<第180回国会 2012年3月26日 予算委員会>


TPP問題の予算委員会質問

○委員長(石井一君) 次に、紙智子さんの質疑を行います。紙さん。


 日本共産党の紙智子でございます。
 TPP問題について質問いたします。
 野田総理、今、農業団体だけではなくて、医師会、有識者の皆さんの間からもTPP参加に向けての懸念が広がるばかりです。TPP事前協議参加の表明に際して、関係各国との協議を開始し、各国が我が国に求めるものについて更なる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立ってTPPについての結論を得ていくという、この方針は何もお変わりありませんね。
 総理、総理。

○国務大臣(古川元久君) 担当大臣としてお答えをさせていただきます。
 もうこれは総理が十一月の記者会見でも申し上げたとおり、今議員から御指摘のあったように、そうした方針に変わりはございません。

○紙智子君 ところが、このTPP交渉の責任者である古川大臣は、民主党の経済連携プロジェクトチームの会議において、経済連携協定が国益にかなうか否かについては交渉結果によるものだと、交渉が妥結した後で最終的には国会に協定の締結をするか否かの判断をいただくことになると。この協議の段階で国民の不安の声や懸念を相手にぶつけるんではなくて、参加先にありきだと、嫌だったら国会で否決すればいいんだと言わんばかりの発言をしているやに聞いておりますけれども、古川大臣、本当ですか。

○国務大臣(古川元久君) これは一般論として、これは経済連携協定行った場合には、これはまさに今委員から御指摘のあったように、これは最終的に国益にかなうかどうかについては交渉結果によるものであって、そしてまた、最終的には国会で当然、協定でございますから、御判断をいただくことになるということを申し上げたわけでございまして、別にTPPに関して申し上げたわけではございません。

○紙智子君 私のところにある資料を見ますと、どう読んでもこれはTPPに関して今の趣旨で言っているんじゃないかというふうにしか読み取れないんですよ。まあそれはそのままで、この後またいろいろやりますけれども。
 次に、総理にお聞きします。
 時事通信社の配信によりますと、二十四日、おとといですけれども、都内の講演で総理は、環太平洋経済連携はビートルズだとおっしゃったと。日本はポール・マッカートニーで、ポールのいないビートルズはあり得ない、その上で米国はジョン・レノンだと、この二人がきちっとハーモニーしなければいけないと述べて、日本の交渉参加への決意を重ねて表明したというふうに伝えています。
 こうなりますと、あらかじめ総理は日本が参加することが絶対に不可欠だと言っているに等しいんじゃないですか。国民との議論を踏まえて判断するという発言と違うんじゃないでしょうか。いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) あくまでTPP交渉参加に向けて関係国との協議をすると、その情報についてはしっかり国民にお伝えをしながら、国民的な議論をもって国益に沿って結論を出すということで、予断を持ってお話をすることではないという前提でお話をしています、その場では。
 ただし、余り、悲観論が多く流れているときに、日本が入らなくてもいいと、我々が卑屈になってお願いして入っていくという状況ではないという意味でビートルズの話をさせていただきました。

○紙智子君 なかなか理解し難い発言なんですけれども、国民には繰り返し、情報を収集して十分な議論を踏まえて結論を得るというふうにおっしゃっているんですけれども、やっぱり早く参加を決めたいと、この思いがやっぱりにじみ出ているんじゃないかというふうに思うわけですよ。
 それで、三月一日に外務省が発表しています「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」、これは米国以外の八か国の話ですけれども、そのまとめでも、市場アクセスについては、例外なき関税撤廃を実現し、種々のセンシティビティーへの対応として七年以内に段階的撤廃により対応することが基本的な原則として全ての交渉参加国で合意されていると。
 総理はセンシティブ品目について配慮するというふうにおっしゃってきたんですけれども、こういう経過を見ますと、このセンシティブ品目について配慮などということはあり得ないんじゃありませんか。総理。

○委員長(石井一君) 古川担当大臣。簡潔に。

○国務大臣(古川元久君) これは大事な話でございますので、今委員からお話があった部分でございますけれども、関税撤廃の原則については政府の方できちんとこれは、本当に皆さんが、センシティブなところでありますからきちんとお伝えをさせていただきたいと思っていますが。
 これ、長期の関税撤廃などを通じて、最終的には関税をゼロにするというのが原則とされている模様である。また、九〇から九五%を即時関税撤廃し、残る関税についても七年以内に段階的に関税を撤廃すべきとの考え方を支持している国が多数ある中で、即時撤廃率をより低くすべきとの提案もある模様。交渉は今二国間ベースで行われており、関税撤廃の原則の具体的内容についての九国間の合意はいまだない模様であると。また、センシティブ品目の扱いについては、関税の撤廃、削減の対象としない除外や、扱いを将来の交渉に先送りする再協議は原則として認めず、十年以上を含む長期間の段階的関税撤廃というアプローチを取るべきとの考え方を示す国が多いが、合意には至っていないと。そういうようなレポートがあります。
 ですから、そこのところはまだ、九〇から九五%の即時関税撤廃を求める、そういう国が多いわけでありますけれども、まだそれが固まっているわけではないというのが今得ている情報でございます。

