<第180回国会 2012年3月22日 農林水産委員会>


畜産物価格問題及び所信に対する質疑

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 畜産物価格の問題についてまずお聞きします。
 私ども日本共産党として三月の二日に大臣のところにこの畜産物価格問題について申入れをいたしました。それで、この中で、日本の畜産、酪農経営の現状が、飼料価格や灯油、軽油価格の高止まり、そして獣医、医薬品費等の上昇の一方で、初生牛そして子牛の価格の下落に直面するなど極めて厳しいものになっていると。北海道や東北などでの大雪による牛舎やあるいは堆肥舎の倒壊の続出ということで深刻な被害が広がっていること、そして民主党政権によるTPP参加に向けた事前協議の開始がこの畜産、酪農の長期的な展望を奪って相次ぐ離農を招く事態となっていることについて指摘をいたしました。これに対して大臣は、実情をよく把握して対処したいということで見解が述べられたわけですけれども、大臣としてどのように実情を把握されたでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 三月二日に紙先生始め共産党の議員の皆様方から御要請、御要望をいただきました。
 そういう中で、近年の飼料価格の高騰というふうなもの、あるいは原油価格の上昇等による生産コストが大変増加をしていると。そしてまた、景気の低迷によって、もう一つは昨年の東日本大震災によっての原発事故に伴う出荷制限等、あるいは風評被害におけるところのいろんな影響というようなことで枝肉価格の低下、そういう大変厳しい状況に直面しているという認識を持たさせていただいたということでございます。

○紙智子君 畜産、酪農経営について見ますと、経営に直接影響を与える燃料の価格は、円高にもかかわらず、ガソリン価格でいうと、二〇一一年、去年の一月で百三十六・七円、それが今年三月で百五十・九円、かなり上がっているわけです。それから、軽油も同様に、百十七・三円だったんですけれども、百三十一・二円と。それから、灯油価格も八十三・二円から九十五・四円です。配合飼料の価格も高止まりということで、とても経営が維持できないというのが酪農家の皆さんの共通した声だったわけです。
 道北の方の酪農家の方で、乳牛で百二十頭、経産牛七十頭を飼っているんですけれども、この方の場合、配合飼料でいうと一日七百から八百キロ食べさせるわけですね。これ自体が年間の収益との比較でいうと四割を占めるんですよ、配合飼料の代金だけで。それで、一トン当たりの平均でも、もう前期と比較すると一〇ポイント上がっているということですからね。だから、もう本当に大変だから、是非とも加工原料乳の生産者補給金は大幅に上げてほしいと、そして限度数量は下げないでほしいということが強く要求されていて、先ほども議論になりましたけれども、是非そこを上げてほしいということで、特に何銭、何銭という単位じゃなくて、円という単位で上げてほしいと、これが率直な声なんですね。
 ただ、先ほど回ってきたペーパーを見ますと、既に加工原料乳の生産者補給金でいうと十二円二十銭ですか、というようなことで回っているわけですけれども。少し上がったということは、これはもちろんよかったんですけれども、ただ、満足かといえば、そういう状況ですからね、やっぱりまだまだ不測の事態であって、是非そこは大臣にお願いしたいんですけれども、何らかの形で是非工夫していただいて、上乗せできるようなことを考えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 私といたしましては、今申し上げましたとおりに、相当この飼料の状況あるいは原油の状況というふうなもの、そしてその他のいろんな風評被害等々、あるいは東日本の大震災の影響等々、そういうこの非常に厳しい状況を鑑みて、相当思い切った形で今日諮問をさせていただいたと、こういうふうに思っております。
 そういうようなことも踏まえて、とにかく畜産農家の人たちが、基本的に将来に向かって展望を持っていただくような、そういう今後畜産経営を行ってもらえるようにこれからも取り組んでいきたいと、こう思っております。

○紙智子君 是非、途切れることなく、どういう形でやっぱり元気付けられるかということで工夫を考えていただきたいと思います。
 それから、大雪の被害の話は先ほどもありました。北海道を始め全国各地で深刻な被害なわけですけれども、被害金額で、北海道でいいますと全体で十九億三千四百万円ということです。畜産関係の施設についても、畜舎や堆肥施設などが百七十一施設がこれは倒壊するなどしているわけですよね。かつてない悲劇を被っています。これを機会にもうやめるかというふうに思っている酪農家もいます。
 それで、堆肥施設でいいますと、これやろう、続けていこうと思ったら、これ絶対なきゃいけない施設なわけですよね。ところが、壊れた状態のままにいると、法的に言うとこれちゃんとしないと罰則対象になってしまうということもあって、造り直さなきゃいけないということになると、いや、そのためにはお金が要るんだけれどもお金がないということになると、もうこれを機にやめるかという話にもつながってしまうんですね。ですから、この問題でいいますと、やっぱり今でさえも経営が厳しいわけですから、ここに対しての国としての支援措置というのはどうしても必要だと思います。
 是非、例えば堆肥の問題でいうと、直ちにその罰則の対象にならないということでちゃんと安心させてあげるだとか、それから、先ほど長期の低利融資という話があったんですけれども、やっぱり無利子の融資にしていただけないかなと。ちょっとこの辺のところももっと踏み込んで考えていただけないかと思いますけれども、いかがですか。

