<第180回国会 2012年6月19日 農林水産委員会>


競馬法改正案

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 競馬法の改正案について質問いたします。
 現在、中央競馬も地方競馬も経営危機に直面しているわけです。不況による売上げ減少の影響が大きいということは言えますけれども、一方、射幸心に頼った増収策が問題だったんじゃないかという指摘もされています。
 私どもも、三連単を導入する競馬法の改正については、ギャンブル性を高めて競馬の健全性を損なうということで反対をしましたけれども、六月二日に発売されました週刊ダイヤモンド、ここでも、JRA危機の構造ということで特集で、次のように指摘をしています。売上高が減少に転じたJRAは、射幸心を更にあおる安易な手段に出た。高配当型馬券はエスカレートして、一着から三着を正確に当てる三連単が売上げの主流となった。百円が一千万円を超えるような馬券は一獲千金を夢見たファンをとりこにしたが、これが裏目に出た。ハイリスク・ハイリターンの馬券は少数の勝者と多数の敗者を生み出した。多くのファンが、金がなくなった、当たらなくてつまらないと競馬から去っていったのだ。副作用も大きかった。九種類まで増え過ぎた馬券、複雑化した投票システムは初心者には理解し難く、新規ファン参入の障壁となった。また、宝くじ感覚の馬券は偶然頼みとなり、競馬のだいご味であった血統の研究や予想の楽しみを薄めてしまった。
 大臣、こういうギャンブル性の強化による増収策に依拠する競馬の在り方を見直して、スポーツとしてもっと広く国民が楽しめる健全な競馬振興を進めるべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(郡司彰君) 私も、例えばスポーツとして馬場に通う方の人口が若干増えているというようなこともお聞きをしております。それから、先ほどもちょっとやり取りの中でございましたけれども、心を病んでいる方に対して馬のセラピーなどが有効だということも伺っておりますし、いろいろな意味でこの馬というものがある。例えば、昔はやった映画で「マイ・フェア・レディ」なんかは、貴族の方が本当に社交の場として行くような、そういうイギリスのような伝統もございます。いろんな形があろうというようなことに思っておりまして、ただ単に手をこまねいていてはなかなか難しい。
 だからして、射幸心を一定程度高めるというようなことで、ある意味での人を呼び寄せるようなことをしようとした。そのこと自体は努力の一つとして私は評価をしながら、しかし、そこにだけに偏るということが、子供さんを含めて、これから女性も含めて新しい層を開拓するのに万全なものではなく、いろんなお取組をするということが必要だろうというふうに思っております。
○紙智子君 中央競馬会は、自らの経営責任をこの中央競馬会で働く従事員の賃金の値下げに、今回初めて実は日給の三%引下げを行うということでしわ寄せをしているんです。
 そこで、再度確認をしたいと思うんですけれども、二〇〇七年の四月二十四日に私、農水委員会で質問をしています。そのときに、この質問に対して農水省として、従事員の位置付けについて次のように述べています。従事員の方あるいは厩舎関係者の方々、これも大変競馬会あるいは競馬関係の競馬サークルの中で非常に重要な役割を果たしていると考えておりまして、こういう人たちがやはり自信を持って生活していけるということは重要なことだというふうに思っています。
 さらに、農林水産大臣、当時松岡農水大臣だったんですけれども、いろんな関係者の一致した協力、それによって成り立っているわけでありますから、どこか一つのところだけにしわ寄せが行くような、それはやっぱりあってはならないことだと思っております。今先生御指摘のような方々の立場というものもこれまた大変重要でございますので、それが全体の中でしっかり守られていくような、そういったことについては農林水産省としてもできるだけの後押しをしていきたいと思っていますと。
 この中央競馬会における従事員の位置付けについては、現時点でもこの考え方というのは違いないですよね、確認をしたいと思います。
