<2013年1月24日 農林水産委員会(閉会中審査)>


飼料価格高騰による経営難に直面している畜産酪農を守るために乳価等の引き上げを求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日の最後の北海道出身の質問者ということになります。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日、林大臣に初めて質問するわけですけれども、畜産問題ですけれども、まずちょっと冒頭触れておきたいことがあります。
 それは、二十二日、先日ですね、厚生労働省がBSEの対策の見直しということで、米国産の牛肉の輸入規制について、二月一日にも緩和の方針を明らかにしているわけですけれども、これは昨年開かれた食品安全委員会の場においても委員からもいろいろ意見が出されていたと。特に、口から餌を食べてなるBSE、これとはまた違う非定型タイプのBSEというものの発生が発見されているわけですよね。これは発生のその経路というのが分からないです、定かじゃないわけです。しかも、若い牛に発生していると。
 国内でも、この間、全頭検査の中で二十三か月齢というのもあったり、諸外国においては二十か月齢とか、若い牛において発生しているということで、そういうものがある以上は、やっぱり数が少ないといっても、それがもし回ってそれを食べたときに発生につながるということを考えるならば、慎重の上にも慎重を期す必要があるんだという御意見が出されていましたし、その後のパブリックコメントにおいても多くの方からいろいろ批判や意見が上がっていたということを考えるならば、この二月にもこれを進めるということ自体重大な問題だというように思っていまして、今日はちょっとこの場ではやりませんけれども、回答はいただかないですけれども、また違う場で是非問題にして、厚生労働じゃなくて農水省の角度からの問題というのもあると思いますので、是非取り上げていきたいということを最初に申し上げておきたいと思います。
 それでなんですけれども、二十二日に私ども日本共産党の国会議員団として、林大臣あての畜産、酪農問題に対する申入れをさせていただきました。
 それで、その中で、まず最初の一項目めで触れたのがTPPの問題です。大臣も御承知のとおり、関税撤廃が原則と。このTPPに加入することになると、乳製品の関税が撤廃ということになってオーストラリア、ニュージーランドなどからの大量の乳製品が輸入されて大きな影響を受けることになると。当然、日本の加工原料乳の生産が成り立たなくなるということは明らかで、それは農水省も認めていることだと思います。だからこそ、全国で酪農、畜産の農家の皆さんがこぞって反対に立ち上がっているわけです。
 しかし、当時、民主党の野田総理のときにこのTPP参加に前のめりになっていたために、その姿勢を見て、いや、これだったら営農は続けられないんじゃないかと不安が広がって、それが離農につながっているということがあるわけで、先ほど来いろいろ紹介されていますけれども、北海道においても一年間で二百五十戸を超える離農、その中には、必ずしも経営が大変だという人だけじゃなくて、若くてこれから担い手になっていくという一定の、何というか有望視されている人までこの先の見通しが立たないということで離農するという事態があるわけです。
 ですから、日本の酪農全体にとっても大変なこれ損失だというふうに思うわけで、まずこの点で、林大臣のこういう現状についてのどのような御認識をお持ちかということをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) ありがとうございます。
 本当に皆さん北海道なんだなということでございますが、大変本質的な紙委員からのお話を賜ったというふうに思っております。
 遠慮という言葉が、我々は一般的に使っておりますが、そもそもの語源は、遠きにおもんばかりなければ近きに憂いありと、こういうものが最初の語源だったそうでございまして、まさに今委員が御指摘になったように、先の見通しがやっぱりあるということが、翻って足下に憂いがなくなる、こういうことを指している大事な言葉だといつも拳々服膺しておるわけでございますが、やっぱりそういった大きな中長期的なフレームワークというものをきっちりと示していくというのが我々の大きな役割だと、こういうふうに思っておるところでございます。
 したがって、TPPについては、先ほど平山先生とも御議論させていただきましたけれども、聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加には反対であるという基本的な考え方を堅持してまいりたいと、こういうふうに思っておるところでございます。
○紙智子君 自民党さんが昨年の総選挙に当たって、TPPについては聖域なき関税撤廃なら参加に反対だということを訴えられて、言わば支持を得て政権に戻られたわけですけれども、ところが、その政権の中での閣僚の中で、例えば高市政調会長は、交渉に参加しながら条件が合わなかったら脱退する選択肢もゼロではないというふうな言い方で交渉参加もあり得るとの認識を示したことがありましたし、それから安倍総理も選挙前に日本商工会議所との会談の中で、我々は日米同盟関係にふさわしいTPP交渉の仕方ができるんだということを発言をされている。交渉参加に前向きというふうに取られる姿勢を示しているわけです。