○大臣政務官(森本哲生君) 畜舎等の損壊、九道府県で二百五十五、それで御地で百七十一、承っております。
 基本的にやっぱり任意加入の保険ということが救済になっておりますが、経営の継続観点から、今申されました農林漁業のセーフティネット、ここの長期、短期、長期の低利融資ということが準備をされておるわけでございますが、無利子ということにつきましてはなかなか今の状況では難しいような状況でもございます。
 我々といたしましては、現状をしっかり把握しながら、今後しっかり各団体、皆様とも十分情報交換をさせていただきながら現状復旧に努力をさせていただきたい、そのように考えております。

○紙智子君 堆肥の施設。

○大臣政務官(森本哲生君) 堆肥の施設についても、今の私どもの方ではこの対応ができませんので、道の方でこれ指導をされていくと思いますので、その道との連携は十分図らせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

○紙智子君 とにかく、やっぱり壊れてしまったら罰則になってしまうと困ると、それはちゃんと。

○大臣政務官(森本哲生君) ごめんなさい。
 罰則につきましては、ここのところはしっかり配慮しますので、よろしくお願い申し上げます。

○紙智子君 是非徹底していただきたいと思います。

○大臣政務官(森本哲生君) はい、分かりました。

○紙智子君 それから、酪農家が心配しているのは、酪農ヘルパー事業の円滑化事業が、これ二〇一三年度で終了してしまうということなんですね。まだ間があるだろうというんですけれども、酪農家の皆さんにしてみたら、やっぱり非常に不安なわけです。
 それで、社会生活を営む上でヘルパーを必要としているわけですから、事業継続を是非続けていただきたいということを強く望んでおりまして、是非、大臣からこの事業継続の決断ということでお願いをしたいと思いますが、いかがでしょう。

○副大臣(岩本司君) 酪農ヘルパーは、朝晩の搾乳等が欠かせない酪農家の休日の確保や傷病時の経営の継続といった点から酪農の生産基盤を維持していくために重要と認識をいたしております。
 酪農ヘルパー事業円滑化対策事業は、こうした認識に立ちまして、当初、平成二年度から五年度にかけて国と県等が一対一で運用型基金を造成し、その果実により各県における利用組合の立ち上げ等を支援してきたところであります。
 その後、経済情勢の変化等を踏まえまして、平成十六年度から、十年後の平成二十五年度を事業終期とした上で基金の取り崩しを認め、事業終了後の平成二十六年度以降に利用組合の自立的運営が可能となるように十年間を掛けて計画的に準備を進めていただいているところであります。
 こうした中で、乳量に応じて積立金を徴収する等利用組合の自立的運営の準備を進めている県、団体も現れてきており、もう既に例えば栃木県ですとかも現れてきており、国としては平成二十六年度までに各地域で自立的な取組体制が整備されることを期待をしているところであります。
○紙智子君 自立的なという言葉があるんですけれども、実態は、本当に大変な中で結局基金を出し合ってやりなさいという話ですよね、自分たちで。だから、今取り崩してだんだんなくなっていったら後は、この後はもう自分たちで自立的にやりなさいという話だと思うんですけれども、そういうことでは、やっぱり実態はそうなっていないわけですよ。そこはちょっとよく考えていただいて、各県だとか道だとか含めて相談しながら、ちゃんと埋め合わせできるようなことを考えないといけないと思うんです。
 もちろん、自分が病気になったりとかというときの事業費は引き続き出るということなんだけれども、やっぱり家族でたまには休みを取ってやるとか何か社会的行事に出るとか、そういう際にお願いするヘルパーさんというのがやっぱり頼めないということになっちゃうと、社会活動そのものを疎遠にならざるを得ないということにもなりますから、やっぱりそういう意味ではきちっと考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、酪農家が最も心配して、なおかつ将来展望が持てないとして離農にまでつながっていっている問題がTPP参加の問題ですよ。大臣は離農まで引き起こしているTPPをめぐっている問題については、この事態をどのように受け止めておられますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) どういうふうに受け止めているかというふうなことにつきましては、まさしく野田総理の昨年十一月の交渉参加に向けて協議を始めるというようなこと、それに沿って今各関係国から情報を把握すべく協議を行っていると、こういう認識でございます。