○紙智子君 さきの文書の中では、さらに、包括的自由化がTPPの原則であり、全品目の関税撤廃を目指して交渉を行っているんだというふうにはっきり言っているわけですよ。
 ですからこれ、これまで総理は守るべきは守るというふうにおっしゃってきたわけで、じゃ、米はこの関税撤廃からは外れるんですか、対象から外れるんですか、いかがですか。
 総理、総理。総理に聞いています、総理に。米は外れるんですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) わざわざ担当大臣を呼んでいただいているんで詳しくは担当大臣に答弁していただければと思いますけれども、あくまで国益に沿っての対応ということで、守るべきものは守る、勝ち取るべきは勝ち取るという中で、個別の話を今どうという話ではございません。これから交渉の中で、今申し上げた姿勢の中で交渉していくということでございます。

○紙智子君 米については外れるんですか。それについてはっきりとおっしゃってください。

○国務大臣(古川元久君) 今の協議の私どもが得ている情報は、全ての品目についてテーブルにのせるというところについては合意があるようでありますけれども、最終的に除外が認められるかどうかとか、そういうことについてはまだ今の時点では明らかになっていないというふうに承知をいたしております。

○紙智子君 今の、全然曖昧な答弁だったんですけれども、現実には何が起きているかということですよ。
 それで、大手スーパーの西友が三月十日から輸入米を国産米の三割安で販売を始めました。元々これ輸入米として、ミニマムアクセス米というのは国産米に影響を与えないと、こういう約束で七十七万トン輸入して、その中の一部は民間同士の売り買いということで扱われてきました。今までは、主食として店頭で売るのは全体でも百トンぐらいだったんですよね。ところが、今回は西友だけでも一千トンと十倍になっているわけです。ミニマムアクセス米の歴史の中で、やっぱりこれ、初めての事態ですよ。
 その背景には、西友と提携しているアメリカのTPP推進の急先鋒である大企業で、これはかねてから日本への流通市場への進出を狙っているウォルマート、この戦略があるわけですけれども、こういうやり方でこれからどんどんスーパーの店頭に持ち込まれることになったら、日本の米はもろにこれ影響を受けるんじゃありませんか。農水大臣、いかがですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) SBS米は、まさしく主食用として消費されているというふうなことでありますけれども、基本的には、その数量に見合ったものを海外の援助等、あるいは主食用以外の用途に向けて、いわゆる需給に影響ないようにしておるわけでございまして、これからもSBS輸入米が国内の主食用のお米の需給に影響ないようにしていきたいというのが基本的な考え方でございます。

○紙智子君 もう一度、ちゃんと質問の意味に答えてください。
 今実際に起こっていることは御存じだと思いますけれども、こういうやり方でどんどんスーパーの店頭に持ち込まれていったら、日本の米はもろに影響を受けるんじゃないですかと。

○国務大臣(鹿野道彦君) SBS米というふうなことにつきましては、御承知のとおりに十万トンという枠を設けておるわけでございますので、それを拡大するという考え方に今立っているわけではございません。

○紙智子君 いや、だから、今までは百トン、せいぜい百トンですよね。やっぱり市場を、影響を与えないということで、実際に店頭販売するというのはごく僅かだったわけですよ。それが、今回いきなり千トンになり、今十万トンの枠とおっしゃいましたけど、これまでは加工用だとかいろんなところに回されていて、直接スーパーには乗らなかったわけですよ。それが今度、じゃ、十万トンの枠があるからって、拡大することになってしまいかねないという心配があるわけですよ。
 これについて、いかがなんですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 昨年のお米に比べまして、大体、今日の、相対取引等々も含めて二割くらいいわゆるお米の価格が上がっておると、こういうふうなこと、それを受けて店頭にも並ぶようになってきた。また、低価格志向ということもございましょう。それだけに今後の動向については注視をしていかなきゃなりませんけれども、基本的には十万トンという枠を超えるようなことの私どもは考え方を持っておりませんということを申し上げます。

