<第180回国会 2012年3月21日 沖縄北方特別委員会


・ロシアとの領土交渉は「原則が大切」と指摘。
・沖縄の米軍基地の土壌汚染、日本の負担見直しもとめる。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私は、初めに領土交渉について玄葉大臣にお聞きします。
 ロシアの大統領選挙でプーチン氏が当選をされて新政権がスタートをすると。それで、プーチン政権になればこの領土問題の解決に進むかのような話ですとか、あるいは、先ほども議論の中で、前向きな発言があるのでこれを生かしていこうという声なんかも出されておりましたけれども、私は、この間のロシア政府の領土問題での一連の言動を見ますと、例えば、彼らもその論拠を示してロシアの権利について主張しているわけです。
 まず来るのは、さきの大戦の結果を基礎としてと。で、四五年のヤルタ協定、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約、国連憲章など列挙してそのことを主張するわけですけれども、これ、繰り返されているんですけれども、こういうことを見ますと、領土交渉の原則をやっぱり抜きに二島返還とか三島返還と言っても、それはもうそんな甘いことではないというふうに思うわけです。
 玄葉大臣としてはどのように、そういう原則を踏まえてということでは取り組むおつもりでしょうか。

○国務大臣(玄葉光一郎君) 今、紙委員がおっしゃるような、ロシアの言わば立場の表明等々について、この間も、我が国は我が国の法的解釈含めて、先ほどおっしゃったことに対するやり取りを、それは当然ながらしてきているということでございます。
 その上で、先ほど来から申し上げておりますけれども、私としては、この間、特に一年間、双方ともムードを高めてきたというところがございます。で、先般のプーチン首相、これから大統領になられるプーチン氏の発言があったということであります。このことについて、おっしゃるように、中身につきましてはよく注視をしながら進めていくことが肝要であるというふうに思っています。
 ですから、大原則というのがあって、いわゆる諸合意、諸文書、法と正義の原則というのがまず一つあるのと、先般も日ロの外相会談の中でも、北方四島は日本に帰属するというのが我が国の立場であるということを述べた上で、この領土問題の議論を再活性化させましょうと、実質的な議論に入りましょうということを私の方から提案をし、その中で、ラブロフ外相から、それでは新政権樹立後にそういった議論をいたしましょうということについてラブロフ外相が述べたということで、今回のプーチン首相の発言というのはそのことと軌を一にしているというふうに考えているということでございます。

○紙智子君 その中身について注視してというようにおっしゃいましたけど、この列挙している中のヤルタ協定ですね、これは、アメリカ、そしてイギリス、ソ連が秘密のうちに言わば千島の引渡しを合意したものです。そして、それは国際法に照らしても領土不拡大の原則に反すると。こういうことをやったがために領土問題というのは今日に来ているわけですから、そのことについてあえて公然と出して、そして米国に対してもそのことについて守るべきということを言って、言わば正当化するような議論も一方でやられているわけですから、そういうことを相手が言っているときに、こちらがそのことに対してやはり素通りしてしまってはいけないわけで、やっぱりきちっと、それに対してはきちんとやっぱり言わなくちゃいけないと、日本の態度についても言わなくちゃいけないと。やっぱり、戦後処理のそういう意味では不公正を正すというところを踏まえないで、正しい解決の道というのはないんじゃないかというふうに思っているわけです。これは繰り返しこれまでも申し上げてきたことです。
 私どもも、やっぱり解決のために努力をするということでは本当に努力を惜しまないつもりですし、この間、例えば民間レベルですとか、元島民の方含めて、直接パイプをつくってやってくるとか、あるいは議員レベルでいろいろなパイプをつないでやっていくということを取り組んでいるわけですけれども、引き続きこれも大事ですし、やっぱり国民的な運動にしていくというか、やっぱり主権にかかわる問題として、日本国民全体の問題として広げていく必要があるんだろうというように思います。そういう点では、しっかり原則を踏まえてやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 次に、米軍基地の跡地の土壌問題、汚染についてなんですけれども、基地の跡地から大量の米軍廃棄物やPCB、砒素、鉛など重金属の深刻な土壌汚染が何か所も発見をされています。この委員会で今年一月も北谷町に行きましたけれども、ここでも、土地の引渡し後にキャタピラとか燃料タンク、アスベストの含有したコンクリートの廃材等々、これ大量の米軍廃棄物が出てきて、そのたびに事業が遅れて大変だったという話を聞かされてきたわけです。これらは、本来米軍が汚染者負担の原則に従って自らこれ処理して基地を返還すべきところを、日米地位協定があるということで日本政府が代わって処理しているということなわけです。
 そこで、まず防衛省にお聞きいたしますけれども、このキャンプ瑞慶覧メイモスカラ地区、ここはドラム缶に入ったタールの物質ですね。それから恩納通信所、PCB汚染。キャンプ桑江北側地区、六価クロムなど出てきていると。瀬名波通信施設、それから読谷補助飛行場、ここは鉛、弗素ですね。
 返還跡地のこの土壌汚染、その他の廃棄物の原状回復の費用で、二〇一〇年までの合計でいうとどれぐらい額として掛かっているのかということを防衛省にお聞きします。できるだけ端的に数字をお答えください。

