<第180回国会 2012年8月28日 農林水産委員会>


穀物高騰対策を早く/農林漁業者が主体等、法案の修正内容について

○ 株式会社農林漁業成長産業化支援機構法案(内閣提出)について


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 法案の質問の前に一点、記録的干ばつによる世界的な穀物の高騰の問題について質問いたします。簡潔にお答えいただきたいと思います。
 米国の記録的干ばつと、それからロシア、インドの干ばつで、世界的な穀物価格が高騰しております。米国のトウモロコシと大豆の先物相場は過去最高価格にまで高騰しているということです。米国の被害実態は今後更に明確になることになりますけれども、収穫量は平年を大きく下回ることになることは必至で、価格高騰にとどまらず供給量の確保の面でも深刻な事態が想定されていると。この点では、飼料用のトウモロコシの九割以上、日本が依存していると。それから、大豆や小麦についても米国に多くを依存しているわけですから重大な事態なわけです。
 それで、もう既に、小麦の価格についても輸入麦の政府の売渡価格の平均三%の引上げを農林水産省が発表しましたから、影響が出ているということです。畜産・酪農家は、飼料価格の高騰になれば経営面に深刻な影響を受けることになって不安な状況に置かれていると。これに対して、先日、農水省として情報収集をし動向を注視するという見解を発表したんですけれども、これではちょっと対応は不十分だと言わざるを得ないわけです。直ちに農林水産省内に対策本部を設置して万全な国内対策を取ると同時に、世界的な投機規制なんかも含めて取り組むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(郡司彰君) アメリカを中心にして、干ばつの影響、そして収量の予測というものが大変下回るのではないか、こういうような懸念と、それから、市況そのものがそれに連動するだけではなくて、小麦などは、何というんでしょうか、そのもののマネーの動きとして高騰をしていると、こういうような状況がございます。
 それはどのような見方をするべきかというのは、前回に非常に不作があったときと比べますと、作付け量それから収量そのものもアメリカ自体が相当変わってきております。そしてまた、何というんでしょうか、円高がありますとか輸送コストが変わってきているとか、直ちに二十年とか、逆な言い方をすると、八八年のときのようなものとも若干違う要素があります。そういう意味でいろいろと注視をしていかなければいけないと、こういうような言い方をしてまいりました。
 しかし、相当程度供給量の確保についても考えを致さなければいけないのではないかというような御意見をいただいております。例えば、アメリカ以外のところからの供給ということも可能なのか、いろいろなことについて、対策といいますか、これからの動向をもう少し具体的に行う時期にも入ってきているのかなというふうに思っております。
 いろんな意味で、直ちに対策本部を設けるかどうかということについては猶予をいただきたいというふうに思いますけれども、注視をするというだけではなくて、何らかの具体的な対応策を検討をすると、そういうことも必要なことを考えていきたいというふうに思っているところでございます。
○紙智子君 それで、もう一点なんですけど、これ、関係団体からも申入れがある話なんですけれども、配合飼料の価格の安定制度についてです。
 通常補填の基金が前回の飼料価格の高騰時に資金不足に陥って千百九十二億円の借入れを行って、借入残高が現時点でも七百四十二億円に及んでいるわけです。この借金の返済を依然として今行っていて、こういう状況の中で前回以上の飼料価格の高騰に見舞われたならば、これは通常補填基金の破綻もあり得るということだと思うんです。そういうことについても、放置しないで直ちに対策を取るべきだと思うんです。
 いずれにしても、事態を、今もおっしゃいましたけれども、注視するだけでなくと言いましたけれども、直ちに対策に取りかかるべきだと、これについても、大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(郡司彰君) 高値を付けて、ここ一週間ほどはまた逆な動きも出ております。そういう意味では、やはり動きをしっかりと見定めるということも一方でやらなければいけないというふうに思っております。
 基金の関係でございますが、二つあるわけでございまして、通常の方が、先ほど、午前中だったと思いますけれども、申し上げましたように、通常の補填基金が百七十億ほどございます。それから、異常補填基金の方が三百十億円、これを今合わせて約四百八十億円となるわけでありますけれども、もし通常の基金が不足をするような場合には異常基金からの貸付け等も行いながら全体として円滑に実施をされるように、そこのところはしっかりと見ていきたいなというふうに思っております。
○紙智子君 それでは、次、法案の方に入ります。
