<第180回国会 2012年2月22日 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会>


中央アジア及び南アジアの水問題と我が国の取組について


参考人
 帝京大学経済学部教授               清水學君
 総合地球環境学研究所研究部准教授      窪田順平君
 独立行政法人国際協力機構南アジア部部長  中原正孝君
 社団法人日本水道協会専務理事          尾崎勝君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
 私、最初に清水参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、中央アジアの水問題ということで最初にいただいたこの資料の中に書いてありますけれども、その七ページに、「水を巡る今日の問題で注目すべきは以下の点である。」ということで、「一方では地球環境問題および生存権の観点から水の国際公共財としての性格が強調されているが、他方では水のような「コモンズ(共有財産)」を商品化しようとする動きが見られる。」、それについての議論があるということが述べられています。一九九〇年代からそういうことというのが動きがあるんだと思うんですけれども、国連総会などでもこの水の権利にかかわっての決議が上げられたりということが近年あると思うんですけれども、その辺の現状がどうなっているのかということで、国連の動きで結構ですけれども、その辺りのことを御紹介いただきたいということが一つです。
 それから、続いて尾崎参考人にお聞きしたいんですけれども、国連の人間開発報告書に水メジャーが進出をして水道料金が高騰してしまったと、それでもって貧困層の反発を受けて撤退したという報告があるわけですけれども、ボリビアの水戦争ということで、御存じだと思うんですけれども。水ビジネスを始めるに当たってこういう海外の実情も調べられたと思うんですけれども、うまくいかない例などの原因について分析されている中身をお聞きしたいということと、もう一つ、地方自治体の役割ということでいえば、やはり公共の福祉についての増進を図るということだと思うんですけれども、国際貢献ということでいうんだけれども、率直に言って、営利活動を伴うこういうビジネス、水ビジネスということでやることとその福祉の活動ということとをどのように整理をされているのかということについてお聞きしたいと思います。

○会長(藤原正司君) まず、清水さんからお願いします。

○参考人(清水學君) 御質問どうもありがとうございます。
 ちょっと、私は元々水問題そのものの専門でないので、きちんとその国連のあれをフォローしていないので余り責任あるちょっとお答えが実はできないんです、大変申し訳ないんですが。
 ただ、先ほどの御質問に対してもお答えをしたんですけれども、水の問題というのが単に、いわゆる農業用水、それから工業用水、さらに生活用水という三つ、あえて分ければ三つのカテゴリーになるわけですけれども、中央アジアをベースに見た場合、いずれも大きな問題を抱えていることは事実なんです。
 それで、生活用水の問題についてはちょっとお話をしなかったんですけれども、現在、ソ連時代につくり上げたいわゆる給水システムが、結局、経済的な予算がないとかその他の問題を含めて、メンテナンスがほとんど行われていないところがかなりあります。それでその結果、水道水の質の問題で問題が出ているということと、それからあと、日本の援助の問題と関係するのかどうかちょっと分からないんですが、かんがい用水の問題についても物すごくメンテナンスが非常に悪いんですね。キルギスなんかも特にそうなんですけれども。それで、何とかしてそれを補修しないと水の量の確保もできないし、それから質的な面でも問題があるということになります。
 それで、単に水の問題だけではなくて、やっぱり基本として考えておかなきゃいけないのは、ソ連時代の一定のシステムがあったのが、農業の民営化その他の中で新しいシステムに移行するんですが、その移行が必ずしもうまくいっていないんですね。
 その中で、例えばこういう事例があります。各州で国立大学を独立してからつくっているんですが、キルギスで、例えば農学部なんかですね、ナリン州なんか行きますと驚くべきことを聞くんですね。例えば、獣医学科をつくったけれども、先生もいるんですが、学生で入学希望者が一人もいないと。それはなぜかというと、仮に獣医になっても、農民がかなり疲弊化しているために恐らくお金を払ってもらえないだろうと。だから、獣医になっても生活できないというのが前から見えているので、それで獣医学科入らないという。
 ところが、ソ連時代の場合は、恐らく水管理も関係していると思うんですが、一定の、最小限の法的な規制はやっていたんですね。例えば、家畜何頭当たりは必ず獣医一人はいなくちゃいけないと。ソ連自身が全部崩れちゃっているので、それを全体として含めた、水も含めた農業の在り方というか、そういうものを、何というか、検討することが、今でも迫られているのが実情ではないかなと思います。
 御質問にちょっと直接お答えできなくて申し訳ないのですが、取りあえずそれでお答えさせていただきます。

