<第180回国会 2012年2月15日 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会>


水道事業は費用膨大/安易な考えで海外に出るのは無理

○インドシナ半島等東南アジアの水問題の現状と課題について

参考人
 中央大学理工学部教授           山田正君
 独立行政法人国際協力機構客員専門員    竹谷公男君
 輝水工業株式会社代表取締役社長兼CEO  森一君


○紙智子君 今日は三人の参考人の皆さんありがとうございます。最初に、森参考人からお聞きしたいと思います。
 私も、実は一昨年前にODAの調査でベトナムとそれからカンボジア、ラオスというふうに行きまして、まさにメコン流域のところの水をろ過して、飲める水にしていこうということでの事業を見させていただきました。
 それで、その途中で、多分ラオスかどこかだったと思いますけれども、病院に寄ったときに、小さなお子さんがやっぱりよく亡くなるケースがあるんだけれども、水をきれいにするということの中で死亡率が減ったという話を聞いて、非常に大事なことだなというふうに思ったわけです。
 そういう形での貢献というのはすごく大事なことなんですけれども、ビジネスとしてやっていくという場合に、これ先ほど森参考人が、原点はやっぱりボランティアというか、現地で何が一番求められているかということを本当に考えてやっていくんだという話をされていたわけです。それで、ただ本当に利益を上げてやっていくということになると、この事業というのはなかなか大変だなというふうに思うんですよ。
 それで、この委員会でもって去年調査で大阪、神戸にも行って、行政の皆さんからも話聞いているわけですけれども、そのリスクというか、このことを海外に行った場合にどうするのかという問題も当然考えるということになると、やっぱりお話をお聞きする中で、行政のスタンスとそれから企業の皆さんともちょっと、何というのかな、若干スタンスというか違いがあるなということを感じましたし。
 今、民主党政権なわけですけれども、その政権として掲げている新成長戦略の中で水についてはパッケージ型インフラ海外展開ということで、それで水ビジネスは、チーム水・日本ですか、ということでやっていって、政府がトップ外交、トップセールスだということで、メーカー単独でなくて、設計とか建設とか運営も丸ごと企業連合を組織してやっていくんだと、そうやって競争していくんだという話があるわけですけれども、そういうことで果たしてやっていって実際どうなのかなと。
 温度差がやっぱりあるわけですよね。行政の側は、国内でやっている水道事業だって非常に費用的には大変な面があるわけだし、だから、出かけていってそこで、もちろん技術はいろいろありますからやるけれども、じゃ出資も含めてやれるかというと、財政的には大変だったりとかするわけですし。
 一方、企業の側も、出ていくためにはもっと支援が必要だということの中でどうなのかということがあったり、企業同士も、やっぱり自分たちが持っている技術というのは余りひけらかさないというか、ある程度守らなきゃいけないみたいなものもあったりして、そういう……
○会長(藤原正司君) 紙さん、質問の焦点を絞ってください。
○紙智子君 はい。
 そういうのもあるので、そういう中でその課題となることというか、その現状と課題についての御意見を伺いたいということが一つです。
 それと、山田参考人と竹谷参考人には、ゲリラ的豪雨ということで、今和歌山の話もありましたけれども、結構あちこちで起こってきていて、これについての観測体制とかメカニズムももちろん大事なんですけれども、急ぐべき対策、優先課題という点で、それが何かということについてお聞きしたいと思います。
○参考人(竹谷公男君) ゲリラ豪雨の急ぐべき対策は、特に私は、その海外の支援の部分の仕事の面からいいますと、やはり地上観測網の整備というのが一番だと思います。望むらくは、近代的なテレメーターとか電波で送るとかそういうことじゃなくてもいいんですが、どちらかというと地に足の付いたきちっとした地道な積み上げによってしか、ゲリラ豪雨というのは狭い範囲で起こりますので、短時間に、カバーできないと思っていますので、そういったものが必要だと思います。
○参考人(山田正君) まず、ゲリラ豪雨ですけれども、実は日本はゲリラ豪雨を見付けるレーダーシステムが非常に進歩しまして、現在気象庁と国土交通省でレーダー網を持っていますけど、国土交通省のレーダー網の方がはるかに新品を入れていまして、XバンドMPレーダーという新しいレーダーシステムです。
 これは私が委員長で、ずっともうこれ私が提案してやったシステムなんですけれども、実はその前にもっと大事なことがあって、ちょっと三つぐらい言います。
 まず、ゲリラ豪雨に対しては予報が大事でしょう。そのためにはXバンドMPレーダーという世界最高級のハードがもう日本で用意されたと。それはあらゆる情報網、ネットワークを通じて個人レベルでもデータ取れる。それから、これは国土交通省のレーダーシステムを気象庁がそのままデータをもらって、近いうちにもっときめの細かい短時間予報をやると、数分先までの予報までやるというふうに今動いています。これは予報で、実は国土交通省河川局、今は河川局という名前が変わりまして国土保全局になりましたけれども、ハードばかりやる国土交通省じゃなくて、ゲリラ豪雨なんか洪水予報をする国土交通省というのをミッションに入れたらどうですかと、それも全国の中小河川まで全部国土交通省と気象庁が共同で予報をやるというシステムはどうですかと、ずっと提案しています。でも、なかなか動きません。是非、今もう幅一メーターの川まで予報を出せる能力を日本は持っています、それからネットワークも持っているし、そういうシミュレーション手法も持っています、やるかやらないかだけですね。予報です。