○紙智子君 これは私は本当に責任が重いと思うんですね。そういう国としての取っている政策によってやっぱり展望を失わせているということの責任というのは本当に重いと思うんですよ。
 そして、三月八日の日本農業新聞で、これは外務省幹部が民主党経済連携プロジェクトチームの会合で、交渉に参加する時点では国益にかなうかどうか判断できない、交渉妥結後に国会で承認を得るかどうか判断してもらうという見解を明らかにしたというふうになっていますよ。私はこの外務省幹部が誰なのか知っていますけれども、とんでもない発言だなともう怒りを感じているわけです。これは、野田総理自身が事前協議参加表明のときに、関係各国との協議を開始しと、各国が我が国に求めるものについて更なる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立ってTPPについての結論を得ていくと、こういった方針さえもこれほごにするものですよ、この発言は。
 こういうなし崩し的なやり方でTPPに参加していこうということについては、これ農家が不安に思うのは当然だというふうに思うんですよ。大臣として、これTPPの参加撤回ということをやっぱり明確に今の時点で示すべきではないんでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 三月八日の農業新聞ですか、今先生から言及された外務省幹部が云々の話でありますけれども、私は外務省幹部がどういうことを発言したか、それは承知いたしておりません。正式に関係閣僚会合におきまして、等々でいわゆる外務大臣等々がこういうふうなことであったというふうなことならば、私も当然、閣僚の一員としていろいろと議論をするところでございますけれども、この新聞報道については私は何ら承知をいたしておりません。

○紙智子君 承知していないということなんですけれども、民主党の中のPTの中でこういうことが議論されているわけですから、私はやっぱりこれ絶対許せないことだと思っております。ですから、この後の質問に移りますけれども、これはもう本当にはっきりさせていきたいというように思っております。
 次に、大臣所信に対する質問ですけれども、去年十月に農水省が取りまとめた我が国の食と農林漁業の再生のための基本計画、行動計画、その中の戦略にかかわってお聞きします。大臣が所信でも触れていますけれども、持続可能な力強い農業の実現ということで、土地利用型の農業については、平地で二十から三十ヘクタール、中山間地で十から二十ヘクタール規模の経営体が大宗を占める構造を目指すとしていることについてです。
 現在、水田で稲作をしている農家は百七十五万五千戸あります、これ〇五年の数値ですけれども。その面積でいうと二百万二千ヘクタールと。稲作農家の平均経営面積を三十ヘクタールにこの計画に沿ってするとしたら必要な農家戸数はどうなるかというと、水田面積を三十ヘクタールで単純計算しますと六万七千七百三十三戸です。だから、この六万七千七百三十三戸のところで三十ヘクタールの規模で稲作を作ればやれるんだということになりますと、差引きして残り百六十六万八千三百六十七戸、九六%になるんですけれども、これだけの農家というのは要らないことになってしまうわけですよ。つまり、九割以上の稲作農家が切り捨てられるということになるわけです。この方針では、農村の集落そのものが荒廃すると、それは避けられないんじゃないかということで、実は去年も私質問しました。そのときは森本政務官が答えられたんですけれども、今日は大臣に改めて、言ってみればいまだかつてやったことのない政策だと思うんですよ。これ、本当におやりになるつもりなんでしょうか。

○副大臣(岩本司君) 我が国の食と農林漁業の再生のための基本……

○紙智子君 大臣。

○副大臣(岩本司君) 先にちょっとお願いします、基本方針・行動計画では、平地で二十から三十ヘクタール、中山間地域で十から二十ヘクタール規模の経営体が耕地面積の大宗をカバーする構造を目指すとしていますけれども、これは全国トータルの農業構造としての目標を掲げたものであります。
 したがいまして、個々の経営体が平地で二十から三十ヘクタールの規模にならなければならないというわけではないわけであります。〇・五ヘクタールでも有り難いわけですから、農業やって、一ヘクタールでも助かるわけですから、これはもう、そういうちょっと誤解があるようなものですから申し上げておきます。
 各集落、各地域において具体的にどのような経営を目指すかは、徹底した話合いの中で農業経営を安定的に継続できるようにしていくという観点からよく議論をしていただきたいと考えているところであります。したがいまして、一定規模を示してそれ以下を政策の対象から外すということは、これは全く、全く考えておりません。
 なお、一般論でありますけれども、土地利用型農業を行う小規模な農業者が多数存在し、地域の中心となる個別経営体がいない地域等においては、集落営農を組織化してその法人化を進めていくことも一つの方策と考えているところであります。そのために、各地域の実態も見極めながら丁寧に指導していく考えであります。

