<第180回国会 2012年3月28日 沖縄北方特別委員会>


基地跡地のPCBは米本国に持ち帰りを 日米地位協定改定をもとめる

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、沖縄の農業への国の支援強化について質問いたします。
 衆議院で川端大臣は、沖縄において農業の振興は極めて大事だとして、国の支援について、資金の確保と同時に、農業者その他の関係者に対する専門的、技術的な助言、指導、その他の援助はしっかりやらせていただきたいと答弁をされました。
 昨日、私はサトウキビの話、質問したんですけれども、国の支援でとりわけこの研究支援というのも重要だというふうに思うんです。これまでもゴーヤに付くウリミバエですね、この根絶を沖縄と国の研究機関が一緒になって長期にわたって取り組んで実績を上げてきたと、非常に重要な役割を果たしてきたというふうに思います。
 今、テーマはカンショに付くイモゾウムシ、それからアリモドキゾウムシの根絶研究で、これも国として研究機関で取組が始まったということなんですけれども、これ是非とも結果が見えるまで徹底して国として実施をしていただきたいということで、まずちょっと農水省にお聞きします。

○政府参考人(藤本潔君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のイモゾウムシ、アリモドキゾウムシというのは世界的に見てカンショの最も重要な害虫でありまして、南西諸島で深刻な被害をもたらしている害虫であるというふうに認識しております。
 アリモドキゾウムシにつきましては、不妊虫、要するに雄ですけれども、それを用いた防除技術が確立されておりまして、事業もしております。また一方、根絶のための技術が確立されておりませんイモゾウムシでございますが、これは沖縄県などと連携してLEDを利用しましたトラップとかそういった捕獲方法の開発に取り組んでいるところでございます。
 農林水産省といたしましては、今後とも必要な研究開発の推進に努めてまいる所存でございます。

○紙智子君 研究機関が独法化されたのでもう短い期間で成果を出さなきゃいけないという、そういう環境も厳しいというのはあると思うんですけれども、しかしやっぱり沖縄のカンショを他地域へも出せるようにということを考えると、この問題というのは本当に解決しなきゃいけない問題と思いますので、是非ともやり遂げていただきたいということで、重ねて要請をしたいと思います。
 次に、観光振興に関連して質問いたします。
 沖縄にとっての観光振興が重要な一翼を担うというのは言うまでもないわけですけれども、今回の振興法の改正で、通訳案内士法の特例措置として沖縄特例通訳案内士制度というものを創設をして、これは通訳案内士法の適用除外とすると。試験を必要なくして研修のみで資格を与えるというものなんですけれども、まず観光庁にお聞きしますが、この通訳案内士制度、そのそもそもの趣旨、資格試験をもってこの質を担保をしているのはなぜなのかということについて御説明願います。

○政府参考人(又野己知君) お答え申し上げます。
 通訳案内士制度というのは戦後間もない時期にできました制度でして、そのころはまだ訪日外客の受入れ体制、日本全体非常に貧弱でして、ハードだけじゃなくてこういう案内士の、通訳の方のソフトも非常に海外と比べると劣後をしておったということであります。英語を始めとするお客さんのニーズは見えていたわけですから、それに対応しようということで制度設計をして、昭和二十四年につくり上げた制度です。
 これは通訳案内業全体の中で基幹的な制度だと我々認識しておりまして、といいますのも、つくった当時は、観光という国際相互理解という観点だけではなくて、実は外貨獲得という非常にもっと切迫した我が国の経済情勢に呼応したものであります。その後、その業としての性格というのは専ら前者の方に、つまり国際相互理解というふうに重きが移ってまいりましたけれども、今後、そういう経済的な側面というのも再認識される意味がもっと出てくる局面もあるんじゃないかというふうに認識しております。
 いずれにしましても、この制度というのは有料、有償で業として行う通訳の言わばプロの核ですので、ここの制度については、人材の質の確保ということできちんとした制度設計あるいは見直しあるいはその運用というのを今後とも進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 全国的な制度がありますが、さらに地域限定の通訳案内士制度が設けられたのはなぜなんですか。

○政府参考人(又野己知君) 我が国に来られる外客のボリュームというのも非常に最近増えております。リピーターの方も非常に増えておりまして、訪れられる観光地もある意味で奥深いものになってきておりまして、従来からの箱根ですとか日光ですとかそういうゴールデンルートと言われる、あるいは奈良とか京都とかいうところだけでなくて、地域に入り込んでその地域地域の日本の良さというのを感じ取りたい、あるいは体験したいというニーズがとても高くなってまいっております。
 その意味では、全国どこでも紹介できて通訳案内もできるという方ももちろん必要なんですけれども、ある特定地域だけだったら私に任せておきなさい、言葉はちゃんとできますよというような方が、ニーズもあるし、それからそういう仕事をしたいという方の声もたくさん出てまいりましたので、制度として、全国一本のものに併せて各地域地域で限定して通訳案内業をやっていただくという制度も設けたと、そういう趣旨でございます。