○参考人(尾崎勝君) 御指摘のとおり、水メジャーのやり方については一部批判をされているところもあります。
 我々がといいますか、国際貢献ビジネスといいますか、水ビジネスの目指すところは世界の水問題を解決しようということで、その問題解決の支援をするというところに重点があります。支援をしたときに対価をもらうということもあってもいいというふうに思っています。ということで、物すごいもうけて、もうけ過ぎてやってしまうということは道義上いろいろあると思うんですが、やはり掛かった分をもらうと、少しある面でお払いしてもらうというのは、やはり我々としても、それだけのある面で貢献しているその対価をもらうことはやぶさかでないというふうに感じています。

(略)

○紙智子君 ちょっと先ほど時間がなくてお聞きできなかったんですけど、窪田参考人にお聞きしたいんですけれども、実は去年、調査会でこの場所に沖大幹先生に来ていただいてお話聞いたことがあったんですけど、その中で化石地下水を利用し続けることは深刻な問題をはらむという話がありまして、窪田参考人は、この資料の中でも化石地下水について、石油などと同じく有限な資源で、利用し続けるといつかは枯渇するというふうにおっしゃっておられます。それで、その化石地下水の枯渇という問題がどういう問題を生み出すのかということについてお考えをお聞きしたいというのと。
 中原参考人については、水ビジネスなどの、これパッケージ型インフラ海外展開ということで言われているんですけれども、アジアや新興国で成長を日本に取り込むんだということなんですけど、実態について、投資をしてインフラなんかで建設進めても、実際の資材なんかは現地で調達するのがほとんどなんじゃないのかと。それから、雇用なんかも現地でやっぱり雇用するということになるんじゃないのかという、現状がどうなのかなということについてお聞きしたいと思います。

○会長(藤原正司君) それじゃ、窪田先生、まず。そしてその後、中原先生、お願いします。

○参考人(窪田順平君) 化石地下水について説明いたします。必ずしも中央アジアで深刻化しているという問題ではございませんが、少し説明させていただきます。
 化石地下水と申しますのは、例えば一万年とかそういう時間スケールで古い時代に地層の中にとらえられた水を使うということです。これが今最も使われているのはアメリカのグレートプレーンです。オガララ帯水層という大帯水層ですが、この穀物を一番使っておるのは日本でございます。ですから、沖さんが言ったのはいわゆるバーチャルウオーターというやつですが、日本は食料を輸入することで大量の水を輸入しておりますが、それはアメリカから大半は来ておりますが、それは今申し上げた、でも、ちゃんとそれを沖さんたちは計算して、それほど、意外に多くないんですが、それでも化石地下水をかなり消費しているという言い方になっております。
 あと、かんがい農業は世界的にやはり生産力が高いものですから、人口の多いところでは非常によくやられています。多いのが中国、それからインド、パキスタン、この三か国です。中国、それから、インド、パキスタン、ここの地下水は非常に深刻な状況にあります。ここは化石地下水と言うべきかどうか微妙なところですが、やはり地下水資源が枯渇していることは事実でございます。日本がその意味では特にアメリカの化石地下水にかなり依存をしているということは私たちはよく理解しておくべきだろうというふうに思います。水の問題ではそういうふうになってございます。
 以上でございます。

○参考人(中原正孝君) 水ビジネスについてのパッケージインフラでございますけれども、現在、南アジアではまだ確立した水分野におけるパッケージインフラというものはでき上がっていないところです。
 ただ、今御質問いただきました資材や雇用の調達につきましては、当然、水ビジネスとして日本企業が現場に進出した際には、ほかの現地企業との競争の上で、そこでの進出していく対象事業が経営として成り立つかどうかということによらざるを得ませんので、当然安くて良い技術を調達するということでは、資材やそれから雇用につきましても現地人材を相当活用していくということが必要ではないかというふうに考えます。