<第180回国会 2012年3月28日 農林水産委員会>


有明海再生特措法の発動と、震災対策「予算の繰越し手続き」並びに「船の確保」を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、ちょっと質問の順番を変えます。それで、最初に有明海の漁業と諫早干拓事業についてお聞きしますけれども、今日は、是非、大臣の考えをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それで、まず漁業被害についてなんですけれども、去年から今年にかけて養殖ノリ、カキ、タイラギ、クツゾコなど、大きな被害が出ています。それで、ノリ養殖は、ひどい県では枚数、金額とも前年の約六割とか前年の三割とかいうところもあります。それから、カキなんかは昨年の三割とか、タイラギなんかも全域で非常に減っているということになっているわけです。
 それで、ちょっと大臣、見てほしいんですけれども、このノリ、ちょっと大臣、済みません、見てください。これ、通常のノリですよね。色落ちという形で、こうなると等級が物すごく下がるわけですよね。こういう影響が出ていて、この被害の現状について、どのように認識をされているかどうか、まず、大臣にお聞きします。大臣に。

○副大臣(岩本司君) 先に失礼します。
 ノリ養殖につきましては、今年度当初、海水温の低下の遅れや降雨のために大変な不作で始まりましたけれども、全般的には豊作であった昨年度の八割程度まで生産が回復しつつあるものと承知をいたしております。ただし、地域によっては昨年度の三割から六割程度に収まっているところもあるところであります。
 一方、貝類につきましては、タイラギは昨年六月以降、サルボウは昨年の十月以降に大量へい死が発生しておりまして、これらは貧酸素水や冬期の低水温、春先のプランクトンの発生不足による身入りの低下などが原因ではないかと考えられているところであります。
 このような漁業生産の変動に対しましては、有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律により設置されております有明海・八代海等総合調査評価委員会における議論等を踏まえつつ、今後とも必要な措置を講じてまいる所存であります。

○紙智子君 短くお願いします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今、紙先生から言われたこの状況というものを、我々、私といたしましてもしっかりと把握をして、なぜこういう状況になったのかというふうなことも含めながら、今後必要な措置というふうなものについても取り組んでいかなきゃならないと、こういう認識を持っているところでございます。

○紙智子君 いつも八割方回復とかという話するんですけど、平均的に言わないでほしいんですよね。やっぱり個々それぞれの地域で全然差がありますし、その漁業者の皆さんの被害状況を是非御覧になっていただきたいと思うんですよ。
 それで、昨年改正された有明海などの特別措置、第二十二条、漁業被害に係る損失の補填その他必要な措置を講ずるという規定がありますけれども、この救済措置を発動すべきじゃないかというふうに思うんですけれども。

○副大臣(岩本司君) これは紙先生、重要な御指摘でございます。
 有明特措法第二十二条に規定する赤潮等による漁業被害者への救済措置につきましては、赤潮等による自然災害に係る損失補填等を行う漁業共済制度によって対応することとしているところであります。
 御指摘の漁業被害の大きかった漁業者の方々につきましても、この措置による支援が可能か検討してまいりたいわけでありますけれども、他方、有明特措法第二十一条では、必要な資金の確保や漁業被害を回避するために必要な措置等による漁業被害者への支援も規定されていることから、これらを併せて支援の可能性を検討してまいる所存であります。共済だけではなくて、共済に入っていない方もいらっしゃいますので、全力で取り組ませていただきます。

○紙智子君 可能性については、今ずっと検討されているということでよろしいんですか。共済制度だけじゃなくて、やっぱり実際被害出ているわけですから、それは今検討されているということでよろしいんでしょうか。

○副大臣(岩本司君) ありとあらゆる対策を練って頑張っております。

○紙智子君 この法律そのものが議員立法で出されているわけですよね。それで、昨年の赤潮発生時にとられた措置を踏まえてということになっていますから、そういう意味では、有明海、そして八代等における赤潮対策、養殖に対する再建支援の緊急対策ですとか、それから地域活性化の交付金による補填ということが示されていて、それで、ノリ被害については、ひどい組合では前年の三割ということですから、実際上がっている声も、こんなにひどいのは初めてだという声が上がっていたり、あるいは、ノリは機械整備にお金が掛かる、だから利益が全く出ない、これから家族をどうやって養っていっていいか分からないと、こういう声も出ています。それから、漁師としての仕事が成り立たなくなっていると、こういう声もあるわけです。当面の生活費や運転資金がない事態だと。やっぱり、融資ではなくて、被害に苦しむ漁業者を何とか支えていかなきゃいけないということなんですね。
 そういう点で、是非この法律を使っていただきたいと。発動して、検討して、されている途中なんだけれども、ということをちょっと大臣からも一言おっしゃっていただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) この法律の二十一条では、必要な資金の確保や漁業被害を回避するために必要な措置等による漁業被害者への支援も規定されていることから、これを併せて支援の可能性というものを検討していきたいと思っております。