 一方、林大臣は、報道によりますと、BS朝日の収録で、TPPの参加表明は七月の参議院選挙前は厳しいという見通しをルース駐日大使に伝えたということがされているわけです。それからまた、TPPについては貸切りバスだということで、日本が入らないとバスは出ないというふうに述べたというふうに伝えられていますけれども、この発言は、受け取りようによってはバスを出す、TPPを出発させる、そのためには日本が入らないと出ないということになるわけですよね。まさに、そうすると参加が前提になっているんじゃないのかと。今は急がないけれども、いずれはやっぱり乗っていかなきゃいけないんじゃないかというふうにお考えなんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) ありがとうございます。
 ちょっとバスは例えが悪かったかなと反省をしておりますが、私が申し上げたかった趣旨は、こちらがもう何か非常に小さな存在で、とにかく入らないと大変なことになる、乗り遅れるぞという御議論があったような感じであったので、そうではなくて、我々は、例えばGDP比で見ても大きな割合があるので、自信を持って、これは一般論として、そういうものに向き合っていくべきだというようなつもりで述べたわけでございますが、最初から貸切りバスだから乗るんじゃないかというような懸念があったとすれば、それはもう全く私の意図するところではございませんし、まあ、あえて言えば貸切りバスは注文しなければ来ませんので、逆に言えば。
 したがって、そういう例え話であれこれ言うつもりはございませんけれども、先ほど申し上げた聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対と。いろんな報道等、また対談等で、一字一句そろえるとなかなか大人数では難しいところがあるだろうということもあって実は党として文書でまとめさせていただいたということでございますので、この文書をしっかりと踏まえてこの基本的な考え方を堅持してまいりたいと、こういうふうに思います。
○紙智子君 注文しないこともあり得ると、あるいは貸切りバスに乗らない選択もあるというふうにお答えになったかなというふうにとらえてよろしいですか。よろしいですか。
○国務大臣(林芳正君) そういうことでございます。注文というか、貸切りバスというのは、実は我が実家は少しそういうところに近い会社もあるのでございますが、そもそも相対で発注をしなければ貸切りバスというものはないわけでございますので、注文をするという行為があって初めて貸切りバスが来るわけでございますので、そういった意味では、貸切りバスというのは、まず注文するかしないかというものがあるという意味で申し上げました。
○紙智子君 それでは次に、今回の乳価の問題についてお聞きしたいと思います。
 申入れの中でも触れているんですけれども、配合飼料価格が昨年来の国際価格の高騰で値上げをされまして、もう既に酪農、畜産経営に打撃を与えていると。それに加え、今日もいろいろ出されていましたけれども、アベノミクスによる政策的な円安誘導ということで、配合飼料価格がこれからも継続的に引き上げられていく可能性が高いと。
 乳価を算定するときには過去三年間の平均のコストで計算するわけですけれども、それだけでやられたらとても経営的には守れないと。政府の政策責任でこのアベノミクスを推進するということですから、円安誘導による経営打撃にならないような乳価の算定をすべきだと。さっき算定のやり方は決まっているという話があったんですけれども、やっぱりそれをきっちりと反映させる形でやっていかなければ、本当にこれまでの範囲を超えて経営がもたないということになりかねないというように思うんですけれども、これについて大臣の御見解、伺いたいと思います。
○大臣政務官(稲津久君) 私の方から答弁をさせていただきます。
 先般、紙委員始め日本共産党の皆さんからこのことについての御要請をいただきました。紙委員、実際に生産現場を歩く中で、様々なお声、御要望、要請等を受けての御質問ということで受け止めております。
 その上で、先ほど来からこの補給金の単価についての質疑がされておりますけれども、原則的な話で大変恐縮でございますが、平成二十五年度の加工原料乳生産者補給金単価について、これは、今御指摘のとおり、算定ルールにのっとりまして、配合飼料価格等の生産コストの変化、これも適正に反映をさせていただいて算定をし、食料・農業・農村政策審議会の意見をお聞きしまして適切に決定をしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 そういう範囲でしかお答えにならないのかなと思うんですけれども、実際に一円円安で、さっきもトン当たり三百円配合飼料でいうとアップするという話がありました。先日、北海道の酪農家の方で大体百頭近い牛を飼っている、北海道で百頭ぐらいというと小さな方の規模なんですけれども、その規模の農家の方で、そうなると年間当たり大体百二十万から百五十万ぐらいの上乗せというか持ち出しになるということなんですね。