 農林水産省が五年ごとに発表している産業連関表の二〇一〇年度版で、最終消費から見た飲食費の部門別の帰属額、そして帰属割合の推移というのがありますが、それを見ますと、食料関連産業の生産額規模というのが、一九八〇年四十八兆円だったのが、二〇〇五年には七十四兆円に拡大しているんですけれども、国産の農水産物、言わば農家の取り分について言うと、十二兆円から九兆円に下がっている。国産のシェアについては、農業段階の取り分というのは二六%から一三%に落ち込んでいるわけです。六次産業化というときに、やはりこの農家の取り分を増やすことが重要だというように思いますけれども、この点での大臣の認識をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(郡司彰君) まさに、申し上げておりますように、地域の力が弱くなってきております。農業所得でいいますと、全体で六兆円から簡単に言えば三兆円に半減をしているわけでございまして、これではなかなか地域が立ち行かないというようなことになろうかというふうに思っております。
 御存じだというふうに思いますけれども、庭先の取り分というのは水産の関係が更に低いというような現実がございますから、そのために六次産業化というものを行っていこうということを先ほど来から申し上げておりました。
 また、一方で、二〇五〇年のときに、国の人口がどういうような状態でどの地域で減るかというようなことがございまして、これは国土交通省が発表しておりますけれども、中・四国、九州等を中心に一〇〇%減少をする、あるいは五〇%から一〇〇%に近い減少をするという地域が大変多くなっているというところがございます。
 そういう意味からも、今先生御指摘をいただきましたような、地域の中の所得というものを強めていく、高めていく、このことが六次産業化というだけではなくて国土そのものを保全をしていくということからも大変重要な取組だというふうに私どもは思っております。
○紙智子君 それでは次に、修正案の提出者にお聞きしたいと思います。
 六次産業化法は農林漁業者が主体的に行う取組を支援する法律ですけれども、政府が提案した六次化ファンド法にはそうした規定がありませんでした。ですから、六次産業化パートナー企業や地域ファンドが事業の主導権を握るのではないかと。つまり、出資企業が事業を主導し、生産現場に不安を与えるという懸念を私ども持っていたわけです。
 そこで、支援対象事業者についてお聞きしますけれども、農林漁業者が主体であることを明確にしたと思いますけれども、その理由について説明をしてください。
○衆議院議員(宮腰光寛君) お答えいたします。
 衆議院における第二十一条の修正によりまして、支援対象事業者は、いわゆる六次産業化・地産地消法の認定を受けている認定事業者であることを要件として明記をいたしました。この六次産業化・地産地消法において認定事業者となるためには、第三条によりまして、農林漁業者が主たる構成員であること、つまり農林漁業者が主体であることが必要になります。
 このように、六次産業化・地産地消法の認定事業者がファンド法の対象事業者となることを明らかにすることで農林漁業者の主導性の確保を担保し、御指摘のような出資企業や地域ファンドが主導権を握るのではないかという懸念は払拭できているものと考えております。
○紙智子君 次に、地域ファンドが企業主導になるとの懸念があったわけですけれども、政府提出のファンド法で位置付けがはっきりしなかったサブファンドに対する国並びに機構の関与が強化をされたと。また、機構の支援決定において大臣の関与が強化をされました。その理由についても説明をお願いします。
○衆議院議員(宮腰光寛君) 御指摘のとおり、衆議院における修正によりまして、機構による地域ファンドに対する指導、勧告等、農林水産大臣による地域ファンドに対する報告徴収等の地域ファンドに対する国及び機構の監督を強化をいたしました。
 政府案では、そもそも地域ファンドの位置付けが条文上不明確であったわけでありますが、今回の機構による出資という形の支援においては地域ファンドが非常に重要な地位を占めるものであることから、その位置付けを明確化するとともに、御指摘のような国及び機構による監督を強化する規定を追加することとしたものであります。
 また、機構の支援決定の際の大臣の関与につきましては、今回の機構による支援は、農林漁業分野において補助金や融資ではなく出資という形の初めての試みであることから、農山漁村の活性化や農林漁業者の経営の安定向上を図るため、単に市場原理に委ねるだけではなく、また、農林水産大臣に対する意見を述べる機会の付与や、事後的な監督権の行使ではなく、支援決定等が国の関与により更に慎重な手続により行われるべきものであるとの考え方から、機構の支援決定等について大臣の認可としたものであります。
○紙智子君 今お話を聞きましても、修正の結果、農林漁業者が主体的に行う取組であること、地域ファンド等への国の関与が強化されたことなど、企業主導にならないような歯止めが掛かったという点ではこれは評価できます。そういう点では私たち賛成にしたいというふうに思っているわけです。やはり生産者が大いに生産活動を行いながら所得が増えていく、農家の取り分を増やす取組になることが重要だというふうに思っております。
 先日、実は群馬県の甘楽という、甘楽郡って本当に山なんですけれども、山の奥にあります南牧村というところに行ってきました。人口が二千四百人余りです。戦後、養蚕と林業、そしてコンニャクイモ、この生産で栄えていたんですけれども、一万人いたときもあるんですね。それが、その後、養蚕も林業もコンニャクイモの生産も衰退してしまって、高齢化がどんどん進んで、高齢化率が、六十五歳以上の方がもう今五七・二%ということで、もう六割近いんですね。そういう過疎ということになって、一番、日本一、高齢化率は日本一というふうに言われるぐらいなんです。