○紙智子君 是非対応するようにお願いしたいと思います。
 それで、やっぱり、これに続いてなんですけれども、この潮受け堤防の問題をお聞きしたいと思うんですね。それで、この潮受け堤防の排水門の予算についてなんですけれども、農水省は来年の十二月までに開門する義務を負っているわけです。全開門に必要な予算が一千億円というふうに試算されていますけれども、来年度の予算として計上しているのが約四十億円と。これ、四十億円のみですよね、計上しているのは。これは開門に伴う影響の予測評価のケース三の二に該当する予算だと思うんですけれども、このケース、制限開門を固定化されるということになるんではありませんか。

○大臣政務官(森本哲生君) 二十五年の十二月までには、平成の、開門すべき義務を負っておりますので、万全の対策を講じる。
 三の二でございますが、全体は八十二億のうち四十億を計上して、あと調査費が八億四千万を計上しておるわけでございますので、二十四年度の予算についてはケース三の二に基づいて我々は進めていくと。

○紙智子君 固定化することにならないかと聞いたんです。

○大臣政務官(森本哲生君) ここのところは地元調整、五年間の開門義務を課せられておりますので、この予算の執行と工事に今のところ全力を尽くすということでございます。

○紙智子君 これは絶対固定化することがあってはならないというふうに思っております。
 それで、そのことについても原告団の皆さんに、固定化させないということなのであれば、きちんとこの全開門に向けた取組を説明すべきだと思いますけれども、いかがですか。

○大臣政務官(森本哲生君) 副大臣が今その話を、原告団とは調整をしていただいております。
 この三の二に決定ということではございませんで、それを基本に今進めておるということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 冒頭のところで申し上げましたけれども、大臣のお考えを是非お聞きしたいと思っておりまして、私は原告団が求める協議に応じてほしいということで要求をしているわけですけれども、大臣はなかなか応じられていないと。それで、どうしてなのかなというふうに思うわけですよ。まだ現地に行って直接お会いしていないですよね。そうですよね。

○国務大臣(鹿野道彦君) 過般、委員会におきまして福岡先生からもこの点について言及がございました。私自身、佐賀県の知事からも、また原告の弁護団の方々からも是非佐賀にも来るようにと、こういうお話がありましたので、それについては時期的には検討しておるところでございますと、こう申し上げたところでございまして、重ねてそのことを申させていただきたいと思います。

○紙智子君 ですから、佐賀にももちろん行ってほしいと思っているんですけれども、原告団の皆さんと直接会って、現地に出向いてお会いしていただきたいと言ったんですけれども、それはなさっていないと。それで、私は、やっぱり原告団に真摯に向き合う考え方、あるいはそれをちゃんとやっていく体制そのものに問題があるんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけです。
 それで、九州の農政局でこの諫早干拓事業を担当しているのが農地整備部です。農林水産省本省でこの諫早干拓事業を担当した職員が農地整備部に在職しているというふうに思うんですけれども、現在の肩書と本省時代の肩書について説明をしていただきたいと思います、簡潔に。

○大臣政務官(森本哲生君) ここのところはしっかりと読ませていただきますが、現在の九州農政局長が本省の元農村振興局長、平成二十一年一月から二十三年八月。現在の九州農政局整備部長が本省の元農村振興局農地資源課長、平成十八年の四月から二十一年の七月でございます。現在の九州農政局農地整備課長が本省の元農村振興局農地資源の課長補佐、平成二十年四月から二十二年の三月。これらの職員は諫早湾干拓事業の推進や訴訟業務にかかわった者であるが、平成二十二年十二月の福岡高裁判決の確定により、国は開門の義務を負っていることを十分承知しており、その実現に向けて今尽力をしているところでございます。

○紙智子君 今お話ありました現在の九州農政局長は、本省で諫早干拓事業を担当する農村振興局長だった人物ですよね。福岡高裁の判決の後、昨年夏に九州農政局長に赴任をしたわけです。つまり、農林水産省で諫早干拓を推進して、裁判で争った当事者が、現在、九州農政局において諫早干拓事業を扱う部署の幹部を占めているわけです。
 次に、もう一つ聞きますけれども、長崎県の農林部政策監は、これは農林水産省からの出向者ではありませんか。