○紙智子君 今、六道県とそれから沖縄もそれがあるんだというふうに聞いていますけれども、沖縄県は地域限定の制度もあると。語学、歴史、地理、一般常識、これらを試験によって水準を担保しているわけです。それを今回、クルーズ船でやってくる大量の中国人旅行者らに対応したいということで、沖縄県や観光協会の要望で特例を設けるということなんですけれども、率直に言って、安上がりに短期間の研修で資格を付与するということになると、通訳ガイドの大幅な水準低下を招くことになってしまうんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点はいかがですか。

○政府参考人(又野己知君) 全国一本の通訳案内士の制度が基幹であること、それからそれを補完して地域地域で特性を持った、今御指摘のありましたように六道県で導入している制度がその外縁としてまた重要なことというのは、これまで我々としては認識してきておりますし、今後ともその位置付けというのは変わらないと思っております。
 ただ、それだけではまた事足りないというニーズが、御指摘のとおり大型の三千人なり五千人という規模でお客を運ぶクルーズ船が入港したりということも、特に九州、沖縄では非常に増えてきておりますので、数的な問題としてもなかなか対応が難しいということになっております。
 そこで、和歌山県も同じような制度を導入されておるんですけれども、今回沖縄でも、もっと簡便に研修を受ければ通訳をやれるという、案内をやれるという制度はできないかということで制度を導入しようとしておるわけですけれども、制度設計自身はその和歌山におきましても、あるいはこれから入れるということを計画しております沖縄におきましてもこれからでございますので、研修制度というのはどういう深みなり広がりを持ったものにしなければいけないのか、語学の要求水準というのはどの程度にしなきゃいけないのかということは、沖縄県ともよく相談して制度づくりに取り組みたいと思います。
 我々も、繰り返しになりますが、コアになる仕組み、制度というのはこれからも拡充していきたいんですけれども、それを補助するための、外側に、外縁的にどういう制度なり仕組みをつくってあげるのがこれからの国際観光の振興に役立つかという観点で、地元の実情、地域の個別事情に応じて制度設計に協力してまいりたいと思っております。

○紙智子君 沖縄の歴史や社会や豊かな自然などに精通したガイド、試験できちんと水準を担保された人材が観光振興を担っていくというのが大事なんじゃないかというふうに思うんです。
 沖縄県は留学生の在留資格の要件緩和まで要求しているんですけれども、仮に中国人留学生などにこの特例案内士を片手間にさせるということになると、これは外国人観光客に沖縄を深く知ってもらう、あるいは好きになってもらってリピーターになってもらうということとちょっと方向性としては違ってくるんじゃないかというふうに、もちろん中国人の留学生も優秀な方はいらっしゃると思うんですけれども、やっぱり本来この通訳案内士制度をもっと活用して人材育成を進めて、沖縄で生まれ育った若い人たちが安定して雇用の場にもつないでいくという、そこのところをしっかり目指していくというのが本筋なんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(又野己知君) 基本的な認識は先生おっしゃるとおりだと思います。我々自身も基幹的な通訳案内士の方を育成して、増やしていくという努力はこれまで以上に続けていきたいと思いますが、その一方で、量的な問題も含めて、特に沖縄については外客の方々のニーズが非常に高まっているのも確かでございます。それにこたえるためには、今回の制度というのは非常に有効に働くのではないかと期待しております。
 ただ、おっしゃるとおり、劣悪なサービス提供が始まると、それはある意味では観光地として自分の首を絞めることになるわけですから、そういうことには決してならないように、繰り返しになりますが、これからやる制度設計というのを沖縄県ともよく御相談しながら進めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 川端大臣に伺いますけれども、この改正案について言いますと、観光地形成促進地域をつくって観光施設整備の高度化を図ると、それに通訳案内士の規制緩和が主要施策になっているんですけれども、もっと沖縄の自然環境のすばらしさに着目した、質の高さをしっかりと追求する必要性があるんじゃないかというふうに思うんです。
 安易にあれこれの観光施設をつくるんじゃなくて、自然を生かした体験ツアーですとか、それから自然保護や環境のメッカなどのコンセプトを伴った政策を中心に据えると、その必要性についての大臣の御認識を、一言でいいです、お伺いします。