○政府参考人(山内正和君) お答え申し上げます。
 平成二十二年度末までに在沖の米軍施設の返還に伴います土壌汚染などの除去に要した費用としては、キャンプ瑞慶覧のメイモスカラ地区で約八千四百万円、キャンプ桑江の北側……(発言する者あり)失礼しました。約十一億九千万円でございます。また、恩納通信所及び航空自衛隊の恩納分屯基地については、発見されたPCB含有汚泥の保管のための保管庫の設置等の費用といたしまして、合計で約二億一千八百万円の費用を要しているところでございます。

○紙智子君 キャンプ桑江に残されたPCB含有のコンデンサーが、これ三百三十八台、この処理費用と運送費、それから恩納通信所の跡地ですね、返還された、恩納分屯基地に残されて、まだこれ処理されずに保管してある、保管中のPCB汚泥は何トンですか。

○政府参考人(山内正和君) まず、キャンプ桑江北側の北谷町から発見されましたPCB含有の蛍光灯安定器約三百四十個につきましては、本年度約一千四百万円で処理業者と契約し、処理を行っているところでございます。また、恩納通信所及び航空自衛隊恩納分屯基地において発見されましたPCBの汚泥でございますけれども、これは通信所返還地から約百四トン、それから航空自衛隊の恩納分屯基地から約二百十八トン、合計で約三百二十二トンとなっております。

○紙智子君 今お話しのように、この返還基地のPCB等の汚染、汚泥が合わせて三百二十二トンと。
 それで、環境省に今度お聞きしますけれども、PCB処理は政府が全額出資したJESCOを設立をして処理をさせているわけですけれども、このJESCOのPCB汚泥の処理費は幾らでしょうか。そして、加えて、北九州事業地域で処理される予定のPCBの汚泥は何トンでしょうか。

○政府参考人(伊藤哲夫君) 安定器、感圧複写紙などのPCB汚染物等については、JESCOにおける処理料金は一キログラム当たり二万九千四百円でございます。
 それから、北九州事業内での処理エリア内の汚泥については、重量が把握できているものについては約五百十八トンでございます。このほか、ドラム缶に入っているなどして重量が不明なものもございます。
 以上でございます。

○紙智子君 沖縄の米軍基地のPCB汚泥というのは北九州事業所で処理をすることになっているわけですけれども、このPCB汚泥の量というのが三百二十二トン、北九州事業地域で処理する総量というのは五百十八トン、ですから六割占めるわけですよね。それから、費用を単純計算しますと、これ三百二十二トンですから、先ほどの金額とやりますと大体九十億円以上という膨大な額になるわけです。それで、これら全てを日本政府が米軍の肩代わりをして、費用と時間を掛けて処理していくのかと思うんですね。改めてこれ疑問に思うわけです。
 PCBの特別措置法は、これ二〇一六年度までに、時限立法ということですから、国内の処理全体が間に合うのかということが今問題になっているわけですよね。そういう問題もあるわけです。
 米軍が日本の法令を尊重せずに汚染したのに、結局これ、汚染発見が返還した後になってくるものですから、返還後ということになると、これ全て日本が処理するというのは余りにも不合理ではないかと思うわけです。米軍に対して、PCBの処理について若しくは費用負担をさせるべきじゃないかと思うんですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(玄葉光一郎君) これは地位協定の四条の話だというふうに思いますけれども、もう御存じのように、施設・区域の返還に際しては米国が原状回復義務を負わないと。ただ、米国による付加価値について、我が国は米国による付加価値を補償する義務を負わないということであります。
 他方、これは二〇〇〇年でありますけれども、2プラス2で発表された環境原則に関する共同発表で、米軍は、在日米軍を原因とし、人の健康への明らかになっている差し迫った実質的脅威となる汚染については、いかなるものでも浄化に直ちに取り組むという政策を確認をしているということでございます。

○紙智子君 そういうことが言われるんですけれども、しかし、米軍基地の土壌汚染というのは過去にも繰り返し問題が起きているわけですよ。そのたびに米軍に処理を求めてきた経過があるわけです。ところが、その後も返還前の汚染状況を政府は把握せずに、跡地からは続々と汚泥が、汚染が見付かっているわけです。現在も変わらないんですよ。
 それで、普天間基地のほか返還予定基地に防衛省や環境省は土壌汚染の立入調査というのは行ったことはありますか。環境省から。

○政府参考人(鷺坂長美君) 環境省といたしましては、沖縄県にある米軍基地の土壌に関して調査をした実績はないと承知しております。

○政府参考人(山内正和君) 提供中の米軍施設における土壌汚染調査のための立入りについてでございますが、防衛省では、民公有地である施設・区域が返還されると、原状回復措置の一環として汚染の除去など必要な措置を講じ土地所有者に引き渡しているところでございます。
 防衛省として、原状回復措置のために返還前に施設・区域に立ち入り土壌汚染調査を行ったことはございません。