○大臣政務官(森本哲生君) さようでございます。

○紙智子君 長崎県で農村整備、諫早干拓を担当する農林部政策監は、農林水産省本省の農村振興局の整備部出身の出向者だということです。こういう布陣で、福岡高裁の判決を本気で履行する気があるのかと、こういう疑問の声が上がっているわけです。
 農林水産省がケース三の二を決めたときに、先に説明したのは長崎なわけです。今年二月に原告団と協議していますけれども、この連絡を入れたのは前日だったと。こういう対応をしたら、やっぱり疑問の出るのが当然だというふうに思うんですよ。そういうふうに思われませんか。

○大臣政務官(森本哲生君) この人事についてはあくまでも人事交流でございますので、その点については、やっぱり職務に精励をしっかりやっておるというふうな認識を私自身は持っております。

○紙智子君 結局、諫早湾の問題をめぐって、これずっと歴史的に長い問題があるわけですよ。それをめぐって裁判での判決が下されたと。それを本当に履行するというときに、ずっとこれまで要するに干拓の事業を進めてきた人たちが、判決を受けながら、またそこに同じメンバーが行ってやるという構図になっているわけですよ。だから、結局、諫早干拓を推進した官僚が仕切っているんじゃないのかと、こういう声も出ているわけです。
 それで、私は昨年、大臣は、長崎県三回行って、そこと、県とは会っているんですけれども、どうして原告団が求める協議に応じないのかというふうに質問しました。大臣は、真摯に対応しますというふうにおっしゃったわけですけれども、まだ協議には応じていないと。政治主導ということで、民主党政権になって政治主導と言ってきたわけで、やっぱり官僚任せにするんじゃなくて、鹿野大臣自らが、大臣のやっぱり誠実さが問われているというふうに思うんですね。大臣自らが考えて、速やかにこの原告団が求める協議に応じるべきではありませんか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 紙先生から申された件につきましては、私どもも真摯に検討していきたいと思っております。

○紙智子君 この福岡判決の履行をするためにも、一日も早く原告団が求める協議に応じていただきたいと思いますし、やっぱり農業も漁業も両方が成り立つように何とかしなきゃいけないという思いは、みんな同じに持っているわけですよ。ですから、是非、そこのところを求めておきたいというふうに思います。
 それじゃ、次に、東日本大震災からの復旧復興の問題で質問いたします。
 東日本大震災から一年がたちました。それで、復興庁が二月に発表した二〇一一年度の補正予算の執行状況ですけれども、農林水産省の執行率は四四・三%にとどまっています。
 実は、私は、岩手県の宮古市、それから山田町などを訪問しまして、水産予算の執行状況を聞いてきたんですけれども、三月に年度末を迎えて申請をしたいんだけれども、間に合わないという意見も出されたわけです。予算には繰越手続もあるんですけれども、それでお聞きしますけれども、県や市町村がこの補助事業の申請をして交付決定を受けた場合は県や市町村がこの繰越手続を行うわけですけれども、市町村ではこの技術者だとか民間の建設業者の確保が難しいということもあって申請したくてもできないケースが出ていると。ですから、本省の段階でもこれ明許繰越しの手続を行って、安心して予算が使えるようにすべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 漁港なり農地等の災害復旧事業や共同利用漁船等の復旧支援対策事業などは、年度内におきまして支出が終わらない可能性のある事業に係る経費につきましては翌年度に繰り越して使用ができるように、補正予算におきましてもいわゆる繰越しができる事業としての予算として計上いたしているところでございます。

○紙智子君 本省でもやれるということでよろしいですね。本省でもやれるということで。

○国務大臣(鹿野道彦君) そのとおりでございます。

○紙智子君 それじゃもう一つ、船の問題になるんですけれども、どういうふうに船を確保するかというのも引き続き大事な問題です。それで、これはちょっと要望にしておきたいと思うんですけれども、漁船保険で修繕はしたんだけれども、ところが実際に海に出したんだけれども操縦が利かずに漁ができなかったというケースがあります。使用不能ということですね。
 それで、被災船の整備状況を見ますと、これ漁船保険で整備した船が圧倒的に多いわけです。七千二百ぐらいやっていて、五千三百が漁船保険で整備をしていると。ところが、修繕して使えるものだと思っていたんだけれども、これが使えないということが判明しているところがあるわけですね。そういう場合に共同利用の漁船復旧支援事業、これを活用するとか、とにかく何らかの手だてを打っていかないと、再びそれをまた新しくということになってくると大変な負担が起きるということもあって、これはちょっと今日は質問まではしませんけれども、要望ということにとどめておきたいということなんですけれども、よろしく御検討いただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。