○紙智子君 丁寧に話し合ってということで言われるわけなんですけど、ただ、大方針としてこういう方向で行きますよということになると、いずれやっぱり収れんされていってしまうということを避けられないんじゃないかと思うんですよ。
 それで、この間この委員会で六次産業化で頑張っているところ見に行きましたけれども、この対象になるところが全国でどれだけできるかということで考えると、今まだ本当数%というか、数少ないと思うんですよ。
 集落営農ということで見ても、その地域も限られているわけですよね。先ほどの一覧表ですか、山田さんが出された一覧表で見ても、集落営農でいうと七%ぐらいですよね。しかも、例えば岡山市なんかでいうと集落営農はゼロですよ。西日本に行くほど少ないですよね、それ御存じだと思いますけれども。中山間地でいうとどうかというと、十ヘクタールから二十ヘクタールに集約するというんだけれども、これ中山間地域でそれだけまとまった面積を確保するということ自体も、できるところもあるかもしれないけれども、多くのところは簡単にできないですよ。そんな確保なんてできないですよ。
 そういうことが実際上どうなのかということでいうと、やっぱり現実を見ていない、非現実的な計画じゃないのかと。もしこれやれるんだというのであれば、どういうところがやれるのか示していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(岩本司君) 先ほども申し上げましたけれども、これは一ヘクタールで作っていただいても有り難いわけでして、〇・五ヘクタールでも、これはもう繰り返しになりますけれども、一定規模を示してそれ以下を政策の対象から外すということはもう全く考えていないわけでありますし、二十から三十ヘクタールの規模にしなければならないということではないんです。もう、その誤解をちょっと解きたいと思います。

○紙智子君 ただ、戸別所得補償の経営安定推進事業でやっていくということなんですけれども、ここでマスタープランを作成して農地の集約協力金を出して推進しようという話ですよね。
 それで、農地の集約協力金でいうと、ここは、例えば小さな〇・五ヘクタール以下のところ、ここは三十万円、〇・五から二ヘクタールのところは五十万円、二ヘクタール以上のところは七十万円ということで、こういうお金を渡して、言わば農家からは農地を出しなさいということなわけですよ。そして、農業用の機械まで廃棄処分を義務付けているわけですよね。それから、集約する経営体には無償譲渡ということで認められるけれども、中古の市場への売却というのは認めないと。だから、今まで持っていた機械なんかも、要するに排除しないと言うんだけれども、やっぱり集落の中でどこが中心的な農家になるのかと。周りの人たちは、じゃそこに向けて農地を出しなさいという話だとか、集落でしていくということになると、やっぱりどうしたって、大分年齢が行って自分の跡がいないから、それはしようがないから自分は出しますよという人も中にはいるかもしれないけれども、まだ頑張りたいと言っている農家も含めて、本当にそこのところがどんどんどんどんと進むということになると、やりたい人も置き去りにされていくということになるんじゃないのかというふうに思うんですよ。
 こうやって機械まで、何というんですか、義務付けとして廃棄処分を義務付けるというやり方というのは、もうまるで刀狩りのようなことだというふうに言ってももう言い過ぎじゃないと思うんですよね。こういうやり方というのは本当に今までやったことないことじゃないかと。とんでもないんじゃないかというふうに思うわけです。
 実際現場からはちょっと余りにもひどいんじゃないかという声も出されているわけですけれども、当事者からそういう声を聞き取っておられるんでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) いろいろと現場の声からは当然出てくると思いますが、私どもとしては、強制的にこうだという押し付けでなしに、何遍も申し上げていますけれども、この集約化なりあるいは今後の新規就農の対策事業というものを行う際も、やはり地域においてよく話し合っていただいて、そして丁寧にこちらも説明をさせていただきながら、とにかく地域の方々の考え方というふうなものの中から今申し上げたような一つの経営体というふうなものに近づいていってもらえばと、こういう考え方であるということだけは申させていただきたいと思います。