 それから、今度は、ハード的には下水道とか中小河川の整備をきちっとやるということですね。下水道、雨が降って大抵のところは下水管に入るわけです。新しい町は雨水管に入りますけれども、古い町は下水管に入ります。下水管の容量が昔の雨で設計していますので、ゲリラ豪雨じゃあふれてしまうんですね。だから、もう一回やり直さなきゃいけないところがあります。だから、その二つ。
 それからもう一つは、ちょっと余談ですけれども、もう十何年前に、日本のレーダーシステムはすばらしいから中国に輸出したらどうだと私強く言っていたことがあるんですけれども、大抵の人が、いや、レーダーはココム違反になって駄目だよと言って、よく調べもしないでみんながそう言ったんですよ。ああ、そうかなと思って。ところが、もう十年前に中国はアメリカのレーダーシステムの特許を全部買っちゃいまして、もう自分の自家薬籠中のものにしちゃって、今インドの気象予報システムは中国のレーダー網でもうカバーされてしまったと。本来日本がやるべきところをそういうへんてこりんなガセネタで、あれはココム違反だから絶対あんなものは中国に持っていけないよなんて、と言っている瞬間に実は中国はアメリカからもう全部特許を買い取っていたという、こういうことがあって、せっかく日本が売れる技術が手遅れになってしまう。
 それから、多分バンコクなんか都市部なんかの局所的な豪雨の予報というのは、従来型のレーダーじゃ粗過ぎますので、このXバンドMPレーダーという世界最高のいいシステム、そんなにお金が掛かるわけじゃないので、是非これは日本が技術的な、ここは技術なんですけれども、技術の輸出に向いているんじゃないかと思っています。
 以上です。
○参考人(森一君) ありがとうございます。すばらしい御指摘なものですから、私の課題でもあるんですけれども。
 現状、本当に思います。水ビジネスに命を懸けているのかと、それぞれの企業が。やるやると言っているところがですよ。特に、じゃ、水ビジネスって何を言うかというのがまず大きいんですね。水道事業を言っているところもあれば、排水処理だけ言っているところもあるし、今おっしゃったある一定の部分のろ過、すごく間口が広いビジネスなんですね。
 なので、日本には水道事業を、じゃ一つで、ヴェオリアだとか、フランスのですね、イギリスのテムズだとか、そういうのがありませんから、そういうような企業は今ないんですよ。だから、よく吉村先生がおっしゃる、部品売りみたいな形でおっしゃるんですけれども、膜だけ売るとか、それぞれの技術だけをというようなことになるんですけれども。だから、持っている割には本当に海外に出ていけていない事実というのはやはり現状としてすごくあって、ただ皆さんが見られている、視察、すごく行かれているように、今聞いた中でも何人かいる、聞いていて、そういうような情報も点としてあって、何でもっとそれが面にならないのかなと思うんですね。
 だから、そういうような今の現状で、その中の、当然企業もいろんな企業があるわけですから、大企業であったり、中小企業であったり、その規模によってできることというのが出てくると思うので、やはり国がそういう方針であれば、民主党政権がそういう方針を出されているのであれば、それにのっとった形で我々ができることというのをもっとコミュニケーション取れるんじゃないかなと思うんですね。
 課題は、そういうような現状を踏まえて、やはり連携が今の日本ってすごく不得意だなって思います、いろんな意味で。さっきおっしゃいました技術を見せないって何でだろうと思うんですけれども。もう今やそんな時代じゃなくて、日本の中で当然マーケットもなくなってきていますし、だから海外になんて安易な考えで出ていくのは無理で、海外の方が難しいわけですから、ビジネスとしてつくるのは。なので、そのためであれば、やはりいい意味での協力をしないと。その中で、言いましたコ・クリエーションの共創をするためのコンペティションは必要なんだと思うんですね。だから、はなから自分のところだけ抱えているって、確かにそういう業界あるんです、水処理業界の中で。そういう部分というのはすごく課題だなと思います。
 だから、一つ、そういう意味でも、この中小企業はもう何やかんや言っている、火が付いていますから、後継者もどんどんいなくなっているわけで、だから、それをモチベーションを上げるためにもこういうチームをつくろうと思い立ったのもあるんですね。だから、そういうような形で、一つそういうので動き出している事実をつくらなかったら、連携を取って、一つのベストプラクティスがないと誰も信じないし、目に見えたものでなかったら誰も動かないので、そういう部分、だから、一つの物を作るための、連携を取るための何が欠けているのか、僕はマインドだと思っているんですけど、そういう部分だと思います。
 以上です。