○紙智子君 この事態を見て全国の生産者の皆さんがどんな思いでいるかと思いますよ。だって、さんざんWTO移行のとき約束したんですから、もうミニマムアクセス米にして決して市場を侵すようなことをしませんと、影響を与えませんと、もう固くそのことは繰り返し繰り返し言われてきたんですよ。それが今崩されようとしているわけですよ。
 そして、ウォルマートのやり方のように、今アメリカの圧力ということでも強まっていて、パブリックコメントでも露骨にそのことを言っていますよね。ですから、そういうことが強まってくれば、それを放置すれば、今大臣が超えるつもりはないと言ったけれども、この十万トン枠、この外国産米がスーパーの店頭にどんどん並んでいくとも限らないわけですよ。
 この十万トンといえばどれだけの量なのかということですけれども、面積に換算しますと、それだけ生産するためには大体一万六千ヘクタールの耕地面積が必要ですよ。大体一万六千ヘクタールの面積というと、群馬県や静岡県の作付面積に匹敵するものですよ。国内の農家が不安を感じないわけがないわけですよ。
 これについて、本当に私はもう、それで平然として、きちっとした歯止めを掛けないというふうなつもりなのか、伺います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 平成五年におきまして閣議決定いたしております。それは、いわゆる米のミニマムアクセス導入に伴う転作の強化を行わないと、こういうようなこと等々も含めてきちっと対処しているわけでございますから、米の需給というものに影響を及ぼさないようにこれからも取り組んでいくということでございます。

○紙智子君 だから、及んでいるそういう現状認識について、やっぱり真剣に受け止めていただきたいと思うんです。
 総理、センシティブ品目に配慮するというふうに言うんですけれども、こういう事態ですよ、現実に。実際に進みつつあるということですよ。農家や医師会などがこの間心配したとおりのことが進んでいるわけです。にもかかわらず、あらかじめ参加を決めて、そして先に参加ありきで対応しているように私には思えてならないんですけれども、いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 参加ありきではございません。交渉参加に向けて関係国との協議を行って、ほぼ今一巡を二月中に終わりましたけれども、基本的支持をいただいたのが六つの国、残りの三つについては引き続き協議をしていますし、その際については、何でもかんでも交渉参加するわけではございませんで、先ほど来申し上げている、最終的には国益の視点に立って判断をしていきたいと思いますが、医師会が云々というお話ございましたけれども、医療保険などは特に今この議論に上っているわけではございませんし、少し誤解を呼んでいるところもあるのではないでしょうか。

○紙智子君 医療保険の話は議題に上っていないと言うんですけれども、これは日本に対して刺激を与えないために抑えているということだってあるわけですよ、新聞報道によりますとね。実際に国民皆保険制度は守るんだというふうにこの間総理言われましたけれども、その形は残しながら、混合診療という形で実際に保険が使えないものと使えるものとを併せて導入するということになっていくと、結局、結論としては、形は残ったままだけれども実質的には本当にお金持ちしかかかれないような状況になるんじゃないかという、その心配が大きいからこそ、この間、日本医師会も含めて、薬剤師会も含めて、これについては正式に反対だと、参加をするべきでないということを述べているんですよ。これについてどうですか。

○国務大臣(古川元久君) 先ほど総理からもお話がありましたように、公的医療保険制度の在り方そのものについては議論の対象になっておりませんし、また、営利企業の医療参入、そして混合診療の全面解禁、そういったものも議論の対象にはなっておりません。
 先日、アメリカのこのTPP交渉などを担当しておりますカトラー通商代表補が、三月の初めに東京で開催された米国アジア・ビジネスサミットにおきましても、TPPは日本や他の国の国民医療保険制度を民営化することを強いるものではないというふうに明言をいたしております。

○紙智子君 そういうことは今、表向きはそういうふうになっていますけれども、これから先の心配というのが非常に大きいわけですよ。薬価の問題なんかも結局、ジェネリック医薬品については価格をとにかく安くならないようにするために、いろいろその相談をめぐっては、アメリカの薬剤の関係の皆さんは日本のその話合いに参加させてほしいということも要求されているんじゃないですか。そういうことも含めて今後のこと考えると、今はそう言っていますけれども、大変心配だというのが多くの皆さんの声ですよ。いかがですか。

○国務大臣(古川元久君) そうした懸念の声をよく伺うわけでございますけれども、TPP協定は、これは今日の議論でも行われていますけれども、これ多国間の交渉でございます。確かに、アメリカからの一部でそういう声があるということは承知をいたしておりますけれども、ある国の主張が一方的に、これはこの多国間の中で通るということは、なかなかこれ想定し難いわけでございます。
 そしてまた、仮に日本が交渉に参加するような場合には、これは交渉の中で国益を最大限追求することは当然のことでありますし、総理が最初から申し上げているように、この国民皆保険制度を維持し、我が国の安心、安全な医療が損なわれないように交渉することは当然の前提でございますので、そうしたことの不安がないようにしっかり、仮に交渉に参加する場合にはの話でございますが、行ってまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 なかなかこれは国民の皆さんも理解できないと思いますよ。
 それで、この間、各地で説明会ですとかシンポジウムをやられていますけれども、肝心要の聞きたいことに答えていないというのが現場からの批判なんですよ。ですから、本当にそういう意味では、結局国民に理解得ないまま進めようとすることに大反対でありまして、私はこの際、きっぱり参加についてはやめるべきだということを強く申し上げまして、質問を終わります。

○委員長(石井一君) 以上で紙智子さん、日本共産党の質疑は終了いたしました。(拍手)