<第180回国会 2012年8月28日 農林水産委員会>


海洋・海域モニタリング体制強化並びに、六ヶ所村再処理工場の稼働中止を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東京電力福島原発事故による放射能汚染で漁業者も大変な被害を受けております。私は福島県のいわき市に行きまして、漁業関係者から厳しい現実をお聞きしたわけです。今日、それを踏まえて質問いたします。
 福島沖では一部で試験操業を始めましたけれども、漁業者は、国民に安全な魚を供給するのは我々の義務だ、だから福島は駄目かなと思ったという声や、東京電力の賠償金は出ているけれども、借金を返済する費用までは出ていないという声、それから、我々の世代に漁業を再開できるかは危ういが、若い後継者のことを考えるならば前に進むように考えたいという声ですね。
 ですから、本当に苦悩する日々を送りながらも、何とかやっぱり前に向かおうということで必死の思いでおられるわけですけれども、まず、大臣、こうした漁業者の思いについてどう受け止められるか、お話しください。
○国務大臣(郡司彰君) 今いわきの浜での話を伺いましたが、私がずっと育ったのはそのすぐ隣の北茨城というところで、同じような今状況で漁民の方暮らしております。津波、震災が起こったときに、漁民の方というのは多く、当たり前でありますけれども、海辺に住んでいるわけであります。したがいまして、家もそうでありますし、それからまた、一人一人の命までも、亡くなられた方がたくさんいらっしゃいます。
 そしてまた、海そのものも瓦れき等で埋まって、船もなくなったというような中から、今、僅かながらタコでありますとか貝でありますとか、幾つかのものが試験的に操業し、安全性が確認をされたというような状況の中であります。しかし、まだ四十種類の魚が出荷制限をされているという状況の中で、新たに魚種が増えたりもしております。
 そこのところの海図といいますか、どこで捕れたものが数値を上回っているんだというと、一概に原発から南の方にというだけではなくて、突如北の方でもそういうものが出てきたり、全く予断を持たずに結果だけを見ているというようなことが続いているというふうに思っております。
 そういう中でありますから、今後のことについて本当に思いを巡らすというのは大変な時期だというふうに思いますけれども、少しずつみんなで、安全なものだけは出荷するんですよ、そして、安全だと言われて出荷するものについては食べて応援をしましょうというようなことも取組が始まっているというふうに聞いております。
 それからまた、いろんなところで、簡便に、魚が入ったものの形を崩さずに、若干、三十秒ぐらいの時間でもってその箱そのものが安全かどうかということを調べるような機械というものも出てまいりました。
 私どもも、技術的なことを含めて、できるだけ地元の方々が再開をする意思があったときにそれに沿って、必ず消費者の方には安全だということを前提にして出荷ができる体制を取りたいな、それまで本当に御苦労だというふうに思いますけれども、できるだけ再開という気持ちをお持ちの方々に寄り添った施策というものをしっかりとやっていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 今、大臣の方からこれからのことを、再開も含めての話があって、二番目にそこも聞こうと思ったんですけれども、漁業者でいいますと、再建を目指して日々必死に頑張っていて、いろいろなことを試みているわけですね。
 例えば、私お話しした漁業者の方は、築地市場に出かけていって、それで流通業者や消費者の方と懇談しているわけです。身銭を切って水俣の被害の調査にも行っているんですよ。それは、風評被害を含めて、長い時間たっているけれども、どうやって乗り越えているのかということを学びたいということで行っているわけです。そして、そういう中で、買受人からは常磐沖の魚は扱えないというふうに言われて、スーパーは産地で取引すると、だから、もうどこから出ているかというだけで取り扱えないという話になるわけです。
 漁業者としては、放射性物質の検査数値をきちんとやっぱり示すことで消費者や流通業者との信頼関係を築くことが大事だということで、やっぱりそういう意味では、国が本当にこの苦しむ漁業者や水産業、関連するところも含めて一体になって再建することが不可欠ですから、そこは本当に再建の方向を率先して示していただきたいというふうに思うわけです。
 それで、漁業者は、国が本気になってやっているのかということは率直に言って伝わってこないというふうにも言っているわけですよ。放射能汚染の実態を調査するには、やっぱり海水でどうなっているか、それから泥がどうなっているか、魚の餌がどうなっているかということで把握するということが出発になるということで、放射能は広域に広がっているわけですけれども、海洋、海域の放射能モニタリングの検査、この検査の精度を上げて情報を公開するということが大事だと。