 行ってみて改めて驚いたんですけれども、そういう過疎のところなんです。過疎の地域をどう振興するかということで住民が一生懸命考えてアイデアを出して、住民が主体になって新たな取組をやろうということで、例えば花卉生産組合が気象条件とか土壌条件を生かしてナンテンとか菊を売っているわけですよね。それから、ブルーベリーですか、ブルーベリーを生産してジャムを作って、加工、販売していると。それから、炭に目を付けて、これ何とかならないかと。消臭剤になるということで、そんなことで炭なんかも使ってやるとか、直売施設で道の駅オアシスなんもくというのもあるんですけれども、そこに販売していると。
 こういう取組というのは、実はほかにも全国、本当に努力して頑張っているところというのはたくさんあるわけで、それをやる場合には、加工や販売所を安定的に運営するために立地条件も大事だし、施設も大事だし、機材や加工や調理する人も、資金も大事だということで、やっぱり六次産業化というときに、こういう取組を本当に底上げしていくというか応援していくということが必要なんじゃないかというふうに思うわけですけど、いかがでしょうか。
○大臣政務官(森本哲生君) とてもそのことが大事だと思っています。
 そして、このため、二十四年度では、やっぱりプランナーの総合的なサポートに対しての支援、そして新しい商品開発やら販路開拓、これを二分の一から三分の二、こうした予算を積極的に使っていただいたらいいんじゃないかというふうに思っています。あとは加工・販売施設の整備について支援を、この三つをしっかりやっていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 それで、六次産業化推進整備事業が去年から始まっているんですけれども、農産物の加工場の申請件数を見ると、これ四十五件と。採択件数は二十八なんですね。この事業というのは法人化を基本にしているということなんですけれども、昨年の、二〇一一年十月二十四日に農水省は農産加工場調査結果の概要というのを発表しています。それによりますと、農産物加工場はどれくらいあるかというと、全国で二万七千二百三十一か所あると。法人化していない農家というのがそのうち二万三千八百六十一で、全体の九割なんですね。法人化していない方が圧倒的に多いと。
 法人化していない農家の従業員というと、平均で三・九人ということになっているんですけれども、ですから、ファンド法で機構が支援する法人が伸びるというのはもちろんなんですけれども、法人化していないところも含めて伸びる、支援する必要があるんじゃないかと思いますけれども、これについていかがでしょうか。
○大臣政務官(森本哲生君) こうした小さい単位での頑張っていただいておる方々については、現在法人化は原則として三戸ということになっておりますけれども、今回の支援では三名以上の常勤の雇用というようなことで、少しここは緩和をさせていただいておりますので、そうしたことも併せて活用いただけたらというふうに思っております。
○紙智子君 六次産業化推進整備事業、今年度、これ予算は増やしているんですけれども、ところが、伝統食の農家レストランというのは対象から外しているとかいうのがあるんですよね。それから、六次化法の法認定事業者でないと申請できないというふうになっていて、加えて、五年後は売上げが五%以上増加しないといけないと。
 五年以内に黒字化を図るというのが要件になっていて、言わばこの要件、ハードルを上げているということなんですけれども、何でハードルを上げているんでしょうか。
○大臣政務官(森本哲生君) ここは私もかなり皆さんと議論しました。今、どちらかといえば経済がこう落ちているときに、五年で上げる、しかし五%はやっぱり許容の範囲かな、その議論で五%ということについては認めさせていただいたというようなことなんですが、ただ、六次化を既にスタートされておるところもありますので、ここはアイデアでもう新しい一工夫を加えていただいて、補助事業、融資に乗っていただく。そうしたことについても我々柔軟に対応させていただきますので、是非そうした皆さんにお伝えいただければ有り難いと思っております。
○紙智子君 やはり頑張る農家を応援するということで、その間口を狭めてしまっては、これは活性化にはつながっていかないというふうに思うんですよ。
 農山漁村を回って感じるのは、やっぱり地域のお宝を今探して、我が町のお宝は何だろうかということで必死になって探して、地域資源を生かして、アイデアを出して主体性を持った取組をするということが随分やられてきているわけですよね。それで、やっぱり上から目線で何かはめ込んでいくんじゃなくて、そういう本当に一生懸命やっているところに対して光を当てて、そういう地域の取組を応援するということが今もう何よりも大事だというふうに思うんです。
 そういう意味では、私は、農林漁業者が消費者と連携して進めている産直運動ですとか、それから地域密着型でいろんな多様な取組が行われているんですけれども、そういうことを支援すべきだということを強く思うわけで、是非そういうふうに動いていくように力を入れていただきたいということを最後にお願いいたしまして、もし最後に一言何かあったらお聞きして、終わりたいと思います。
○大臣政務官(森本哲生君) 大臣からもいただきますが、やはり地域の誇り、そこに大きな知恵がありますので、そうしたところは日本の財産としてやっぱりしっかりと我々も応援していかなければならない。農林水産省としても、とにかく現場に行って汗をかいて何ぼというような話を今させていただいておりますので、そういう地域にも積極的に職員を送り込むような、そんな努力もさせていただきます。