○国務大臣(郡司彰君) 簡単に申し上げれば、先ほど言いましたように、それぞれの雇用はそれぞれの段階で分かれております。したがって、原理原則からいえば、馬主の方々が、例えば厩務員の方を指しているとすれば、その方と直接本当は交渉をする窓口にはなり得ないということも現実的にはありました。しかし、そこのところを、今のようなやり取りを含めて、農水省が間に入るという単純なことではございませんけれども、お互いが歩み寄って話合いの中でいろいろなことが解決できるようにというようなことをやってきたということは事実でございます。
○紙智子君 本当に歴史的にずっと、だから話し合いながらですね、お互いによく話し合いながら進めてきた、それでもって全体を支えてきたという歴史があるんだと思うんですよ。
 そうなりますと、やっぱり今年のようにこの従事員の日給の引下げがされると、一方でね、一方的にされるというようなことがやっぱり起こらないように、これはこの後含めて中央競馬会を是非指導していただきたいということを要請をしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(郡司彰君) 大変複雑な仕組みになっております。賃金というだけではなくて、いわゆる勝ったときの報奨金の払込みとか、それから厩務員の方の場合には直接餌を与えるその代金とか、大変複雑多岐にわたっておりまして、幾つかのところが詰まっているという話は伺っております。
 したがいまして、今のところの話の部分だけではなくて、トータルで話合いができるように私どもも努力をしてまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 やっぱり歴史の中でしっかり支えてやってきて、そこに対して一方的に日給だけ下げるというようなやり方はやっぱり正しくないと思いますので、そこはよろしくお願いしたいと思います。
 それから、中央競馬と地方競馬の不振の状態というのは馬産地にも深刻な影響を与えていまして、現在、馬産地の再活性化緊急対策事業が実施されているわけですけれども、現地では、この使途に制約があるために有効利用されていないという声も出ていると。
 それで、要望として、一括交付金化という要望もあります。その本意というか、中身としては、やっぱり活性化のために地域の課題や実情に即した幅広い事業メニューなんかが実施できるような、そういうものとして考えてほしいということで出されているんですけれども、これについてはいかがでしょうか。
○副大臣(岩本司君) 馬産地再活性化緊急対策事業は、世界的な不況を背景に軽種馬の取引価格が下落し、軽種馬生産農家の経営及び馬産地の地域経済が悪化したことを受けまして、平成二十一年度の補正予算により創設されたものであります。この基金は五十億円でございます。
 同事業は、軽種馬生産農家などの関係者が一体となって行う馬産地の再活性化に向けた取組に対しまして緊急的に支援する事業でありまして、馬生産者の高度化や経営の複合化、転換に資する事業に対し補助するものであります。したがいまして、目的や使途を限定しない地方公共団体への一括交付金とすることは創設の趣旨からして困難と考えております。
 一方、本事業の内容につきましては、地域の要望を踏まえまして運用改善を行うとともに、依然として軽種馬生産農家が厳しい状況にあることを考慮しまして、これは二十一年度から二十三年度で終わりの予定でございましたけれども、今般、同事業の実施期間を三年間、平成二十四年度から二十六年度、延長したところでありまして、引き続き運用に関しての産地の意見を聞きつつ、馬産地の活性化に努めてまいる所存であります。
○紙智子君 もう一つ、対策でもってお聞きしたいんですけれども、農家や農協のリスクを軽減するということで、協会保証基金の言ってみれば再造成ということですね。それから、競走馬の生産振興事業の助成対象範囲を優良牝馬導入に、これは活用、今入っているということなんですけれども、継続していただきたいという要望もあります。それから、他作物への複合、転換の際には家畜導入や農家の運転資金にも活用できるようにしてほしい、それからまた、草地の整備改良にも使えるようにしてほしいというふうなことで要望が出ているんですけれども、これについてはいかがでしょうか。
○大臣政務官(森本哲生君) ここのところですね、JRA等の資金を財源とする競走馬生産振興事業及び国費による馬産地再活性化緊急対策事業における負債の借換え資金においては、農業信用基金協会に対しての代位弁済に要する経費を積み立てたところでございます。これが一つ。そして、今言われたように、牝馬導入については、ここは支援をやります。そして、三つ目なんですけれども、この機械等のリース、こちらも今日の議論になっておるように含まれておるのと、そして草地整備についても、ここのところは競走馬生産振興事業において支援をさせていただくと。