 ところが、モニタリング検査の体制が不十分だという声もまた出ているわけですよ。海域モニタリングの測点というのは、海水でいうと二百二十地点、海底土でいうと九十地点、海洋性生物、プランクトンですね、七地点のみ。ですから、農地の土壌の、さっき調べているという話がありましたけれども、農地の土壌の測点は福島県だけでも約二千二百か所、それから他の県を含めて三千四百ということになっているわけですけれども、そうすると、農地土壌に比べると海というのは極めて少ないわけですよ。
 農業の場合は収穫した場所が分かりますけれども、漁業の場合は数時間網を引き続けると。魚を引き揚げていくわけですけれども、数十キロ移動するから、どの地点で魚が網に掛かったかというのは分からないわけですよね。いわゆるホットスポットの水産物も含めて、ずっと引いて揚げていくと。そうすると、測点を増やして、やっぱりもっと放射性物質の動きを細かく検査するということが必要だというふうに思うんです。

資料:福島県環境放射線モニタリング調査結果(海底土壌・四倉沖)
図

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 それで、私、以前行ったときに、福島県の水産試験場は、そういう声も漁業者から上がっていたものですから、独自に、岸から〇・五キロメートル水深で七メートルから、大体二十・二キロメートル水深で百二十五メートルまで、八地点でモニタリングを行って、独自にやっていたわけですよ。
 それで、資料を今日お配りしているのでちょっと見ていただきたいんですけれども、この資料で見ますと、これ四倉沖なんですけれども、そこの海底土壌の数値です、水産試験場のですけれども。
 昨年五月から今年の一月までの資料ですけれども、浅いところは徐々に放射性物質、最初のころから見ると数字が減っているんですけれども、一番深い場所で見ると、昨年六月はNDということでこれ検出されずだったんですけれども、十月にはどんと高くなっているわけですよね。六・五キロメートルの水深五十メートルのところで見ると、数値が横ばいという状況です。こういういろいろ違いが出てくるということがあって、やっぱりきめ細かい検査体制というのがあって、そういうことでここは薄いのかとか濃いのかということになるわけですから、こういうことが必要じゃないのかと。
 海域モニタリングは省庁で役割分担があるわけですけれども、それは分かっているわけですけれども、是非、農水省としての認識、お考えをお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(森本哲生君) 紙委員御指摘のように、私、魚が大好きでございますので、本当にたくさん量を食べます。
 そんな中で、今、いまだに基準値を超える放射性セシウムが検出されておるということは非常に大きな問題であるという認識もさせていただいております。ただ、私どもが中心になるというよりも、政府、確かに今おっしゃいましたように総合モニタリング計画、これは文科省、環境省等の関係省庁でやっておるわけでございますけれども、仙台湾は観測点を増やしました。しかし、増やしたといっても四から六ということでございますので、その御指摘が多いか少ないかということは、これからまた少しでも今日の質問をいただいたということで、私どもも積極的にそのことを申し上げていきます。
 特に、私どもが何をするかということよりも、やはりこうした計画全体をどう動かすかということも大事だと思っておりますので、まずそのことについては今後関係機関との協議を積極的にやっていきたい。
 そして、今もう一つおっしゃられたことでございますが、この資料につきましても、確かに餌生物の海底、ここのところは非常に重要な分野でございますので、ここのところは福島県の水産試験場等での取組をさせていただいておるところでございますので、ここのメカニズムについてはしっかり解明するということと同時に、これを消費者の皆さんの信頼を得るためにしっかり公表していくということも大事だというふうに考えておりますので、二十三年度の結果については水産庁のホームページ等でお知らせをさせていただきました。今引き続きやっておりますので、この結果はできるだけ早く公表するようにという指示もさせていただいておるところでございますので、御理解いただきたいと存じます。
○紙智子君 今ずっとプランクトンというか餌生物という問題なんかも含めてお話しされたんですけれども、採取測点については是非広げていただきたいと。それで、静岡で出た話もありましたけれども、やっぱり北海道とか青森とか岩手とか神奈川とか静岡なんかも含めて測点を設けるべきだというふうに思います。特に、仙台湾でこの間放射性セシウムの値が上がっていて、これもモニタリング体制を強化すべきだということも申し上げておきたいと思います。