○国務大臣(川端達夫君) 沖縄の、こういう亜熱帯海洋性気候で、サンゴ礁が美しい海岸線があるとか個性的な自然を有する離島とか貴重な動植物の生息とかいうことで、豊かな自然、多様な自然環境に恵まれていることは先生御指摘のとおりでありまして、これは沖縄観光の最大の魅力の一つだというふうに私も思います。
 そういう意味で、この自然環境を生かしつつ配慮した観光振興というのも今までやってまいりました。エコツーリズム推進法に先んじて、現行の振興法において、沖振法では、自然体験活動保全利用協定などエコツーリズムに係る規定を設ける等々で、エコトイレや木道等の整備のほか、オニヒトデ駆除などの地域の環境保全活動を支援してきました。
 今後、新たに創設される一括交付金等を活用して、地域の観光資源について知見を有する沖縄県においてより主体的に取り組まれることになりますので、内閣府としてはこのような県の取組をより一層支援をしてまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 同じような観光施設が競合し合ったりとか、あるいは開発で貴重な自然が失われるということのないように目配りをしていただきたいと思います。
 次に、防衛省にお聞きしますけれども、基地の跡地の原状回復の問題です。
 衆議院での修正によって、土地区域の全部について支障除去の措置を義務付けているわけです。全域に広げたものですけれども、金属探査などを行う深さも問題で、これまでは地上から深さ一メートル程度で終わっているために、その後、文化財の調査などでそれよりも少し深く掘っただけで廃棄物が次々と出るということが北谷町でも繰り返されてきたわけです。
 今回の修正を受けて、今後は、土地の引渡し後に自治体が土地利用で深く掘ると、また廃棄物とか汚染物が出てくるというようなことの事態は避けられるでしょうか。

○政府参考人(山内正和君) お答え申し上げます。
 跡地の利用を推進するためには土壌汚染などの除去の徹底が重要であることは申すまでもなく、政府が提出した改正法案においても所要の規定を置いていたところでございます。この改正法案につきましては与野党間で修正協議が行われ、その結果、修正案において、国は土壌汚染等を含む支障の除去措置を返還跡地の区域の全部について所有者に引き渡す前に講ずるということが明記されたというふうに承知しております。
 防衛省といたしましては、新たな法律の規定に基づき、引き渡した土地から残留物が出てくることがないよう、今後、土壌汚染などの除去に万全を尽くしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

○紙智子君 返ってきた後にまた出てきて市町村に迷惑掛けないようにしていただきたい、万全を尽くしてほしいというふうに申し上げます。
 次に、公有地の優先取得に関連してなんですけれども、国有地の無償譲渡、無償貸与についてです。
 公有地の優先取得は町づくりに非常に重要で、先日も参考人でいらした北谷町の町長さんも要望されていたわけですけれども、改正案にも土地を譲渡する側に五千万円の控除が盛り込まれました。ただ、軍用地料が非常に高いので、売手の土地所有者にとっては、控除を受けるよりも軍用地料を受け取った方が得だということも言われているわけです。ということなので、この売手側への支援策とともに、自治体側への支援策が是非とも必要だというふうに思います。
 国有地の無償譲渡などが軍転法にも修正で盛り込まれたんですけれども、今後、市町村からの要望に積極的に対応していただきたいし、無償貸付けの対象緩和ですね、緑地保全や公園などの先行取得に対する補助率の特例についても支援を充実させてほしいと思います。これ、川端大臣にお願いします。

○国務大臣(川端達夫君) 当然ながら、跡地利用というのは今後の沖縄振興にとって極めて重要な課題であると認識をしております。
 与野党間で精力的に御協議をいただいた中での経過、この国有地の譲渡、譲与等に関する修正に関しては、この経緯を十分に勘案する中で、駐留軍用地の返還の状況あるいは地元の要望等を踏まえて、今後とも関係省庁と密接に連携しながら適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 これまでの実績というのはありますでしょうか。

○政府参考人(井上源三君) 沖縄におきます国有財産の譲与等の状況でございますけれども、現行の沖縄振興特別措置法百九条に基づく事例といたしましては、譲与の事案が一件ございます。そして、その他の法令による最近の件数でございますけれども、譲与、売払い、平成十七年から二十一年度、譲与は十七件、減額売払い三件、貸付けは、平成二十一年度末でございますけれども、無償貸付け三十六件、減額貸付け二十一件となっているものでございます。