 ですから、そうなると、それが飼料分だけでそうですから、あと燃油だとかいろんなことを足しますともっと更に上乗せされて経営は非常に大変になるし、後継者に対しても払うお金がなくなるということも含めて非常に痛切にこういう実態があるんだという話が言われているわけで、是非これ、大幅な補填、乳価ですね、乳価の問題でいいますと、価格を、単価を切り上げていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、もう一つ、配合飼料価格の高騰でもって、この配合飼料価格の安定基金の財源、これも先ほども出されていたんですけれども、改めてちょっと確認をさせていただきたいと。
 財源不足になりかねない状況というのが心配されているという中で、政府の責任でこの財源措置をすべきではないかということについて、先ほどもありましたけれども、もう一度お願いいたします。
○副大臣(加治屋義人君) 簡潔に申し上げますが、今後の価格見通しにつきましては大変予断ができない状況にあると思っております。引き続き本制度を適切に運用して畜産経営の安定をしっかり図っていきたいと、そのように思っております。
○紙智子君 先ほど幾つか、今取られている対策のお話もありました。
 今年、トウモロコシの国際価格の高騰に起因して配合飼料が高くなっているということで、いろいろ一覧表なんかも、資料も私たちの手元にも寄せていただいているんですけれども、それでずっと見ていきますと、四千七百五十円も値上げされている状況になっていると。それで、灯油とか軽油なんかも高止まりということの中で、やっぱり生産者にとってはもう本当に死活問題ということだと思うんですね。ですから、そういう不安のないように、是非、いろいろ今、手当てはしているということなんですけれども、状況を見ながら、不測の事態にならないようにしていただきたいということを併せて重ねてお願いをしておきたいと思います。
 それから、最後になりますけれども、放射能物質による酪農、畜産への影響という問題です。
 これは、万全な検査体制の構築というのは言うまでもないんですけれども、稲わらの汚染ですね、汚染稲わら、それから汚染堆肥、汚染牧草、この処分を早急に行っていくということ、それから、牧草地を除染するということで今やっているわけですけれども、それによって安全な農畜産物の生産を確立すべきなわけですけれども、今どのように手を打たれているのかということと、それから、併せて東電による賠償もより迅速に行われるように東電への指導を強化すべきだというふうに思うんです。
 以上の問題について是非明確に答えていただきたいと思います。
○大臣政務官(稲津久君) お答えいたします。
 まず、東日本大震災からの復旧復興については、総理から、閣僚全員が復興大臣であると、こういう意識を共有して取り組む旨の指示がございまして、農林水産省におきましても、林大臣の下、一丸となってこの復興に取り組んでいるということを申し上げさせていただきたいと思います。
 少し具体的なことについて触れさせていただきたいと思いますけれども、まずしっかり関係省庁と連携をした上で、例えば検査計画の策定の支援、また機器の整備の助成、それから食品中の放射性物質の検査体制の強化、それから原発事故連絡会議等を通じた東京電力による適切かつ迅速な賠償の促進、それから今御指摘のありました汚染稲わら等の隔離一時保管、それから円滑な処理の推進、さらに、農地、森林の効果的、効率的除染に向けた技術開発の実証、こうしたことに今取り組んでいるところでございます。
 引き続き、現場の状況、この把握に努めながら、各種の取組が着実に進展するよう関係省庁また東京電力、働きかけを含め、特にスピード感を持って対応してまいりたいと、このように考えているところでございます。
○紙智子君 ちょっと、今の答弁だと余りにもちょっと簡単過ぎて、現場にとっては非常に大きな不安の中で繰り返し現場でも交渉しているわけです。
 例えば、東電との関係でいっても、私たちが申し入れて聞きますと、いや、請求されたものについては八割方、今、支払が進んでいると、こういう話で回答が返るんですけれども、あくまでもこれは東電が支払われるというふうに言ったものに対して八割今支払っただけであって、風評被害も含めてもっともっと広い範囲に及んでいるわけですよ。
 それで、いつも出てくるのが、相当因果関係が……
○委員長(中谷智司君) 時間が過ぎておりますので、質疑をおまとめ願います。
○紙智子君 はっきりしたものというのになるわけで、それにかかわるものも含めて広範囲にわたっているというところをしっかりと受け取って補償するということで、是非手だてをしっかり打っていただきたいということを申し上げまして、質問といたします。
 ありがとうございました。