 そして、今お話しされて、もちろんこのメカニズムという問題が大事であると、それはそういうふうに思うんですけれども、やっぱりモニタリングの検査は研究目標という範囲にとどめないで、やっぱり太平洋沿岸の漁業を再生させるということと同時に、消費者の安全につながるように抜本的に強化するということや、情報公開の対象を拡大するということを求めておきたいと思います。これについても再度お願いします。
○大臣政務官(森本哲生君) 今も申し上げましたことにつきましては重ねて申し上げませんので、委員御指摘のことにつきましては、今私がお答えさせていただいたところと重なっておるところもございますので、その視点、十分踏まえながらしっかりやってまいりますので、よろしくお願いします。
○紙智子君 次に、六ケ所村の再処理の問題についてお聞きします。
 六ケ所村のこの再処理工場というのは十月に稼働することになっているわけですよね。それで、経済産業省が今日来ていただいていると思うんですけれども、お聞きしますが、本格稼働すれば放出される放射性物質というのは大気、海洋のトータルで年間で何ベクレルになるのか、お話しください。
○大臣政務官(中根康浩君) 経産省からお答えを申し上げます。
 放射能の生態系への影響については、核種により影響の強さが異なることから、放射能量であるベクレル数を単純に足し合わせて比較することは適切でないと考えておりますが、気体廃棄物の放出量は主にクリプトン85により年間約三・三掛ける十の十七乗ベクレル(33万兆ベクレル)、液体廃棄物の放出量は主にトリチウムにより年間約一・八掛ける十の十六乗ベクレル(1万8000兆ベクレル)となっております。
○紙智子君 十の十六乗とかっていうと物すごい数値なんですよね。年間そんなに出して大丈夫なのかというふうに思うわけですけれども。
 いずれにしても、これは従来、各原発がやっている数値に比べても、再処理の場合は更に放出の濃度が高くなるということは間違いないと思うんですよ。
 それで、十月から本格稼働するとなると、この大量の放射性物質が大気や海洋に放出されると。海洋への人為的な放出というのは、福島の原発事故のときにあれだけ問題になったわけですよね。岩手県の漁民組合は七月に要請しているわけですけれども、岩手、青森の関係者は本格稼働は中止するべきだというふうに求めているわけです。
 それで、大臣にお聞きしますけれども、海洋への人為的に放出するような再処理工場を認めていいのかということなんですが、これについていかがですか。
○国務大臣(郡司彰君) 今お答えがありましたような数値というのが、私ども、一般的に聞いてもよくぴんとこないというようなことがございます。
 この六ケ所村の周辺海域におきまして文部科学省がいわゆる調査を実施をしてきた、そして、僅かでありますけれども、農林水産省も昨年の事故を受けて全国的な海域のそれぞれの調査というものも行ってきているところでありますけれども、いずれにしましても、私ども、その十月にということがどのような形でこれから進んでいくのか、関係をするところとそれぞれ連携をする、情報をきちんと取り合う、そういうことをまず行いながら見ていかなければいけないんだろうというふうに思っております。
 漁民の方々が心配をなされるような形ではなく、きちんと安全性が確保をされるということが何におきましても前提だというような形で各省庁との連携を進めていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 経済産業省にお聞きしますけれども、再処理工場は事故が相次いで、これまでもですね、安全だという保証はないわけです。ましてや、アクティブ試験は終わっていないし、国の検査も終わっていないと。十月に本格稼働できる状態なんでしょうか。
○大臣政務官(中根康浩君) 核燃料サイクル政策については、原子力委員会が提示した選択肢等を踏まえつつ、エネルギーミックスの大枠に応じて政府が整理し決定することとされております。
 六ケ所再処理工場の状況につきましては、実際の使用済燃料を使用した稼働に向けた試験、今先生も御指摘のアクティブ試験と言いますが、を実施中であり、その竣工、稼働については今後の試験の状況も踏まえて事業者が判断をしていくものと承知をいたしておるところでございます。
○紙智子君 福島県の原発事故の原因もまだ十分解明されていない、それから、原発そのものについてももっと根本的な見直しということが大問題になっている中で、本格稼働はやめるべきだと。そして、農水大臣としては、非常に不安がある中で、これはやめるように働くべきではないかと思います。いかがですか、最後にそのことを聞いて。質問したいと思います。
○国務大臣(郡司彰君) これまでも他の委員からも同様の御指摘がございました。六ケ所村で今後、核燃料サイクルそのものがどのような展開をするかというのは、今まさに政府の中でしっかりと議論をされているというふうに思っておりますので、私自身は漁民の、そして消費者の方々の安全につながるようなことを政府部内としてもしっかり考える、その形で進めていくべきだろうというふうに思っております。
○紙智子君 終わります。