○紙智子君 沖縄振興開発法の時代の一九七五年に一件なんですよね。他の法令と比較しても少な過ぎるというように思うんです。使い勝手が悪いのか、何が原因なのかをよく分析をして、是非市町村の要望に積極的にこたえていただきたいと思います。
 それから、この議論の最後に大臣にまたお聞きしますけれども、この跡地利用の行政対応の改善です。
 この法案が縦割り行政で、例えば一つの跡地の原状回復は防衛省に行かなきゃならない、跡地利用は内閣府だと、土地区画整理事業になると今度国交省だということで、跡地利用に奔走しておられる方々の思いとしては、そもそも戦後、米軍に占領されて、復帰後も本土から基地移設が続いて沖縄に基地が集中してきた、そういう状況の中でようやく返されることになったと。ところが、そのときに国の方から、沖縄の皆さん、本当に御苦労をお掛けしましたということで、つきましては、どういうことがよろしいでしょうかということで来るのが本来の姿だと思うのに、なぜ沖縄の方から原状回復してくださいと、もう各省庁というか、回って、頭を何回も下げなきゃいけないということは一体どうなのかという思いが根本的なところにはあるんだと。そのことを認識して、各省庁連携して効果的に対応に当たっていただきたいと思うんですけれども、これについて、大臣、一言お願いします。

○国務大臣(川端達夫君) 御指摘のように、いわゆる所管という部分でいいますと、原状回復措置、給付金の支給等は防衛省所管でありますし、拠点返還地域の指定、駐留軍用地内の土地の先行取得に係る手続等は内閣府所管、立入りのあっせんは防衛省、外務省共同所管、窓口は沖縄防衛局というふうに分かれております。
 ただ、今回のこの跡地利用は沖縄振興にとって極めて重要な位置付けであることはもう言うまでもありませんし、今回の法律を所管し調整するのは内閣府の私の立場でございますので、今後とも関係省庁と密接に連携しながら、今言われたようなことが起こらないように、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 それでは最後、玄葉外務大臣に伺います。
 まず最初に、先ほどもちょっと議論になっていました普天間の基地の問題ですけれども、固定化は絶対しないというふうにさっきおっしゃっているんですけれども、今、一日も早く返還して跡地の問題どうしようかと活用の問題を検討しているときに、どんどん言ってみれば先送りしていくような、この補修の問題という、しかもそれは日本が負担しなきゃならないという問題については、これ本当にとんでもないというように思っていまして、これはもう抗議を申し上げておきたいと思います。
 その上で、米軍基地の、先日の引き続きなんですけれども、PCB汚染の問題について大臣にお聞きしたいと思います。
 先日、大臣は、平成十五年からPCB含有物質を順次米本国へ搬出、処理、廃棄している、平成二十一年の一月から約二十九・五トンの米国製のPCB含有物質を搬出しているというふうに答弁をしているんですけれども、現時点で沖縄の米軍基地が保有しているPCB廃棄物の総量、それから使用中のPCB含有機器の総量はそれぞれ何トンでしょうか。

○国務大臣(玄葉光一郎君) 先ほど申し上げましたように、今明らかになっているのは、おっしゃっていただいたというか、御指摘どおり、二十一年一月以降で二十九・五トンの物質を搬出をしたということでございまして、今質問のあった総量については承知しておりません。
○紙智子君 総量も把握されていないんですか。
 沖縄県の知事公室基地対策課が発行しているもので、「沖縄の米軍基地」、二〇〇八年の三月、ここでは、米軍によると、二〇〇二年八月現在、沖縄県に保管されている米軍関係のPCB廃棄物の総量は約三百六十トン、使用中のPCB含有機器の総量は推計で千七百四十トンと書いているわけですよ。
 これ、すごく古いデータなんですよね。県がつかんでいるのも古いデータだし、国のも、掌握されていないということなんですけれども、これ米国が出していないからだと思うんですけれどもね。やっぱり新しいデータをきちんとつかんでいただきたいと思うんですよ。
 順次搬出しているというんですけれども、まだまだ大量のPCBの含有物、機器がある、これら全てをやっぱり今後順次本国に搬出するべきだと。それをやるとなると、やっぱり一緒に現在保管中の恩納通信所の汚泥約三百トンも持って帰らせるように交渉すべきではないでしょうか。