○紙智子君 もう今お聞きのように、結局、大臣、全然これ入って把握するなんていうこともやっていないわけですよ。それで、現在も政府機関としてはこの汚染実態を把握していないと。宜野湾市に聞いたんですね、宜野湾市に聞きましたら、土壌調査を申し入れても米軍は認めないと。普天間基地で〇九年に燃料漏れの事故が発生して、国も県も市も立入調査をしたときも、アメリカ側は写真撮影禁止、土壌のサンプルは持っていっちゃいけないと、こういう事態もあったわけですね。
 ですから、外務省は、米軍の土壌汚染のたびに、環境分科委員会とか日米合同委員会の仕組みがあると、問題があったときは日本側との協議を経て処理されるというようなことを言ったり、あるいは二〇〇〇年の九月のときには、環境の原則に関する共同発表をしたということを言うわけだけれども、実態把握もできていないから、結局現状を、何というか、つまびらかにすることできないというか、そもそも押さえられていないからだと。
 この問題について、外務大臣はどのように認識をされていますか。

○国務大臣(玄葉光一郎君) 今のお話、つまりは在日米軍が管理をしているPCBの含有物資でありますけれども、これは平成十五年から順次米本国へ搬出、処理、廃棄をされてきているというふうに承知をしております。

○紙智子君 やられていないですよね。だから、本当にその判断も米軍の側に任されているという状況がありますし、実際に入れるのは、私たちも調査に行ったときに現地で話になりましたけれども、お墓があるんです、普天間の基地の中に、お墓については年に一回だけ。それも、向こうが工事しているときに一緒に入って、年に一回決めてやると、訓練しているときは駄目と。それから、いろいろな貴重なものが埋まっているものについて調査するというときも、調査したいと言っても、これは米軍の都合で、もう本当に部分的にということでしかなっていないわけですよ。
 ですから、環境調査ということになると、これはほとんど入れない、実際には入れていないというのが現状だということを宜野湾の市にも聞いてよく分かったわけですけれども、本当に問題だというふうに思うんですよね。実際にこの日本の環境の基準が守られるのか、これ、政府として立入りを行うべきだと思うんですよ。関係自治体のあっせん要請を待つのではなくて、政府として積極的にやるべきだと思うんです。土壌汚染の処理には莫大な費用と期間を要するわけです。そのたびに跡地の利用を遅らせて、市町村や地権者にしわ寄せを与えてきたわけですよ、今までも。ですから、返還後、速やかにこの跡地利用に着手できるように、原状回復に長期間要する事態は避けるべきだと思うわけです。
 これは今法案も出されてきているわけですけれども、是非、担当大臣に今度言いたいと思うんですけれども、返還前に土壌汚染を把握できるように、関係省庁と連携して立入調査を行うべきではないでしょうか。

○国務大臣(川端達夫君) 跡地利用、特に有効に活用することは極めて沖縄の振興に大変大事なことであることは先生も御指摘のとおりでありますが、御案内のとおり、原状回復は防衛省、日米地位協定は外務省の所管でございますが、この跡地利用に関する法律の所管は私でございますので、そういう意味では関係府省とよく連携をして、密接に連携しながら適切に対処してまいりたいというふうに思っておりますし、新たな跡地法制では、今御指摘になりましたけれども、原状回復については、返還された駐留軍用地の全域において、駐留軍の行為に起因するものに限定せず、不発弾や土壌汚染等の調査を実施すること。もう一つは、地方公共団体から国に対して駐留軍用地への立入りのあっせん要請があった場合には、国があっせんを行わなければならないとともに、あっせんの状況について通知することというふうにしております。
 あっせんに係る具体的な手続等に関しては今検討中でありますけれども、沖縄防衛局を窓口としてあっせんを行うこととしているところでありまして、これらはこれまでの法律に比べて跡地利用の促進を大幅に拡充するものでありまして、沖縄県の要望を十分に踏まえた内容でありますとともに、与野党における修正協議を経て、衆議院においては、午前中の沖北特別委員会において全会一致で修正案の可決をいただいたところでございます。

○紙智子君 かつて一九七三年のときには、恩納村でPCBが出たときには立入調査したことあるんですよね。だから、本当にそこは是非立入調査、事前にですね、やるように、そのことを強く求めていただきたいということを、最後、玄葉大臣、ありますか。

○委員長(岸信夫君) 玄葉外務大臣、簡潔にお願いします。

○国務大臣(玄葉光一郎君) 平成二十一年一月以降、米側は約二十九・五トンの米国製PCB含有物質を搬出をしたということと、もう一つは、おっしゃるその返還前の環境調査、いわゆる合理的な立入り、こういったことについて今、日米間で鋭意協議を行っていますので、努力をしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 終わります。