最短距離、これ地図で見ると、一番近いところで大体二十三キロというふうに言われています。晴れた日になりますと、大間町、函館の間では町並みが見えて、花火なんかが見えるわけですね。そのぐらいの距離にあるわけです。
 この三・一一の福島第一原発を経験して、当然このフルMOXの安全性の再検証や原発周辺の活断層の再評価など改めて再検証しなければならなかったのに、何事もなかったかのように事業者は工事を再開したわけです。そもそも北海道側には一切説明もなしに、これ一方的に通告をし、函館にも説明なかったと。
 四月六日に実は函館市でシンポジウムをやられたんですが、福島から函館に避難されている方が、子供の被曝の、非常に恐怖だということを語り、会場から、もし事故が起きたら、この豊かな地域、豊かな海、人が住めなくなる地域になってしまうと、そうさせてはならないということで意見が出されていました。
 そこで総理にお聞きしますけれども、あれだけの福島原発事故を経験して、今も収束をしていないと。そういうときに、何事もなかったかのように、北海道側のこの近隣市町村には何の説明もされないまま建設が進んでいるということに住民の皆さんの非常に不安が広がっていると。この不安を感じるということを当然だというふうに思われませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大間原発については、原子炉の設置許可及び工事計画認可が行われておりまして、工事再開は事業者である電源開発の判断であります。ただし、実際に稼働するに当たっては、原子力規制委員会の専門的な判断に基づいて安全と認められる必要があります。
 今後、政府としては、原子力を含むエネルギー政策に係る情報発信に努めるなど、立地自治体を始めとする関係者の理解と協力を得るための最大限の努力をしていきたいと思っております。
○紙智子君 総理、私が総理にお聞きしたのは、住民の皆さんが非常に不安を感じていると、そのことに対しての、その不安の気持ちに対して、総理、どのように思われますかというふうにお聞きしたんです。もう一度お願いします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 稼働に当たりということなんでしょうか、その原発の稼働に当たっては、理解を得る地元自治体の範囲ということでございますが、どこまで、その稼働に当たっての説明ということにおいては……
○紙智子君 不安に対する気持ちです。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 不安に対するですね。不安に対するお気持ちというのは、それは二年前の過酷事故の経験がございますから、そういう中において不安を持つ方もおられるだろうということは私も理解できるわけでございまして、そういう意味においても、先ほど申し上げましたように、情報発信等はしっかりと行っていきたいと、このように思っております。
○紙智子君 それで、様々な本来ちゃんとやらなきゃいけないこともやらないまま、何事もなかったかのように、あれだけの深刻な事故を経験しながら建設が進められているということで非常に不安があるわけですけれども、そこで原子力規制委員会の田中委員長にお聞きするんですが、この大間原発には活断層が、敷地内とそれから近くの海底にあるということが指摘されているんですけれども、この活断層の調査はなされたんでしょうか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 活断層の調査については、まず第一義的に事業者が実施し、その許認可を行う私どもとしては、その調査結果について厳格に確認することにしております。
 私どもが審査するに当たって不足という判断をした場合には更なる調査を求めるということで、大間原発についても現在整備している新しい基準のバックフィットを求めるということで進めたいと考えております。
○紙智子君 私は、今年、その建設現場に行きました。それで、電源開発の方からいろいろ説明聞いたときに、活断層の調査したんですかと言ったら、していませんと、特にまだ何もやるように指示はいただいていないという話があったわけですよ。自主的に第一義的には事業者がやると言われたんですけれども、言われなきゃやらないのかなというふうに思ったわけですね。やっぱり、やらないのであればちゃんとやるように言わなくちゃいけないというふうに思います。
 問題は、こうやって実際には、あの福島の事故があったのに、調査をまだしてもいないのに建設だけがどんどん進んでいると、これは問題だと思うわけですよ。そういうことに対して住民の皆さんが怒っているわけですね。