○国務大臣(玄葉光一郎君) 今の御指摘のPCBの問題あるいはその他の問題も含めてでありますけれども、これは必要に応じて、日米合同委員会の下に分科会が設けられておりますので、この環境関連の分科委員会の枠組みを通じて米側と協議をしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 毅然とした態度で強く言わないと、ただ協議というだけじゃなくて、やっぱりちゃんと持ち帰ってほしいということで日本がはっきりと言うべきだというふうに思うんですよ。
 やっぱり地位協定があるからということで、持っていってくださいと言われれば、それはなかなか厳しいということになったら、そのまま引き下がらないで強くやっぱり言う必要があると。余りにもこれ差別的な規定なんですよ。返還後に汚染が分かったら全部日本が処理しなければならない、不合理な内容ですよ。地位協定の第四条の下で、米軍は平気で沖縄の土地を汚染したまま引き揚げていっているわけです。こういう汚染物をそのまま黙って引き受けるというのじゃ駄目ですよ。
 お隣の韓国でも米韓地位協定を結んでいるわけですけれども、韓国政府と米軍とは二〇〇三年の五月に合意された環境情報の共有及びアクセスの手続、附属書Aというのがあるんですけれども、これを補完、修正して、二〇〇九年三月、共同環境評価手続というのがあります。そこで返還前の環境調査の実施、環境調査の手順の確立、汚染除去水準の協議について実現をしているわけです。これ実は、「環境と公害」という雑誌に林公則さん、それから有銘佑理さんという方、研究者の方が概要を紹介しているんですけれども、こういう規定で韓国では実際に事前の環境調査も行っているわけです。米国が、米軍が自分自身のつくった費用負担で汚染を除去してから韓国に基地返還することになったものなんですけれども、大臣はこういう状況についてはどのように認識されていますか。

○国務大臣(玄葉光一郎君) 私も地位協定は、日米、そして米韓、そしてNATOとそれぞれ読み比べるということを時々しております。
 それで、今おっしゃいました環境の分野で、地位協定そのものは実は変わらないんですよね。ただ、今指摘されたとおり、韓国で二〇〇三年五月、米軍の返還供与地の環境調査及び汚染修復協議のための手続ということで合意がされて、二〇〇九年三月には更なる改善事項も含む共同環境評価手続書につき合意されたというのは事実だと思います。それで、この全文は実は非公開なんですね。詳細は実は必ずしも明らかになっておりません。例えば、実際に土地が返還される際に米側が汚染の除去を行っているか否かも含めて、必ずしも明らかになっていないというのが現状であります。
 それで、この日米地位協定の書きぶりは環境の面ではそんなに変わらない中で、その下でどれだけのことができるかということで比較をすると、この間も紙委員と議論いたしましたけれども、例えば日本の場合は、管理基準、環境保護及び安全のための在日米軍による取組は日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択する、いわゆるJEGSというものが設けられていると。他方、韓国はたしか、より厳しい基準を参照するということで、実は日本の方が厳しくなっていたり、環境の中でも非常に凸凹というか、凸凹というのは適切じゃないかもしれません、より厳しい基準を選択するのが日本だったり時に韓国だったりということが実態なのではないかと。そして、もっと言えば、地位協定全体をまさに見ながらこの地位協定の評価というのは行うべきなのだろうというふうに思っていまして、例えば刑事裁判権なんかは日米の地位協定が今ずっと、他の協定よりはずっと進んできているということとか、そういうこととかはあると思います。
 ただ、いずれにしても、環境の問題というのは大事な問題だと私も思います。ですから、特に土地の返還前の立入りについて、これをしっかり協議、アメリカ側としていきたいというふうに考えて、今、全力を尽くしたいと思っているところでございます。

○紙智子君 この論文では、軍事政権が長く続いた韓国では、基地問題が日本で以上にタブー視されてきたために軍事環境問題の取組というのも遅れざるを得なかった側面があると。軍用機の騒音を見ても、対応が遅れに遅れている分野もあります。しかし、この基地汚染に関しては、僅か十年ほどで日本よりもはるかに進んだ制度を導入させてきたということも指摘しているわけです。
 日本では、返還合意した基地の汚染状況も把握できていない、さっき総量としても分からないという話だったんですけれども、これをやっぱり把握することも当然だし、さらに、この日米地位協定の見直しを交渉すべきではないかというふうに思うんですけれども、最後、大臣。

○国務大臣(玄葉光一郎君) いずれにしても、米側と協議をしながら、この環境の問題、適切に対応できるようにしていきたいと、努力したいというふうに思っています。

○紙智子君 言葉だけじゃ駄目なんですよね。やっぱり毅然とした態度を取らないから、この間、逆にグアムの移転でも、米軍が、これ米国が負担すると最初していた訓練施設の建設費用も肩代わりを言われることになってしまうわけですから、きっぱりとやっぱり拒否をするということで、毅然として示していただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。