 もう一つ、何かちょっと私も言われたのが抜けたと思うんですけれども……
○紙智子君 複合、転換の際の……
○大臣政務官(森本哲生君) 複合、転換ですね。
 この経営の複合化や転換する場合の支援については、この事業が機械リースというような形で。これでよろしいですか。そこに含まれていくということなんですが。
○紙智子君 だと思います。
 ちょっとまた、もし不足でしたら、後でまた。
○大臣政務官(森本哲生君) また詳しいことを事務的に、お申し付けください。
○委員長(小川勝也君) 議事録作れなくなっちゃうよ、それじゃ。
○紙智子君 あともう一点あるから、済みません。
 最後に、ちょっとこれも質問したくてあれなんですけれども、TPPと軽種馬についての大臣の認識をお聞きしたいというふうに思っています。
 実は、私も先週、日高の静内町と浦河町まで行ってきたんですけれども、やっぱり軽種馬産業ということで町の収入の七割方占めているものですから、だから、生産者もそうだし、農協もそうだし、町も挙げて努力をしているわけです。
 そういう中で、先日、静内農業高校の高校生たちが生産したサラブレットが中央競馬で一等賞取ったというんで、これはもう町にとっては最高に明るいニュースで非常に沸いていたんですよね。高校生にとっても、自分たちが愛情を傾けて育てた馬がいい成績取るということは、これはもう本当にうれしいし、誇りになることなんですね。
 それだけに、やっぱりこういうときにTPPに参加するとなると、今、三百四十万ですか、一律に関税掛けているということなんですけれども、関税ゼロということになった場合に、やっぱり外国からの馬が入ってきて、それで、やっぱりただでさえ厳しい農家経営を大変圧迫するんじゃないのかということでの非常に心配の声も出されていまして、議会も、これは二つの町、両方とも議会で反対決議も上げているんですけれども、このことに対してのちょっと大臣の認識と、それから、やっぱり馬産地、生産者に対する特段の配慮ということで最後に伺って質問にしたいと思います。
○国務大臣(郡司彰君) 静内の高校が一等賞というのは、これはいいことですね。うれしいニュースだというふうに思います。
 このTPPの全体のことに対してはもう繰り返しません。今、情報収集しながら国民的な議論をこれからも始めますよと、やっていきますよということの中で、じゃ、この馬のことはどうなんだということになれば、これもやはり二つの側面があるんだろうと思います。
 例えば、これまでと違った血統の馬が入ってきて、そのことによってまた日本の馬の血統が良くなったり、そういうようなメリットというものも一部ではあろうかというふうに思っております。それだけではなくて、逆に、もう少し競走力が強い馬が入ってきた場合に国内はどうなるんだということの心配ももちろんされるわけでありますけれども、ここのところは、余り前提を置かずに、いろいろなケースを想定をしながらやっていかなければいけない。
 つまり、今のところ、TPPに参加をする、しないを決めていないわけでありますから何とも言えませんけれども、TPPだけではなくて、いろいろな経済連携に伴うその産地に対する対策が行われなければいけないときにはそれなりの対策をきちんと打つという構えでこれからも取り組んでいくということでございます。
○紙智子君 今までも、例えば外国からの馬を入れて、やっぱり楽しむ方はいろんな馬が走った方がいいというのはあるんですけれども、だけれども、やっぱり産地を一定程度守らなきゃいけないということでは、出走枠を決めて、そこから出ない範囲でやっていたわけですよ。それなんかも含めて、外されちゃったら本当にもたないということなので、いろんな対策を打ったってこれはもたないわけですから、そこについて、最後、ちょっと一言だけ、もう一回。
○国務大臣(郡司彰君) TPPをする、しないという結論を出しておりません。したがって、もしというような形でその対策を今述べることは私は余り適切ではないということでの先ほど答弁を申し上げたところでございます。
 一般論として、何かしらそういうような生産地に影響が与えるようなことが起こった場合には、もちろんそれなりの対応をきちんと農林水産省としては取る、これはTPPとは別のこととして当然やっていくというような決意でございます。