 私、青森県側のところも含めて、いろいろやっぱり変化が起こっていると思うわけです。例えば、この地図にもありますけれども、大間町の隣の町ですけれども、風間浦村の村長さんは、新聞などでも、福島事故を体験して、事故が起きたらどれだけ悲惨なことになるか、住民の命と安全に責任を持つ立場から見れば、逃げ道がない状況をそのままにして進めるというふうにはなかなかならないんだというお話を言っていますし、それから、その一つ挟んだ佐井村、ここは村民説明会では反対意見が多く出されているということが報道されているわけですね。
 それで、一方で函館市長は非常にはっきりと言っていますよ。国は大間原発の建設再開を容認し、電源開発は十月一日に建設を再開しましたと。既存の発電所で十分電力を賄っている中で、大間原発は再稼働と違って新たに稼働させようというものであり、現時点での電力需要とも関係ありませんと。福島原発事故以前の安全神話の中で許可された大間原発の建設再開を強行したことは到底容認できませんと述べているんです。そして、この二月に総理官邸にも大間原発の建設の無期限凍結を求めて要請に行っているわけですね。
 政府は、既存の原発については安全確認をしてから再稼働するとしているわけです。しかし、大間は、これ活断層やフルMOXの安全性を再検証することなく工事が進んでいるわけです。まず、これ工事をストップして安全性を確認するというのは当然のことじゃないでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(茂木敏充君) 既存の原発についてはもう炉ができ上がっているわけですね。それについてはその新しい安全基準の下で安全性をチェックすると。大間につきましては、まだそこまで行っておりません。工事の途中であります。工事の認可は下りておりまして、事業者の判断で工事を進めている。当然、これにつきましても、でき上がった段階では新しい安全基準に従って安全性がチェックをされると、当然のことであります。
○紙智子君 だから、まだできてないから、ちゃんとその活断層だとかフルMOXの安全性だとか検査、検証しなきゃいけないじゃないですか。できないから、まず造ってしまってからやるってなったら、結局要らなくなったときにやめるといっても無駄じゃないですか。今判断しなきゃいけないときじゃないんですか。
 もちろん、これ、事業者自身がちゃんとそのことを判断しなきゃいけないということあるんだけれども、北海道側の周辺自治体の声を本当にちゃんと聞いているのかということがみんなから出されている怒りの声なんですよ。その関係者は、総理官邸に対してこの間要請してきたと。国策で原発政策を推進しながら、福島原発事故以前の安全神話の中で許可された原発を、あれだけの事故を起こしながら、その後何事もなかったかのようにこの建設を進めていると。こういうやり方というのは、事業者任せにしないで国が国策として責任持ってこれはちゃんと説明をするし、地元の皆さんとやり取りするべきじゃないんでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(茂木敏充君) 今回の福島の事故の反省、教訓を踏まえまして新しい規制委員会をつくったわけであります。その下で新しい基準を作り、それに従って安全性のチェックをしていくということになるわけであります。当然、稼働するに当たりましては、立地自治体始め関係者の皆さんの御理解を得るよう最大限の努力を国としてもしてまいります。
○紙智子君 凍結を求めているわけですよ。無期限凍結を現地から求めているわけです。それで、官邸に直接出かけていって総理に対しても要請しているわけですね。これにちゃんとこたえるべきじゃないんですか。総理、これに対してもう一度ちゃんと答えてください。
○委員長(石井一君) 茂木経産大臣、そして次に総理。
○国務大臣(茂木敏充君) 様々な声をしっかりと受け止めて、いずれにしても、稼働するに当たっては立地自治体始め関係者の皆さんの御理解を得る最大限の努力を国としてしてまいります。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に経産大臣が答弁をさせていただいておりますように、いずれにせよ、稼働に際しては、原子力規制委員会で厳しい基準の下に専門的な判断をいたします。同時に、立地自治体を始め周辺の自治体について御理解をいただくような努力をしていきたいと、このように思っております。
○紙智子君 不安は本当に広がるばかりの状態なわけですよ。それで、そもそも造る必要がない原発だと。要らないんですよ。核燃料サイクルは既に破綻していると。周辺自治体、住民の声も、やっぱり必要ない、なくしてほしい、造らないでほしいと言っているわけで、是非この大間原発の建設はきっぱりやめるべきだということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。
○委員長(石井一君) 以上で紙智子さんの質疑は終了いたしました。(拍手)