○紙智子君 よく話し合ってって、話し合うということをもう本当言われるんですけれども、でも実際に、結局は、その話合いの場に農水大臣が行ってそこで話合いに加わってやるというわけではなくて、やるのは市町村がその場を設定してやるんだと思うんですよ。結局市町村が言わば進めるとなると、国が決めたらやっぱり進めなきゃいけないから進めるとなると、どうしたって強制的にならざるを得ない部分というのは出てくるわけですよ。結局、あなたはもう本当に大変だしリタイアしませんかというようなことも含めて現場では行われてくることになるんじゃないのかと。そういうことを市町村にさせるのかということですよね。
 これは、つい、少し前ですけれども、自民党政権の時代にも品目横断的経営安定対策のときには、言わば集落をつくってやっていくんだと、法人化するんだということで号令を掛けたわけですよね。どれだけ現地で苦労したかということを私たちちゃんと覚えていると思うんですよ。
 地域回りましたけれども、大変な苦労をしながら、何とかこれに乗らないと、制度に乗らないとやっていけないということで、作文を作ってですね、一旦はそうやって制度に乗ってやっていこうということでやったけれども、しかしなかなか、やっぱりこう無理して、うまくいかなくてその後解散してしまったという例もたくさんありますし、そういう意味では、本当に集落が十分議論を踏まえて、そしてみんなの納得を得て、そして進み出すというんだったら別ですよ。だけどそうじゃなくて、やっぱり期限決められてそういう中に押し込められて、さあやらなきゃいけないということになったら、これはまたあの苦しみを、苦労を負わせることになるんじゃないかというふうに思うんです。そうならないと言い切れますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) とにかく基本的には、今の農業なり林業なり漁業をめぐるところの状況というものはそれぞれ、私どもだけではなしに、市町村においても同じやはり深刻な事態であるという受け止め方もされておりますし、また農業者、第一次産業にいそしんでいる人たちも果たしてどうなるんだろうかというふうな思いもあるわけでございますから、そういう意味では共通したこの認識というものを共有することによってお互いが話し合って、次の時代に向けてどうあるべきかというふうなことはより具体的な形で進んでいくというようなことに私どもとしては努力をしていくと。
 そういう意味では、市町村に任せるということでなしに、もちろん必要あらば本省からも、必要あらば地方農政局からも人を派遣して、そして話し合ってより具体的な形で説明をさせていただいて、お互いが理解し合った中でこの集約化なりというふうなものを進めていくという、これが基本的な私どもとしての考え方でございます。

○紙智子君 私は、やっぱりこの政策というのは、大臣は、TPPに参加しようとしまいと関係ないと、農業の再生のためにやるんだというふうに言われてきたわけです。
 でも、この基本方針、基本計画、これを読みますと、初めにというところでは、我が国の貿易、投資環境が他国に劣後してしまうと将来の雇用機会が喪失してしまうおそれがあると、こうした認識に立ってということをわざわざ明記をしているわけですし、目指すべき姿というところでは、高いレベルの経済連携協定と両立し得る持続可能な農林水産業を実現するというふうに書いているわけですよ。それから、速やかに取り組むべき重要課題というところでは、開国による恩恵の分配メカニズムの構築ということまでわざわざ明記をしているということは、これTPP参加と文言としては書いてはおりませんけれども、実際にはTPP参加を前提とする方針なんじゃないんでしょうか。違いますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) TPP参加を前提とするものではございません。基本的には昨年の、一昨年ということになります、年明けたものですから、いわゆる包括的経済連携というふうなものをこれから推進する上におきまして、FTAAPというふうなものに対する道筋というふうなものを私どもとしては基本方針として打ち出しているわけでありまして、そういう中でその考え方が示されているというわけでありまして、TPPというふうなものの交渉参加を前提としているものではございませんということを申し上げたいと思います。

○紙智子君 今全国でTPPに参加するなということでの運動が広がっています。
 例えば、日本医師会も三月十四日に記者会見をして、正式に日本が参加することについては全面的に反対するということでの発表をいたしました。それから、滋賀県では、九十二団体、二百七十九人が参加して県民会議がつくられました。これをやっぱり何としても止めていこうということですし、北海道も道民連絡会がつくられて、道民ぐるみの運動が今始まっているわけです。
 限られた情報で、徹底した情報提供と言いながら、実際には本当にかみ合う形での情報が出されていないということがあるわけですけれども、そういう中でも、農林水産業への打撃はもちろん、これがほかの分野にもわたって国民の暮らしや生活にも大きくかかわってくる、日本の国益にはならないということでの中身が知られるに従って反対の声が広がってきているわけで、そういう中で、私はきっぱりと断念を言っていただきたいということを最後に申し上げまして、最後、大臣の答弁を聞いて、質問を終わります。

○国務大臣(鹿野道彦君) TPPは国論を二分すると言われておるわけでありますから、やっぱりそういう中でしっかりとした、関係国がどういうふうなことを求めるかということの情報を提示させていただいて、国民的な議論の中で判断していくということは大事なことだと思っております。